投稿日 2023/12/09

カシオの電子ピアノ専用イス。全体を広く捉えてのお客さん目線での価値訴求

#マーケティング #全体像 #一貫性

商品は、あくまでお客さんの日常やライフスタイル全体で見れば、one of them という 「数ある中の1つにすぎない存在」 です。

今回は、カシオの電子ピアノ専用の椅子の事例から、商品を広く捉えたお客さん目線になっての価値の見出し方と伝え方を紐解きます。

電子ピアノ専用の椅子


出典: 日経

カシオ計算機が、電子ピアノ専用の椅子を発売しました。

特徴は電子ピアノ専用に設計されているだけではなく、部屋全体にも馴染むようなデザインになっていることです。

通常のピアノ用の椅子は長方形になっていることが多いですが、こちらの椅子の座る部分が円形です。4本足の色合いはピアノ本体の色に合わせています。

長時間座ることも想定してクッション部分にはウレタンが採用され、演奏する際の重心移動にも耐えられるように設計されています。座面を回転させて椅子の高さも姿勢に合わせて自由に調節できます。

販売するお店では、一部の楽器専門店や家電量販店ではピアノ本体と椅子を一緒に展示しています。


学べること


ご紹介しているカシオ計算機の電子ピアノ専用椅子は、部屋全体に調和する家具という特徴を持っています。

商品が置かれる空間全体を展示


店頭での商品の売り方においても、部屋や空間への調和が反映された商品展示がされています。

たとえば池部楽器店が運営する電子ピアノ専門店 「あのぴあの」 では、店内に部屋のような空間をつくり、ラグや観葉植物を置き、明るさの調節も可能な照明を配置した中でピアノと椅子が売られています。

部屋全体が実物で再現されているので、お客さんが実際に椅子がどのように自分の部屋に置かれるかがイメージしやすくなります。ピアノと椅子がライフスタイルに溶け込んだ環境をつくるという 「買った後の未来の絵」 がお客さんの頭の中で描かれやすくなります。

お客さん目線で一貫した価値訴求を


このようなアプローチは、お客さんが日常でどのように商品を使うか、さらにはどのようなライフスタイルに合致するかという点まで広く考慮してのものでしょう。

カシオは、ピアノや椅子が単に音楽を奏でるための道具ではなく、お客さんの生活を彩る存在となり得ることを強調しています。

ここまで見てきたように、お客さんの視点で商品の意味合いや価値を広く全体的に捉え、商品開発からマーケティング、そして販売まで一貫したメッセージで訴求することが大事です。

今回のカシオの事例から学べるのは、商品開発、マーケティング、販売で連動し、統一した訴求ポイント、すなわち 「環境への調和」 というコンセプトを打ち出していることです。

各段階でブレないメッセージを持つことで、お客さんからの信頼性も高まるでしょう。一貫した姿勢はブランディングにもつながり、結果として売上にも寄与します。


まとめ


今回はカシオの電子ピアノ専用椅子を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • お客さんにとっては自社商品はその空間の中での one of them にすぎない。よって商品を単体として見るのではなく全体をより広く捉え、使われる環境において他のモノとの関連や調和を考えるといい

  • お客さん目線で商品の価値を一貫して訴求することが重要。商品開発、マーケティングから販売まで、同じコンセプトからのメッセージを打ち出し、ブランディングにも貢献し、最終的には売上向上にもつながる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。