#マーケティング #逆おさがり #逆の視点
どうすれば斬新なアイデアを生み出せるのでしょうか?
従来の常識を逆転させる発想が、アイデアへのカギになるかもしれません。今回は 「逆の視点」 を活用して、マーケティングやビジネスにブレイクスルーをもたらすヒントを考えます。
ファッションの消齢化と 「逆おさがり」
「消齢化」 という消費者トレンドが注目されています。
消齢化とは、年齢による価値観の差が小さくなる現象を指します。価値観とは、たとえばファッションへの好みです。
家族間での服装でも、消齢化が起きています。たとえば、親が子どものおさがりを着る 「逆おさがり」 です。子ども、場合によっては異性の子どもの服を大人である親がおさがりとして着る現象です (参考記事) 。
逆おさがり
一般的なおさがりは、年長者が使用していた物を年下の者に譲ることです。例えば、兄の小さくなった服を弟が着るという形です。あるいは親が昔着ていた服を子どもが着るということもあるでしょう。
一方の 「逆おさがり」 は子どもの着なくなった服を親が着ているというものです。
親子で同じ服を普通に着るのは、年齢やさらには性別における価値観の差がなくなってきているからだと考えられます。逆おさがりは部屋着だけに限らず、外出着でも見られるようです。
逆おさがりは、従来の枠組みに縛られず、自由に表現されるようになった時代の特徴を反映した現象です。逆おさがりは社会全体での多様性やジェンダーレス化が進行していることの一例です。
今後はファッション全体に広がっていくかもしれません。さらには、ファッションだけでなく、他の消費領域においても同じような傾向が見られる可能性もあります。
従来のプロセスの逆転
「逆おさがり」 は新しい価値観や行動様式が生まれたことで、一般的な 「おさがり」 とは逆方向となる流れをつくっています。
これを一般化して解釈すると、従来のプロセスとは 「逆向きにとらえたもの」 となります。この 「従来のプロセスを逆にしてみる」 という解釈は、ファッションだけでなく、他の分野にも応用できる汎用的な考え方です。
ビジネスにおける 「逆の視点」 の活用
ビジネスやマーケティング、キャリアにおいても、従来のやり方や考え方にとらわれず、逆の視点から新たなアプローチを試みることで、新しい価値を生み出す可能性が広がります。
ビジネスの現場では、伝統的な方法や慣習に沿って物事を進めることが一般的です。しかし、競争が激しく、顧客ニーズが多様化している現代社会では、既存のやり方に固執することはリスクとなり得ます。
そこで逆の視点、つまり 「反対」 や 「後ろから」 から着想することで、新しい市場や顧客層にアプローチをする機会が生まれます。
マーケティングにおける逆の視点の活用
たとえばマーケティングで 「逆の視点」 を取り入れることで、新しいキャンペーンや顧客体験を生み出せます。いくつか具体例を考えてみましょう。
過去を現代風に蘇らせる
現在のトレンドや未来のニーズを見据えて展開するのではなく、逆の視点として 「過去にさかのぼるマーケティング」 を行うことが考えられます。
具体的には、過去の商品や廃盤になった製品を再び投入し、その当時のコンセプトを現代風にアレンジすることで、新しく生まれ変わらせるやり方です。レトロデザインの商品やノスタルジックな広告キャンペーンを再現し、過去の成功を現在に生かすことで、既存のファンを再び取り込みつつ、さらには新たな顧客層を開拓することが期待できます。
逆カスタマージャーニーの設計
顧客体験は通常、認知から購入、利用、アフターサービスへと進む流れですが、逆の視点として 「逆カスタマージャーニー」 を設計することで新たなマーケティングの視点が得られます。
アフターサービスやカスタマーサポートから出発し、最終的にブランド認知を形成するまでをたどります。例えば、製品をまだ使ったことがない潜在顧客に対して、まず製品利用やサポートサービスの体験をしてもらい、そこで得たポジティブな体験を通じてブランドへの興味を喚起し、最終的に購入に至ってもらうというアプローチです。
ビジネスキャリアへの応用
では次に、ビジネスキャリアにも応用してみましょう。
キャリア形成において 「逆の視点」 を活用する方法として、いくつか見てみましょう。
逆ロールモデルによる視点の転換
一般的にキャリア形成では、より上位の役職や専門性の高い職種の人をロールモデルとして目指すことが通常です。
しかし 「逆の視点」 を活用し、あえて自分より若手や経験の浅い人と役割を交換する 「逆ロールモデル」 を実施するのはどうでしょうか。
若手の視点や新しい発想を直接体験し、自分のスキルや視野を広げることができます。たとえば、マネージャーが一定期間において若手や新入社員の役割を引き受けることで、現場の課題を直感的に理解し、リーダーシップを捉え直すきっかけになるでしょう。
異分野の 「リバースメンターシップ」
キャリアへの視点として、あえて異分野のプロフェッショナルから学ぶのもひとつの方法です。
たとえば、アートやデザインの分野で成功している若手から、クリエイティブな思考法やインスピレーションの引き出し方を学び、それを自身の仕事に取り入れるというアプローチです。
通常は年齢の上の人や、同じ世界での経験が豊富な人がメンターになりますが、逆に全く違う分野の人から教えを受けたり学ぶことで、自分の考え方や価値観、方法をリフレッシュできます。そこから、新しいキャリアパスを開拓できるでしょう。
キャリアの 「逆回転」
逆の視点として、キャリアの終盤をあえて先に体験し、その後でキャリアの時計の針を巻き戻し、今から何をすべきなのかを考える方法もあります。
具体的には、引退後の生活を先に想定してみることで、自分が本当に成し遂げたいことや重視すべき価値観を見出します。長期的な視点での自己実現を促進し、最終的なキャリアゴールに向けたキャリアパスを描きます。
キャリアブレイクからの逆アプローチ
意図的にキャリアの断絶 (休職, 職場からの一時的な離脱) をつくり、その期間中に全く異なる生活を経験することで、新たな視点を得るという方法もあります。
たとえば、短期間のボランティア活動や海外に短期的に滞在し、異なる文化や価値観に触れることで、自分のキャリア観や人生観に新たな視点を加えることができるでしょう。従来のキャリアの延長上にはない、全く異なる新しいキャリアの方向性が見えてくるかもしれません。
逆の視点が生む新しい価値
ここまで見てきたように、あえて逆の視点からアプローチすることで、新しい価値を生み出す可能性が広がります。既存の枠組みを打ち破り、違う視点やアイデアをもたらすでしょう。
逆や反対からの視点は、マーケィングでは未開拓のニーズや隠れたチャンスを明らかにし、今の市場にない価値を提供することにつながります。
このように、従来の枠にとらわれず、逆の視点から物事を考えることで、ビジネスやマーケティング、そしてキャリアにおいても新しい自分になれます。
まとめ
今回はファッションでの 「逆おさがり」 という消齢化の現象に注目し、マーケティングやキャリアへの示唆を考察しました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 「逆おさがり」 は消費者の消齢化を示す新たな兆し。従来のおさがりは年長者から年少者へ譲られるものだったが、逆おさがりは、たとえば子どもが着なくなった服を親が着る。年齢による価値観の差が小さくなったことで起こっている
- マーケティングにおける 「逆の視点」 の活用は、たとえば過去の流行を現代風に蘇らせたり、逆カスタマージャーニーの設計がある。従来の枠組みを超えた新しい市場や顧客層へのアプローチへの着想になる
- ビジネスキャリアにも応用できる。逆ロールモデルによる若手の視点の体験や、キャリアの逆回転など。これらの方法は、自身のスキルや視野を広げ、新たなキャリアパスを開拓することにつながる
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