投稿日 2025/01/04

おべんと PON 。潜在的なお客さんの "不" を発見し、常識にとらわれないアイデアで解決する

#マーケティング #課題設定 #常識にとらわれない

冷凍食品は便利な存在ですが、ちょっとしたストレスもあったりします。

味の素冷凍食品の新商品 「おべんと PON」 は、そんな悩みを解決する冷凍食品です。ではどのように、このユニークな商品が生まれたのでしょうか?

その裏には、消費者の潜在的なニーズを掘り下げ、業界の常識にとらわれない発想がありました。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

おべんと PON


出典: PR TIMES

味の素冷凍食品が2024年8月に発売した新しい冷凍食品が 「おべんと PON」 です。

従来のお弁当用の冷凍食品とは一線を画すユニークな特徴から、忙しい家庭での弁当作りをサポートします。

 「おべんと PON」 の最大の特徴はパッケージデザインです。一般的な冷凍食品のパッケージが横長のトレーを使っているのに対し、「おべんと PON」 はスティック状の縦型パッケージを採用しています。冷凍庫内の限られたスペースを効率的に活用できます。

出典: PR TIMES

また、「おべんと PON」 は使いやすさに特化した商品であることも魅力です。

冷凍庫から出してそのまま自然解凍ができ、パッケージから中身を取り出してそのまま弁当に入れるだけです。さらに、トレーを使用しないので、お弁当作り終わった後のゴミ処理も簡単になるのもうれしいポイントです。

おべんと PON は、定番の弁当のおかずである 「つくね」 「からあげ」 「とんかつ」 「メンチカツ」 「とり天」 の5種類がラインナップされており、どれもおいしいおかずとして弁当に入れられます。

このように 「おべんと PON」 は忙しい家庭にとっては便利なアイテムです。

どこが画期的なのか


味の素冷凍食品が新たに投入した 「おべんと PON」 は、従来の冷凍食品の常識を覆すようなユニークな商品です。

冷凍食品といえば、おいしさをアピールするのが一般的です。しかし 「おべんと PON」 はあえておいしさの訴求を控えています。その代わりに、使いやすさや簡単さといった利便性を前面に押し出しています。

パッケージデザイン

この文脈であらためて注目したいのは、パッケージのデザインです。

弁当用冷凍食品は横長のトレーに詰められた形状が一般的です。ところが、家庭の冷凍庫内で多くのスペースを占めることが悩みの種でした。

それに対して 「おべんと PON」 はスティック状の縦型パッケージを採用することで、味の素冷凍食品はこの問題を解決しました。スリムな形状は冷凍庫内での収納効率を高め、スペースを有効活用できるようにしています。また、使用後のパッケージは簡単に処分できるようになっていて、忙しい家庭にとってはありがたい工夫です。

店頭での陳列


出典: PR TIMES

 「おべんと PON」 は店頭での陳列方法にも、今までにはないアプローチが取られています。

一般的には、冷凍食品は横に並べて陳列されることが多く、商品の視認性を目立たせるために、どれだけ商品棚でのスペースを確保できるかが大事です。

しかし 「おべんと PON」 は、横向きではなく商品を立てた状態で陳列する方法としています。このアイデアは、化粧品売場での陳列方法からヒントを得たとのことです。商品が小売店の限られたスペースを効果的に活用しつつ、目立つように並べられます。

流通サイドからは 「陳列にかける時間が短縮できる」 や、 「省スペースかつ豊富な選択肢を提供できる」 という評価を得ています。

マーケティングへの学び


では、味の素冷凍食品の 「おべんと PON」 から学べることを整理してみましょう。

この事例から学ぶべきポイントは、潜在的な利用者の不満に目を向け、常識にとらわれない発想で解決策を見つけることの重要性です。

 「おべんと PON」 の開発では、冷凍食品においてこれまで重視されてきた 「おいしさ」 の訴求をあえて一歩引き下げ、使いやすさという別の側面に焦点を当てました。このような発想の転換は、一見するとタブーに挑戦するかのように見えますが、実際にはお客さんが本当に求めている価値に応えるための大胆な戦略です。

もちろん、前例がない取り組みには社内での抵抗も伴います。事実、味の素冷凍食品でも 「おいしさを控えめに訴求する」 という決断には少なくない批判があったとのことです。ですが、最終的には 「お客さんにとってより良いものを提供する」 という信念が、ユニークな新商品を実現させました。

味の素冷凍食品の 「おべんと PON」 のような商品は、冷凍食品業界における新たなスタンダードを築く可能性を秘めています。常識にとらわれず、お客さんの視点から本当に求められる顧客価値を見出し、それを実現することがマーケティングの役割であることを、この事例は教えてくれます。

まとめ


今回は、味の素冷凍食品の 「おべんと PON」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 「おべんと PON」 の最大の特徴は、スティック状の縦型パッケージにある。従来の横長トレーパッケージが冷凍庫のスペースを圧迫していた冷凍食品の保存での不便さを解決する。冷凍庫内のスペースを効率的に使えるだけでなく、使用後の処分も簡単になる

  • 店頭での陳列方法にも新しいアプローチを導入した。一般的に冷凍食品は横に並べられるが、「おべんと PON」 は商品を立てた状態で陳列される。商品棚の限られたスペースを有効活用しつつ、視認性を高める効果がある。流通サイドからも 「陳列の効率が上がる」 と好評を得ている

  • 「おべんと PON」 の事例は、お客さんの潜在的な不満に目を向け、常識にとらわれない発想で解決策を見出す重要性を示す。お客さんが真に求める価値に応えるマーケティング


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。