投稿日 2023/12/14

LANY のターゲット顧客設定。競合他社とは一線を画すレッドオーシャン戦略とは?

#マーケティング #顧客設定 #レッドオーシャン

今回のキーワードは 「レッドオーシャン」 です。

レッドオーシャンと聞くと、競合他社との競争の激しい市場を想像するかもしれません。一方、競合が少ないという別のレッドオーシャンもあります。

今回は、新しいレッドオーシャンへの視点を事例から解説し、独自の戦略をつくる秘訣を紐解きます。

ぜひ一緒に学んでいきましょう。

LANY のマーケティング


今回は LANY という会社を取り上げます。

LANY は2020年10月に創業した SEO のコンサルティングを提供するデジタルマーケティング支援会社です。

難易度の高いターゲット顧客


注目したいのは、LANY のターゲット顧客設定です。

コアターゲットを、「既に SEO が80点できているが、残りの20点を取れない企業」 としています (参考記事) 。

一般的には、こうした企業はすでに SEO の取り組みはできていて、平均水準を超える成果を SEO で出しています。SEO に精通している担当者が在籍し、Web サイトもほぼ完成された状態に近いため、支援会社からするとクライアントの期待を超える難度が高い企業です。本来は支援会社がより好んで狙っていく層ではないでしょう。

しかし、LANY はあえてこの層をコアターゲット顧客としてきました。

難易度が高い企業に応えるメリット


LANY は苦しい思いをしながらも、各プロジェクトで成果を出すために必死にもがいてきたことで恩恵が得られました。

  • 社内に専門性が蓄積され、担当者のレベルアップにつながった
  • クライアントが新しいお客様を紹介してくれた

前者はクライアントからの厳しい要求に応え続けたことで、LANY は会社も、個々のメンバーとしても成長できたとのことです。

後者の 「お客様がお客様を紹介してくれる」 も難しい SEO 案件に臨んだからこそです。LANY はコアターゲットである SEO にすでに詳しいクライアントのプロジェクトで成果を出し続けました。良い関係性を築き、他の企業を紹介してもらえれば、広告宣伝費をかけることなく新規顧客にリーチできるわけです。


学べること


では LANY の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

今回の話からは 「レッドオーシャン」 という視点に学びがあります。

お客さんの期待に応えるのが難しい市場


一般的にレッドオーシャン市場とは、競合他社が多く競争が激しいマーケットを指します。リソースがかかりコストも増え、利益が上がりにくい領域です。レッドオーシャンで勝つのは容易ではありません。

それに対して LANY の事例は、 「レッドオーシャン」 について別の捉え方ができる示唆を与えてくれます。

LANY がターゲットにしている顧客は、既に SEO では一定程度の成果を出してる企業でした。担当者は SEO に習熟し、Web サイトの完成度も高いために支援会社としてはお客さんの期待を超えるのが簡単ではない相手です。

LANY からすると自分たちの競合他社は少ないものの、向き合うお客さんのレベルが高く、自社の能力も相応にないと太刀打ちができません。

お客さんが期待する価値を提供するのが難しい市場であり、一般的なレッドオーシャンとは違う意味で、簡単にはいかないマーケットです。

 "レッドオーシャン" で得られる恩恵


通常のレッドオーシャンである 「競合他社との競争が激しい市場」 と、LANY が参入しているもう1つのレッドオーシャンの 「お客さんからの期待に応える水準が高く、生き残ることが厳しい市場」 を比べてみましょう。

後者のお客さんからの要求水準の高いレッドオーシャン市場では、参入し生き残り続けるハードルは高いものの、この市場でやっていけるノウハウや知見がたまれば、自社が得られるアドバンテージは計り知れません。

LANY の例では、次のようなメリットがもたらされました。

  • 社内に専門性が蓄積され、担当者のレベルが向上
  • クライアントが新しい企業を紹介してくれ、新規のお客さんが自然と増える

これらは 「お客さんのレベルが高いレッドオーシャン」 に挑戦したからこそ得られる恩恵です。

非合理に見える合理的な戦略


では、今回の事例から学べることを一般化してみましょう。

ビジネスの常識からは外れるように見える選択も、その背後に長期的な視点と戦略があれば合理的なものとなります。他社からは非合理と思われるので、他社からは真似されにくい独自の戦略になります。

 「その市場はうまみがないから参入すべきでない」 で思考停止すれば、その先のビジネスチャンスを見逃してしまいます。

市場の構造や意味合いへの解像度を上げ、もし自社が参入し注力するのであれば、どんな課題があるか、期待できるベネフィット、想定されるリスクは何かを掘り下げることが大事です。

視野を広げ時間軸を長くし、多角的な視点を持つことで、「一見すると非合理、全体では合理的」 という戦略がつくれるのです。


まとめ


今回は、企業の SEO の支援を行うコンサルティング会社 LANY の事例から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 一般的に競合他社との競争が激しい市場をレッドオーシャンと言うが、お客さんのリテラシーや要求水準が高く、期待を超える価値を出すのが難しい市場もレッドオーシャン

  • 後者のレッドオーシャンでは生き残るのは簡単ではないが、厳しい市場に挑むことで恩恵が得られる。たとえば社内の専門性の向上、顧客から信頼獲得、既存顧客から新規顧客の紹介などのメリット

  • 一見すると非合理に見えても、背後にある意図やストーリーがあれば合理的な選択となる。他社からは真似されにくい独自の戦略をとれる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。