2018/05/25

書評: 共感 PR - 心をくすぐり世の中を動かす最強法則 (上岡正明) 。PR と消費者インサイトの共通点


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共感 PR - 心をくすぐり世の中を動かす最強法則 という本をご紹介します。



エントリーの内容です。

  • 本書の内容
  • 魅力的な PR の方法
  • PR と消費者インサイトの共通点


本書の内容


以下は、本書の内容紹介からの引用です。

もはやテレビに出ただけでは売れない。今、最も効果的なのは新・旧メディアを使ったハイブリッドな広報戦略である。「めざましテレビ」 「笑っていいとも」 の放送作家から転身、PR 業界で成功した著者が低予算で効果抜群の PR 術を公開。

 「ほしい」 「したい」 の先にある 「言いたい」 「見せたい」 をくすぐれ!
共感の連鎖がブームをつくる!

ジャポニカ学習帳 「昆虫がいなくなった」 をバズらせた仕掛人が予算ほぼゼロで3億円の効果を生み出す方法を明かす。


いくらでもやり直しがきく


本書では、PR は、テレビなどのマス広告に比べると、やり直しができるアプローチだと説明されます。

大量の広告費を使ってテレビ CM を打つなどの規模の大きな宣伝をする場合、費用は数千万から何億円単位になります。いつ、どこで広告を出すかと広告露出をコントロールできる一方、必要な広告費は膨大になるために、「絶対に失敗できない」 というやり方です。

PR は、リリースをメディアに送ってメディアに取り上げられなかったとしても、「訴えるポイントがズレているのではないか?」 と仮説を立て、アピールすべきポイントを変えられます。

PR のメリットだと書かれているのは、トライ & エラーです。メディアや社会や消費者を巻き込み、試行錯誤しながら一緒につくり上げることができます。


魅力的な PR の方法


では、PR はどのようなことに気をつけてつくるとよいのでしょうか。ここからは具体的な PR の方法をご紹介します。

  • PR の仕掛け方の全体像
  • 共感 PR をつくるための 「8×3」 フレーム
  • 魅力的な PR にするための 「8つの視点」
  • PR 情報が受け入れられるかを検証する 「3つの視点」
  • まず最初はとにかく量で攻める


1. PR の仕掛け方の全体像


本書で紹介される、PR のつくり方のプロセス概要は以下です。

  • 現在の企業環境や、ビジョン、ミッション、事業課題などをヒアリングし、分析する
  • PR したい商品やサービスの PR 戦略を練る ( 「8×3」 の策定)
  • 実行

本書で詳しく書かれているのは、2つめに出てきた 「8×3」 のフレームについてです。


2. 共感 PR をつくるための 「8×3」 フレーム


以下は、「8×3」 フレームの考え方です。

  • 8: 自分たちが PR によって伝えたい情報を洗い出すために8つの視点で整理する
  • 3: 消費者やメディアが知りたいかどうかを3つの視点で確認する

つまり、自分たち送り手が言いたいことと、受け手が知りたいことの2つを重ね、商品やサービスの PR 情報をつくります。


3. 魅力的な PR にするための 「8つの視点」


 「8×3」 の8つの視点は次の通りです。

  • 新規性:そのサービスや商品にはナンバーワン、オンリーワンだと言える何かがありますか?それは、世界中や日本中、業界内で初めての試みですか?
  • 優位性:競合や既存のサービスと比べて、明らかに違っていたり、優れていることはなんですか?
  • 意外性:知人や顧客に話したら、「へぇ」 と感心される、「ホントに!?」 と驚かれた、「まさか!信じられない!冗談でしょ?」 と笑われたことはありませんか?
  • 人間性:開発や販売などに深く関わる人や経営者のエピソード及びストーリーはありますか?
  • 社会性:世の中の流行やトレンドに重ね合わせ、人々の興味や関心を喚起できることはありますか? 「社会ごと」 に変えられるキーワードがありますか?
  • 貢献的意義:その商品やサービスによって、社会や世の中の問題解決に役立つことはありませんか?
  • 季節性:季節との関連性がある、または制定されている記念日や日にちの語呂などに掛けられるテーマはありませんか?
  • 地域性:その地域限定やエリアならではの特徴はありませんか?

自分たちが PR したい商品やサービスの特徴が、8つのうち、どれに該当するかを考えます。

著者の経験から、8つの順番は PR で強力な順になっています。1つめの 「新規性」 が最も威力があります。8つのうち、まず最初に新規性があるかどうかを確認します。

なお、PR したい商品やサービスの特徴を、必ずしも8つ全てに当てはめる必要はありません。


4. PR 情報が受け入れられるかを検証する 「3つの視点」


8つの視点で洗い出した強みが、受け手である消費者の立場に立ったときに、本当に求められているのかどうかを3つの視点で検証します。

  • 社会:社会が求めている情報か
  • 人 (ターゲット):ターゲットとなる消費者に本当にアピールできる情報か
  • メディア:メディアが取り上げたくなるような情報か

 「8×3」 の 「8つの視点」 で、企業 (自社) の立場で PR 情報を洗い出します。「3」 の消費者視点で PR 情報を客観的に確認します。この 「3」 のひと手間が、企業側のひとりよがりを防ぎます。結果として共感され、情報が広がりやすくなるのです。


5. まず最初はとにかく量で攻める


PR では、プレスリリースに伝えたい情報をまとめ、取り上げて欲しいメディアに送信します。プレスリリースは、その商品やサービスを全く知らない人に向けて、いかに興味を持ってもらうかです。

プレスリリースについて著者が強調するのは、「プレスリリースは送らなければ、メディアに紹介されることはない」 ということです。行動しなければ、何も起こりません。

以下は本書からの引用です。

 「うちはプレスリリースは送っているけれど、全然成果が出ないよ」 と言う会社もあります。でも、その場合もよくよく聞くと、送り先はせいぜい10社程度で、それで 「反応がない」 「全然うまくいかない」 とぼやいているのです。

厳しいようですが、はっきり言います。PR したい、ヒットさせたい、ブームをつくりたい。そう考えている企業経営者やマーケティング担当者は、セミナーに参加したり、書店でPRに関する本を買って勉強したり、それぐらいの努力は誰しもがしています。10媒体、20媒体で反応があるほど甘くない。

でも、100媒体送れば、可能性は高まる。新しい案件について PR 活動を始める時、まず最初はとにかく量で攻めるのが鉄則です。テレビでも、新聞でも、ネットニュースでも、とにかく、まずは一つでも多くの媒体の目に留めてもらう。これが、第一歩です。

 (引用:共感 PR - 心をくすぐり世の中を動かす最強法則)

もちろん、闇雲に PR 情報をプレスリリースでメディアに送るのではなく、先ほどご紹介した 「8×3」 で、何をアピールするかを明確にします。


PR と消費者インサイトの共通点


本書で共感される PR のことを読みながら思ったのは、PR とマーケティングの消費者インサイトに共通点があることです。

消費者インサイトとは、「人を動かす隠れた気持ち」 です。

普段は本人も意識していませんが、気づかされれば関心を持ったり購入などの行動につながる、奥にある気持ちがインサイトです。

PR も同じです。共感される PR とは、PR された情報を消費者が知れば、情報そのものに興味を持ち、誰か他の人に広めたいという行動に結びつくものです。インサイトのポイントである、「普段は隠れていること (訴求されるまでは本人も気づいていない) 」 と、「人を動かすこと」 が、PR にも当てはまります。

マーケティングコミュニケーションでは、インサイトを基点に、以下の4つを設計します。

  • 何のために (why)
  • 何を言うか (what)
  • 誰に言うか (who)
  • どこでどのように波及させるか (where, how)

PR も同様です。2つめの what は 「8×3」 の8つの視点で洗い出します。3つめの who は、「8×3」 の3で明確にします。

4つめの where と how は、PR 業界で言われる 「情報連鎖」 です。

情報連鎖とは、「伝えたい」 「意見を述べたい」 と思えるような情報をあらかじめ意図的につくり、PR という手法で仕掛け、ひとりでに広がっていくことです。1つの有力メディアや影響力のある人がそれを取り上げると、たちまち、他のメディアにも連鎖的に広がっていきます。


最後に


本書は、共感される PR をどのようにつくり、どうやって世の中に広げるかの方法が書かれています。わかりやすいと思ったのは、著者が実際に手掛けた事例が多く出て、具体例からイメージしやすいからです。

PR だけではなく、企画、商品開発、新規事業をどう伝えるかでも参考になる内容です。



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。