
今回は書評です。
ご紹介する本は、国士 (楡周平) です。
この記事でわかること
- 本書のストーリー
- エコシステムでの共存共栄
- 大局観なき成功は一時的
- ビジネスのベースはお互いの信頼関係から
この本はビジネス小説で一気に読み終えることができました。
ぜひ記事を最後まで読んでいただき、よかったらこの本を手に取ってみてください。
この本に書かれていること
以下は本書の内容紹介からの引用です。
日本経済を蝕むプロ経営者とフランチャイズビジネスの闇。
利益のためなら、加盟店も社員も使い捨て!?そんなやり方、絶対に許さねえ!
日本一のカレー専門店チェーンを舞台に、「この国の未来」 を創る経営ビジョンを示す、ビジネスマン必読の一冊!
リーダーたる者、志高く、次代を創るビジョンを語れ――
カレー専門店 「イカリ屋」 の老創業者・篠原悟は、加盟店と一致団結してチェーンを日本一に押し上げた。
だが、人口減少社会を迎えた国内だけは成長は見込めず、アメリカに打って出ることに。それを機に、篠原は自らは経営から身を引き、海外進出と、この国の将来を見据えた経営を、コンビニやハンバーガーチェーンを立て直した実績を持つプロ経営者・相葉譲に託したが……。
読んで考えさせられたこと
この本を読んで考えさせられたのは、次の三つです。
読んで考えさせられたこと
- エコシステムでの共存共栄
- 大局観なき成功は一時的
- ビジネスのベースはお互いの信頼関係
ではそれぞれについて順番にご説明します。
[学び 1] エコシステムでの共存共栄
この本での問題提起の一つは、フランチャイズというビジネスモデルの功罪です。
フランチャイズは優れたビジネスモデルですが、成功するための前提はエコシステム全体での共存共栄です。
本部とフランチャイズ (加盟店) で、本部が過剰に利益を獲得するようになると本部とフランチャイズのバランスが崩れ、持続可能なビジネスモデルではなくなります。どちらかがどちらかの犠牲の上に立つような状態になれば、短期的には成果が出ても長くは続きません。
フランチャイズをないがしろにし、切り捨てるような本部の一方的な方法で本部の利益を最大化させると、本部とフランチャイズのエコシステムが崩壊するのは時間の問題です。
エコシステムでの共存共栄から考えさせられたのは、一方的に自分たちが勝ちすぎる・儲けすぎる状況の是非です。皆で Win となる 「三方よし」 を目指すべきです。
[学び 2] 大局観なき成功は一時的
先ほどのエコシステムでの共存共栄にもつながりますが、短期的に成功したとしても、大局観がなければ成功は一時的です。
小説のストーリーでは、優良フランチャイズ店の近辺に直営店を開店するという戦略が実行されました。
この戦略の背景は、一店あたりの売上は減ったとしてもフランチャイズと直営店のトータルでは売上が増加するのでよいというロジックです (Before: 1売上 × 1店 = 1, After: 0.75売上 × 2店 = 1.5) 。
しかし、これをされたフランチャイズ店はたまったものではありません。本部を信頼していたにもかかわらず、自分たちの背中から鉄砲球が飛んできたようなものです。
ドミナント戦略という名目で同じエリアにフランチャイズと直営店が併存する状況は、一時的に成果が上がったとしても、長い時間軸で大局観がなければ成功は長続きしません。
[学び 3] ビジネスのベースはお互いの信頼関係
ストーリーでは本部のあからさまな利益追求と一方的な戦略変更によって、フランチャイズ店は戸惑い、長年かけて少しずつ蓄積してきた信頼関係が崩れていきました。
読みながら考えさせられたのは、ビジネスのベースにはあくまでお互いの信頼関係があってこそです。
過度な競争促進による利益追求によって、確かに短期での売上は増加するでしょうか。しかし、お互いの信頼関係が無くなっては本末転倒です。
儲けよりも信頼の獲得の重要性を改めて考えさせられました。一度信頼を失えば、取り戻すのは簡単ではありません。
まとめ
今回は 国士 (楡周平) というビジネス小説を取り上げました。
いかがだったでしょうか?
最後に今回の記事のまとめです。
本書の概要
プロ経営者とフランチャイズビジネスへの問題提起。リーダーシップやビジョンを描く重要性の視点で、おもしろく読めるビジネス小説。
読んで考えさせられたこと
- エコシステムでの共存共栄
- 大局観なき成功は一時的
- ビジネスのベースはお互いの信頼関係
国士 (楡周平)