今回は、本を1冊ご紹介します。
Sales is 科学的に成果をコントロールする営業術 (今井晶也) です。
この本からは、マーケティングの視点からも営業について多くの具体的な学びが得られました。
本書の概要
営業支援をするセレブレックスという会社の 「これまで23年の実績で得られた営業手法」 を1冊に凝縮させた本です。
この本は、営業の中でも法人向けビジネス (BtoB) の新規顧客獲得にフォーカスしています。
書かれているのは、セレブレックスが顧客向けに1冊50万円で提供してきた営業ノウハウです。これを一般読者向けに、さらにわかりやすく噛み砕いて解説しています。
サブタイトルは 「科学的に成果をコントロールする営業術」 で、特定の優秀な人だけができる営業方法ではなく、再現性を追求したノウハウが惜しみなく公開されています。
新しいお客さんを獲得する営業方法
お客さんを主語にする
営業で意識すべきなのは 「売り方」 ではなく、「 (お客さんの) 買い方」 へのマインドシフトです。
売り方と買い方のマインドセットを具体的に比較すると、次のようになります。
- 売り方: この ◯◯ というサービスが売れ筋です。多くの企業に選ばれていて、現在キャンペーン中です
- 買い方: 御社の目標である3年後に社員数を2倍にするためには、今から □□ に取り組む必要があります。そのためにご提案したいのが ◯◯ です
本当にお客さんの立場になって考えるなら、目指したいのは後者の 「買い方」 の提案です。営業パーソンの立ち位置は 「買いものアドバイザー」 となります。
営業パーソンがどれだけすばらしい提案をしても、最後の意思決定はお客さんが行います。購買理由はそれぞれありますが、突き詰めるとお客さんは今よりも良くするために商品を買います。だからこそ営業では、お客さんを主語にした 「買い方」 の視点でものごとを捉え、提案することが大事なのです。
お客さんの課題発見
新規のお客さんにこちらから営業する場合、すでに顕在化しているお客さんの課題をただ聞くだけでは十分ではありません。
新規営業ではお客さんがまだ気づいていない重要な課題を示し、相手に問題意識を持ってもらうことが大事です。そうなってはじめて解決する意欲が高まり、こちらからの商品提案を受け入れる態勢ができます。
新規での営業は、解決策を提案する前に実は勝負が決まっています。解決すべき問題や課題を示せるかがポイントです。お客さんがまだ気づいていない課題を、いかに提案する側から先んじて発見できるかが、新規営業を成功させるカギを握ります。
お客さんの置かれた状況をリサーチし、問いや示唆から新たな課題を発見・設定することになりますが、これはコンサルタントが求められる能力そのものです。
お客さんの要望をただ聞くのではなく、目指すスタンスは、課題を発見しにいく、あるいは仮説として見出した課題を検証しにいくという営業主導の姿勢がいいでしょう。営業とは相手の価値基準を確かめる行為であり、相手の価値に合わせて情報を加工して提案する 「情報加工業」 でもあるのです。
お客さんが抱える課題を一緒に見つけ、その課題に対する解決策を提案することが、新規営業の成功につながります。
ただし、お客さんは必ずしも他社の営業パーソンからの直接的なコンサルティングを求めているわけではありません。ここには注意が必要です。
というのも、営業担当者が過度にコンサルティングの姿勢を見せすぎると、逆効果になることがあるからです。相手からは 「何を偉そうに」 と受け取られてしまいかねません。新規のアウトバウンド営業で、お客さんに対して 「御社の課題は何ですか?」 とストレートに訊くことは避けたほうがいいでしょう。
営業が行うべきコンサルティングは、"結果として" お客さんの課題を解決する提案になっている状態です。課題を教えてくれと懇願するアプローチとは似て非なります。
提案の流れ
営業からの良い提案には、以下のポイントが満たされています。
- お客さんの課題を解決する提案になっている
- 相手の評価基準で優位性が示された提案である
- 実現性や競合優位性が合理的でわかりやすい
- 課題解決の道筋や手順が一連のストーリーとして理解できる
提案のストーリー展開の基本は、起承転結ではなく 「起 "転" 承結」 で進めるといいでしょう。
一般的な文章構成は起承転結です。起承転結とは、起こした話題を承 (う) けて話を発展させ、あるタイミングで状況が一転する急展開を迎え、最後に話をまとめて結ぶという流れです。
一方の新規営業の提案では、起 "転" 承結となるように 「承」 と 「転」 を入れ替え、先に 「転」 をもっていきます。提案書の目的を起こして、早い段階で転という問題提起をしたほうが、その問題への展開や商品導入の動機を生みやすいからです。
起 "転" 承結の提案ストーリーは次のようになります。
- 起: お客様は ○○ を目指すべきだと考えます
- 転: ところが、今の状態のままだと実現できません (課題感の醸成)
- 承: なぜなら、問題を引き起こしている要因として ✕✕ があるからです
- 結: そこで、弊社の商品・サービスを導入して改善を図りませんか?
起で理想や目的をそろえ、転と承の順番で問題意識や課題感を共有します。早い段階で聞き手に危機感を抱いてもらったほうが、退屈せずに集中して話を受け入れてもらいやすいでしょう。
ここでは相手がまだ気づいていないものの、「よく考えてみると取り掛からないとヤバい」 や 「今すぐ解決しなければ」 と思ってもらえると、結での商品紹介 (解決策提案) につながりやすいです。
お客さんが求めていること
お客さんが契約するのは、商品・サービスというよりは厳密には 「問題解決への可能性」 です。
そこで営業にとって重要になるのは、期待や可能性をお客さんに見せる方法です。営業パーソンがスキルとして磨くべきは 「可能性の見える化」 なのです。見える化によって、いかにお客さんに商品の 「重要性」 と 「緊急性」 を認識してもらえるかです。
いざお客さんが購買や導入を検討する段階に入ったら、今度は 「実現性の証明 (使うと便利になる証拠) 」 と 「自社商品の競争優位性」 を示すことがポイントになります。
前提として忘れないようにしたいのは、お客さんは必要なものであれば買うということです。
もし商品が売れないのであれば、それはお客さんがその商品に対する 「必要性」 を感じていないということです。商談相手に必要性を感じてもらえるような 「正しい課題設定」 ができていないわけです。
お客さんがまだ気づいていない課題から示し、問題意識を持ってもらうことで、はじめて解決意欲が高まり商品の提案もスムーズに入れます。
新規顧客の見極め
新規のお客さんを獲得するためには、ただ営業力を高めるだけではなく 「探客力」 という適切なお客さんを探す能力を磨くことが重要です。
確かに高い営業力があれば、一部のお客さんを 「買わない」 状態から 「買いたい」 という状態へと変えられるでしょう。しかし、あくまで一部にすぎません。
新規営業で接触する商談相手の多くは、まだ課題意識や購買意欲が高くない場合が多いでしょう。それゆえ、少しでも購買可能性の高いお客さんを見つけ出すことが新規顧客獲得の成否を分けます。
まとめ
今回は、Sales is 科学的に成果をコントロールする営業術 (今井晶也) という本をご紹介し、読んで学んだことを共有しました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 「買い方」 の提案: 営業は 「売り方」 より 「お客さんの買い方」 にフォーカスする。営業担当者は 「買いものアドバイザー」 になるといい
- 課題の発見: 新規のお客さんへのアプローチでは、すでに顕在化している課題だけでなく、相手がまだ気づいていない潜在的な重要課題を示すことが大切
- 提案の流れ: 提案は 「起 "転" 承結」 でつくり、お客さんの課題を示し問題意識を醸成したあとに解決策への必要性を訴求する。お客さんが本当に求めているのは商品そのものより 「問題解決の可能性」 。解決の実現性や競争優位を示す
- 探客力: 新規のお客さんを獲得するためには 「探客力」 を磨くことが重要。ターゲット顧客のリスト作成に時間を使うべき
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