#マーケティング #メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティ #ジョブ理論
お客さんとの接点が減少し、効果的なマーケティングができていない…。そんな課題感を持っていないでしょうか?
ファミリーマートが新たに導入した、ファミペイのアプリ内のブランドページが、この問題を解決する可能性を秘めています。小売店アプリが決済ツールから、ブランドと消費者をつなぐ架け橋へと進化することが期待できるからです。
では、それは一体どういうことなのか?ぜひ一緒に掘り下げて見ていきましょう。
ファミペイ内にブランドページが登場
ファミリーマートは2024年7月、提供する決済アプリ 「ファミペイ」 上に、メーカーのブランドページを追加しました。
ブランドは、商品やブランドに関する情報を発信するだけでなく、クーポンの配布といったミニアプリのような活用ができます。ブランドにとっては、ファミペイの約2000万人の顧客データを活用できる点が魅力です。
ファミペイのユーザーは、興味のある企業やプランドの最新情報を簡単に見られるようになります。
三者にとっての意味合い
ファミペイにブランドページが追加され、ミニアプリのような機能を持つことは、どんな意味があるのでしょうか?
ファミリーマートにとっての意味
一言で言えば、ファミマにとってはミニアプリの追加が意味するのは、「メディア化・プラットフォーム戦略の進化」 です。
ファミリーマートは小売業者としての商品を売るという役割だけにとどまらず、アプリと自社店舗を 「メディア」 として位置付け、消費者との接点を活用するビジネスモデルを強化するということです。
2000万人の消費者が使うアプリ内にブランドページを新しく設置することで、ファミペイはこれまでの決済機能を超えて、情報発信やマーケティングのプラットフォームとして機能します。顧客ロイヤルティの向上や広告収入などよって新たな収益源を生み出し、自社アプリユーザーとの関係性が強まることを意味します。
事業者側にとっての意味
事業者となるブランドにとっての意味合いは、直接的な消費者接点の獲得とデータ活用の強化です。
ブランドにとって、ファミペイ上にブランドページを持てることは、直接的な顧客接点の獲得を意味します。さらに、ファミペイの顧客データを活用することで、消費者の購買行動をより深く理解できるようになります。
顧客理解によって精度の高いターゲティングやパーソナライズされたマーケティングが可能となります。
消費者にとっての意味
消費者とっては、便利さとパーソナライズされた買い物体験の向上につながります。
ファミペイ上でお気に入りのブランドの情報やクーポンを簡単に入手できることは、利便性とお得感の向上を意味します。
ブランドページを通じて得られる情報やクーポンは、ひとりひとりの消費者の好みや過去の購買履歴にもとづいてカスタマイズされるので、より自分に合っていると感じられるブランド体験が期待できます。消費者にとっての利用価値が高まれば、ユーザーはファミペイをより頻繁に利用することにつながります。
「思い出されやすさ」 と 「買われやすさ」
ファミリーマートのファミペイにブランドページが追加され、ミニアプリが実装されることで、企業のマーケティングにはどのような影響があるのでしょうか?
マーケティングの概念である 「メンタルアベイラビリティ」 と 「フィジカルアベイラビリティ」 の2つの視点から見ていきましょう。
メンタルアベイラビリティ
メンタルアベイラビリティとは、お客さんが特定の状況やニーズにおいて、あるブランドをすぐに思い浮かべやすい状態を指します。ブランドが思い出されやすいほど、そのブランドは顧客文脈で選ばれる確率が高まります。
ファミペイのブランドページは、消費者の日常生活の一部としてアプリ上で存在感を高めることで、ブランドが消費者の意識に触れる機会を増やします。消費者が商品やサービスを必要とした顧客文脈で、そのブランドが思い浮かべられる機会が生まれます。
具体的には、クーポンやゲーム、アンケートといった接触機会によって、ブランドへの記憶が強化され、思い出されやすさというメンタルアベイラビリティを高める効果が期待できます。
フィジカルアベイラビリティ
フィジカルアベイラビリティとは、お客さんが商品やサービスを物理的に購入でき、買いやすい状況を指します。
具体的には、自分の身近なお店に売られていたり、店内でも商品棚の目立つところに置かれていれば消費者にとって買いやすい状態です。実店舗だけではなく、EC サイトなどのオンラインでも検索してすぐ出てくる、見つけやすい商品名や画像などの買われやすさは、フィジカルアベイラビリティで重要な要素です。
ファミペイ上にブランドページがあることで、お目当てのブランドや商品のクーポンがもらえたり、期間限定のセール情報などが手に入るわけで、ファミマでの購入につながる仕組みがつくれます。これはフィジカルアベイラビリティの向上とみなすことができます。
ジョブ理論からの考察
では最後のパートです。
ファミリーマートのファミペイにブランドページが追加され、ミニアプリが実装されることで、企業のマーケティングがどのように変わるかを 「ジョブ理論」 を使って掘り下げてみましょう。
ジョブ理論とは
ジョブ理論とは、マーケティングにおいて 「お客さんが特定の状況で達成したい進歩や解決したい課題」 というジョブに焦点を当てる考え方です。
ジョブの定義は 「ある特定の状況で人が遂げたい進歩」 です。
ジョブ理論で特徴的なのは、商品やサービスとはジョブを完了するために 「雇う (hire) 」 と表現することです。商品やサービスはジョブのために働く “ワーカー” ととらえるわけです。
たとえば、人がホームセンターでドリルを購入するのは、ドリルそのものが欲しいからというよりも、ドリルを使って自宅の部屋の壁や家具に穴を開けて、DIY を完成させたいからです。ドリルは 「穴を開ける」 というジョブを完了するためにワーカーとして雇われる存在です。
ジョブ理論を実践する上で重要なのは、ジョブそのものだけでなく、そのジョブが生じる背景となる 「状況」 も把握することです。
お客さんがどのような状況に置かれているからそのジョブが生じているのかを理解することで、お客さんがなぜそのジョブを遂行したいのか、その背景にある動機やニーズを深く掘り下げることができます。
消費者が 「雇う」 もの
ここでファミペイに話をつなげます。
ジョブ理論の観点から言えば、ファミペイに追加されるブランドページやミニアプリは、消費者が日常的に直面するジョブを解決するためのワーカーとなり得るものです。
例えば、消費者は 「買い物をもっと便利にしたい」 、「お得な情報を見逃したくない」 、「好きなブランドからの最新情報を得たい」 といった買い物に関するジョブを持っています。これらのジョブを解決するために、消費者はファミペイを雇うことで、簡単にクーポンを入手できたり、ブランドの情報を知ることができます。
ファミペイが消費者の日常生活に組み込まれることで、消費者にとって欠かせないツールとなれば、ファミリーマートそのものもワーカーとして積極的に雇われる (選ばれる) 存在になります。
ブランドが 「雇う」 もの
ファミペイにブランドページを出すブランド側から見てみましょう。
ファミペイやファミリーマートはブランドのマーケティング課題 (事業主の持つジョブ) の対処のために、「ファミペイを雇う」 という構図になります。
ブランドは、消費者からの認知度を高め、ブランドへの興味喚起、愛着や信頼感の醸成、そして最終的には売上を伸ばすというジョブを持っています。しかし、直接消費者と接点を持つ機会が限られていたり、消費者の購買データを効果的に活用する手段が不足していたりすると、ジョブを十分に果たすことが難しくなります。
そこで、ブランドはファミペイをジョブを完了するワーカーとして雇うことで、ファミペイが持つ膨大な顧客データや、消費者との日常的な接点を持てるようになります。
ブランドはより精緻なターゲティングからパーソナライズされたマーケティング施策を実行できるようになり、結果的にジョブを済ませられ、進歩を遂げられるというわけです。
まとめ
今回はファミペイ内にブランドページが実装されるという話題を取り上げ、マーケティングに学べることを考察しました。
最後にポイントをまとめておきます。
- ファミリーマートは自社決済アプリ 「ファミペイ」 の中にブランドページを導入する。ミニアプリのように機能し、アプリユーザーはブランドからのお得情報やクーポンを取得できる。ファミマは自社アプリをメディア化することで新たな収益源をつくることを狙う
- ブランドはファミペイ上にブランドページを開設することで直接的な消費者接点を獲得し、ファミマの顧客情報や購買情報などのデータ活用を強化できる。これにより消費者はパーソナライズされた便利な買い物体験を享受する
- ブランドページは、メンタルアベイラビリティ (思い出されやすさ) とフィジカルアベイラビリティ (買われやすさ) の両面を高める効果がある。ブランドページは消費者の日常の中に溶け込み、ブランド想起を促進。同時に、クーポンやセール情報の提供により店頭での購買行動を促進する
- ジョブ理論の観点では、ファミペイのブランドページは消費者とブランド双方のジョブを解決する 「ワーカー」 になる。消費者は便利でお得な買い物というジョブのために、ブランドは効果的なマーケティング活動というジョブのために、ファミペイを 「雇用」 する
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。
ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから登録して、ぜひレターも読んでみてください!