投稿日 2025/01/12

営業 × マーケティング。お客さんから選ばれ続ける営業術

#マーケティング #営業 #本

今回は書評です。


こちらの本、 「営業」 とは再現性のある科学 - 誰でも成果を出し続けられる 「顧客実現の法則」 (木下悠) は、営業にマーケティングとマーケティングリサーチの考え方と手法を取り入れた営業スタイルを紹介しています。

お客さんに選ばれ続ける営業、再現性のある成果、これらを実現する具体的な方法とは?

ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

本書の概要



この本で掲げている大きなテーマは、「お客様に売り込む営業」 から 「お客様から選ばれ続ける営業」 への転換です。

本書では、営業活動にマーケティングとマーケティングリサーチを取り入れることで、再現性のある営業活動をより効果的にできる方法が解説されています。

マーケティングとマーケティングリサーチの観点から営業を理解することで、営業の考え方や方法だけでなく、マーケティングにも学びがある一冊です。

営業に 「マーケティング」 を入れる


マーケティングの考え方を取り入れた営業とは、本書では 「お客様の現在の認識を、あなたの会社にとって望ましい認識へと変化させる (態度変容) ためのアクションを起こすこと」 だとします。

自社の商品やサービスへの捉え方は、顧客課題を解決するために自社商品が存在するとし、多数の選択肢の中からお客さんに自社商品を選んでもらうことを目指します。

売上の捉え方も特徴的です。売上は 「自社が解決できる課題の総量 × 自社が選ばれる確率 × 課題解決にかかる費用」 によって決まるとします。

お客さんを理解する

商談や連絡でのお客さんとのコミュニケーションにおいては、こちらから提供した情報に対するお客さんの反応を観察します。

お客さんの現状認識を確認するだけではなく、購入 (契約) への意思決定に至るプロセスを理解することが重要です。また、お客さんが何を大事にしているのかを見極め、お客さんの心が動くポイントを理解することが大切です。

購入後のフォローでも顧客理解を深めます。「購入に至った経緯」 や 「購入前の期待値とのギャップ」 を知ることで、今後の営業活動に活かせる貴重な情報が得られます。

ゴールから逆算して取り組む

お客さんを理解するのと並行して、次のようなステップを繰り返すことで、営業の精度を上げていきます。

  1. まず相手 (お客さん) に取ってほしい行動を決める
  2. お客さんが現在持っている認識を把握する
  3. そうなってほしいお客さんからの認識を設定する
  4. そのために伝えるべきことを考え、実行する


つまり、ゴール (お客さんにとってほしい行動) を決め、現状 (お客さんの今の認識) から逆算して取り組むというわけです。

マーケティングプロセスを当てはめた営業

一般的にマーケティングの全体プロセスは、環境分析から上市 (発売) 後検証までを次のように構成されます。

  1. 環境分析
  2. マーケティング戦略立案
  3. コンセプト設定
  4. 4P 開発
  5. 上市後検証


5つのそれぞれの要素を営業に当てはめると、次のようになります。

  1. 環境分析: お客さんを理解する (現状把握) 
  2. 戦略立案: とってほしいお客さんの行動を決め、行動につながる持ってほしい認識を設定する。自社は誰の・どんな存在になるかを営業の大きな方針として定める
  3. コンセプト設定: お客さんに提供したい価値を定義する
  4. 4P 開発: 提供したい価値がお客さんに最も魅力的に伝わる内容と伝え方をつくる
  5. 上市後検証: 営業活動を通して、提供したかった価値が相手に伝わっているかを確認する


重要なのは、これら5つは一方通行ではないということです。各プロセスを行き来しながら、お客さんとのコミュニケーションによって、 営業活動の指針と施策を定め、施策の実践とチューニングを続けます。

この繰り返しによって、お客さんに選ばれ続ける状態を目指します。

営業に 「マーケティングリサーチ」 を入れる


この本の骨子となる考え方は、営業力を構成する要素は 「マーケティングのスキル」 と 「マーケティングリサーチのスキル」 であるというものです。

マーケティングを理解し、活用することでお客さんから選ばれる状態をつくり出します。そのためにマーケティングリサーチで必要な情報を集め、お客さんの頭の中と心の奥まで理解を深めるというアプローチです。

マーケティングリサーチから集める情報とは、「発見」 と 「検証」 への2つの材料です。

マーケティングリサーチを進めていくと、「そうだったのか!」 となる新たな気づきから発見につながる瞬間があります。また、「やっぱりそうだった」 という理解を裏付ける情報 (= 検証できる情報) が得られる瞬間もあります。

  • 新たな気づきを 「発見」 してお客さんの理解を深め、営業の打ち手へのアイデアを磨く
  • 現状の理解から生まれた仮説を 「検証」 し、向かっている方向が正しいのかを確認する


発見と検証を繰り返し、顧客理解と営業活動への自信を深めていきます。

知る、攻める、創る (循環型営業サイクル) 


営業の役割は、お客さんに価値を伝え続け、お客さんから選ばれ続ける状態にすることです。

循環型営業サイクル

そのために本書で提示されるのが、「知る」 「攻める」 「創る」 の3つのプロセスを繰り返すフレームです。これを 「循環型営業サイクル」 として、次の5つのステップで進めます (攻めるというのは伝えることです) 。

  1. お客様を全方位的に理解する [知る]
  2. 理解した内容をもとに、自社が提供可能な価値を積極的に伝える [攻める]
  3. お客様の反応から顧客理解を深める [知る]
  4. 新しい価値を提供する方法を編み出す [創る]
  5. 編み出した新たな価値を伝える [攻める]

顧客の立場になる

本書は、お客さんの立場に立つことの重要性も強調しています。

お客さんが本当に知りたいのは、商品やサービスの機能や性能ではありません。そうではなく 「どうすれば自分の理想が実現できるのか」 であったり、「なぜ、あなたの会社の商品・サービスが自分にとって良いのか」 ということです。

そのため、お客さんの望みに対して自社の価値提供を組み合わせた課題設定が大事になります。お客さんの理想に正面から向き合い、お客さんの成功のために自社商品ができることは何かを考え抜くことが大切です。

組織的な取り組み

循環型営業サイクルを実現するために、リーダーに求められるのは次のようなことです。

  • 顧客志向と学習志向の 「スタンス」 を磨き続ける
  • マーケティングスキルとリサーチスキルを向上させる
  • これらのスタンスとスキルを顧客や組織全体、メンバー個人に対して活用する


これにより、組織が成果を出し続ける状態を実現できます。

まとめ


今回は、書籍 「営業」 とは再現性のある科学 - 誰でも成果を出し続けられる 「顧客実現の法則」 (木下悠) を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 本書は 「お客様に売り込む営業」 から 「お客様から選ばれ続ける営業」 への転換を大きなテーマとする。営業力は 「マーケティングスキル」 と 「マーケティングリサーチスキル」 で構成される

  • 売上を 「自社が解決できる課題の総量 × 自社が選ばれる確率 × 課題解決にかかる費用」 と捉え、顧客理解を深める。マーケティングの考え方を営業に取り入れることで、お客さんの認識を変化させる態度変容を促す

  • マーケティングリサーチを営業に活用し、「発見」 と 「検証」 を繰り返すことでお客さんを理解し、新たな気づきから営業の打ち手を磨くことで、営業活動の精度が向上する

  • 循環型営業サイクルでは 「知る」 「攻める」 「創る」 の3つのプロセスを繰り返す。お客さんを理解し、顧客理解にもとづいて価値を伝え、さらに新たな価値提供の方法をつくり出す。サイクルをまわし、お客さんとの信頼関係を深め、継続的に選ばれ続ける営業活動を目指す


この本で示されるアプローチは、営業活動に 「マーケティング」 と 「マーケティングリサーチ」 を取り入れるというものです。

お客さんに選ばれ続ける営業にできる具体的な方法を解説しています。マーケティングを取り入れることで、より効果的な営業活動にするための一冊です。


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。