投稿日 2022/02/15

人気の自販機とガチャガチャに学ぶ、長く買われ続けるために大事なこと


今回は、自動販売機とガチャガチャに学ぶマーケティングです。

✓ この記事でわかること
  • 「こんなものが買えるの?」 という自販機
  • なぜ人はあえて自販機で買うのか?
  • トライアル購入とリピート購入
  • ガチャガチャのカプセルトイに学べること
  • 長く買われ続けるために大事なこと

おもしろいと思った自販機を取り上げ、人気の理由を紐解きます。カプセルトイのガチャガチャも見ていき、マーケティングで学べることを解説しています。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

腕時計が買える自販機


最初にご紹介したいのは、1万円を超える腕時計が買える自動販売機です。


以下は、日経クロストレンドの記事からの引用です。

缶の中に入っているのはジュースではない。腕時計だ。2021年10月20日から11月18日の期間限定で、腕時計ブランド 「タイメックス」 を扱うウエニ貿易は時計店 「オンタイム 渋谷ロフト店」 に腕時計の自販機を設置した。

自販機は、タイメックスとコカ・コーラとのコラボレーション商品 「タイメックス × コカ・コーラ コラボレーションウォッチ」 の販売の一環としてウエニ貿易が企画した。

レジで購入した専用コインを自販機に投入すると、腕時計が出てくる仕組みだ。腕時計の価格は1万2100円から2万6400円。1万円を超える腕時計をわざわざ自販機で買う人がいるのかと思いきや、目標の1.5倍を売り上げたという。


ショートケーキや生花まで


腕時計以外にも、こんなものが自販機で買えるというのがあり、例えばショートケーキや生花です。


先ほどの日経クロストレンドの記事から再び引用します。

腕時計自販機の好評を受け、21年12月10日から22年1月10日まで渋谷マークシティ (東京・渋谷) にプレゼント専用自販機も設置した。クリスマス需要などを狙い、同社の女性向け腕時計ブランド 「エンジェルハート」 (1万円 = 自販機価格) に加え、話題の 「ショートケーキ缶」 の限定版 (1100円) や生花 (1000円) も販売。プレゼントラッピングセットも付けた。

主なターゲットは女性だったが、男性ビジネスパーソンからの反響もあったという。24時間稼働で、仕事帰りにもプレゼントを用意できる点が支持されたそうだ。「『私たちはこんなプレゼントをされたらうれしい』という女性からの発信にもなった」 (佐藤氏)

ここでも自販機が生み出すエンターテインメント性が購買を後押しした。ショートケーキ缶は、インスタグラム上で 「#ショートケーキ缶」 というハッシュタグ投稿が多数なされている話題の商品だ。自販機ではその限定版として、エンジェルハートをイメージしてホイップクリームがピンク色の商品を販売し、話題性がアップした。

 「やはり商品の背景が重要。『これ、SNS でバズってる商品なんだよね』というふうに、"背景ごと" プレゼントできるのも魅力だったのではないか」 と都河氏は指摘する。

SNS でも話題になったショートケーキ缶は、飲料に使われるのと同じような缶にケーキが入っています。ケーキをスプーンですくって食べるのは、確かに話のネタになりそうです。



なぜ自販機であえて買うのか?


一般的に自販機で売られているのは、飲料やお菓子ですよね。では、ショートケーキ缶や生花、あるいは自販機で買うには高額な腕時計を、なぜ人はあえて自販機で買うのでしょうか?

この問いを考えていきましょう。購入に影響する 「奥にある生活者の気持ち (顧客インサイト) は何か」 です。

顧客インサイトは何か?


結論から言えば、自販機という古くからあるものに、新しい買いもの体験の価値があるからです。

腕時計などの自販機らしからぬ商品へのめずらしさ、ショートケーキ缶という一度は試してみたい好奇心という気持ちが、自販機での購入につながります。話のネタにできるし、SNS でのシェアもやりたくなります。

買ったもの自体に加えて、買いもの体験にめずらしさ、その自販機でしかできない価値があるから、思わず買いたいという気持ちが生まれるのです。

二度目のリピート購入はあるのか?


もう少し続けて掘り下げたいのは、一度は珍しさから買われたとしても、二度目のリピート購入はあるのかです。初めてのトライアル購入は期待が先行し物珍しさからだけでも買ってもらえます。しかし二回目も続けて買われるためには飽きさせない工夫が求められます。

ではどうすれば、お客さんを飽きさせなくできるのでしょうか?


ガチャガチャに見る飽きさせない工夫


ヒントになると思ったのは、カプセルトイを売っているガチャガチャです。

ガチャガチャは、スーパーや駅の構内、飲食店に設置してあるのを見かけたり、最近は、ガチャガチャ専門店があるのはご存知でしょうか?


これは日経クロストレンドの別の記事に書かれていたことで、ガチャガチャの人気が続いている要因は次の3つです。

✓ ガチャガチャの人気の理由
  • 様々な場でのニーズを開拓しやすい
  • カプセルトイの種類の豊富さ
  • SNS などで広めたくなる仕掛け

記事から引用すると、

カプセルトイの需要が尽きない理由について、前田氏は、様々な場でのニーズが開拓しやすい点を挙げた。

 「 (1号店のオープン時は) 客数と客層の幅が想定を大きく上回った。カプセルトイは歴史が長く、アイテム数も多いので、ターゲット層が幅広い。そのうえ映画観賞や外食のついでにガシャポンを回す人も多いため、小回りが利きやすく、多種多様な業態にも適応する」 (前田氏)

 (中略)

カプセルトイの需要が尽きない理由として、前田氏がもう一つ挙げたのが競合の多さだ。バンダイでは毎月約50 ~ 100種類、他社も含めた業界全体では200 ~ 300の新商品をリリースしている。一見、こうした競合の多さは弊害に感じるが、前田氏は市場が活性化している状況は自社のビジネスにもプラスに働くと語る。

 「カプセルトイは最初にある程度のロット数を作り、めったに再生産はしない。基本的には新商品を次々と作るモデルで、消費サイクルが短い。様々な種類のカプセルトイが出ている状況により、客層や市場が保たれ、縮小することもない」 (前田氏)

SNS などで広めたくなる仕掛けも積極的にやっています。

バンダイナムコアミューズメントが重視しているのが、SNS などで広めたくなるような仕掛けだ。店舗ではディスプレーなどを工夫するほか、手に入れたカプセルトイを撮影するスポットも設ける。

 (中略)

 「今カプセルトイは、買って終わりでなく、買った後に SNS でアップする人も多い。それらのユーザー投稿がバズって拡散し、人気に火が付くケースがとても多い。弊社ではカプセルトイを回して楽しむことを『ガシャ活』と呼び、認知拡大を狙っている」 (前田氏)

 (中略)

UGC の効用を引き出すため、公式サイト内の動線にもこだわる。

個々のユーザーの写真をクリックすると、「アイテムを探す」 ボタンから、商品の検索ページに移動できるため、気になったカプセルトイがどこにあるのかをすぐ検索できる仕様になっている。個々の商品ページでは、店舗ごとの在庫の有無も確認できる。

学べること


では最後に、今回の事例から学べることを整理してみましょう。

一言で表現をすれば、学びは 「商品やサービスが買われる理由 (選ばれる理由) を、解像度高く理解しよう」 です。

わかりやすい買われる理由は、その商品・サービス自体が良いことです。

腕時計やショートケーキ缶の自販機から学べるのは、買ったものの価値に加えて、それをあえて自販機で買うという買い方、購入プロセスにも体験価値があり、選ばれる理由になることです。売り方からも買いたいと思ってもらえる工夫ができるわけです。

ガチャガチャからの学びは、お客さんを飽きさせないことの重要性です。

一度は買ってもらえる理由をつくれたとしても、二度、三度と続くとは限りません。継続的に買われる理由、自分たちが選ばれ続ける理由についても理解し、売り手側が能動的につくっていくことが大事です。


まとめ


今回は自販機とガチャガチャについて人気の秘密を掘り下げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

なぜ自販機であえて買うのか
  • 自販機という古くからあるものに、新しいお買いもの体験の価値があるから
  • 買ったもの自体に加えて、買いもの体験にめずらしさ、その自販機でしかできない価値があるから、思わず買いたいという気持ちが生まれる
  • 腕時計などの自販機らしからぬ商品、またショートケーキ缶という一度は試してみたい気持ち

お客さんを飽きさせないことの重要性
  • 一度は買ってもらえる理由をつくれたとしても、二度、三度と続くとは限らない
  • 自分たちが選ばれ続ける理由を解像度高く理解し、売り手側が能動的につくっていくことが大事


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。