プロジェクトマネジメントで、「なぜうまく進まないんだろう?」 と頭を抱えた経験はないでしょうか?
目の前の多くの問題や課題に追われ全体像が見えなくなることが、プロジェクトの進行を妨げる要因です。
今回は、プロジェクトマネジメントでおすすめの1冊から、マネジメントをより良く行う秘訣を探ります。
ぜひ一緒に、プロジェクトを成功に導く道具を見つけにいきましょう。
本書の概要
新しいお客さんの獲得、商品の開発、事業の立ち上げといった業務は、高いマネジメントスキルが求められます。こうした実務を遂行する場合、様々な制限がつきまといます。
この本では、SI 開発やプラント建設といった狭義のプロジェクトだけではなくルーティンではない活動すべてを 「プロジェクト」 と捉えます。プロジェクトを成功に導くための方法をわかりやすく学べます。
本書のキーワードは 「プロジェクト譜 (通称 「プ譜) 」 です。
プロジェクト譜 (プ譜)
プロジェクト譜 (プ譜) は、プロジェクトをマネジメントをするための全体設計図です。
出典: Future Sessions
✓ プ譜の要素
- 勝利条件: プロジェクトのゴール。評価指標や終了条件
- 中間目的: 勝利条件を実現するためのマイルストーン
- 施策: 中間目的を実現するための具体的な行動内容
- 廟算 (びょうさん) 八要素: プロジェクトの前提情報。人材、予算、スケジュールなど所与のリソース・環境
プ譜は、「廟算八要素」 というプロジェクトの前提条件にもとづき、最終的な 「勝利条件 (ゴール) 」 に向かって、細分化された 「中間目的」 を達成するために個々の 「施策」 を行うというプロジェクトの全体ストーリーです。
終了条件と中間目的は、KGI と KPI の関係のように捉えると理解しやすいです。プ譜の要素を言い換えると、
- 前提条件
- ゴール設定 (KGI)
- 勝ち筋 (KPI)
- 打ち手 (実行施策)
終了条件への認識合わせ
プロジェクトメンバーでまずそろえるべきは、プロジェクトの 「目的」 「終了条件 (勝利条件) 」 や 「前提」 への認識です。ここがメンバー間でそろっていないと、プロジェクトが迷走する要因になります。
終了条件についてたとえを使うと、ある人は 「リンゴの木を成長させ果実としてリンゴを手が入った状態」 だと思っていたとします。しかし他のメンバーは 「おいしいフルーツが手に入った状態」 と抽象度の高いレベルで捉えているかもしれません。
人は立ち位置や見ている景色によって、同じ事象でも自分のレンズから目を通して見るので、必然的に認識に違いがでてしまいます。
大事なのは早い段階で認識をそろえることです。プロジェクトの目的に立ち返ると、必ずしもリンゴである必要はなく、終了条件はビタミンなどの栄養素を補うことかもしれません。であるならば、イチゴやオレンジなどの様々なフルーツを手に入れている状態と終了条件を設定すると、プロジェクトはより良い結果につながるでしょう。
たとえをもう少し続けると、「リンゴが欲しい」 という表面的なニーズに対して、「なぜリンゴなのか」 「リンゴを使って、結局のところどうしたいのか」 と掘り下げることが大事です。くわえて、「すぐ欲しいか」 「いつまでに欲しいか」 「予算はどの程度あるか」 と質問を重ねることも重要です。この過程でプロジェクトへの認識がそろっていきます。
このような議論をプロジェクトの立ち上げの早い段階でやっておくべきなのです。
プ譜のアップデート
プ譜の使い方で特徴的なのは、一度プ譜をつくって終わりではないということです。
プロジェクトを進める中で抜けていた要素が見つかったり、当初は想定していなかった想定外なことが起こるのがプロジェクトの常です。そこでプロジェクトの進捗状況に応じて、プ譜を適宜で書き換えていきます。
この本では、こうした考え方や行為を 「エディティング = 編集」 と捉えています。
プ譜は固定された静的なものではなく、プロジェクトの進行とともに変化していく動的な設計図です。
本質は 「プロジェクトのストーリー化」
プ譜の本質は、プロジェクトを1枚のストーリーにして可視化できることです。
ここで言うストーリーには、要素分解、構造化、時間展開という意味があります。
順番に補足すると、要素分解とはプ譜では、前提情報、施策、中間目的 (勝ち筋) 、終了条件 (ゴール設定) とそれぞれを詳細に分けて言語化します。
次に分解したこれらの要素を結んでいき、因果関係がわかるように構造化します。各施策がどう中間目的につながり、中間目的を達成することで最終的なゴールである終了条件になるかをストーリーのように見える化するわけです。
プ譜では左から右へ進み時間が展開していきます。また、プ譜をアップデートすることで、プロジェクトが時系列でどう発展したかも可視化されます。
プ譜とはプロジェクトの現状と見通しがわかる設計書であり、向かう先を示す地図の役割を果たしてくれます。
プ譜の解像度を高めるために
プ譜を使うとは、別の捉え方をすればプロジェクトの現状把握と今後の 「解像度」 を高めることにほかなりません。
では、プ譜の解像度を上げるためにどうすればいいかを最後に掘り下げていきましょう。
プ譜の完成度を上げるために参考になるのが、本のタイトル名がそのものズバリの 解像度を上げる - 曖昧な思考を明晰にする 「深さ・広さ・構造・時間」 の4視点と行動法 (馬田隆明) という別の書籍です。
本のサブタイトルにあるように、解像度を高めるために、今回の文脈で言えばプ譜の完成度を上げるためには、「広さ」 「深さ」 「構造化」 「時間軸」 の4つの視点が有効です。
- 広さ
マネジメントを見る視野を広げたり、時間軸を長くする視点。全体を俯瞰し、前提や打ち手がどのように影響を及ぼすかに目を向ける - 深さ
プロジェクトの影響への関連性や因果を深く掘り下げる。具体的な場面やシチュエーションを思い描き、その詳細にまで深掘りする - 構造化
プロジェクトのシナリオをプ譜として可視化し、メカニズムを動的に理解する。「広さ」 と 「深さ」 をかけ合わせたもの - 時間軸
プロジェクトが時間経過とともにどのように展開していくのかを捉える視点。直近だけでなく、中長期的に影響を考える
以上からプ譜の解像度を上げることで、プロジェクトマネジメントの精度を高めることができます。
まとめ
今回は、予定通り進まないプロジェクトの進め方 (前田考歩, 後藤洋平) という本を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- プロジェクト譜 (プ譜) は、プロジェクトをマネジメントをするための全体設計図。プロジェクトの現状と見通しがわかる設計書であり、向かう先を示す地図の役割を果たす
- プ譜で描かれるのは、プロジェクトの前提条件にもとづき、最終的な 「終了条件 (ゴール設定) 」 に向かって、細分化された 「中間目的 (勝ち筋) 」 を達成するために個々の 「施策」 を行うというプロジェクトの全体ストーリー。
施策、勝ち筋、終了条件の各要素を結んでいき、因果関係がわかるように構造化する - プ譜の解像度を上げるためには、広さ、深さ、解像度、時間軸の4つの視点を意識するといい
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