2018/01/07

書評: スマートコントラクト本格入門 - FinTech とブロックチェーンが作り出す近未来がわかる (鳥谷部昭寛 / 加世田敏宏 / 林田駿弥)


Free Image on Pixabay


スマートコントラクト本格入門 - FinTech とブロックチェーンが作り出す近未来がわかる という本をご紹介します。



内容紹介


以下は、本書の内容紹介からの引用です。

FinTech の中でも大きなインパクトをもたらす技術と目されている 「スマートコントラクト」 。

本書では、FinTech の最新アウトラインから入り、スマートコントラクトの基礎、事例、可能性、コーディングと、順を追って掘り下げていきます。図解とクリアな説明によって、仕事で使えるレベルの知識をスムーズに仕入れられます。

この本は、ブロックチェーンや仮想通貨の基本的な知識、イーサリアムなどのスマートコントラクトについて、図も交えてわかりやすく解説しています。


スマートコントラクトへの期待


本書は、フィンテックやブロックチェーンをスマートコントラクトというテーマに絞って書かれています。

スマートコントラクトへの期待が、本書には次のように書かれています。

ブロックチェーンと、そのアプリケーションであるビットコイン。そして、これらを契約の自動化に使う試みが、「スマートコントラクト (Smart Contract) 」 と呼ばれる技術です。ブロックチェーン技術を使った DApps の1つの分野として、スマートコントラクトは非常に注目されています。

これは、人類史における3つの革命 (農業革命、産業革命、情報革命) に匹敵すると言われています。


スマートコントラクトとは何か


スマートコントラクトは、ブロックチェーンをベースにつくられます。

スマートコントラクトでは、契約をプログラムで定義しブロックチェーン内に保存します。契約の履行はプログラムに沿って自動で行われます。

契約に定める取引で対価が必要な場合は、仮想通貨 (価値のあるデジタル情報) が使われます。契約が正確に履行されたかどうかのチェックも自動化されています。


スマートコントラクトの具体例


スマートコントラクトは、具体例を見ると理解が深まります。本書に書かれていたスマートコントラクトの具体例を2つご紹介します。


1. 自動車の所有権の移譲


1つ目は、自動車の売却です。

前提としてスマートフォンが車のキーとして使える自動車です。ドアの開閉やエンジンを、スマホを使って制御できる車です。ブロックチェーンには車の所有者の情報が記録されています。

スマートコントラクトを使い車の所有権を移譲する取引では、車のキーの所有権が、新しい所有者に移ります。この取引が行われるのと同時に、仮想通貨が売り手 (これまでの所有者) に自動で送金されます。決済と車のキーの移譲が、自動的に完了します。


2. 洗剤の自動注文


2つ目は、IoT とも絡んだ例です。洗濯機には、洗剤容量が残り少なくなると洗剤の発注を自動的に行う機能があるとします。

スマートコントラクトの役割は、洗剤の残量が少ないと洗濯機が検知したタイミングで、事前に契約を行った小売店と以下のような取引をすることです。

  • 洗濯機から小売店に、自動発注を行う
  • 発注通知を受け取った小売店は、契約が有効かどうか発注内容を確認する。問題がなければ注文書を作成する
  • 洗濯機から小売店に、仮想通貨で洗濯洗剤の代金を支払う
  • 小売店は洗剤の発送情報を洗濯機に送信する
  • 洗濯機から所有者に取引完了の通知がいく

このようなデバイスだけで自律したやりとりが行われる世界が、あらゆるデバイスで実現される可能性があります。ビットコインなどの仮想通貨やブロックチェーン、そして、スマートコントラクトによってです。


メリットは


スマートコントラクトのメリットは、次の通りです。

  • ブロックチェーンが使われるので過去の取引履歴が保存される。契約内容の改ざんができない
  • 取引内容はプログラムによって自動的に行われる。人が実施することによるヒューマンエラーがない
  • 仲介者が不要となるため、契約手数料を低くできる
  • 仲介者不要のため、詐欺や二重売買などの仲介トラブルが減る
  • 取引を自動化しているので、売り手と買い手の信頼コストを下げられる (契約相手を信頼する必要がなくなる)
  • 契約違反時の罰則を自動執行できる
  • 誰でも契約内容や権利移譲を検閲できる


スマートコントラクトについて思ったこと


スマートコントラクトは、要するに何を意味するのでしょうか。ここからは、スマートコントラクトについて思ったことです。


インターネットとブロックチェーン


スマートコントラクトを、大きな視点で考えてみます。

スマートコントラクトは、インターネットとブロックチェーンがベースになっています。インターネットとブロックチェーンの価値をそれぞれ一言で言えば、次のようになります。

  • インターネット:個人による情報へのアクセスと発信を容易にする
  • ブロックチェーン:価値の保存および交換を個人にもたらす

2つに共通するのは、個人への 「機会の平等」 を実現するプラットフォームということです。

ネットは情報へのアクセスを誰にでも可能にするという機会を提供します。ブロックチェーンは、仮想通貨などの価値を保存し、送金や決済などの価値の交換を個人ができるようにするプラットフォームです。


スマートコントラクトがもたらす 「契約の機会の平等化」


スマートコントラクトを機会の平等という文脈で考えると、スマートコントラクトは 「契約の機会の平等化」 を個人や個々のデバイスにもたらすものです。

スマートコントラクトの特徴は、契約の自動化、不正防止、コスト削減、契約内容や取引実績の透明化です。これらによって、契約は誰にでも、どのデバイスにも機会として与えられるものになります。インターネットが情報へのアクセスを誰にでも提供したようにです。

契約の自動化によって、契約プロセスの多くの部分は人ではなく機械がやるようになります。人が担うのは、最低限の契約内容を決めることで、あとはプログラムが自動的に実行してくれます。つまり、スマートコントラクトは煩雑な契約作業を人から解放してくれます。


信頼コストの低下


スマートコントラクトがもたらすものの一つが、信頼コストの低下です。

人間同士の契約であれば、契約内容を信頼できるかどうかは、契約相手が信頼できるかどうかが重要になります。相手と契約内容の両方から、その契約が信頼できるかどうかを判断します。

一方、スマートコントラクトであれば、プログラムによって契約の実行と、実際に正しく行われたかどうかまでが自動化されます。これが意味するのは、契約相手その人が誰なのか、契約相手が信頼できるかどうかは、考慮しなくてよいということです。つまり、信頼コストが低下します。

信頼コストが低下し、契約そのものの手間も少なくするということは、その分を人は違うことに時間を使うことができます。スマートコントラクトがもたらしてくれる価値です。


IoT に欠かせないスマートコントラクト


契約の自動化は、モノ同士がネットワーク化されやりとりをする IoT に不可欠な要素です。

IoT デバイスには、あらかじめ何をするかのプログラムが実装されます。プログラムの内容が、相手があって実現するものであれば、相手の IoT デバイスとのやりとりが発生します。

この時に、人が介在せずに取引の確認と実行が自動化される仕組みになっていないと、人間がいちいち入ることになります。これでは自動化のメリットが活かされません。

スマートコントラクトによって、IoT デバイス同士の取引を自動化することができれば、IoT デバイス同士のやりとりはより効率的に、かつ人間によるエラーに影響されることなく実行されます。



最新エントリー

多田 翼 (書いた人)


複数のスタートアップ支援に従事。経営や事業戦略、プロダクトマネジメント、マーケティングのコンサルティング及びメンター。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn をご覧ください) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝のランニング。

内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。