投稿日 2022/02/07

JR 西日本の 「妄想ショップ」 に学ぶ、お客の奥にある本音を叶える方法

出典: PR TIMES

今回のテーマは 「お客さんの本当の望みを叶える方法」 です。

✓ この記事でわかること
  • JR 西日本の 「妄想ショップ」 とは?
  • ほめる Bar , 甘い言葉に癒やされるイケボショップ
  • お金を払ってでも得たい価値
  • お客さんの本当の望みを叶える方法
  • マーケターに求められる役割

おもしろいと思った JR 西日本が展開する 「妄想ショップ」 を取り上げ、マーケティングに学べることとして、お客さんの本当の望みを叶える方法について掘り下げています。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

JR 西日本の 「妄想ショップ」 とは?


おもしろいと思い取り上げたいのが、JR 西日本の 「妄想ショップ」 です。


以下は、妄想ショップを取り上げた日経新聞からの引用です。

お金を払って褒めてもらう 「ほめる Bar」 、来店客の悩みをお坊さんが解決する 「お坊さん喫茶」 ――。JR 大阪駅前の商業施設 「ルクア大阪」 ではひと味違った限定ショップの出店が相次いでいる。

仕掛けているのはルクア大阪のトキメキ事業部。顧客の声をインスタグラムで集め、来店動機につながる企画を考える。見据えるのはコロナ後の新しい商業施設の形だ。
ほめる Bar (出典: 妄想ショップ)

お坊さん喫茶 (出典: PR TIMES)

引用内にあった 「ほめる Bar」 や 「お坊さん喫茶」 の他にも、例えば、甘いセリフがたくさん出てくる妄想ストーリーをイケメンボイスで聴く 「イケボショップ」 があります。

出典: PR TIMES


妄想ショップの狙い


そもそもなぜ、JR 西日本は妄想ショップを展開しているのでしょうか?

先ほどの日経に書かれていたのは、妄想ショップの狙いは物販だけには頼らない事業構造への転換です。

 「3 ~ 5年後の収益につながる新規サービスを考えるのがミッション」 。ルクア大阪を運営する JR 西日本 SC 開発の大垣晃子氏はこう話す。

社内でトキメキ事業部が設立されたのは2020年8月だった。新型コロナウイルスの感染拡大もあり、ルクア大阪の主な客層だった20 ~ 40代の間では、買い物をオンラインで済ます利用者も増えてきていた。利用客数は施設を拡張してから増加傾向だったが、将来を見越して物販に頼らない事業構造にする必要があった。

事業部で主に取り組むのが毎年秋に出店する 「妄想ショップ」 だ。商業施設の3階の入り口付近にある広さ5坪程度の空きスペースを使い、実験的なサービスを提供する店を出店する。今年は美容師が髪を切らずに似合う髪形のみ提案する 「ヘアスタイル屋さん」 など6店を展開した。参加者はサービス料として500円 ~ 1000円程度を支払う。

保有する商業施設 「ルクア大阪」 でテスト的に小さく始める役割にあるのが、妄想ショップです。

* * *

ではここからは、妄想ショップについてマーケティングの観点から掘り下げていきます。


お金を払ってでも欲しいもの


妄想ショップは、「人が心の奥では望んでいる価値は何か」 を考えさせてくれます。

欲しいレベルは、お金を払ってでも得たい価値です。妄想ショップに当てはめれば、褒めてもらえる、お坊さんに悩みを相談できる、甘いセリフを聴いて癒されたいなどの、実は本音では望んでいる価値です。


実は望んでいる価値


人の望みや解消したい不満には大きく2つあります。

既に表面化した 「顕在化しているニーズ」 と、もう1つが、本人も意識できていなかったり、わかっていても言葉でうまく説明できない、あるいは恥ずかしくて人には言えないような、奥にある 「潜在的なニーズ」 です。

妄想ショップが捉えているのは後者です。「実は望んでいる価値」 と表現したように、言われたり見せられて初めて 「そうそう、こんなサービスが欲しかった」 とか、「確かにいいかも」 と思えるものです。


学べること


では最後に、妄想ショップからマーケティングの観点で学べることを整理してみましょう。

一言で言えば、学びは 「お客が普段は意識しない隠れた望みや不満まで理解しよう」 です。意識しないとは、表面化したニーズではなく、直接訊いても出てこない気持ちです。

提供者側がお客さんに提示して、初めてお金を払ってでも欲しいと思えるものをマーケター自らが見出すことの重要性です。

単なる御用聞きのようにお客さんから言われたことを実現するだけでは、お客の期待を超える価値は生み出せません。マーケターに求められるのは、相手の奥にある普段は隠れた・隠したい気持ちになるべく迫り、お客さんの奥にある本音を叶える価値提供の実現です。


まとめ


今回は JR 西日本の 「妄想ショップ」 からマーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

お客の奥にある本音を叶えるために
  • マーケターは、お客が普段は意識しない 「隠れた・隠したい望みや不満」 まで理解する
  • 隠れた望みとは、見せられて初めてお金を払ってでも欲しいと思えるもの
  • 単なる御用聞きでお客さんから言われたことを実現するだけでは、お客の期待を超える価値は生み出せない


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。