投稿日 2023/12/21

ブックオフがファミコン / スーファミ互換機を独自開発し販売。美しい戦略のつくり方

#マーケティング #戦略

ものごとの表面だけを見るのではなく、その背後に隠れたストーリーや全体の流れを捉えることで、真の戦略の美しさが見えてきます。

今回はブックオフのおもしろい事例から、筋の良い戦略をつくる秘訣を紐解きます。

ブックオフのファミコン・スーパーファミ互換機



ブックオフが、ファミコン機とスーパーファミコン機を独自開発し、販売します。12月から順次、ブックオフ店舗での一般販売を始めます。

ブックオフは互換機メーカーのコロンバスサークルと協力して開発し、3種類のラインナップを用意しました。

  • ファミコン互換機 「8ビットコンパクト V2」 (税込み3980円) 
  • 持ち運びできるファミコン互換機 「8ビットポケットプラス クリアホワイト」 (6980円) 
  • スーファミ互換機 「16ビットコンパクト」 (6980円) 

もしかすると 「今さらファミコン?」 と思うかもしれませんが、ブックオフなら本業とのシナジーがあります。

どういうことなのか、戦略の観点から順を追って見ていきましょう。


ブックオフの戦略


レトロゲームの人気の高まり


まずはそもそものトレンドとしてあるのが、レトロゲームが近年人気を呼んでいる状況だということです。

レトロゲームへのニーズの高まりを受け、ブックオフは試遊台の設置や定期的なレトロゲーム買取キャンペーンを実施しています。

ブックオフのリリースによれば、2023年5月のレトロゲームの売上は前年同期比 158.5% とのことです。

ゲーム機本体の独自開発の狙い


ゲームは本体とソフトがセットです。ゲームソフトだけではなく、そのソフトを楽しむための本体のゲーム機が必要です。

ブックオフなどに出回る中古ソフトが活きるのもゲーム機本体があればこそです。もし売られている本体の数が増えなければ、ソフトが売れるためのボトルネックになりかねません。

そこでブックオフは任天堂の正規のファミコン機や他社の互換機が中古市場に出ることを期待して待つより、いっそのこと自分たちの手で作ってしまおうと考えたのでしょう。独自のブックオフ限定デザインのファミコン / スーファミ互換機を開発・販売することで、レトロゲームへのニーズを積極的に取り込もうとしているのです。

良い戦略とは


ブックオフのこの事例からの学びを一般化すると、筋の良い戦略とは何かに示唆があります。

局所的に一部分だけを切り取ってみたり、表面的に見れば、古いゲーム機を今さら自社開発し店舗で売っていくことは非合理的に見えるかもしれません。

しかし、ブックオフにとっては、すでに中古ソフト販売を手掛け、レトロゲームのソフト販売に注力しているので、ファミコン互換機の開発・販売によってシナジーが生まれます。このように、その背後のストーリーや全体の流れをしっかりと捉えると、合理的で良い戦略になるのです。

一見すると筋が悪く見える取り組みなので、他社は真似しようとは思わないでしょう。場合によっては他社が自ら避けてくれ、結果的にはこちらには入ってこないという参入障壁ができます。

局所的に見れば理解に苦しむ打ち手でも、背後にある構造と時間展開を紐解き、全体像を広く捉えれば理にかなったものになります。「一見すると非合理、全体では合理的」 という戦略は、ストーリーのある競争優位性を築くのです。


まとめ


今回は、ブックオフが限定デザインのファミコン / スーファミ互換機を販売するという話から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 一見すると非合理に見えても、背後にある全体のストーリーや流れが合理的であれば筋の良い戦略になる

  • 外部の人間からすると表面的にはうまくいくように見えないので、他社は真似しようと思わず、むしろ自ら避けてくれる。結果的に参入障壁をつくり出し、競争優位性を築ける

  • 全体像を広く捉え、構造化と時間展開から強いストーリーをつくることがビジネスの成功につながる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。