列に並ぶ待ち時間は退屈で、できれば避けたいものですよね。しかし、もし待つ時間が、逆に楽しくなるとしたらどうでしょうか?
今回は、お店に並び待つことを 「やりたい」 と思えるものに変えるユニークなサービスをご紹介します。
サービス事例から、「弱み」 を 「強み」 に変えるマーケティングの方法を紐解きます。
Fun to Wait
出典: バカン
タイムパフォーマンス (タイパ) が重視される風潮がありますが、バカンが新しいサービス 「Fun to Wait」 の提供を開始しました。
行列に並ぶとポイントがもらえる
このサービスは、お店などの行列で待った時間に応じてポイントを獲得できるというものです。待ち時間1分ごとに1ポイントが付与され、一定のポイント数になればお店でドリンクなどと交換できます。
もともとバカンは商業施設や飲食店などの混雑状況をセンサーでとらえ、スマホやデジタルサイネージに表示するサービスを提供してきました。ユーザーは商業施設のトイレの空き状況をスマホで確認できたり、空いているトイレに行けば待つことなくトイレを利用できるといった利点があります。
待ち時間のパラダイムシフト
待ち時間というものは、多くの人にとって無駄でつまらないものと捉えられています。行列に並んで待っている時間は退屈で、いかに待ち時間を最小限にできるかを考えるでしょう。
しかし、バカンの 「Fun to Wait」 という新サービスは、待ち時間がポイントになり、ポイントがたまると商品と交換できるようにすることで、人々の 「待つことの意味合い」 を書き換えようとしています。待ち時間そのものを楽しみに変え、ポジティブなものにするというサービスです。
待ち時間に対する通常の考え方、つまり 「待ち時間を減らしたい」 から、「待ち時間が増えるとポイントがたまってうれしい」 、さらには 「待ち時間を楽しめる」 というパラダイムシフトを起こしているのです。
マーケティングへの示唆
弱みを強みに
Fun to Wait の事例から学べるのは、逆転の発想をすることで 「弱み」 を 「強み」 に変える重要性です。
待ち時間はネガティブなものと捉えられ嫌がられるという意味で 「弱み」 だったことを、Fun to Wait という仕組みを提供することによって、ユーザーは積極的に行列に並びたい、待ち時間を楽しみたいという 「強み」 に変えたわけです。
マーケティングの役割
弱みや強みは相対的なものです。
同じものでも、それを比べる人によって変わります。また、同じ人でもその時の状況や比べる対象によって変わるでしょう。すなわち 「誰が、どういう状況で、何と比べるか」 によって、弱みになることもあれば、切り口を変えれば強みにもなるわけです。
ここでマーケティングの話につなげると、マーケティングの役割に示唆があります。
マーケティングの役割は、商品の魅力を引き出し、お客さんにとっての価値に言い換えてお客さんに提案し、お客さんからの 「買いたい」 をつくることです。気持ちや態度を変え、来店や購買という行動変容を起こすことにあります。
バカンの 「Fun to Wait」 というサービスからは、人々から弱みだと思われていたことを強みとして打ち出すためのヒントが得られます。
まとめ
今回はバカンの 「Fun to Wait」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- Fun to Wait のサービスは、待ち時間という通常は退屈な 「弱み」 と見られることを、積極的にやりたくなる 「強み」 に変え、新たな価値を生み出すパラダイムシフト
- 弱みや強みは相対的。「誰が、どういう状況で、何と比べるか」 によって、1つの事象や特徴は弱みにも強みにもなる
- マーケティングの役割は、商品やサービスの魅力を発掘し、お客さんにとって欲しくなる価値として提案し、お客さんの態度変容と行動変容を起こすこと
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