#マーケティング #広告コピー
広告コピーを見て、思わず 「そういえば、そうかも」 と感じたことはないでしょうか?それとも、「なるほど、そう解決できるのか」 と目から鱗が落ちる体験をしたことありますか?
実は、こういった感覚こそが優れた広告コピーの真髄なのです。
日々、無数の広告に囲まれる現代社会。その中で、なぜ一部の広告だけが私たちの心に残るのかーー。
今回は、そんな 「効く」 広告コピーの奥深さに迫り、具体的な事例とともに、その秘密を解説します。
よい広告コピーの共通点
よい広告コピーの共通点には、次の2つが見られます。
- 常識と芸術の間にある 「気づき」 を与える
- 「描写」 だけではなく 「解決」 まで提案する
それぞれについて、補足しますね。
常識と芸術の間にある気づきを与える
優れた広告コピーは、"常識" と "芸術" の間にあるという考え方です。
ここで言う常識とは、それを言われたり見せられたときに 「そりゃそうだよね」 となる浅いことです。一方の芸術は、見せられても 「さっぱりわからない」 という意味合いが深すぎるものです。
良い広告コピーは常識と芸術の間にあり、人は見聞きすることで 「そういえばそうかも」 という気づきをもたらします。
- そりゃそうだよね → 常識
- そういえばそうかも → コピー
- さっぱりわからない → 芸術
常識と芸術の間にある広告コピーは、「そういえばそうだね」 とコピーの言わんとすることがわかります。ただしそれば普段は意識の下に眠っていたものです。これはマーケティングの顧客インサイトの概念に通じます。
伝えたいことを広告コピーにして 「当たり前 (常識) 」 と 「意味がわからない (芸術) 」 のちょうど中間のスイートスポットを狙うわけですが、その落としどころは時代の価値観によって変わります。
昔のかつての 「そういえばそうかも」 は今となっては常識になっていたり、昔は 「さっぱりわからない」 が、時代が追いつき今なら 「そういえばそうかも」 となることもあるでしょう。
「描写」 だけではなく 「解決」 まで提案する
広告コピーでは、描写をしているだけでは不十分で、何かの解決につながることまで踏み込んで書くことか大事です。解決まで踏み込むことでコピーは人を動かします。
コピーライターは、ペンを片手に原稿用紙に向かう仕事をする人です。意識として重要なのは、「このペンの力で、すばらしい言葉を書こう」 と考えるのではなく、「自分のペンの力で、いまある状況をなんとか変えてみせよう」 という言葉での解決への意欲と挑戦です。
広告コピーを書く際には、「描写」 だけではなく 「解決」 まで目指すわけです。
では、ここまで見てきた良い広告コピーの2つの特徴を使って、広告コピーを考えてみます。
[Case 1] スマートホームシステムのコピー
たとえばの広告コピーをつくる例として、スマートホームのシステムサービスで考えてみましょう。
架空のサービス名ですが、スマートホームシステムの 「タイムセーバー」 のコピーを次のようにつくってみました。
あなたの時間、取り戻します。
では、この広告コピーを 「常識と芸術の間を狙う」 から見ていきましょう。
常識と芸術の間
優れた広告コピーは 「常識」 と 「芸術」 の間を狙うものでした。常識とは、言われたり見せられたときに 「そりゃそうだよね」 となる浅いこと、一方の芸術は見せられても 「さっぱりわからない」 という意味合いが深すぎるものです。
広告コピーは見ることで、「そういえばそうかも」 というハッとする気づきをもたらします。
「常識」 の部分は、多くの人々は日々の生活の中で、時間が足りないと感じています。家事や仕事に追われ、自分のための時間がないと感じる人は少なくありません。時間を節約したいという望みは、現代社会では当たり前の感覚といえるでしょう。
次に 「芸術」 の部分ですが、コピーの後半部分の 「時間を取り戻す」 という表現はやや抽象的です。時間は一度過ぎ去ると戻ってこないものですが、もし 「時間を取り戻す」 だけしかないと、物理的には不可能なことを言っているので、何のことかわからない表現です。
しかし、スマートホームという文脈があることで、"芸術" ではなくなります。スマートホームシステムサービスのコピーである 「あなたの時間、取り戻します。」 は、日常的な悩み (時間に追われている) に対して、「時間を取り戻す」 という力強い宣言により、受け手に新たな気づきをもたらします。
このスマートホームシステムを使えば、日々の細々した作業や面倒なことから解放され、本当に大切なことに時間を使えるようになる。つまり、失われていた時間を 「取り戻す」 ことができるという期待です。
「描写」 だけではなく 「解決」 まで
広告コピーでは、描写をしているだけでは不十分で、何かの解決につながるところまで踏み込むことで、コピーは人を動かします。
スマートホームシステムのコピーとした 「あなたの時間、取り戻します。」 は、描写だけにとどまらず、解決策も言っています。
まず描写の部分ですが、「あなたの時間」 で受け手の現状を簡潔に表現しています。忙しい現代人の日常を思い起こさせ、受け手には自分のことも 「時間がない」 という問題意識を喚起します。
これを受けて解決策の提示です。
コピーの後半の 「取り戻します。」 という宣言は、時間に追われ余裕がない状態に対する約束を示します。スマートホームシステムの 「タイムセーバー」 を家に入れることで、失われていた時間を取り戻せるという具体的な解決方法を訴求しているのです。
このような解決にまで踏み込んだコピーは、読み手の態度変容と行動変容をも促すでしょう。ただ 「時間がない」 という状況を言って描写するだけでなく、その問題を解決する手段まで含めることで、お客さんからの興味を呼び起こし、購買行動につながる可能性を高めます。
[Case 2] 睡眠マットレス
2つ目に考えてみた広告コピーです。こちらも架空のケースですが、「ドリームウェーブ」 という睡眠マットレスがあるとします。
眠りが変われば、人生が変わる。
こちらが広告コピーです。
常識と芸術の間からの気づきを生む
このコピーは 「常識」 と 「芸術」 のバランスを取っています。
常識とは、多くの人々は、良質な睡眠の重要性を知っていることです。睡眠が健康や生活の質に影響を与えることは、一般的な常識と言えるでしょう。
コピーの後半の 「人生が変わる」 という表現は、ともするとやや大げさで抽象的な言葉です。睡眠用のマットレスが健康的になれることまではわかっても、人生を変えるというのは一見すると誇張に見えるかもしれません。
しかしこのコピーは、日常的な行為である 「睡眠」 と、大きな概念とする 「人生の変化」 を結びつけることで、新たな気づきを与えようとするものです。
良質な睡眠が日々の生活を良くし、1日1日の積み重ねである長期的な人生にも影響するという、多くの人たちが潜在的に感じていながらもしっかりとは意識していなかった価値観を浮き彫りにします。
少なくない人が 「睡眠不足を解消したい」 「もっと良い睡眠にしたい」 と思いながらも、それが人生全体にどれほどの影響を与えるかまでは深く考えていなかったかもしれません。
だからこそ、「眠りが変われば、人生が変わる。」 という言葉を目にすることで、「そういえばそうかも」 という気づきが生まれ、ドリームウェーブという製品への興味を喚起します。
「描写」 だけではなく 「解決」 まで提案する
睡眠マットレスの 「眠りが変われば、人生が変わる。」 というコピーは、描写を超えて、解決策と結果まで示しています。
描写の部分ですが、「眠り」 という言葉は、読み手の行為をシンプルに言っています。
次に解決の部分に目を向けると、コピーの 「眠りが変われば、人生が変わる。」 は、後半の 「人生が変わる」 において解決と成果を同時に提示しています。睡眠マットレスの 「ドリームウェーブ」 で寝ることで睡眠の質が向上し (解決) 、人生全体にポジティブな影響を与えること (結果) を示唆しています。
解決まで行き着くコピーは、受け手の行動も促します。
単に 「良い睡眠が大切」 と述べるだけでなく、睡眠の質の改善がより良い人生にまでつながるという具体的な価値提案をすることで、製品への関心と購買意欲を高めることを狙っています。
まとめ
今回は広告コピーについてでした。
人の気持ちを変えたり、商品とお客さんの新たな関係を生み出す広告コピーには、「常識と芸術の間にある気づき」 と、「 "描写" だけではなく "解決" までの提案」 を書くことがカギを握ります。
最後にポイントとして、良い広告コピーにある2つの共通点をまとめておきます。
- 常識とは当たり前のことを指し、芸術は意味が深すぎたり抽象的すぎて理解されにくいもの。広告コピーはその中間を狙う
- 良いコピーは受け手に 「そういえばそうかも」 という気づきを与える
✓ 「描写」 だけではなく 「解決」 まで提案する
- 描写だけでなく解決策まで踏み込むことで、受け手の態度変容や行動変容を促す
- コピーは、言葉で状況を変えようとする意欲と挑戦を持って書く
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