2018/01/19

書評: 量子コンピュータが人工知能を加速する (西森秀稔 / 大関真之)


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量子コンピュータが人工知能を加速する という本をご紹介します。



本書の内容


以下は、本書の内容紹介からの引用です。

実現は早くても21世紀後半と言われていた 「量子コンピュータ」 が突然、商用マシンとして販売が開始された。

作ったのはカナダのメーカーだが、その原理を考え出したのは日本人研究者。しかも、人工知能に応用でき、グーグルやアメリカ政府も開発競争に参戦、NASA やロッキード・マーティンも活用を開始した。

どのようにして量子力学で計算するのか。どのようにして人工知能、特に機械学習やディープラーニングに応用できるのか。そして、どうすれば日本の研究が世界をリードできるか。

画期的な量子コンピュータの計算原理、「量子アニーリング」 を発案した本人が語る。


量子コンピューターとは


量子コンピューターは、量子ビットを使って計算する装置です。量子ビットは、「0」 と 「1」 の両方を重ね合わせた状態です。

従来のコンピューターは 0 か 1 かに対して、量子ビットでは 0 でもあり、1 でもある状態です。


引用:AI と量子コンピューティング技術による新時代の幕開け|FUJITSU JOURNAL


量子コンピューターの特徴


従来型のコンピューターに比べて、量子コンピューターの特徴は次の3つです。

  • 計算時間が早い (量子コンピューターは従来型の1億倍と言われる)
  • 消費電力が少ない (スーパーコンピューター京の500分の1)
  • 組み合わせ最適化問題に特化 (従来型は汎用型)

以下、それぞれについて補足です。


1. 計算時間が早い (量子コンピューターは従来型の1億倍と言われる)


量子コンピューターは従来コンピューターよりも1億倍早く計算できるとのことです。

1億倍ということは、従来型コンピューターが1億秒かかっていた計算を、量子コンピューターは1秒で終わります。1億秒は、約3年2ヶ月です。従来のコンピューターでは3年以上かかる計算が、量子コンピューターではわずか1秒で完了するのです。


2. 消費電力が少ない (スーパーコンピューター京の500分の1)


量子コンピューターは従来型に比べて、消費電力量が少ないことも特徴です。本書で紹介されているカナダの D-Wave 社の量子コンピューターは、スーパーコンピューター京の500分の1の消費電力量とのことです。

D-Wave の量子コンピューターの電力は、超伝導体の冷却に使われます。超低温にしなければいけないのは、約1平方 cm のチップ部分だけで、電力使用量は少なくてすむようです。

量子コンピューターは計算時間が早く、かつ消費電力量が少ないので、従来型コンピューターに比べて低コストで使えます。


3. 組み合わせ最適化問題に特化 (従来型は汎用型)


量子コンピューターは、従来型のような汎用型ではなく、特定の目的で使われます。特定の目的とは、組み合わせ最適化問題です。

組み合わせ最適化問題の代表例は、巡回セールスパーソンです。例えば、営業担当が一日に訪問する顧客先を、どのようなルートでまわるとよいかです。訪問先が増えるほど、ルートのパターン数 (組み合わせ数) は指数関数的に増加します。

従来型コンピューターでも、組み合わせ最適化問題は解くことはできますが、組み合わせ数が多くなると計算が完了するまでに時間がかかりすぎます。量子コンピューターであれば、先ほどの計算時間で見たように1億倍早いので、従来型で3年以上かかる最適化された組み合わせを提示するのは1秒で終わります。

これまでは組み合わせ最適化を出すために時間がかかったり、消費電力量の問題からできなかったことが、量子コンピューターを使えば、現実的なコストで最適な組み合わせを見つけることができるのです。


組み合わせ最適化問題の例


組み合わせ最適化は、様々な分野で活用ができます。具体的には、以下があります (参考:AI と量子コンピューティング技術による新時代の幕開け|FUJITSU JOURNAL) 。

  • 工場や物流:作業ルートや在庫部品の配置を最適化し、作業者が部品を集めるために歩く時間を最短にする
  • 広告:ウェブページを見た人の年齢や性別などの属性から、その属性に合わせて広告やコンテンツを表示する。パーツが6つなら720通りの出し分けで済むが、20パーツに増えるとパターンは243京 (京は兆の1万倍) 。量子コンピューターでなければ計算時間が非現実的
  • 金融:金融の分野でポートフォリオを最適化し、投資リスクを削減する問題に適用


最後に


量子コンピューターは、従来型のコンピューターからのブレイクスルーになり得ます。

汎用型ではなく、組み合わせ最適化問題を解くことに特化した専用型であるとしても、世の中の問題を低コストで解決できることが期待できます。

本書は、量子コンピューターとは何か、何がすごいのか、社会にもたらす価値など、興味深く読むことができます。



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。