2017/12/14

書評: 「小池劇場」 の真実 (有本香) 。小池劇場で引き起こされた問題


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 「小池劇場」 の真実 という本をご紹介します。



エントリー内容です。

  •  「小池劇場」 とは
  • 小池都知事の問題。問題化させた築地市場
  • 側近やマスメディアの問題。小池劇場で引き起こされた問題


 「小池劇場」 とは


本書の 「はじめに」 には、小池劇場について次のように書かれています。

 「小池劇場」 とは何なのか?と問われたら、その中身は空っぽ、何もない、と答えるほかはない。

記憶にあるのは、いくつもの風評と騒がしさだけだ。10カ月に及ぶ、無為無策のその結果、東京都政は混迷、遅滞し、多額の損害を発生させている。

そればかりか、開催を3年後に控えている東京五輪・パラリンピック (以下、東京五輪) も、招致の際に国際公約したとおりの開催は難しい状況に陥ってしまった。

 (中略)

ビジョン・政策がなく、正当な手続きがなく、ファクトに基づくロジックがない。

ないない尽くしで、ただ騒がしく他人を叩くだけのワイドショー政治。

 (引用: 「小池劇場」 の真実)

 「小池劇場」 では、三者が問題を引き起こしていると読めます。小池都知事、都知事の側近、マスメディアです。


小池都知事の問題


本書ではいくつもの論点で小池都知事の問題が書かれています。


ビジョンなき都知事


著者のジャーナリスト・有本香氏が問題視するのは、小池都知事にはビジョンがないことです。パフォーマンスを見せ、騒ぐだけ騒ぐものの、信念やロジックがないことです。

本書では、次のように表現されています。「ビジョンも、知見も、ルールに基づく行政上の手続きもなく、学ぶ謙虚さもなく、ましてや信念などカケラもない。ないない尽くしの都知事」 。


意思決定が独断かつブラックボックス


意思決定で議会を軽視する姿勢も書かれています。小池都知事は、2016年の東京都知事選では、「都民と決める、都民と進める」 と主張していました。自身が都知事になる前の都政や都議会については 「いつ・どこで・誰が決めたかわからないブラックボックス」 と言っていました。

しかし、本書で問題視されるのは、言っていることと逆の進め方です。小池都知事が側近の声しか聞かず、常に議会を軽視し独断するという、意思決定のブラックボックスです。民主的な手続きがされていないという問題です。


本来は問題でないことを騒ぎ、問題化する


有本氏は、小池劇場の困った特徴は、「本来ニュースにもならないようなことが大ニュースになってしまう」 ことだと言います。本書には都庁関係者からの次のようなコメントが書かれています。

都庁関係者が言う。

 「企業などの民間組織にもたまにいるでしょ、基本業務を十分に理解しこなす能力がないのに目立つことばかりやりたがり、上司へのアピールだけは得意なタイプ。結局、大穴を開け、その穴埋めは、蔑ろにされてきた同僚が泣きながらやる羽目に陥る。そういう『困ったちゃん』が東京都知事になったということ」

 (引用: 「小池劇場」 の真実)


問題化させた築地市場


本来は問題にならなかったことを、いたずらに問題化させた典型は築地市場の豊洲移転でした。

本書では築地市場の移転問題について、関係者への取材内容をもとに詳しく書かれています。メディアでは語られない情報も多く、築地市場移転の何が問題かが理解できます。

豊洲への移転に関して、小池都知事の何が問題だったかは、次の通りです。本書から該当箇所の引用です。

豊洲市場は、初めから 「安全」 なのだ。

コンクリート等で覆うという必須の土壌汚染対策以上に、コンクリートの下の土壌の改良までせざるを得なくなったのは、共産党のプロパガンダと、それに乗った旧民主党の一部の都議会議員が、当時の知事の石原に、「安心」 のための余分な対策を求めたからである。

グズグズと進まない状況にケリを付けるため、石原は決断した。無害化を目指して土壌改良をやると。

この 「ゼロリスク政争」 の無限ループに陥る危険にしっかりと終止符を打ったのが舛添であった。小池はこれを引き継ぐべきところを、今になって、最初の段階に話を戻したのだ。そして、安全のウソを見破られると、今度は最初に付け火をした共産党と同じ、「石原が強引に押し切って余分な支出をした」 ように話をすり替えている。

日常の生活に忙しい都民、国民はこれに騙される。一つ一つのことの経緯などいちいち憶えていないところへ、「土壌汚染」 「安全性」 というワードを出されると人は容易に不安に駆られるからだ。

そしてまた今回も、メディアはその詐術劇を大いに煽った。

 (引用: 「小池劇場」 の真実)

石原都知事の時代から前都知事である舛添都知事までの間、関係者は一つずつ課題を乗り越えてきました。対応を積み重ね、ようやく豊洲移転に目処がついていたにもかかわらず、小池都知事によって全てがひっくり返ってしまった経緯が詳しく書かれています。


側近の問題


本書で問題視されている小池都知事の側近は2名います。小島敏郎氏、上山信一氏です。なお、小島氏は都顧問を辞職し都民ファーストの会に転身しました (2017年9月) 。

小島氏については、本書で次のように書かれています。

プロジェクトチームとしての検証もなく承認も得ていない 「築地再整備の私案」 なるものを市場内業者に説明する会合を開いたり、「青果部門」 を切り離して豊洲に移転させるという荒唐無稽な案を出してみたりして、築地の業者を混乱させ、憤らせている。

 (引用: 「小池劇場」 の真実)

上山氏については、本書で以下のように書かれています。

もう一人の小池側近、上山信一は、平成28年秋、五輪の競技場見直しで大騒ぎをした挙句、元どおりとなった件の中心人物である。

 「五輪費用は3兆円かかる」 という根拠不明の大きな数字をぶち上げ、豊洲市場の 「謎の地下空間」 のときと同様、テレビのワイドショーを騒がせた。

こうしたプロパガンダのやり方は、市場の件と共通している。

五輪会場見直しのゴタゴタを今さらくわしく説明するまでもないだろうが、世間にあまり知られていない問題 ── 上山に越権行為があったのではないかという疑惑が浮上していた。

 (引用: 「小池劇場」 の真実)

読んでいて問題だと思ったのは、小池都知事は自身の信用する側近以外の言うことには聞く耳を持たないと書かれていたことでした。


マスメディアの問題


本書で書かれている 「小池劇場」 のもう一つの要素は、マスメディアです。問題を作り出したのは小池都知事で、問題をさらに助長したのがマスメディアであるという指摘です。


政治的公平性を欠くメディア


以下は本書からの引用です。

マスメディアの腐敗が深刻だ、とは昨今よく言われることである。

事実の追及を怠ってデマを拡散する。勝手なストーリーを組み立て、悪役に仕立て上げた人、モノ、土地に風評被害をもたらす。「取材」 と称して、民間人のプライバシー、人権を侵害する。そして、政治的公平性を著しく欠く。

くわえて、これら一切の犯罪的行為について無自覚である。

そんなマスメディアの側が最近、インターネット上に流される 「フェイクニュース」 の害を言い立てたりしているが、マスメディアという大機関がネット上の小さな個人のもたらす誤報の害を問題にするなど、片腹痛い。

 (引用: 「小池劇場」 の真実)


過去の経緯を踏まえない報道


舛添前都知事までの経緯を踏まえない態度は、メディアも同様です。再び本書からの引用です。

豊洲市場の件に限らず、行政においては長期的案件となる事柄は多いのだから、過去の知事 (この場合は舛添) の発言、議会の決議などの資料を読み返し、問題を一連の流れとしてとらえることは当然すべきではないか。ましてや、豊洲のように世間を騒がせ、こじらせてきた問題ならなおさらだ。

そうした初歩的な努力、ファクトと向き合う真面目さが今のメディアには圧倒的に欠けている。だから、小池のマッチポンプに簡単に釣られるのだ。

舛添の 「いい仕事」 はあまりにも知られていない。それはひとえに、メディアの不作為、不誠実による。


小池劇場で引き起こされた問題


小池都知事と側近、マスメディアの問題によって引き起こされた状況は深刻です。

本書には、小池都知事が次々に論点をずらし、問題を拡大させた結果、都庁職員や築地関係者を疲弊させていったことが書かれています。

築地市場と、派生しての東京オリンピックへの影響も大きいです。

築地市場を移転させず豊洲市場を遊ばせたままなので、経費と補償費用を増大させ、市場会計全体のマイナスを大きくしています。豊洲地区の関連業者の商売の機会損失も発生し続け、築地周辺の再開発も進まみません。環状2号線の工事もさらに遅れています。

築地市場の移転問題は、単なる市場の引越しという問題にとどまりません。環状2号線の工事に直結する問題であり、東京オリンピック開催準備にも影響します。ひいては、東京湾岸の再開発と、今後の経済活性化に関する問題なのです。

本書で有本氏は、東京オリンピック開催への影響は次のような状況にあると指摘します。

  • 東京五輪の準備の遅れが深刻である
  • 公約に沿った開催はすでに不可能となっている
  • 都心での駐車場用地の確保すら難しい状況に陥っている

以下は本書からの引用です。

もはや、招致のときに東京が世界に約束した仕様での五輪開催は難しくなっている。

たかが道路一本と思うかもしれないが、環状2号線が担う交通量は1日に6万台と見込まれていた。東京五輪の期間中は、選手村と競技場を結ぶ専用道路とする約束も正式にされていた。

これが予定どおり開通しない。そのすべての責任は、後先考えず市場の移転を延期した現在の東京都知事、小池百合子、一人にある。

 (引用: 「小池劇場」 の真実)

続けて、有本氏は次のように書いています。

事が動き出してからでも約20年 ── その間の知事、とくに石原、舛添と、多くの都庁の職員、専門家、豊洲市場建設に関わった日建設計や建設会社の人々、そして築地市場のなかで仲間内の政争に心を痛めながら業者をまとめ移転の準備を進めてきた人たち、さらには市場移転とリンクするかたちで東京五輪の準備、東京の再開発を進めてきた人たち ── の苦労が積み重なった大事業を、小池は一瞬でぶち壊したのだ。

その代わりに目下、市場会計から毎日、数千万円がドブに捨てられている。江東区の豊洲地区については、「豊洲は危険」 というまったく事実無根の風評が全国に流された。

ビジョンも、知見も、ルールに基づく行政上の手続きもなく、学ぶ謙虚さもなく、ましてや信念などカケラもない。ないない尽くしの都知事が、ただただパフォーマンスに勤しむなかでどんどん東京が壊されていく。

 (引用: 「小池劇場」 の真実)


最後に


本書では、「小池劇場」 という、小池都知事が引き起こした問題と、それを助長し拡大させた各種報道の問題の2つがかけ合わさり、東京の都政に多大な影響を与えている様子が描かれています。

この事象を一般化すれば、「大衆迎合のパフォーマンスのみで信念や中身のない政治家」 + 「ファクトに基づかない偏った情報を報道するマスメディア」 によって、人々の意見や世論という世の中の空気が形成されてしまう構図です。

共通するのは、ともに中身がないことです。

有本氏はメディアについて、本書で次のように言及しています。

報道に携わる者は、何よりも 「事実」 に誠実に向き合わなければならない。

政治を監視するのは 「メディア」 ではなく、有権者だ。メディアはその有権者の監視に有用な 「事実」 を提供する媒体に過ぎない、という謙虚さを忘れてはいけない。

 (引用: 「小池劇場」 の真実)

私たち一人ひとりも、報道内容やメディアで言われている内容に対して、健全に批判的な視点を持って情報に接するべきでしょう。言われている内容を鵜呑みにするのではなく、その情報を踏まえ自分はどう考えるかです。



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書いている人 (多田 翼)

ベンチャーから一部上場企業の経営・事業戦略を支援。マーケティング、コンサルティング・アドバイザー・メンター、プロダクトマネジメント。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn または Facebook をご覧ください) 。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。