今回はマーケティングについてです。「メモの魔力」 をマーケティングに応用します。
✓ この記事でわかること
- 書籍 「メモの魔力」 の3ステップ (ファクト, 抽象化, 転用)
- マーケティングへの応用 (n1 分析)
- 顧客理解の解像度を高める方法
この記事で書いているのは2つのテーマの掛け合わせです。 抽象化思考とマーケティングです。
ぜひ最後まで読んでいただき、お仕事での参考になればうれしいです。
「メモの魔力」 の抽象化思考
書籍 メモの魔力 (前田裕二) に書かれているのが、抽象化力を高める3つのステップです。
✓ 書籍 「メモの魔力」 の3ステップ (抽象化思考)
- ファクト
- 抽象化
- 転用
抽象化思考の具体例
新 R25 に、著者の前田裕二さんへのインタビュー記事があります。記事には3つのステップがわかりやすい例で紹介されています。
以下は記事からの引用です。
幼少期に苦しかった経験は?
・ファクト
→ お金がなくて塾に行けないが、塾に行っている子のほうがどうしても賢い。でもその後、死ぬ気で勉強して追い抜いた。
・抽象化
→ 運命を努力で覆したい、逆境はバネになることを証明したいというのが自分のモチベーションになっている。
・転用
→ このモチベーションを原点に置いておけるような事業を創る。こういった憤りを持っている人に自分の体験を伝えて勇気を与える。
この3つのステップを、前田さんは下の図のようにノートに書いています。
左から 「ファクト」 「抽象化」 「転用」 です。

出典: 新 R25
* * *
マーケティングへの応用
ご紹介したメモの魔力の3ステップは汎用的に使えます。
ここでは応用例としてマーケティングに当てはめてみます。具体的には n1 分析です。
n1 分析とは簡単に言えば、一人のユーザーやお客さんを深く理解するアプローチです。インタビュー調査や観察調査などの顧客との対話から、時には顧客本人も自覚していない行動や奥になる気持ちまでマーケターは深く理解します。
n1 分析から見出した洞察をマーケティング戦略や施策に活かします。この時にメモの魔力の抽象化の3つのステップが使えます。
n1 分析と抽象化3ステップ
では n1 分析のプロセスを、3つのステップ 「ファクト」 「抽象化」 「転用」 で見ていきましょう。
✓ ファクト
- インタビュー対象者の発言を聴き読み込む (素直な目で)
- 構造化し可視化して整理する
- 一人のユーザーの事実として理解する
✓ 抽象化
- ファクトから 「要するに」 や 「背後にある本質」 を洞察する
- 具体的に掘り下げる着眼点は、事前の想定や仮説と違ったこと
- 背後にある構造要因
- 顧客が普段は自覚していない問題や課題
- 顧客インサイト (奥にあるがそうだと気づかされれば顧客を動かす気持ち, 心のホットボタン)
- 他のインタビュー対象者との共通点や相違点
✓ 転用
- 抽象化で見出した本質を、戦略や実行プラン (マーケティング施策) に転換する
- ファクトから抽象化した洞察に基づいてつくることがポイント
顧客理解の解像度を高める
インタビュー調査を続けていると、顧客理解に新しい気づきがあっただけで満足感や充実感が得られることがあります。
ここに注意が必要です。もちろん顧客理解は大事ですが、顧客理解はあくまで手段です。顧客のことを深く理解した上で、インサイトを次につなげることが大切です。
インサイトの次とはフォーサイトです。フォーサイトとは英語で Foresight と書くように、前や未来に向かう矢印です。
フォーサイトのための顧客理解を解像度を高くすると、3つの段階があります。
✓ 顧客理解の三段階
- 具体の理解 (ファクト)
- 本質の理解 (インサイト)
- 施策や価値提案の理解 (フォーサイト)
この三段階は最初にご紹介した 「メモの魔力」 の3つのステップと同じです。
ファクトだけで終わらず本質を捉えられるか、そして見出した本質を自分たちの文脈で具体的なアクションに落とし込めるかが問われます。
まとめ
今回はメモの魔力の抽象化の三段階をマーケティングに応用しました。
最後に記事のまとめです。
書籍 「メモの魔力」 の3ステップ
- ノートの見開き2ページに 「ファクト」 「抽象化」 「転用」 を書いていく
- やっていることは具体と抽象化からの横展開
マーケティングへの応用 (n1 分析)
- N1 分析とは、一人のユーザーやお客さんを深く理解するアプローチ
- インタビュー対象者の発言を構造化し可視化して整理する [ファクト]
- ファクトから 「要するに」 や 「背後にある本質」 を洞察する [抽象化]
- 見出した本質を、戦略や実行プラン (マーケティング施策) に転換する [転用]
顧客理解の解像度を高める方法
- 顧客のことを深く理解した上でインサイトを次につなげることが大切。インサイトからフォーサイトへ
- ファクトだけで終わらず本質を捉え、見出した本質を自分たちの文脈で具体的なアクションに落とし込もう