2018/04/11

書評: 未来を先回りする思考法 (佐藤航陽) 。当たり前を疑うこと、未来に向けた行動を取る半信半疑のタイミング


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未来に先回りする思考法 という本をご紹介します。




エントリー内容です。

  • 本書の内容
  • 未来を読むために必要なのは 「疑うこと」
  • 未来に向けて行動するタイミング、適切なタイミングの見極め方


本書の内容


以下は、本書の内容紹介からの引用です。

 「実際に空を飛ぶ機械が、数学者と機械工の協力と不断の努力によって発明されるまでには、百万年から一万年かかるだろう」

ニューヨークタイムズにこのような社説が載ったのは、ライト兄弟が人類で初めて空を飛ぶわずか数週間前のことでした。

今に生きる私たちも、この話を笑うことはできないでしょう。

iPhone が発売されたとき 「赤外線がないなんて流行らない」 「おサイフケータイが使えないなんて不便」 と多くの人が言っていたことを、Facebook が日本に進出したとき、 「実名性の SNS は日本人の気質には合わないので普及しない」 と多くの 「知識人」 が言っていたことを、私たちは都合よく忘れています。

人間は本来、未来を見誤るものなのです。

しかし、そんな中でもごくわずかな人は驚くほどの先見性を発揮して大きな成果を上げています。その違いは人々の 「思考法」 にあります。

本書では、株式会社メタップス代表取締役社長の佐藤航陽が自身の体験から培った 「どんな状況にあっても未来を見通せる汎用的な思考体系」 を、読者のみなさまにお伝えします。


未来を読むために必要なのは 「疑うこと」


本書で指摘する未来を読むために必要な能力は、今の時代に当然とされているものを疑えることです。


仕組みの目的に立ち返る


疑うとは、当たり前になっているやり方や仕組みについて、そもそもどのような必要性があってできたかの原点に戻って考えることです。

すでにできている仕組みが続く限りは、現在と未来は変わりません。思うに未来とは、今の当たり前が変わった世界です。未来を読むために考えないといけないのは、「未来の当たり前」 がどうなるかです。

未来の当たり前とは、今はまだ当たり前になっていないことです。「今の当たり前」 と 「未来の当たり前」 は、何がどのように変わるのかです。大事なのは、未来の当たり前に気づくために、いかに今の当たり前を疑えるかです。


手段の目的化に未来のヒントがある


本書で興味深いと思った指摘があります。今は当然のように存在する仕組みについて、本来の目的が人々に忘れ去られ、手段でしかない仕組みを維持することが、いつの間にか目的になっていないかです。手段の目的化です。

目的という原点に戻り、もっと効率の良いやり方が見つかれば、その手段が未来の当たり前になります。

今の常識や当たり前に対して、漠然と受け入れてその枠組みで未来を考えるのではありません。未来を読むために必要な力は、疑いの目を持ち、どんな必要性でできたのかを問う姿勢です。


いつの間にか手段が目的化した例 (リモコン)


すでにある枠組みの中でしか考えられておらず、いつしか手段が目的化している具体例を、日常の身のまわりのもので考えてみます。

例えば思ったのは、電化製品や家電です。

本来の目的は、日常生活でやることが電化製品や家電を使うことによって便利になることです。しかし現実は、機能を詰め込みすぎたために、使われなかったり、余計に使いづらくなってしまっています。

典型的なのはテレビです。今のテレビは、ハードディスクへの録画、ビデオオンデマンド、YouTube や Netflix の視聴、ネット接続など、昔に比べて多様な視聴が可能です。

選択肢が増えることは、より便利になるはずです。しかし、増える一方の機能に対して、選択肢から選ぶための手段であるリモコン操作が煩雑で、時にはリモコンの使いにくさがテレビ自体の不便さを感じさせます。

一部のリモコンは、増えすぎたリモコンのボタンをシンプルにするなどの対応をしています。いかに使いやすいリモコンにするかに目が向いています。

しかし、これこそが手段の目的化です。リモコン操作という枠組みの中でしか考えられていません。

本来の目的は、快適にテレビで映像を楽しむことです。目的に立ち返れば、ボタンを多く・少なくするアプローチではなく、全く別のやり方であってもよいはずです。

その兆しが見えているのは、音声入力です。物理的なリモコンから指で操作をするのではなく、音声で自然に目的を達成するための操作です。

リモコンという手段の中だけで考えるのではなく、テレビを楽しむという目的 (原点) に立ち返り、そのための手段は既存のやり方でよいのかを疑うことです。目的や、そもそもの必要性に戻り、この先も今のやり方でよいのか、もっと効率の良い方法がないかを考えることは、未来を読むことにつながります。


未来に向けて行動するタイミング


本書で強調しているのは、未来を読めるだけでは十分ではないことです。重要なのは、思い描いた未来に向けて、どう活かすか、どのように行動するかです。

行動には適切なタイミングがあります。早すぎても遅すぎてもいけません。

タイミングは早すぎると、社会が受け入れられる状況になっていません。技術、コスト、人々の感情や倫理観などが追いついていないためです。

遅すぎるタイミングでは、誰もが同じように考えるので過当競争になり先行者利益を得られません。成果は他人に持っていかれてしまう可能性も高くなります。


適切なタイミングの見極め方


興味深いと思ったのは、タイミングを見極めるやり方でした。

周囲の反応が、タイミングを知るリトマス紙になります。例えば、以下のような見極めです。

  • 新しいもの好きの人のみが熱中していて、そのテーマを他人に話しても8割の人が聞き返してくる状況は、まだ早い
  • マス向けの新聞・雑誌・テレビなどのメディアで頻繁に取り上げられているようでは遅い

おもしろい考え方だと思ったのは、新しい兆しやトレンドに 「半信半疑である状態」 が、適切なタイミングになり得るということでした。

今はまだ実現できていないことでも、未来では当たり前になるかどうかが、自分でも五分五分という認識の段階です。自分以外にも、他人からも同じように半信半疑に見られている状態です。

ここで言う半信半疑とは、自分の今の常識から考えると本当にそうなるかは疑問である一方、必要性や原理、過去のパターンから突き詰めて考えると、そうなるだろうと言えるような状況です。

周囲の人にもチャンスとわかるようなタイミングでは遅く、自分でも成功確率が 50% くらいだと思えるタイミングが、本格的に行動を起こすチャンスなのです。


最後に


本書で興味深かったのは、今回のエントリーでご紹介した、「今の当たり前を疑うこと」 と 「適切なタイミングを見極めて行動に移すこと」 でした。

最後に、未来がつくられることについて、印象的だった考え方をご紹介します。以下は本書からの引用です。

歴史的な発明を振り返れば、そこにいた当事者が世界そのものを変えたかのように、私たちの目には映ります。しかし、もし彼らが発明しなくても、他の誰かがそのピースを埋めたであろうことは容易に想像がつきます。

その意味では彼らは未来をつくったのではなく 「いずれくる未来の実現を早めた」 といえるのかもしれません。

 (中略)

こういった課題は、その課題が大きいほど、いつかは解決策が見つかるようにできています。自分がやらなかったとしても、おそらく誰かが解決してくれるでしょう。ただし、その解決が遅くなればなるほど、不幸な人は増えてしまいます。

私たちにできることは、顕在化している課題をできるだけ早く解決する方法を見つけ、ひとつでも多くの不幸をなくすことぐらいでしょう。いつか誰かが実現する未来だったとしても、その到来を早めることは、多くの人にとって価値のあることです。

きたるべき未来の到来を早めることが、その時代を生きる人に課された唯一の 「仕事」 です。私たちが何気なくすごす毎日もすべてはその 「仕事」 につながっています。

 (引用:未来に先回りする思考法)



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書いている人 (多田 翼)

複数のスタートアップ支援に従事。経営や事業戦略のコンサルティング・アドバイザー・メンター、プロダクトマネージャー、マーケター。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn または Facebook をご覧ください) 。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。