2018/01/13

箱根駅伝を三連覇の青学大陸上部・原監督のチームマネジメントは、ビジネスにも示唆深い


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2018年、お正月の箱根駅伝は、青山学院大学が三連覇を達成しました。

東洋経済に、青山学院大学陸上競技部の原晋監督の記事が掲載されています。原監督のチームマネジメントが興味深く読める記事です。

青学・原監督 「管理職の仕事は管理じゃない」 - 常勝軍団を率いる名将が明かす人の育て方|東洋経済オンライン


今回のエントリーは、青学大陸上部の原監督のチームマネジメントから、ビジネスへの示唆を考えます。


部員一人ひとりが自分で考えるチームが理想


原監督の理想のチームは、監督が指示を出さなくても部員それぞれがやるべきことを考え、実行できるチームです。

指示待ちではなく、自分で考えるチームにするために最初に取り組んだことは、部員が 「相談できる人」 になるよう育てたそうです。相談できる人というのは、監督に答えを求めるのではなく、事前に自らが考えたことを相談として持ってくる人です。

問題を見極め、自分で課題を設定し、課題に対する仮説を立て、それらを監督に相談する、あるいは、確認をしたり監督に提案することです。

例えば、夏合宿の練習時間について 「今日のスタートは何時にしますか」 では、指示を聞きに来ている人です。

相談できる人とは、その日の天候・気温・風・グラウンドコンディションを踏まえ、「今日の日中は気温が30度を超えるので、練習時間は遅めの午後4時半からにしませんか」 と持ってくる人です。

あらかじめ自分で考えたことを相談して、監督が納得してその通りになれば、相談しに来た部員にとっては成功体験になります。自分の考えたことが実際に練習に反映されれば、次につながります。よりよい練習環境を整えるモチベーションになるのです。

記事に書かれていたのは、チームをここまでの考える集団になるのに、7~8年かかったとのことでした。

大学の陸上部なので4年を1つの単位と見れば、7~8年ということは二世代の期間を要したことになります。原監督は自分の理想のチームにするために、いかに忍耐強く待ったかがうかがえます。


ビジネスへの示唆 (自分で考える人を育てる)


原監督が理想として描くチームは、「監督が指示を出さなくても、部員それぞれがやるべきことを考え、実行できるチーム」 です。

ビジネスに当てはめると、上司が指示を出さなくても、部下がそれぞれやるべきことを考え、実行できる組織です。

では、どうすればそのような組織をつくることができるのでしょうか。原監督の組織マネジメントからの示唆は、次の通りです。

  • 自分で考えて相談しに来やすい雰囲気をつくる。相談をするほうが良いと思われるインセンティブをつくる
  • 聞きに来た同僚や部下に、すぐに答えを言わない。言ってしまいそうになっても我慢する
  • 相談から答えではなくヒントや示唆を与える程度にあえて留め、その後に部下がうまくやったら成功体験として刻まれるよう工夫する (褒めるなど)
  • 自分で考えられる人になるには時間がかかると覚悟する


管理職の仕事は 「感じること」


記事に書かれていたことで興味深かったのは、「管理職の仕事は管理することではない。感じること」 という原監督の考え方でした。

部員一人ひとりが自分で考えるような成熟したチームになると、監督の役割が変わるとのことです。監督が前に出て教えたり管理するよりも、監督のやることは、チームの変化を感じ取ることだそうです。

具体的には、グラウンドで自分のいる定位置は、チームから離れた場所です。チーム全体の雰囲気や選手たちの動きを遠くから見ます。見る視点は、ハードなトレーニングに耐えられているか、目標達成を焦って追い込みすぎていないか、キャプテンや4年生はチームをまとめているかなどです。

監督が動くのは、選手たちが間違った方向に傾きかけた時です。ウォームアップ時に緊張感が足りないなど、良くない変化を感じた時です。

原監督は、監督としてチームの些細な変化を感じるために必要なのは、本気で観察することだと言います。日頃から注意深く見ていると、後々に問題になる兆しを 「ちょっとした変化」 として気づけるそうです。


落合博満氏の采配との共通点


グラウンド全体が見える位置から、チーム全体を観察して変化に気づくことで思い出したのは、日本のプロ野球の中日ドラゴンズの元監督である落合博満氏が、著書で書いていたことです。采配 という本です。



落合氏は監督をしていた当時、いつもダグアウトの同じ場所に腰をかけ、グラウンド全体を見ていたと言います。

監督として勝利に結びつける采配のために大切にしていたのは、グラウンドの中にある情報をどれだけ感じ取れるか、とりわけ 「いつもと違う」 にどれだけ気づけるかとのことです。

落合氏の言っていることで印象的だったのは、グラウンドの中にある情報をどれだけ感じ取るときに邪魔になるのは、「固定観念」 という考え方です。

以下は、著書 采配 からの引用です。

監督の仕事は、選手を動かしてチームを勝利に導くことだ。

すなわち、勝利に結びつくよう采配を振るわけだが、その際に大切なのは、グラウンドの中にある情報をどれだけ感じ取れるかということだろう。そこで邪魔になるのが固定観念である。

プロ野球界で現場にいる人なら、選手がユニフォームを着てグラウンドに立ち、審判員が所定の位置でジャッジしているのは当たり前の光景だ。それを 「いつもと同じ」 と感じれば、頭はそれについて考えようとしない。

しかし、彼らの表情や動き方を見ている中で、どうも普段とは違うんじゃないかと感じることができれば、頭がその理由を探ろうと動き出す。つまり視覚でとらえている映像でも、固定観念を取り除けば、さまざまな情報が得られることが多いのだ。


ビジネスへの示唆 ( 「いつもと違う」 にどれだけ気づけるか)


固定観念を取り除くとは、先入観をなくすことです。あるいは、無意識にも当たり前や常識と思っていることを、疑ってみる姿勢です。

青学大の原監督や落合氏のチームマネジメントは、ビジネスにも示唆があります。

陸上や野球でいつも同じ位置からグラウンドを見るとは、ビジネスに当てはめれば、ホワイトカラー職であれば自分のデスクから見える職場の様子を見ることです。自分のデスク以外にも、職場全体が見える位置から会社の風景を見ることです。

同僚の表情、行動や振る舞い、言動を見たり聞いたりする時も、意識しなければ 「いつもと同じ」 でしょう。しかし、何か違うことはないかと先入観をなくして見れば、「ちょっとした変化」 に気づけるかもしれません。

自分の会社以外でも、取引先の雰囲気や先方担当者の様子にも 「いつもと違う」 を感じ取ることができれば、そこから次のビジネスにつなげられるチャンスが生まれます。




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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にて 「シニア マーケティングリサーチ マネージャー」 (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝1時間のランニング。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。