#マーケティング #歴史 #教育勅語
仕事で成果を上げること、お客さんとの信頼関係を築くこと、チームとの連携、画期的アイデアを生み出すことーー。
こうした課題へのヒントは、実は意外なところにあるかもしれません。
明治時代に作られた教育勅語です。「えっ、道徳教育が現代のマーケティングに?」 と思われるかもしれません。しかし、教育勅語に書かれている普遍的な価値観は、現代のビジネスにも深い示唆を与えてくれるのです。
では、教育勅語の12の徳目が、どのようにしてマーケティングに活かせるのか、ぜひ一緒に紐解いていきましょう。
教育勅語
教育勅語は、明治天皇によって1890年 (明治23年) に発布された勅語で、日本の教育における基本理念を示しました。
正式名称は 「教育ニ関スル勅語」 で、天皇が国民に語りかける形式で道徳教育の重要性が記されています。
教育勅語は12の徳目 (道徳) で構成されています。道徳を守るのが国民の伝統とし、歴代天皇の遺 (のこ) した教えと位置づけられました。国民とともに天皇御自身もこれを守るために努力したいと、天皇の誓いとして締めくくられています。
以下、12の徳目です。原文と、() 内は現代訳です。
- 父母ニ孝ニ (親に孝養を尽くしましょう)
- 兄弟ニ友ニ (兄弟・姉妹は仲良くしましょう)
- 夫婦相和シ (夫婦は心を合わせて仲睦まじくしましょう)
- 朋友相信シ (友だちはお互いに信頼し合いましょう)
- 恭儉己レヲ持シ (自分の言動を慎みましょう)
- 博愛衆ニ及ホシ (広く全ての人に慈愛の手を差し伸べましょう)
- 學ヲ修メ業ヲ習ヒ (勉学に励み職業を身につけましょう)
- 以テ智能ヲ啓發シ (知識を養い才能を伸ばしましょう)
- 德器ヲ成就シ (人格の向上につとめましょう)
- 進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ (広く世の人々や社会のためになる仕事に励みましょう)
- 常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ (法律や規則を守り社会の秩序に従いましょう)
- 一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ (愛国心を持ち、国難に際しては団結して国を守りましょう)
12の徳目はいずれも、至極真っ当なことを言っています。作られたのは明治時代ですが、現代でも通用し時代によらず普遍的な道徳です。
現代のビジネスパーソンへの示唆
教育勅語の内容は現在の教育だけではなく、現代のビジネスにも当てはまります。たとえばマーケティングの視点でとらえると、示唆に富みます。
そこでここからは、教育勅語の主な内容をマーケティング活動に当てはめ、マーケターとして実践できることを次の内容で掘り下げてみます。() 内はマーケティングへの当てはめです。
- 親孝行 (マーケティングの理論や手法を提唱した先人たちへの敬意)
- 兄弟姉妹の仲の良さ (他部門とのチームワークと協力)
- 夫婦の和 (社外パートナーとの連携)
- 友達との信義 (顧客との信頼関係の構築)
- 慎み深さと誠実さ (誠実なマーケティング)
- 広く仁慈を施すこと (社会的責任や SDGs への取り組み)
- 職務に精励すること (マーケティングへのコミットメント)
- 学問を修めること (学び続ける姿勢)
- 徳を成就する (人格の向上につとめる)
- 公益を重んじること (買い手や社会に価値を提供する社会全体への恩恵をもたらす)
- 社会の秩序に従う (法律や規則を守る)
- 国と天皇に対する忠誠 (企業理念やブランドのミッションの実現)
では順番に見ていきましょう。
親孝行 → 先人たちへの敬意
マーケティングにおいて、新しいトレンドや手法を取り入れることは重要ですが、これまでのマーケティングの歴史や先人たちが築き上げてきた理論や知見に対する敬意を忘れてはいけません。
また、敬意を払うべき先人は社内にもいます。あなたがマーケティングをしているその商品の開発者の人たちです。製品に使われている技術の研究者、過去のマーケティング担当者なども含まれます。
今マーケティングができているのは、そうした社内の先人の人たちが血と汗の滲む苦労や努力があってこそです。
兄弟姉妹の仲の良さ → 他部門とのチームワークと協力
マーケティングはマーケティング部門だけががんばっても、大きな成果は望めません。営業、製品開発、カスタマーサポート、広報、法務など、他部門との密接な連携が不可欠です。
例えば、営業チームとの情報交換を通じて、顧客理解が深まります。製品開発チームと定期的にミーティングを持ち、顧客ニーズや市場トレンドを共有することで、より魅力的な製品が生まれるでしょう。また、カスタマーサポートチームから得られるお客さんの声も貴重な情報です。
部門間の壁を取り払い、情報共有を促進する仕組みづくりに取り組みましょう。各部門が一体となり、同じ目標に向かって進むことで、企業全体のパフォーマンスが向上します。
夫婦の和 → 社外パートナーシップの重要性
現代のマーケティングでは、自社だけですべてを完結させることは難しくなっています。広告会社、メディア会社、テクノロジーベンダー、インフルエンサーなど、外部パートナーとの協力が欠かせません。
パートナーとの関係を 「単なる取引」 ではなく、 「お互いに切磋琢磨をして合い成長する協力関係」 として捉えましょう。長期的な視点で信頼関係を構築し、Win-Win の関係を目指すことで、より良いマーケティング活動につながります。
友達との信義 → 顧客との信頼関係の構築
マーケティングの基本は、お客さんとの信用を積み重ね、信頼関係を築くことです。信頼がなければ、どれほど優れた製品やサービスを提供しても、長期的な成功は望めません。
現代ビジネスにおいては、お客さんはもはや 「ターゲット」 ではなく、長期的な関係を築くべき 「パートナー」 という存在です。
お客さんとの信頼関係を築くためには、透明性の高いコミュニケーションと対応がポイントです。例えば、商品の欠点も含めて正直に情報を公開したり、お客さんからのフィードバックに迅速かつ丁寧に対応することで、お客さんからの信頼を勝ち取ることができます。
慎み深さと誠実さ → 誠実なマーケティング
過剰な広告や誇張されたアピールは、短期的には効果があるかもしれません。しかし、長期的にはお客さんの信頼を失う代償をいずれは支払うことになるでしょう。
誠実で透明性のあるマーケティングが重要です。お客さんに対して正直に、製品やサービスの利点だけでなく、限界やリスクについても誠実に伝えることが信頼の基盤を築きます。
広く仁慈 (じんじ) を施すこと → 社会的責任や SDGs への取り組み
現代の消費者は、ただ良い製品やサービスを求めているだけではありません。
企業が社会にどのように貢献しているかを重視する傾向が消費者の中で強まっています。企業がただ利益を追求するだけでなく、社会的責任を果たし、持続可能な開発目標 (SDGs) に貢献することが求められます。
例えば、環境に配慮した製品開発や、社会貢献活動と連携したキャンペーンの展開によって、ブランドの社会的価値を高めることを目指します。
職務に精励 (せいれい) すること → マーケティングへのコミットメント
マーケティングにおいては、戦略を策定するだけでなく、それを実行に移すことが大事です。
計画の実行には、細部にわたる注意と粘り強い姿勢が求められます。同時に、市場の変化や顧客フィードバックに応じて、柔軟に戦略を修正する判断もときには必要になります。
結果を分析して次のアクションに反映させていく PDCA サイクルを徹底することで、より効果的なマーケティング活動になります。マーケティングに対する強いコミットメントが、持続的な成長を支える力となるでしょう。
学問を修めること → 学び続ける姿勢
マーケティングの世界は日々進化しており、マーケターは新しい知識やスキルを習得する必要があります。
常に学び続ける姿勢が重要です。変化を察知し新しいプラットフォーム、技術やツールにいち早く対応できることが競争優位につながります。また、お客さんや市場のトレンドを把握することもポイントです。
徳を成就する → 人格の向上につとめる
ビジネスにおいても、人格や倫理観の向上は大事です。その人の人格は、誠実さ、他者からの信頼性、健全な関係をつくる土台となります。
マーケティングにおける倫理的な行動は、長期的なブランド価値の向上に寄与します。
例えば、お客さんとのコミュニケーションにおいて、真摯な対応、真っ当な態度と行動を心がけるようにします。「他人が見ていないからちょっとぐらいはいいかも…」 と流されるのではなく、人が見ていなくても後ろめたい行動は慎みます。
企業内外のステークホルダーに対して自ら模範となるような行動を取ることで、相手からの信用が積み重なり信頼性が高まり、長期的な成功を実現する基盤を築くことができます。
公益を重んじること → 三方よしのマーケティング
三方よしの 「売り手よし、買い手よし、世間よし」 という近江商人の哲学は、現代のビジネスにも通じます。マーケティング活動も、この考え方にもとづいて行われるべきです。
企業が自社の利益を追求するだけではなく、お客さんや社会に対しても価値を提供することが大切です。例えば、社会的な課題に対処する製品やサービスを提供することで、企業の利益だけにとどまらず、社会全体の利益にも貢献することができます。
社会の秩序に従う → 法律や規則を守る
現代のマーケティング活動において、法令遵守 (コンプライアンス) と倫理的な行動は重要です。
マーケティングキャンペーンや広告を行う際、関連する法律や規則を厳守することはもちろん、消費者保護や個人情報の取り扱いにも細心の注意を払う必要があります。プライバシーポリシーを示し、お客さんからの同意を得た上でデータを活用するなど、倫理的な判断と扱いを心がけましょう。
国や天皇に対する忠誠 → 企業理念やブランドのミッションの実現
最後に、マーケティング活動の中心に、企業理念やブランドミッションを据えることの重要性を挙げたいです。
短期的な売上目標に振り回されるのではなく、「なぜこの事業を行っているのか」 「どのような価値をお客さんや社会に提供したいのか」 という本質的な問いに立ち返ることが大事です。
企業理念やブランドのビジョン・ミッションを理解し、企業全体が一丸となって理念を共有し、日々の業務に反映させることで、ブランドのメッセージがより強力に伝わります。ブランドの一貫性が保たれ、お客さんからの信用を得ることにもつながります。
いかがでしたか?明治時代に作られた教育勅語から、現代のマーケティングに通じる洞察を得ることができます。
教育勅語の内容を日々の業務に取り入れることで、より効果的で持続可能なマーケティング活動を展開できます。ぜひ自社のマーケティングに当てはめてみてください。
まとめ
今回は教育勅語を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 親孝行 (マーケティングの理論や手法を提唱した先人たちへの敬意)
- 兄弟姉妹の仲の良さ (他部門とのチームワークと協力)
- 夫婦の和 (社外パートナーとの連携)
- 友人との信義 (顧客との信頼関係の構築)
- 慎み深さと誠実さ (誠実なマーケティング)
- 広く仁慈を施すこと (社会的責任や SDGs への取り組み)
- 職務に精励すること (マーケティングへのコミットメント)
- 学問を修めること (学び続ける姿勢)
- 徳を成就する (人格の向上につとめる)
- 公益を重んじること (売り手の利益だけを追求することなく、買い手や社会全体への恩恵をもたらす三方よしのマーケティング)
- 社会の秩序に従う (法律や規則を守る)
- 国と天皇に対する忠誠 (企業理念やブランドのミッションの実現)
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