#マーケティング #テストマーケティング #サンプリング
試供品を配ったはいいものの、手に取った相手は試供品から商品を買ってくれているでしょうか?
試供品の配布には 「誰に届いたかわからない」 「一度きりの顧客接点で終わる」 「費用対効果が見えない」 という問題があります。
今回ご紹介するサンプリング自販機 「AIICO (アイコ) 」 は、こうした問題を解決することが期待できる、試供品配布を 「点」 から 「線」 へと進化させる存在です。ぜひ一緒に得られるマーケティングへの学びを見ていきましょう。
サンプリング自販機 「AIICO」
サンプリングができる 「AIICO (アイコ) 」 は、デジタルサイネージに IoT 機能を掛け合わせた自動販売機です。
無料サンプルの配布はもちろん、購入やデータ取得まで一気通貫で行えるのが特徴となっています。
AIICO は大型ディスプレイを備え、デジタルサイネージ広告の配信と商品のサンプリング (無償提供) を同時に行えます。消費者は、AIICO の画面に表示される二次元コードをスマートフォンで読み取り、LINE の友だち登録や簡単なアンケートに答えると、サンプル品を受け取ることができます。
一般的な試供品の商品サンプリングは、解決すべき問題があります。具体的には、人件費の高騰、配布できる範囲が限定的 (その場にいる人だけ) 、誰に・どれだけ配布でき試供品が購入につながったかの効果測定が困難というものです。
こうした問題に対し、調味料大手のキッコーマン食品は、新商品 「デルモンテ ピュレフルーツ」 の販促施策で AIICO を試験導入しました。キッコーマンは新たに若年層へのアプローチと、新商品のトライアル獲得を狙っての取り組みでした。
サンプル配布によるテストマーケティング
では、AIICO の事例から学べることを掘り下げていきましょう。
AIICO を活用した試供品の配布 (サンプリング) は、テストマーケティングの役割を果たします。
誰に届いたかがわかる
AIICO のメリットのひとつは、サンプルを受け取った人の属性情報を取得できることです。
サンプル提供前に LINE 登録やアンケートを挟むことにより、AIICO を使う企業 (サンプル配布をする売り手) は、サンプルを受け取った人の年齢・性別・居住地などの基本情報、ライフスタイルや興味関心 (例: 料理の頻度) 、ブランドや商品に対する認知度・購買経験などを取得できます。
従来のサンプリングでは、どんな人が興味を持ってくれたのかを知ることは簡単ではありませんでした。一方の AIICO なら、キッコーマンの事例では 「サンプル取得者の7割以上が30代以下で特に女性が多かった」 や 「受け取った人の8割がブランド新規顧客」 だったといった具体的なデータを得られます (参考情報) 。
AIICO を活用する企業は、自社商品が想定していた注力顧客層に受け取ってもらえているか、あるいは想定外の層から関心を持たれているのかをデータで把握できます。
配って終わりにしない継続的な顧客接点の構築
これまでのサンプリングは、試供品を渡した時点で企業と消費者の顧客接点が途切れてしまう施策でした。
しかし、AIICO では LINE の友だち登録などを通じて、サンプル配布後も企業側からアプローチできるので顧客関係を築くことができます。
顧客接点が続くので、例えば、サンプル利用のお礼メッセージ、商品の使い方や効果的な利用方法の紹介、関連情報や新商品・キャンペーンの告知、他の商品のクーポンの配布などの施策を行えます。
サンプルの試供品をきっかけに関心を持ってくれた人とのつながりを維持し、継続的にコミュニケーションを取ることによって、本品のトライアル購入、リピート購入への道筋が見えてきます。サンプル商品を配って終わりにせず、関係性を育むことができるわけです。
検証から次に活かす効果測定とデータ活用
試供品の配布の目的は、商品の購買につなげることです。サンプル自販機の AIICO は、サンプリングの効果測定とデータ活用においても力を発揮します。
サンプル配布後に LINE などから EC サイトで使えるクーポンを配布し、クーポン利用率を測定することにより、試供品配布がどれだけ購入に貢献したかをデータで把握できます。キッコーマンの事例でも、「EC サイトで使えるクーポンを利用して購入に至ったのは20代が最多」 といったデータが得られました。
こうした定量的なデータは、サンプリング施策の ROI (投資対効果) を明確にする上で役立ちます。さらに、「〇ヶ月で〇人に配布し、そのうち〇% が購入。特に〇代に人気」 といった具体的なデータは、社内での効果検証はもちろん、小売店への導入交渉など、営業活動においても役に立つ情報となるでしょう。
得られたデータを分析し、商品改善や次のプロモーション施策、注力顧客の見直しなどに活かすことによって、マーケティング活動全体の精度を高めていくことができます。
サンプル配布のこれから - 「点」 から 「線」 への進化
AIICO のようなデータ活用型サンプリング手法の登場は、試供品配布からのマーケティングを変えようとしています。
「点」 ではなく 「線」 で捉えるマーケティングへ
サンプリングは多くの場合、単発の施策、つまり 「点」 として捉えられてきました。
たとえば、路上や店頭で数多く配布するものの、誰にどんな反応があったのか見えにくかったり、次の購買行動を追うことが難しいというのが実情でした。
ここに AIICO のように LINE やアプリ連携を活用すると、試供品を渡すサンプリング後も継続的な顧客関係が続きます。
- 顧客の発見・理解 (顧客属性の把握)
- 関係構築 (顧客接点確保・コミュニケーション)
- 購買促進・効果測定 (データ活用)
一連のプロセスを可視化・数値化しながら回せます。
これによって、新規顧客層との出会い、継続フォローによる興味喚起や購買誘導、効果測定データからの次回施策立案までを 「線」 でつなぐマーケティング施策が実現します。
キッコーマンが 「これまで届きづらかった層とどう出会うか」 や 「どのくらい購入に至ったのか」 を具体的に把握できたように、これからのテストマーケティングのひとつの選択肢になるでしょう。
損して得とれの進化 - サンプリング 1.0 から 2.0 へ
サンプリングは 「損して得とれ」 の考え方で行われてきたと言えます。つまり、試供品を無料で広く配布するというコスト (損) をかけてでも、受け取った人の何人かが本品の購入 (得) につながるための施策でした。
これを仮に 「サンプリング 1.0」 と呼ぶなら、AIICO のようなデジタルサイネージと IoT を併せ持つ自販機での試供品の配布は 「サンプリング 2.0」 への進化です。
サンプリング 1.0 では、「得」 の部分である購買への貢献度が曖昧でした。コストの数字はわかるものの、コストという 「損」 に対して、どれだけの 「得」 があったのかが見えにくかったわけです。
一方、サンプリング 2.0 では、データによって誰に届き、試供品が本当に購入をもたらしたのかを可視化できます。損に対する得が数字で把握でき ROI が明確になるので、「損」 を最小限に抑えつつ、「得」 を最大化するための最適化が行えます。
新規顧客・既存顧客の区別を明確にしてコミュニケーションを変えていくなど、きめ細かなマーケティングが可能になります。効率化にとどまらず、注力顧客を理解でき、顧客文脈に沿っての一人ひとりに合ったコミュニケーションから長期的な関係性を築くことが期待できます。
サンプリングで試供品は配ったら終わりという従来の問題を解決し、お客さんとの接点を一つひとつ 「線」 に結びつける。この仕組みがうまく回れば、今までリーチできなかった顧客層へもアプローチできる上に、効果測定をしながらマーケティングの PDCA を回していくことができるのです。
まとめ
今回は、デジタルサイネージと IoT 機能を備えるサンプリング自販機 「AIICO」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- デジタルサイネージと IoT 機能を備えたサンプリング自販機 「AIICO」 は、無料サンプル配布から購入・データ取得までを一気通貫で行える
- 一般的な配って終わりのサンプリングと異なり、試供品配布時に LINE 友だち登録やアンケートから顧客の属性情報を取得できるため、誰に届いているのかを把握できる
- サンプル配布後も顧客との関係性を構築でき、お礼メッセージや関連情報の提供、クーポン配布など継続的なコミュニケーションが可能
- クーポン利用率の測定などで試供品配布が購入にどれだけ貢献したかを数値化し、ROI を明確にすることができる
- 点ではなく線となり、「サンプリング1.0」 から 「サンプリング2.0」 への進化。顧客一人ひとりの文脈に沿ったコミュニケーションが実現し、長期的な顧客関係構築につなげられる
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