投稿日 2022/02/03

鉄道好きにはたまらないグッズとホテルに学ぶ、振り切ったターゲット顧客と価値提供


今回のテーマは、マーケティングと商品開発です。

ターゲット顧客の設定と、独自の価値提供について掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 新幹線の座席の布から生まれたグッズ
  • 京阪電車内を再現したホテルルーム
  • マーケティングの観点からの共通点
  • 学べること2つ
  • ① ターゲット顧客の絞りと提供価値の明確化
  • ② 独自資源の有効化

おもしろいと思った商品やサービスをご紹介し、共通する本質からマーケティングや商品開発に学べることを解説しています。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

新幹線の座席から生まれた商品


1つ目の事例でご紹介したいのは、新幹線の座席の布を使った商品です。

JR 西日本が手掛け、数量限定で通販のみで去年の2021年10月から受注販売を開始しました。

座席シートの布 (モケット) を使い、手作りで作られています。

ペンケース (出典: ITmedia)

クッション (出典: ITmedia)

トートーバッグ (出典: ITmedia)

以下は、日経新聞の記事からの引用です。

2020年12月に旧国鉄時代の新幹線などのモケットを使ったグッズをアマゾンで販売を始めた。現在では大阪メトロ、阪急バスなど鉄道やバス事業社5社に広げた。ペンケースやバッグのほか、財布やパスケース、クッションなど多種多様で商品のタグには各社のロゴをあしらう。

 (中略)

価格はバッグが1万8500円、クッションが1万800円。売れ行きは予想以上に好調で、1番人気の阪急バスのグッズはすぐに売り切れ、1カ月待ちの状態だった。

電車内を再現したホテルルーム


もう1つご紹介したいのが、京都タワーホテルが京阪電車とのコラボで実現したホテルの特別ルームです。

室内に設置された運転席 (出典: PR TIMES)

室内で 「跳ね上げつり手」 と 「ラッシュ用扉」 を再現 (出典: PR TIMES)

ホテル室内で使われた備品は、京阪5000系の車両のものです。

京阪5000系車両 (出典: PR TIMES)

京都タワーホテルの客室の名前は 「京阪電車トレインルーム5555号」 です。2022年の2月から提供が開始され、宿泊料金は1万250円からとのことです。


マーケティング観点からの本質


では、ここまで見てきた2つの事例について、マーケティング視点からの共通点を掘り下げてみましょう。

共通するのは、ニッチなターゲット顧客に深く刺さる商品やサービスであることです。

新幹線のモケットを使ったグッズ、京阪電車内を再現したホテルルームは、鉄道好きにはたまらない商品・サービスです。しかしそうではない多くの人には 「これの何がいいの」 と思ってしまうものです。はっきりと好きかどうかが分かれます。

万人の皆から 「欲しい」 「使ってみたい」 と思われることを最初から狙わず、ターゲットとするお客さんを絞り、その人たちが求めることだけに応えています。

ターゲット顧客を絞ることができれば、自分たちがやること、そしてどんな価値をお客さんに提供するのかが明確になるのです。


独自資産からの価値提供


商品・サービス開発の観点にも、ご紹介した事例からは学びがあります。

お客への提供価値の源泉になっているものは何かです。

鉄道座席からのグッズは、モケットという原材料があり、高い縫製技術を持っているから実現しました。これらを保有しない他社はマネをしたくてもできないわけで、独自資産が他にはない提供価値につながっています。

もう1つの京阪電車を再現したホテルルームも、運転席、つり手、ラッシュ時のみ開閉する扉は貴重なサービス資源です。また、京都タワーホテルというコラボ相手がいたからこそ、サービスができあがりました。

大事なのは、お客への価値は何か、さらに一歩踏み込んで提供価値の源泉を把握し、今後もマネされにくいことかの見極めです。

以上のように独自資産を活用した商品・サービス化と、お客への価値提供という視点で学びが得られます。


まとめ


今回は、おもしろいと思った鉄道の素材や備品を使った商品やサービスを取り上げ、マーケティングや商品開発に学べることを見てきました。

最後に学びのまとめです。

ターゲット顧客の絞りと提供価値の明確化
  • ターゲット顧客を絞ることができれば、自分たちがやること、そしてどんな価値をお客さんに提供するのかが明確になる
  • 万人から 「欲しい」 「使ってみたい」 と思われることを最初から狙わないアプローチで、ニッチなターゲット顧客に深く刺さる商品やサービスにできないかを考えてみよう

独自資産からの価値提供
  • 提供価値が自分たちしか持っていない資産からであれば、差異化できる (保有しない他社はマネをしたくてもできない)
  • お客への価値は何かと、さらに一歩踏み込んで提供価値の源泉を把握し、今後もマネされにくいことかを見極めよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。