投稿日 2022/02/26

マーケティングコミュニケーションでは、「誰に何をどう伝えるか」 。この順番が大事なのを CM の失敗と成功事例で解説


今回のテーマは、マーケティングコミュニケーションです。

✓ この記事でわかること
  • CM でよくある失敗例とは?
  • うまくできている 「MBP ドリンク」 の CM
  • マーケティングの型 「Who, What, How」 は覚えておいて損はないフレーム

今回は、マーケティングコミュニケーションで大事なのは 「誰に何をどう伝えるかの順番」 という話です。CM の失敗と成功事例から解説していきます。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

あるあるの CM での失敗


本末転倒な CM


テレビ CM の失敗事例でよくあるのが、CM のイメージは強く残るのに、肝心な CM の商品やサービス、企業のことが伝わっていなかったり、下手をすると覚えてさえもらえないことです。

例えば、CM に起用されているタレントは覚えているけれど、どんな商品、どの企業の CM だったかを覚えている人が少ないというパターンです。広告というある意味の作品としては視聴者を惹きつけたわけですが、CM 本来の目的からすると成功とは言えません。

CM とは手段


ここで重要なのは、CM は見込み客や既存客へのコミュニケーション手段だということです。

5W1H で言えば、CM は 「どう伝えるのか」 の How の要素が強いです。How の前に見落とされがちなのが、Who と What です。Who は 「想定顧客 (ターゲット顧客) 」 、What は 「顧客への提供価値」 です。

Who What, How の関係は次のようになります。

出典: FEATUReS

要因は過度な How 思考


先ほど、起こりがちな CM での失敗例を出しました。なぜこれが起こるかと言うと、CM での Who と What が曖昧にもかかわらず、CM でどう表現するかという How ばかりに注力されるからです。

あるいは CM を作成する過程で、そもそもの CM の目的、この CM で 「誰に何を伝えるのか」 が置き去りになってしまうからです。


順番が大事


マーケティングの実務をしていると、ついつい How に目が向きがちです。ここで言う How とは具体的な手段で、例えば広告などのコミュニケーション方法です。

もちろん具体である How は大事です。しかし、過度に How ばかりに意識が向いてしまうことには弊害があります。How の前提になる Who と What が抜けてしまうことです。

大事なのは Who と What があっての How で、「誰に、何を、どう伝えるか」 という順番です。

では、Who, What, How がうまく設計されている CM を見ていきましょう。


雪印メグミルクの 「MBP ドリンク」 の CM


具体例で取り上げたいのが、雪印メグミルク 「MBP ドリンク」 のテレビ CM です。


CM では、いきなり最初にイメージキャラクターの松岡修造さんが、「女性は50代が骨の曲がり角!?」 と CM を見ている人の不安を生むようなことを言います。

 「女性は50代が骨の曲がり角なんですか!?」

CM ではここで MBP を登場させます。MBP とは 「ミルクベーシックプロテイン」 で、牛乳の中におよそ 0.005% しか含まれていない希少な機能性たんぱく質です。

MBP は古い骨を壊す力と新しい骨をつくる骨の新陳代謝を調整します。骨を壊す 「破骨細胞」 に働きかけ、古い骨からカルシウムが過剰に溶け出すのを抑えます。さらに骨をつくる 「骨芽細胞」 の働きを活性化し、骨にカルシウムが定着するのを助ける役割を果たします。

話を CM に戻すと、「女性は50代が骨の曲がり角!?」 とあえて一度ネガティブな気持ちにしておいて、その直後に救世主のような位置づけで MBP を登場させています。

 「MBP?」

そして最後に、MBP ドリンクをアピールします。

 「骨密度を高める MBP ドリンク」

CM をまとめると以下の流れになり、論理だけではなく感性的なストーリーから訴求しています。

✓ MBP ドリンク CM のコミュニケーションの流れ
  • 女性は50代が骨の曲がり角 (ネガティブ情報の提示)
  • 見ている人は骨を強くするために何かしなければと思う (視聴者の課題感の発生)
  • 骨密度を高める MBP ドリンク (ポジティブな解決方法の提案)

MBP ドリンクの CM を、Who, What, How で整理をすると次のようになります。

✓ MBP ドリンクの CM の Who, What, How
  • Who: 40 ~ 50代の女性。カルシウム摂取不足、骨粗鬆症への心配、骨の健康への課題感を持っている人
  • What: 骨密度を高める MBP ドリンク
  • How: 「女性は50代が骨の曲がり角」 と伝えて課題感を醸成させ、MBP ドリンクという解決策を知って買いたいと思ってもらう

CM では松岡修造さんのインパクトは強いですが、松岡さんの CM という印象だけで終わっていはいません。Who と What が明確なので、15秒の CM でもメッセージがしっかりと伝わります。


まとめ


では最後に、今回のまとめとして学べることを整理してみましょう。

ご紹介した Who, What, How は、マーケティングのフレームとして覚えておいて損はないです。

✓ マーケティングの型
  • Who: ターゲット顧客
  • What: 顧客への提供価値
  • How: 価値提供の実現方法, 価値の伝え方, 売り方

ポイントはこの順番です。

出典: FEATUReS

How が活きるのは、前提としての Who と What があってこそです。いきなり How から入る過度な How 思考にならないように意識すると良いです。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。