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今回は、マーケティングの観点からブランドについてです。ブランドとは何かを定義し、どうやってブランドをつくるかを考えます。
エントリー内容です。
- ブランドとブランディングの定義
- ブランドのつくり方
そもそもブランドとは何か
始めに、ブランドとブランディングの定義です。私の考えるブランドとブランディングは、以下です。
- ブランド:ポジティブな感情が伴っている商品やサービス (あるいは企業) 。感情は例えば、好き・満足感・共感・憧れなど
- ブランディング:商品・サービスに感情移入を起こす働きかけ
ブランドかそうではないかの違いは、商品やサービスに望ましい感情が伴っているかどうかです。感情レベルが強いほど、その人にとって思い入れのあるブランドになります。
ブランドの定義で前提としている考え方は、ブランドとは人の頭の中でつくられることです。
ここに、ブランドの難しさがあります。製品は工場でつくられ、生産や品質管理は企業側でできます。しかし、ブランドは顧客である生活者の頭の中でできるものなので、ブランドは本質的には直接管理できない領域にあります。
ブランドのつくり方
では、どうすれば、商品・サービスや企業に感情を持ってもらい、顧客の頭の中にブランドができるのでしょうか?
私が考えるブランディングは、以下のプロセスを取ります。
- 自分たちのブランドを定義する
- 顧客を明確にする
- 顧客のカスタマージャーニー (ブランド体験プロセス) を描く
- ブランド体験ごとに施策をつくり、PDCA をまわす
以下、それぞれについて解説します。
1. 自分たちのブランドを定義する
自社ブランドの定義は、以下の3つから設定します。
- ブランドビジョン:ブランドが実現したい理想の世界観
- ブランドミッション:実現するためにブランドが成し遂げること
- ブランドバリュー:ミッションを通じて、ブランドが人にもたらす価値
ビジョンで理想の世界観を示します。ミッションは、理想の世界を実現するために自分たちは何をするか (やらないか) です。そして、ミッションを行なうことによって、ブランドは人々に価値を提供します。
ビジョン・ミッション・バリューの3つは、ブランドのコアとなる要素です。
2. 顧客を明確にする
ブランドコアに共感してもらえる人、そして、共感してほしい人は誰かです。つまり、ブランドと相思相愛の仲になれる顧客は誰かです。
顧客を明確にするために、次の3つをつくり、関係者で共有します。
- セグメント:人々を分ける。分ける軸は、性別年代や居住地域、ライフスタイル、価値観、情報行動、ブランド・カテゴリーの利用など
- ターゲット:分けた各グループのうち、どのグループと相思相愛になりたいかを決める
- ペルソナ:ターゲットグループを一人の象徴的な人物像として設定し、深く理解する。その人の今だけではなく、過去の出来事や人生も含めて具体的なターゲット像を描く
3. 顧客のカスタマージャーニー (ブランド体験プロセス) を描く
カスタマージャーニーという体験フローをつくります。ペルソナで設定した人の一連のブランド体験を描きます。
以下は、私がよく使うカスタマージャーニーです。
- ニーズ認識
- ブランド認知
- 興味
- 行動
- 比較検討
- 購入
- 利用
- 愛着
いくつか補足です。最初の 「ニーズ認識」 、最後の 「利用」 と 「愛着」 についてです。
ニーズ認識
一番始めに、「ニーズ認識」 を置いています。一般的にはカスタマージャーニーや購買フローを考えるときは、最初は商品やサービスへの認知からです。しかし、私は認知を起こす前に、ニーズを自分で気づくことが発生すると考えます。
というのは、認知をするためには、その商品やブランドについて、あるいはカテゴリーレベルで何かしらの必要性を感じ、自分ごととして捉えることが不可欠だと考えるからです。
場合によっては、ニーズ認識とブランド認知は同時に起こったり、時にはブランド認知によって、普段は気づいていない潜在的なニーズにあらためて気づかされることもあります。
利用と愛着
一般的に購買ファネルでは、最後に 「購入」 を設定します。企業から見れば、買ってもらえれば売上と利益が発生するので、購入が最後です。
しかし、買う側のお客から見れば、商品やブランドを買ったときがスタートです。なぜ購入するかと言えば、利用したいからです。
そこで、カスタマージャーニーでは、購入の後に 「利用」 を置きます。さらに、利用して商品やブランドへの 「愛着」 を利用の次にもってきます。
4. ブランド体験ごとに施策をつくり、PDCA をまわす
カスタマージャーニーは、一連のブランド体験です。ニーズ認識から愛着までの各体験ごとに、次の3つを具体化します。
- インサイト:体験ごとに背後にある 「人を動かす隠れた気持ち」 は何か
- 提供価値:インサイトという気持ちを満たすために、ブランドが提供するメッセージや価値は何か
- 感情形成:提供価値や体験によって、生み出したい感情は何か。商品やサービスにどのような感情を伴ってもらいたいか
2つめと3つめの提供価値と感情形成は、ブランドコアで自社ブランドを定義した 「ブランドビジョン」 「ミッション」 「バリュー」 と一貫性があるかもチェックポイントになります。
なお、消費者インサイトについては、別のエントリーで詳しく解説しています。ぜひこちらもご覧ください。
参考:消費者インサイトとは何か? 「インサイトを見い出す方法」 をわかりやすく解説します
最後に
今回のエントリーでは、「ブランド体験」 という視点で、どのようにブランドをつくるかを考えました。
重要なことなので繰り返すと、ブランドとは人の頭の中でできるものです。売り手からすると、買い手の相手の中のことなので、本質的には直接的に管理することはできません。
企業やブランドができることは、ブランドのビジョンを掲げ、ミッションとしてやることを宣言し、その通りに行動しながら価値を提供することです。
企業本意な一方的な提供ではなく、消費者インサイトを満たすこと、そして満たすために自分たちブランドは何ができるかです。