#マーケティング #DX #組織変革
DX (デジタルトランスフォーメーション) 。すでに耳にタコができるほど聞いた言葉かもしれません。
しかし、実際に企業や組織で DX を推進しようとすると、思わぬ壁にぶつかることがあります。部門間の対立、既存のルールへの執着、そして業界全体の慣習...。これらの障壁を乗り越え、真の変革を実現するにはどうすればよいのでしょうか?
今回は、DX を実現するために、「八段階の変革プロセス」 に当てはめて、DX の全体プロセスを解き明かします。あなたの組織が直面している課題に、きっとヒントになるはずです。
ぜひ一緒に、組織を変える第一歩を踏み出しませんか?
DX
デジタルトランスフォーメーション (DX) は、企業が直面するビジネス課題をテクノロジーの力で進め、業務プロセスにとどまらずビジネスモデルを進化させます。
DX とは、企業が 「これまでやり残してきた課題」 をテクノロジーで対処するための取り組みです。
DX と聞くと最新の技術を取り入れることが必須というイメージがあるかもしれませんが、必ずしも最先端の技術やツールを導入する必要はありません。
DX が目指すのは、これまで解決できなかった問題、やり残した課題を克服することです。
DX 実現の2つの壁
DX を実現するには、企業はさまざまな壁に直面します。「社内の壁」 と 「社外 (業界) の壁」 が立ちはだかります。
これら2つの壁について詳しく見ていきましょう。
[壁 1] 社内の壁
社内の壁はいずれも組織にかかわるもので、大きく3つあります。
部門間の利害対立
社内の各部門はそれぞれ異なる目標や利害を持っています。
DX 導入は業務プロセスの変革を伴うので、部門間の協力が不可欠です。しかし、それぞれの部門が自分たちのやり方や既存のルールを守りたいという意識が強い場合、協力が得られにくくなります。
たとえば、営業部門が新しい IT ツールを導入したくても、経理部門が従来の方法を変えたくないと思えば、会社全体のプロセスが改善されず、むしろ新旧のツールが併存し複雑な仕組みになることすらあります。
既得権益への執着
DX により従来の業務プロセスが変わり、組織内のパワーバランスが影響を受けることがあります。
特に、長年にわたり特定の業務やプロセスを管理してきた部門や個人は、新しいシステムに対して抵抗することもあるでしょう。なぜなら、自分たちの役割が小さくなることを恐れ、場合によっては DX によって仕事がなくなるのではないか不安を抱えているからです。
組織文化の変革への抵抗
組織全体が DX による変革を受け入れる準備ができていない場合、DX の推進は困難になります。従来の方法や考え方に固執する組織文化が根強く残っていると、新しい技術やプロセスの導入に対して反発が生まれるからです。
従業員が変化に対して前向きな姿勢を持ち、学び続ける文化になることが必要になります。
[壁 2] 社外 (業界) の壁
ここまでは社内の壁でしたが、社外に目を向けると、ここにも DX を実現する壁がそびえ立ちます。
業界固有のルールや慣習
各業界には、それぞれ固有のルールだったり慣習があります。長年にわたり形成されてきたものであり、業界全体が共有する暗黙の了解や常識は、ときとして社内の変革を阻みます。
たとえば、その業界では特定の書式や手続きを守ることが重要視されているとすると、一社だけが新しいデジタル技術を導入することで、その手順が変わることに対して抵抗が起こり、出る杭は打たれてしまいます。
規制や法律の制約
特に規制が厳しい業界では、DX が法律や規制に反しないように注意を払う必要があります。
新しい技術やプロセスが既存の法令と合わないと、導入が遅れる要因になります。金融業界ではデータの管理や顧客情報の扱いに関する厳しい世界なので、これを無視した DX 導入は非現実的です。
顧客や取引先の反発
お客さんや取引先が従来の方法に慣れ親しんでいる場合、新しいプロセスや技術に対して反発が生まれることがあります。
長期的な取引関係を重きを置く業界では、取引先の理解と協力を得ることが重要です。お客さんや取引先が新しい方法を受け入れるように働きかける必要があるわけです。
DX の 「八段階の変革プロセス」
では DX を成功させるためには、どうすればいいのでしょうか?
ここでは、ジョン・P・コッターの 「八段階の変革プロセス」 に沿って、DX を進める方法を解説します。
✓ 八段階の変革プロセス
- 危機意識を高める
- 推進チームをつくる
- ビジョンと戦略を立てる
- ビジョンを周知する
- メンバーが行動しやすい環境を整える
- 短期的な成果を生む
- さらなる変革を進める
- 新しい方法を文化として根づかせる
危機意識を高める
最初のステップは、組織内で DX の必要性を認識させることです。
DX は過去の IT 導入で生じた "負の遺産" を解消するための手段です。現状の問題点や課題を明確にし、これらが放置されればどのようなリスクがあるのかを経営陣と従業員に伝えます。
このままでは負の遺産が残り続け、放置していては何も解決されない、臭いものに蓋をしたままでは状況が悪くなることはあっても決して良くなることはないことを示し、社内での危機意識への認識をそろえます。
推進チームをつくる
次に、DX を推進するためのチームを結成します。
DX のコアとなるチームは、組織の各部門から選ばれたメンバーで構成されることで、強いリーダーシップを発揮することが期待できます。
そのためにはメンバーには、新しい技術に精通した人だけでなく、現場の業務に詳しい人も含め、幅広い立場のメンバーを集めるといいでしょう。また、経営陣からの支援と信頼を得ることも重要です。
ビジョンと戦略を立てる
推進チームがまずやるべきなのは、DX を実現したときの未来の絵としてビジョンと戦略の策定です。
ビジョンとは、組織や会社が DX を通じて何を変え、どのような成果を目指すのかを行き先を明確に示すものです。具体的には、業務プロセスの改善や効率化、顧客満足度の向上、新たなビジネスモデルの創出などが考えられます。
ビジョンにもとづく戦略は、達成可能な短期、中期、長期の目標を設定し、それに向けた大きな方向性、具体的なアクションプランを立てます。
ビジョンを周知する
ビジョンと戦略ができたら、全社に周知します。
経営陣から現場の従業員まで、全員がビジョンを共有し理解し、頭だけではなく心でも腹落ちしている状態が望ましいです。社内のミーティングやプレゼン、イントラネットや社内報などを活用して、ビジョンへの解像度を高めために内容を繰り返し伝えます。
メンバーが行動しやすい環境を整える
DX を推進するためには、コアメンバーや従業員が新しい取り組みを実践しやすい環境を整えることがポイントです。
必要なリソースやツールの提供、研修やトレーニングの実施などです。現場の意見を取り入れながら、業務プロセスを柔軟に改善していくことも大事です。
従業員が自発的に DX に取り組めるよう、支援体制を整えましょう。
短期的な成果を生む
変革を進める過程で、短期的な成果 (クイックウィン) を生むことが大切です。小さな成功を積み重ねることで、目指すビジョンに少しでも自分たちが近づいている実感が得られ、モチベーションを高めます。
たとえば、特定の業務プロセスの効率化やコスト削減、顧客対応の改善など、具体的な成果を早期に示すことがいいでしょう。DX が組織全体にもたらすメリットを実感でき、取り組みへの意欲を喚起します。
さらなる変革を進める
短期的な成果を得たら、次はさらなる変革を進めます。
先ほど見たように、DX の導入には 「社内の壁」 と 「社外の壁」 が存在します。これらの壁を乗り越えるためには、継続的な取り組み、意思疎通や認識合わせ、成功や失敗事例の共有、経営層からのコミットメントと支援・サポートなどが必要です。
部門間の協力や業界全体でのルール変更など、大規模な変革を実現するためには、経営陣の強力なリーダーシップが必要になります。
新しい方法を文化として根づかせる
新しい方法を組織文化として根づかせるところまでが重要です。
DX が一過性の取り組みではなく、組織の DNA のように定着するように、継続的な取り組みを続けます。
成功と失敗の事例を共有し合い、組織全体での学びを促進するといいでしょう。定期的な振り返りによって DX の進捗と成果を確認し、必要に応じて戦略を見直すことで、持続的な変革を目指します。
以上の組織変革の8つのステップを踏むことで、DX の導入と実現性を高め、業務プロセスの最適化と、ビジネスモデルの進化、そして競争力の向上を図ることができます。
まとめ
今回は DX について、組織変革をテーマに考察しました。
最後にポイントをまとめておきます。
- DX の実現を 「八段階の変革プロセス」 に当てはめると、① 最初は組織内に DX の必要性を訴え危機意識を高める。次に、② 各部門から選ばれたメンバーで推進チームを結成し、リーダーシップを発揮できる体制を整える
- その後、③ DX によって目指す成果を明確にしたビジョンと戦略を策定する。④ これらを全社に周知し、経営陣から現場まで全員がビジョンを共有する
- DX を進めるプロセスの中盤では、⑤ メンバーが行動しやすい環境を整える。必要なリソースやツールの提供、研修の実施、現場の意見を取り入れた業務プロセスの改善などを行う
- ⑥ 短期的な成果 (クイックウィン) を生むことで、組織内の信頼とモチベーションを高める。たとえば、特定の業務プロセスの効率化やコスト削減など、具体的な成果を早期に示す
- そしてプロセスの後半では、⑦ さらなる変革を進める。継続的な DX への取り組みや経営陣の後押しも必要となる
- 最後に、⑧ 新しい方法を組織文化として根づかせる。DX が実現できた状態を組織に定着させるため、継続的な教育や成功・失敗事例の共有を行う。定期的な評価とフィードバックを通じて、持続的な変革を目指す
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