投稿日 2018/05/03

書評: 総理 (山口敬之) 。リーダーが描くビジョンとミッション


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総理 という本をご紹介します。

この本での総理は、安倍晋三氏です。著者はジャーナリストの山口敬之氏です。



エントリー内容です。

  • 本書の内容
  • 安倍晋三と麻生太郎
  • リーダーが描くビジョンとミッション


本書の内容


山口氏は、本書について次のように説明しています。

私が本書で示したかったのは、安倍晋三という人物、麻生太郎という人物、菅義偉という人物が、政治の重要な局面でどう発言し、どう行動したのかという客観的事実である。

総理大臣とはどういう仕事なのか。私が体験し目撃した事実を公表することで、読者が 「日本という国で、平成という時代に、総理大臣を務めるべきはどういう人物か」 を考える材料としてくれたら、これ以上の喜びはない。

 (引用:総理)


安倍晋三と麻生太郎


興味深く読めたのは、安倍さんと、安倍政権のキーマンとなる人たちとのやりとりです。特に、安倍さんと麻生さんです。

安倍さんと麻生さんの関係は、次のように書かれています。引用します。

二人の関係をどう形容すべきか折に触れて考えるのだが、なかなか適切な言葉が見つからない。

永田町では政治家の関係を様々な形容詞で表現するが、安倍と麻生の関係は 「ライバル」 でも 「お友達」 でも 「ズブズブ」 でもない。かといって 「盟友」 というのも少し違う。敢えていうなら安倍から見た麻生は 「畏友」 とするのが近いだろうか。

ともあれ一つだけはっきりしているのは、二人が面と向かった時にだけ発生する、ある種の作法や礼儀と称すべきものが存在するということである。たわいもない雑談で盛り上がる様子は親友といっても差し支えないような関係だが、そんななかにも独特のマナーと緊張感がある。

 (引用:総理)

本書で印象的だったのは、2014年末の解散総選挙での、安倍さんと麻生さんの激しい衝突でした。10% への消費税増税を見送りたい官邸と、増税を是が非でも実現したい財務省の全面対決が 「安倍 vs 麻生」 となりました。

お互いの立場や信条から、意見対立があり、何度も議論をしている様子が描かれます。

最終的には、安倍さんは増税を先送りし、衆議院を解散して選挙で国民に信を問う意向を麻生さんに伝えます。麻生さんは、「いろいろと言いたいことはありますが、総理が決めたというならこれ以上私から申し上げることはありません」 と返答しました。

麻生さんは財務大臣という立場を超え、首相の決断を尊重したのです。安倍さんも麻生さんに対して、深々と頭を下げました。

麻生さんにとっては、安倍さんの方針は自らの意見や自分が大臣を務める財務省の主張と相容れないものでした。しかし、ひとたび総理大臣が決断をしたら、しっかりとサポートをするという潔さです。

意見が対立すれば、堂々と議論を戦わせつつも相手への敬意を忘れない、リーダーが決断すれば尊重するという姿勢が伝わってきました。麻生さんが仁義とマナーを大切にする政治家ということがわかるエピソードでした。


リーダーが描くビジョンとミッション


安倍さんの言葉で強く印象に残ったのは、総理大臣になることの意味を語った場面でした。

以下は本書からの引用です。

総裁選が終わってしばらく経った2015年の秋、久しぶりに富ヶ谷の自宅を訪れた私は、次々と不人気法案に取り組むその真意を尋ねた。

 「総理大臣になることや総理大臣であり続けることが重要なのではなく、総理大臣になって何をなすかが重要なんです」

 (引用:総理)

総理大臣になること、総理大臣を続けることは 「手段」 です。大事なのは、総理大臣になり、日本をどういう国にしたいか、そのために自分は何をするかの 「目的」 です。

リーダーになることは手段にすぎず、国を率いるリーダーとして描くビジョンと、それを実現するミッションが大事であることを安倍さんは語ったのです。

本書には、安倍さんが自身で描く国家観を盟友の政治家に共有し、共にやっていこうとする姿勢を感じさせるエピソードも書かれています。リーダーが大きな絵を描き、それに共感した人たちがフォロワーとなっています。

安倍さんと麻生さんが、最終的に意見の相違を乗り越えられたのも、国家観が共有されていたからです。


最後に


本書の内容紹介には、次のように書かれています。

最悪の形で総理を辞任した安倍晋三は、5年後再び政権に返り咲き、強力なリーダーシップを発揮する。この間、決断はどう下されてきたか。政治の重要な局面で、安倍、麻生、菅は何を発言し、どのような行動をとったか。

誰よりも政権中枢を取材してきたジャーナリストが、政治家の肉声から浮き彫りにする、官邸も騒然の内幕実名ノンフィクション。

普段は表に出てこない政治中枢の意思決定や、それに至るやりとりを興味深く読めた本でした。



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。