投稿日 2019/05/16

「マーケティングプロフェッショナルの視点」 に学ぶ、マーケティングとブランディングの違い




書評記事です。ご紹介したい本は マーケティングプロフェッショナルの視点 (音部大輔) です。





  • 何が書かれている本?
  • マーケティングとブランディングの違いとは?
  • ブランドをどのように設計すればいい?

こんな疑問に答える内容でブログを書きました。


この記事でわかること


この記事でわかるのは、この本にどんなことが書かれているか、マーケティングとブランディングの共通点と違い、そして、ブランド設計の考え方です。

ぜひ、最後まで読んでみてください。


本書の内容


この本は、マーケティングの考え方や方法について、著者の音部大輔氏の視点で書かれています。特に、自分の考え方との違いが興味深く読めた本でした。

以下は、本書の内容紹介からの引用です。

P&G 、ユニリーバ、ダノン、資生堂……

先進企業でマーケティング部門を育成・指揮してきた著者がビジネスを成功に導くプロマーケターの “共通言語” をやさしく解説。

技術による差異化が難しい今、企業が持続的に成長するには、顧客視点に立ったマーケティング戦略を立案・実行できる人材が必要です。その第一歩が、マーケティングのプロフェッショナル = プロマーケターだけが知る “共通言語” を学ぶこと。

マーケティングとは何か、ブランドとは何か、競合とは何か、戦略を構成する目的と資源とは何か──。


マーケティングとブランディング (共通点と違い)


この本で興味深く読めたのは、マーケティングとブランディングの共通点と違いでした。

マーケティングとブランディングの共通点は、 「消費者の認識に作用し、購入などの消費者行動に必然性を提供する企業活動」 です。

では、マーケティングとブランディングの違いは何でしょうか?

以下が、それぞれの意味合いや目指すものの比較です。


マーケティング
  • マーケティングとは市場を創造する活動
  • カテゴリーの順位を再定義する。新しい 「よい ○○ 」 を創り出す (○○ にはカテゴリー名が入る)
  • マーケティング活動の結果としてニーズをつくる

ブランディング
  • ブランドとは意味である。ブランディングとは意味をつくり確立する活動
  • ブランド = 商品 + 意味
  • ブランディング活動の結果としてベネフィットをつくる


マーケティングの 「よい ○○ 」 の補足


マーケティングの補足です。

カテゴリー順位の再定義をすると位置づけ、おもしろい捉え方だと私が思ったのは 「よい ○○ 」 を創り出すというものです。

例えば、「よいスマートフォン」 や 「よい洗剤」 などです。

これまでとは違った切り口での商品や訴求をすることによって、新しい使い方を提案します。そのカテゴリーでの視点を増やし、カテゴリー内の既存の 「秩序」 を新しくします。

秩序とは、カテゴリー内のニーズごとの順位です。例えば洗濯洗剤であれば、汚れが落ちる度合い、香り、除菌、部屋干し可能、花粉等のアレルギー物質が付着しない、などです。

新しい切り口を提案し、何をもっての 「よい洗剤」 かの消費者の認識を変えます。マーケティング活動から、新しい秩序での上位を目指し消費者の購入確率を高めるのです。


ブランディングで思ったこと


本書での 「ブランドは意味である」 という捉え方は、私自身のブランドの定義と異なり、新しい気づきになりました。

私のブランドの定義は、ブランドとは消費者の好ましい感情が伴った商品やサービスです。

好ましい感情とは、好き・共感・満足感・誇り・憧れなどです。こうしたポジティブな感情があるほど、ブランドとして強い商品やサービスです。

ブランディングの定義は、ブランディングとは消費者が商品・サービスに好ましい感情移入を起こす働きかけです。

ブランドを式で表現すれば 「ブランド = 商品 + 感情」 となります。


ブランド定義書


ブランドのあるべき姿の指針となる 「ブランド定義書」 の考え方も興味深く読みました。

本書で解説されるブランド定義書は、以下の8つで構成されます。


ブランド定義書
  • 大義
  • 市場 / 競合
  • ターゲット消費者
  • ベネフィット
  • エクイティ
  • パーソナリティ
  • アイコン
  • 機能 / 性能


それぞれについて、簡単にご説明します。


1. 大義
  • ブランドが何のために存在しているかを示す
  • 実現したい世界観のビジョン、ブランドが担う使命であるミッション、尊重すべき行動様式や価値観のバリュー
  • ブランド固有の役割 (Role) があれば、自社の他ブランドと連携しやすくなる


2. 市場 / 競合
  • 2つの視点で市場を設定する。製品カテゴリー市場とベネフィット市場
  • ベネフィット市場とは一般的なカテゴリーではなく、消費者が何かをしたいと思った時に、頭の中で選択肢となる範囲
  • 例えば、万年筆を 「贈答市場」 とすれば競合は高級時計


3. ターゲット消費者
  • 消費者群を二段階で設定する。ブランドターゲットとプロモーションターゲット
  • ブランドターゲットは中長期で関係を築いていきたい顧客
  • プロモーションターゲットは、特定の施策や新商品導入時に限定的に訴求するグループ。ブランドターゲットの一部


4. ベネフィット
  • 消費者が購入するもの
  • 主語は消費者。ブランドが主語になる機能や性能と区別する


5. エクイティ
  • ブランドが独占したい 「意味」
  • ベネフィットや機能と関連した内容になる
  • ブランドの意味なので、主語はブランド


6. パーソナリティ
  • ブランドの擬人化
  • スポークスパーソンを設定するという方法で考えられたブランドの人格


7. アイコン
  • 記号や色、デザイン、ロゴなどの知覚できる特徴
  • ブランドを長らく使ってきて、失うべきではないと判断されるもの


8. 機能 / 性能
  • 物理的な特徴。ベネフィットを提供し、エクイティ (ブランドの意味) を体現する性能
  • 主語はブランド。対してベネフィットは主語は消費者


以上のブランド定義書で重要だと思ったは、全ての要素での具体性と一貫性です。

8つの要素それぞれが具体的に言葉や図・イラスト等の視覚情報に落とし込まれており、矛盾がなく整合性が取れていることです。


まとめ


今回は、マーケティングプロフェッショナルの視点 という本から、マーケティングとブランディングについて書きました。

最後に今回の記事のまとめです。



この本は、マーケティングの考え方や方法について、著者の音部大輔氏の視点で書かれている。特に、自分の考え方との違いが興味深く読めた本


マーケティングとブランディングの共通点は 「消費者の認識に作用し、購入などの消費者行動に必然性を提供する企業活動」



マーケティングとブランディングの違いは、
  • マーケティング:市場を創造する活動。マーケティング活動の結果としてニーズをつくる
  • ブランディング:意味をつくり確立する活動。ブランディング活動の結果としてベネフィットをつくる


ブランド定義書には8つの要素がある。全ての要素で具体性と一貫性があることが大事
1. 大義
2. 市場 / 競合
3. ターゲット消費者
4. ベネフィット
5. エクイティ (ブランドの意味)
6. パーソナリティ
7. アイコン
8. 機能 / 性能





マーケティングプロフェッショナルの視点 (音部大輔)

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。