投稿日 2025/10/19

模倣から始まる創造の旅。自分の中に眠るクリエイティブを "取り戻す" 方法

#マーケティング #模倣と創造 #本

クリエイティブや創造力なんて、生まれ持った特別な才能がある天才的な人だけのものだと思っていませんか?

実は、創造性は特別な才能ではなく、誰もが身につけられるスキルなのです。

ご紹介したい書籍 「模倣と創造 - 13歳からのクリエイティブの教科書 (佐宗邦威) 」 は、創造力は "学んで身につけられる力" であり、誰にでも育てられるものだとやさしく教えてくれます。


本来、私たちは皆クリエイティブな存在。その感性を取り戻し、日常に創造性を取り入れる方法を、ぜひ一緒に見ていきましょう。

本書の概要



本書 「模倣と創造 - 13歳からのクリエイティブの教科書 (佐宗邦威) 」 の著者は、戦略デザイナーであり株式会社 BIOTOPE (ビオトープ) の CEO を務める佐宗邦威さんです。

この本は、13歳以上の青少年を主な対象としたクリエイティブに関する入門書です。

構成

本書の構成はシンプルです。

  • はじめに 創造する力とは希望をつくる力
  • 第1章 模倣 — まねる
  • 第2章 想像 — えがく
  • 第3章 創造 — つくる
  • おわりに 私たちはどのように生きるか?


中心となるのは 「模倣」 「想像」 「創造」 の3つのステップです。

これは武道や芸術の世界でよく言われる 「守破離」 の考え方に通じます。型を 「まねる (守) 」 ことから始め、自分なりに工夫し 「えがき (破) 」 、そして独自のものを 「つくる (離) 」 へと進んでいく流れです。

守破離の段階的なアプローチをとることで、創造すると言っても何から手をつければいいかわからなくても、無理なく創造性を育んでいくことができます。本書では計19個の具体的な創造へのヒントが、各章で分かりやすく解説されています。

中心的なテーマ

本書が一貫して伝えているメッセージは、「創造力は運や遺伝ではなく、学んで身につけられる力だ」 ということです。特別な才能がなくても、正しいステップを踏めば誰でも創造性を発揮できるようになるのです。

印象的だったのは、「創造性へのセンスや独自性は、鍛えるというより "取り戻す" ものだ」 という捉え方です。取り戻すということは昔は誰もが創造性はあったわけです。

本来、私たちは皆、独自の感性を持っているけれど、子どもから大人になる過程で常識や周りの目を気にするようになり、無意識のうちに持っていた感性や創造力を抑え込んでしまっている。だから、正しいプロセスを踏んで、その感覚を呼び覚ましてあげればいいという考え方です。

最初から内在していた感性を取り戻すことこそが、本書でいう 「創造」 への道なのです。

模倣 - 想像 - 創造


この本の要が、「模倣 (まねる) 」 「想像 (えがく) 」 「創造 (つくる) 」 という3ステップの流れです。

3つを 「創造性の守破離」 としているように、本書はまずは 「型を学ぶ模倣」 、次に 「そこから発展させる想像」 、最終的に 「自分の作品やアイデアとして世に出す創造」 という段階的アプローチを解説しています。

模倣 [まねる]

最初の段階である 「模倣」 では、徹底的に観察し、良いと感じたものを真似ることから始めます。

この時にただ形を写すだけでなく、まねるプロセスで自分の中で何が起こっているのかを意識することが重要です。

例えば、好きなイラストを毎日ひとつ、ボールペンで写してみるという基礎トレーニングを本書では提案しています。手を動かして観察するうちに細部まで目が行き届き、自分なりの 「感性のセンサー」 が働き始めるという狙いがあります。

漫然と眺めるのではなく、「どこが好きなのか?」 や 「どう描かれているのか?」 と問いかけながら写すことで、自然とセンスの土台が磨かれていきます。

想像 [えがく]

次の段階の 「想像」 では、模倣を通じて培われた感性をもとに、自分自身の内面にある気持ち (興味や関心) に焦点を当て、自分らしさを表現するためのテーマを見つけます。

そのために著者がすすめるのは、余白をつくること、感情と向き合うことです。

著者は、時間を見つけてはスマホや本などは持たず、何もないスケッチブックとペンだけを持ってカフェにこもる 「デジタルデトックス」 の時間を作っているそうです。この時間では、例えば自分が感じている喜怒哀楽の感情を書き留め、そこから新しいアイデアの芽を探すとのことです。

想像の段階では、模倣でインプットした型をベースにしながらも、徐々に自分の色を加えます。自分の内なる声に耳を澄まし、「自分らしさ」 とは何かを探求していきます。

創造 [つくる]

そして最後に 「創造」 です。具体的な作品やアイデアとして形にするプロセスへと進みます。

まずはアイデアをめいっぱい飛ばして、一気にまとめることが大切です。ともすると混沌としてカオスに見える大量のアイデアをまとめ上げるには、時間をかけて熟成させたり、自分だけの "アトリエ" で落ち着いて作業できる空間を確保したりする必要もあるでしょう。

この段階での 「楽しさ」 と 「自分の曖昧さを抱きしめること」 が重要です。迷いやモヤモヤした気持ちこそが想像力を広げ、創造につながります。

模倣から創造までの3つのステップでは、模倣で基礎を学び、想像で自分らしさを見つけ、そして創造で形にする――。この3つを行き来しながら、少しずつ創造性は育まれていくのです。

創造的になるためのヒント


本書 「模倣と創造 - 13歳からのクリエイティブの教科書」 で語られる実践的なヒントの数々は、どれもすぐ始められるものばかりです。ここではいくつかピックアップしてご紹介します。

余白をつくる (デジタルデトックスのすすめ) 

忙しいという漢字は 「心を亡くす」 と書きます。忙しいと感じるときほど、意識的に心の余白をつくるといいです。

たとえばスマホを持たずに出かけたり、家でも他の部屋に置いたり一定時間は電源をオフにするといいでしょう。強制的に離れて空白の時間をつくるわけです。余白の時間ではあえて何もせず、ただぼーっとします。

自分の好きなものに気づく

何かに好きだと思うものを見つけたら、細かいところまで観察したり考えていき、なぜ好きなのかを掘り下げます。

普段から意識してこれを繰り返すと、自分の趣味嗜好や好きなこと、得意な分野が見えてきます。「こんなことをやってみたい」 、「ああいう表現ができると楽しそう」 と思う瞬間こそ、あなたの創造の種が芽吹いているサインでもあります。

モヤモヤや曖昧さを無理やり解消しない

明確な答えが出ない状況は気持ち悪いものです。ですが、すぐに答えを出そうとせず、違和感やモヤッとしたことに目を向け、無理に解決しないという姿勢も大事です。

例えば、考えていることになかなか良いアイデアが思い浮かばないときは、一旦はそのままにしてみます。散歩や運動をしたり、一晩寝かせることで熟成された後に、何かのきっかけで思いがけないアイデアがふと浮かぶこともあるでしょう。

自分の感情と対話する

この本では、日記やメモをつける習慣を推奨しています。できるなら鉛筆やペンでの手書きです。

うれしかったこと、悲しかったこと、イラっとしたことなどを言葉にしてみると、不思議と 「自分はこんなことで心が動くんだな」 と気づきが生まれます。

こうした自分との対話でも創造につながります。さらに、そこから 「どうしたら解決できるか?」 「もっと楽しくできないか?」 と発想が広げていきます。

アナログに手を動かす・身体を使って考える

スマホやパソコンばかりに頼るのではなく、紙とペン、あるいは身体を動かしながら頭を巡らせるクセをつけるのも大切です。

スマホの画面とにらめっこしたままで頭だけでぐるぐる考えるより、紙の手帳やノートに文字や簡単な絵を描いてみたり、場所を変えて歩きながら考えたりすると、意外なアイデアが浮かぶはずです。

センスを磨く3つの軸

本書ではセンスの軸として、

  1. 自分軸: 自分が本当に好きなこと
  2. 時代軸: 今の空気感やトレンドとの親和性
  3. 品質軸: 専門家が高く評価する水準

という3つの軸が提示されます。

まずは自分の好きなことを優先しながらも、これら3つをバランスよく当てはめ柔軟に取り入れることでセンスは磨かれるのだと述べられています。

* * *

 「創造力」 というと身構えてしまうかもしれませんが、この本を読めば 「これならできそう」 とか 「創造することってワクワクする」 ときっと思えるはずです。

模倣、想像、そして創造――。本書の流れに沿って一歩ずつ着実に進んでいけば、クリエイティブな活動は決して遠い世界の夢物語ではなくなります。

誰でも日々の中で小さなアイデアを生み出し、形にし、楽しみながら少しずつ成長していく。そんな姿勢こそが、本書が教えてくれる創造への道です。

まとめ


今回は、書籍 「模倣と創造 - 13歳からのクリエイティブの教科書 (佐宗邦威) 」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 創造力は特別な才能ではなく、「模倣 → 想像 → 創造」 という守破離に通じる3ステップで誰でも学び身につけられるスキル

  • 創造性は新たに獲得するというよりも、誰もが子どもの頃に持っていた本来の感性を 「取り戻す」 というプロセスである

  • 模倣の段階では徹底的な観察と真似により基礎を学ぶ。想像の段階で自分らしさを探り、創造で形にしていく

  • 創造力を育むには、デジタルデトックスで余白の時間を作る、自分の感情と対話する、アナログに手を動かすなどの実践的習慣が効果的

  • 自分の感性を磨くには、自分軸・時代軸・品質軸の3つのバランスを意識しながら、モヤモヤや曖昧さを抱きしめるような感覚を大切にする


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。