本当は欲しいのに、物理的・心理的ハードルがあるために、「◯◯ とはそういうもの」 と人々に諦められている問題を見出すことで、ビジネスチャンスが広がります。
今回は高齢者に 「食べる喜び」 をもたらすユニークな食品から、マーケティングの観点で学べることを解説します。
スプーンで食べる 「喉につまらない」 お餅
出典: アサヒグループ食品
アサヒグループ食品が、喉に詰まりにくいお餅を開発しました。介護食の 「バランス献立 スプーンで食べるおもち」 です。
一般的なお餅と比べて固さを約 70% やわらかくし、付着性を約 93% 下げたことでお餅が口の中や喉にくっ付くのを抑えます。味は二種類あり、普通のお餅とよもぎ餅です。
お餅は、かむ力や飲み込む力が弱くなっている高齢者には喉に詰まりやすく、口の中ではりついてしまう食材です。
一方で高齢者からは食べたいと思われる存在がお餅です。アサヒグループ食品が実施した調査によれば (詳細はリリース) 、
- お餅は 「介護が必要になる前に食べていた食材の中で、食べることが難しくなった (食べられなくなった) 食材」 のトップ
- 「被介護者に餅を食べさせてあげたい」 と思う介護者は 84% いる
そこでアサヒグループ食品は、お餅らしい風味を再現しながらも、お餅に対する不安を解消するべたつきを抑えた食べやすいお餅として、「バランス献立 スプーンで食べるおもち」 を開発しました。
介護者の負担軽減に加えて、"食べてもらいたい" という思いや、介護される高齢者の "食べる楽しさ" に貢献することを目指すお餅です。
学べること
では 「バランス献立 スプーンで食べるおもち」 から、学べることを掘り下げていきましょう。
多くの人々が諦めている問題
注目したいのは、今回の事例は本当は食べたい・欲しいのに、物理的・心理的ハードルがあったり、「◯◯ とはそういうもの」 と人々に諦められている問題を見出したことです。
お餅は、高齢者にとっては 「お餅はおいしいけれど詰まりやすい」 と思われていて、高齢者は本当は食べたいのに食べられない状態を余儀なくしていました。
アサヒグループ食品はこの問題を解決する新しい方法を提示しました。自分たちならではのアイデアと方法で詰まりにくいお餅を開発することで、高齢者が安心して食べられる新たな選択肢を提供したのです。
人は 「価値」 を買う
マーケティングにおいてしばしば忘れられがちなのが、人は 「商品」 ではなく 「価値」 を買っているということです。
今回の 「バランス献立 スプーンで食べるおもち」 に当てはめると、やわらかく、喉にくっつきにくい他にはないお餅なので、高齢者にとっての 「食べる楽しさ」 をもたらす存在です。高齢者の人たちだけでなく、介護への負担も軽減するため、介護者にも恩恵があります。
単に 「詰まりにくいお餅」 という商品ではなく、「安全にお餅を楽しめる食事のひととき」 という価値をもたらしているわけです。
成功するマーケティングとは
学びとして最後に一般化すると、次の4つがポイントになります。
- ターゲットとする人々 (想定顧客) がなかば諦めているニーズの発掘
- 解くべき問題の設定
- 問題解決からの独自の価値提案
- お客さんが本当に求めていた価値の実現
1つ1つを順番に進めていった先にマーケティングの成功があるのです。
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