投稿日 2019/03/01

書評: 人工知能を超える人間の強みとは (奈良潤) 。AI と人が共存するために、人の強み (直観と創造) を伸ばす


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1172回目のブログ更新です。

人工知能を超える人間の強みとは (奈良潤) という本をご紹介します。





このエントリーで読んでいただきたい内容は、以下です。

  • 本書の内容。機械と人のそれぞれの強み
  • 望ましい人と機械の関係
  • 直観と創造 (手段と目的)


本書の内容


以下は、本書の内容紹介からの引用です。

人工知能が単純作業から高度な知的作業までこなせるようになり、これまでの人間の価値が見直しを迫られている。かといって、人間が直面するあらゆる繊細な問題を解決するうえで、人工知能が常に正しい判断と意思決定ができるとはかぎらない。

正視眼で人工知能の可能性を見極めるにはどうすればいいか?人間の可能性を引き出すためには、何をすべきか?

この本は、人と人工知能 (AI) の比較によって AI について以上に、人間とは何か、人にしかできないことは何かが見えてきます。

読みながら、人の可能性をあらためて考えさせられました。


機械と人のそれぞれの強み


機械と人のそれぞれの強みは表裏一体です。


機械が優れていること


  • 作業の正確性:作業の正確さと迅速さ
  • 規則性:一定のペースでリズムを崩すこともなく作業を行なう。いつまでに、どれだけの量の生産が見込めるのかを予想できる
  • 論理性:チェスや将棋などの論理性が問われる知的作業に強い
  • 散漫することがない集中力:人間のように疲労を感じ、集中力が途切れることもない
  • 感情に左右されることがない:数値化されたデータによって判断するので、先入観や主観、感情の起伏などの影響を受けることがない


人が優れていること


  • 経験にもとづいた豊かな発想力:型破りな方法で生み出された抽象的なアイデアを、具体的なアイデアに変えていく能力
  • 高い創造力:具体化したアイデアを現実化するために実行する能力
  • 察知力:特に実際の現場で微妙な状況の変化や特徴を感知する能力
  • 環境の変化に対応しようとする積極性:状況の変化に対応しようとする。人間は環境や状況にある無数の条件を同時に情報処理し、変化に対応することができる
  • 意思決定の柔軟性:人間は状況の変化に対応できるだけでなく、変化に従って柔軟に意思決定ができる


上記と一部重なりますが、本書では人が優れている3つに、「創造力」 「指導力」 「決断力」 を挙げています。

  • 創造力:今までにないものをゼロからイチを創る。新しいものに価値を見い出す。問題を設定し、解決する
  • 指導力:組織の中でリーダーシップを発揮する。論理だけではなく、感情に訴える
  • 決断力:曖昧で不確実な状況においても決められる。決めるために重要ではないことを捨てる (引き算の発想)


人の強みのベースは 「直観」


本書で指摘するのは、人の強みのベースになっているのは 「直観」 だということです。

この本では、直観とは、「推理や論理を用いず、すでに習得している知識や技能、経験を通して瞬時に物事を判断する、または物事の本質を捉える人間特有の能力」 とします。

過去に習得した知識や認知パターンを想起し、それらを適切に組み合わせて問題解決する能力です。


人の 「忘れる」 という特徴


他にも、機械にはなく人ならでは特徴で興味深かったことがあります。

その1つは、人間は忘れるということです。考えさせられたのは著者の指摘で 「人は忘れる過程で、記憶を抽象化、概念化しているのではないか」 ということでした。忘却によって具体的な記憶を抽象化し、脳内に残しているという考え方です。

あらためて考えると、機械はデータを記録 (保存) し続けることができます。人は記憶です。

人は忘れますが、機械は忘却ではなく消去です。消去の際に、人のように抽象化・概念化をすることなくデータを消し去ります。

人の特徴は、具体的な情報や知識を抽象化し、それを他の具体的なものに応用できることです。


暗黙知・身体知 vs 形式知


人の特徴は、暗黙知や身体知を持てることです。暗黙知とは、経験や勘に基づく知識で言葉での表現が難しいものです。身体知は、例えば泳ぎ方です。

暗黙知に対して、形式知があります。形式知とは、言葉・数式・図表で説明や表現ができる知識です。

機械が持てるのは形式知です。形式知は人も機械も両方が持っています。

人が自分の暗黙知を言語化し形式知化することは、諸刃の剣です。暗黙知を形式知に変えれば、自分の知恵を知識に変換し他人と共有ができます。この積み重ねがあったからこそ、人類が文明を子孫に引き継げました。

暗黙知を形式知化するということは、人間しか持っていない暗黙知を形式知として機械とも共有できるということです。形式知だけの勝負であれば、人は機械には勝てないでしょう。

今の私の結論は、それでも人は暗黙知を形式知化しておくほうがよいと考えます。暗黙知を形式知に変えれば、その形式知から新しい暗黙知を得られると思うからです。


望ましい人と機械の関係


人と機械の強みは裏返しの関係で、表裏一体です。

人間と機械は補完できます。対立をするのではなく、協働し共創する関係が築けます。

そのために思ったのは、今後、人の強みは何か、自分たち人間にしかできないことは何かを意識し、強みを伸ばしていくと良いということです。

例えば、

  • 発想力
  • 創造力
  • 察知力
  • 変化への適応力 (リスクテイク)
  • 決断力

いずれも、ベースになっているのは直観です。直観の元になっているのは経験や体験、そこから得られる暗黙知や身体知です。


直観と創造


直観力を高めるためには、突き詰めると人間力を磨くことです。

というのは、直観は、論理や思考を通さずに瞬時に心で観て本質を理解し、判断することです。心を清くしておかないと、誤った直観になってしまいます。

直観についてもう1つ思うのは、直観とは手段であることです。目的は、創造をすることです。

新しいものを生み出す力は、人ならではです。


最後に


今回ご紹介した 人工知能を超える人間の強みとは という本は、当初の読むにあたっての 「問い」 は、人工知能とは何かでした。人はサブでした。

しかし、読み進めるうちにメインとサブが入れ替わりました。人の可能性や強み、強みをどう伸ばしていくかをあらためて考えさせる本でした。




人工知能を超える人間の強みとは (奈良潤)

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。