2010/12/27

Googleと「個人データ」を考える

「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることである」。これはGoogleが掲げるミッションです。

■Googleが無料サービスを提供できるワケ

グーグルは多くのサービスを提供しています。ウェブ検索、Gmail、グーグルドキュメント、カレンダー、グーグルマップ、YouTube、等々、ここで挙げきれないほど。そして特徴的なのは無料でユーザーに提供していることです。

なぜ無料で提供しているのでしょうか。別の表現をすればどこでお金を取っているのでしょうか。その答えは広告にあります。アドワーズという検索結果連動型の広告やアドセンスというコンテンツ連動広告がそれです。グーグルの考え方は、自社のサービスを使うユーザーが増えれば増えるほど、そこで表示される広告価値が上がる。よって、ユーザーには無料で提供してくれるのです。

■個人データの取得と活用

実は広告以外に、無料で提供する別の目的があると思います。それがユーザーの利用情報である「個人データ」の取得。

例えば、グーグルで検索に使われた検索語(クエリー)は履歴として蓄積され、別のユーザーの検索に活かされています。グーグルの検索ボックスに入力していくと、検索語の予測が複数表示されますが、あれが活用例です。このように多くのユーザーが使えば使うほど、グーグルの検索精度も向上していきます。グーグルにとっては個人データの取得、ユーザーにとっては利便性の享受という、ウィン-ウィンの関係が見えてきます(図1)。


個人データ活用のわかりやすい例がグーグルのブログ上で公表されていました。「Google 年間検索ランキングで、2010 年を楽しく振り返ろう」という記事がそれです(以下は記事から一部引用)。

出所:Google Japan Blog

■データから情報へ

個々人がグーグル検索を使って知りたいことは千差万別です。しかし、ユーザーの利用履歴という個人データを積上げることで、上記の例では今年の流行が見えてきます。個人データという状態では必ずしも整理されておらず量も膨大ですが、蓄積し体系立てることでデータは「情報」となります。

このことに関して、ドラッカーは著書「明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命」で次のように述べています。「整理して体系化しないかぎり、データは情報とならず、データにとどまる。意味をなすには、体系として把握しなければならない」。

個人データについて思うのは、ネットがありモバイルも含め個人の情報発信が普及しなければ、可視化できないものであったということです。

例えば、SNSやツイッターで発信される情報の多くは、昔は個人の中でしか存在しないようなものでしたが、今ではネット上に乗せることで情報が共有されます。個人データが価値を持つような有効活用される背景には、こういった技術の進歩に加え、データ収集システムやデータハンドリングなど、データから情報体系への仕組みができてきつつある点も大きいように感じます。

■Android OS普及と個人データ取得

グーグルに話を戻しますが、前述のようにグーグルが提供するサービスのユーザー数が増えれば増えるほど、また使用すればするほど、グーグルには個人データが集まってきます。PCでの使用に加え、アンドロイドOSのスマートフォンが普及していくことで、ますますその傾向が強まる可能性があります。

ちなみに、asymcoというハイテク市場分析系ブログで企業アナリストであるDediu氏が2011年末までのスマートフォンの普及動向を予測しています(図2)。

出所:asymco

左のブロックは米国調査会社ニールセンの調査データが出所です(2010年12月現在の最新の調査結果はこちら)。そして右側はDediu氏による推計で、緑色のアンドロイドOSシェア(人数ベース)が伸びているのがわかります。

■個人データ独占という課題

このように、グーグルはこれからも個人データの取得を拡大させる可能性がありますが、それは同時に、グーグル1社が独占的に個人データを収集するという課題も抱えることになります。その例がグーグルとヤフーの検索技術提携により、両社の日本での検索シェアは9割になることで、これに対しては反対する声や適切な競争環境を損なうことへの懸念もあります。

個人データが有効に活用されること自体は、世の中がより便利になる方向にあると思っています。ただ、よりよい世界になるには一方で課題も存在するのが現状です。


※参考情報

Google 年間検索ランキングで、2010 年を楽しく振り返ろう|Google Japan Blog
http://googlejapan.blogspot.com/2010/12/google-2010.html

Half of US population to use smartphones by end of 2011|asymco
http://www.asymco.com/2010/12/04/half-of-us-population-to-use-smartphones-by-end-of-2011/

U.S. Smartphone Battle Heats Up: Which is the “Most Desired” Operating System?|Nielsen
http://blog.nielsen.com/nielsenwire/online_mobile/us-smartphone-battle-heats-up/

経済教室|日本経済新聞2010年12月24日(金)朝刊


明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命
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2010/12/24

スマートフォンって何だろう?

日本経済新聞社が毎年発表している日経MJヒット商品番付で、2010年の東の横綱はスマートフォンでした(表1)。2010年の今年を振り返ってみると、ソフトバンクからはiPhone4、ドコモからXperia、Galaxy sが発売され、auからも待望のスマートフォンであるIS03が登場しました。

日本経済新聞から引用

■スマートフォンの需要増加と活用範囲拡大

今後のスマートフォン需要増加を示唆するデータを見てみます。野村総研の調査報告によれば、国内の携帯電話端末市場におけるスマートフォンは今後も伸び続けるようです。09年度の携帯市場は需要が落ち込んだようですが、10年度以降はスマートフォンが牽引し15年度は10年度比で携帯電話出荷台数が43%増。15年度の出荷台数のうちスマートフォンは70%を占めると予測しています。ちなみに10年度上期のデータですが、携帯出荷台数のスマートフォンシェアは11.7%とのこと(MM総研)。まとめると、ざっくりと言ってしまえば、スマートフォンは携帯市場全体を拡大させ、かつ出荷台数シェアが7倍に増えるのです。

次にスマートフォンの活用範囲拡大について。日経トレンディ12月号で、これまた毎年恒例の来年のヒット商品を予測する「2011年ヒット予測ランキング」が掲載されていました。1位が「得するジオゲーム」、そして3位が「スマホリンク家電」で、ともにスマートフォンに関係するものです。

まず1位のジオゲームですが、foursquare(フォースクエア)やコロプラ(コロニーな生活☆PLUS)などによる位置情報を活用したサービスで、これにSNSなどのソーシャル性や飲食店などの割引クーポン、あるいは旅行ツアーなどが融合するだろうと予測しています。一方、スマホリンク家電ですが、これは様々な家電とスマートフォンが連携するという話で、テレビやレコーダー、カーナビ、玩具などです。テレビ・レコーダーとの連携ではスマートフォンがリモコンとなるだけではなく録画予約もアプリでできたり、玩具ではスマートフォンでラジコンヘリコプターの操作ができスマートフォンの画面上にはヘリ搭載カメラからの映像が見られるようです。こんな感じで、スマートフォンが様々な家電のハブのような役割を担うようになるのではないでしょうか。

■世の中のIT進化スピードと同期する

ここまでスマートフォンの将来需要増加や今後の活用範囲拡大について見てきました。個人的にもiPhoneを使っておりもはやなくてはならないほど重宝しているわけですが、そもそもスマートフォンって何がすごいんだろうと考えてみました。で、自分の中での1つの結論として、従来の携帯電話(フィーチャーフォン、ガラケー)と比べて、スマートフォンは世の中のIT進化スピードに同期する点にあるというものです。

スマートフォンの何が便利かと言えば、豊富なアプリであったり操作性があります。別の特徴として、アプリの追加、OSやアプリをアップデートすることができ、常に最新の状態に維持できることがスマートフォンの優れている点だと思います。しかもアップデートの大抵の場合が無料で。もちろんアップデートすることで不具合が発生するリスクもありますが、最新の状態が維持できるということは、それはつまり世の中のITが進化するスピードと同じように自分のスマートフォンもアップデートできるのです。

従来の携帯はハード面の要素が強く、スマートフォンはアプリなどのソフトの要素が大きいと感じます。携帯をハードと見た場合の買い替えサイクルは、3年半もあります(MM総研調べ)。これはつまり、携帯をアップデートするのに3年半も時間を要するということです。一方のスマートフォンのOSやアプリのアップデートはどうでしょうか。OSやアプリによりそのサイクルは様々であるとは言え、明らかに携帯買い替えより早いサイクルでまわっています。新しいアプリも次々に登場しスマートフォンに追加することができます。

世の中のIT進化と同じように自分のスマートフォンが進化(アップデート)すると、何か新しい技術やサービスが登場すればそれがすぐに自分のスマートフォンにも反映できます。こうして、新サービスの提供とユーザーの評価・フィードバックが従来よりも短い期間で行なわれ、ますます進化が加速していくのではないでしょうか。これが世の中のIT進化スピードに同期するスマートフォンの大きな特徴だと思います。こう考えると、まだまだスマートフォンの可能性っていろいろあり、今後の進化が楽しみです。

※参考情報

2015年度までのIT主要市場の規模とトレンドを展望(2)(2010.10.20)|野村総合研究所
http://www.nri.co.jp/news/2010/101220.html

2010年度上期国内携帯電話端末出荷概況(2010.10.26)|MM総研
http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120101026500

携帯電話端末の買い替えサイクル調査(2009.3.12)|MM総研
http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120090312500


2010/12/23

Netflixのビジネスモデルとユーザーの利便性

アメリカにネットフリックス(Netflix)というDVDレンタル会社があります。日経ビジネス2010.12.20/27号でネットフリックスが取り上げられていました。記事内にあったネットフリックスの2010年度の数字を引用しておきます(いずれも見込数で、2010年よりカナダにも進出)。

・会員数:1900万人
・売上高:21億5000万ドル(約1800億円)
・純利益:1億4600万ドル(約120億円)

■ネットフリックスのビジネスモデル

同社ではDVDレンタルだけでなく、ストリーミングでも利用可能です。ストリーミングというのは動画などの重いファイルを受信しながら再生する技術で、YouTubeなどでも採用されています。ネットフリックスは無店舗経営であり郵送とストリーミングでの提供に特化しています。返却について日本語のWikipediaには、「アパートなどの集合住宅以外は、郵便物は自宅の郵便受けに入れておけば配達員が配達のついでに回収して行くため、返却も容易である。」と記載されています。

料金は全て月定額制で、例えば月額7.99ドルでストリーミングが無制限に、9.99ドルでDVDレンタルとストリーミングで映画が見放題。また、店舗型のDVDレンタルにある延滞料金は存在しません。実はこれ、同社のリード・ヘイスティングス(Reed Hastings)CEOがネットフリックスを創業したきっかけにもつながります。Fortuneの記事には、レンタルした「アポロ13」のビデオの延滞料金が40ドル発生してしまい、この時に感じた理不尽さから郵送で貸し出すビジネスモデルのアイデアを思い付いたエピソードが紹介されています。これは1997年当時のこと。その後1999年に、現在の月定額での料金モデルに変更し一気に人気を博しました(参照:Wikipedia)。

■ネットフリックスの利便性

DVDをレンタルする時に自分でお店に足を運ばなくてよいというのは、アメリカでは日本以上にメリットが大きいように思います。というのは、子どもの頃に少しアメリカに住んでいたことがあるのですが、ニューヨークとかロサンゼルスなどの一部大都市を除けば、アメリカにはすぐ近所にコンビニが、車社会なので最寄の駅にツタヤがあるという日本のような環境ではありません。だからお店へレンタルしに行こうとすると、車で出かけて選んで帰ってくるだけで1時間とかかかってしまうかもしれません。そう考えると、ネットフリックスのように郵送レンタルやストリーミングでの提供に日本以上のユーザーメリットがあるように思います。

ネットフリックスのHPを見てみると、ストリーミングで見られる端末が充実していると感じました。PCで再生できるのはもちろんのこと、ゲーム機では、プレステ3をはじめ、WiiやXbox360にも対応しています。さらには、ソニーやパナソニック、LG、サムスンなどからはネットフリックス内臓のテレビが発売されているようです。ブルーレイプレイヤーにも入っています。モバイルにも対応しており、iPhoneやiPadへはネットフリックスアプリを提供しています。

以上のような、「映画をレンタルするのに出向く必要がない」、「見られる端末が充実していること」はユーザーにとってすごく便利だなと感じます。コンテンツを見たい時に手に入れることができ、見る端末環境の選択肢がある。これって言われれば当たり前のような状況かもしれませんが、日本ではまだまだこのような環境は整っていないのではないでしょうか。ようやくApple TVなどの登場しましたが、映画のレンタルはお店に出向くというスタイルが一般的だと思います。

■見たい時に見たいものを見る

理想を言ってしまえば、映画だけではなくテレビ番組や音楽PVなどあらゆるコンテンツを「見たい時に」「見る環境に合った端末で」見ることができることです。これが実現するためには、対応する端末、ストリーミング配信や課金制度が整ったプラットフォーム、豊富なコンテンツなど、3層それぞれでの整備・充実が不可欠です。最近、Apple TVの販売台数が100万台と突破するという報道がありましたが、ストリーミングでの視聴はますます一般的になるはずです。となれば、日本でもネットフリックスのようなビジネスモデルが普及していくのを期待したいです。

※参考情報

Netflix
http://www.netflix.com/

Netflix|Wikipadia
http://en.wikipedia.org/wiki/Netflix

ネットフリックス|Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9

How Netflix got started|Fortune
http://money.cnn.com/2009/01/27/news/newsmakers/hastings_netflix.fortune/

Netflix対応デバイス
http://www.netflix.com/NetflixReadyDevices?cid=Game+Consoles

Apple TV、今週中に100万台突破の見込み―iTunesのTV、映画ストリーミングの利用も急上昇|TechCrunch
http://jp.techcrunch.com/archives/20101221new-apple-tv-sales-to-top-1-million-this-week-itunes-tv-show-and-movie-rentals-soaring/

Reed Hastings: Leader of the pack|Fortune
http://tech.fortune.cnn.com/2010/11/18/reed-hastings-leader-of-the-pack/

Fortune 2010 Business Person of the Year: Netflix CEO Reed Hastings|WebNewser
http://www.mediabistro.com/webnewser/fortune-2010-business-person-of-the-year-netflix-ceo-reed-hastings_b9689


2010/12/18

グルーポンの大幅割引の目的と課題

ビデオリサーチインタラクティブから、グルーポンなどの「クーポン共同購入サイトの動向」が発表されています。自宅PCからの2010年10月度の推定訪問者数は306万人で、わずか2か月前の8月から2倍の規模になったそうです(図1)。8月:159万→10月:308万人。なお、集計対象のクーポン共同購入サイトは、グルーポンやポンパレを含む計92サービスです。

 クーポン共同購入サイト全体の推定訪問者数 時系列推移(2010年4月~10月)(自宅PC)

 出所:ビデオリサーチインタラクティブ

■グルーポンとモラタメ

クーポン共同購入サイトの仕組みは、一言で表現すると「みんなでクーポンを買って割引を共有する」というものです。

グルーポン(Groupon)の語源はGroup+Couponです。もう少し詳細を見ると、各クーポンは締切期限や規定人数が設定されており、期限内にその人数が集まらないとクーポン購入が成立されません。

そこで、購入希望者は成立されるようにクーポン情報を宣伝することになりますが、そこで威力を発揮するのがツイッターやブログなどの個人による情報発信ツール。ある程度まとまった人数で買うとディスカウントが効くこと自体は目新しいものではありませんが、それにネット上にあるツイッターなどのリアルタイム性+ソーシャルがうまくマッチした仕組みだと思います。

クーポン共同購入サイトとはやや仕組みが異なりますが、自分の欲しい商品・サービスが割引されて利用できるサイトに、モラタメサンプル百貨店などがあります。

例えばモラタメは、モラえる+試(タメ)せるからきている名前で、新商品などの商品を無料でもらえたり、送料のみの負担で試せるのが特徴です。送料が有料でもその商品の定価よりは安いので消費者にとっては割引と同じことと言えます。モラタメやサンプル百貨店の特徴は、使用した後にその商品の感想をブログやコメントを通じてモラタメに返す点にあります(図2)。


■なぜ大幅割引や無料なのか

ではなぜグルーポンには大幅な割引があり、モラタメは無料(一部送料のみ負担)なのでしょうか。

まずグルーポンについて、なぜクーポンが大幅に割り引かれる(50%OFFなど)のかを考えてみます。思うに、共同購入クーポンを発券することが、広告やプロモーションとして位置づけられているからではないでしょうか。つまり、大幅な割引で興味関心を引き立たせ、自分たちのサービスや商品を利用してもらう。仮に赤字であっても、その顧客が自分たちのことを認知してくれる、さらにはまた来てくれる(リピート)を期待してのことです。

一方のモラタメ。無料であることのカギは、使用後の商品のフィードバックにあります。つまり、無料の代わりに感想・評価を教えてね、という仕組み。企業にとっては実際に使った消費者の声が手に入るわけで、少なくともモラタメで提供する商品の価格以上に価値があると判断しているからではないでしょうか。消費者からの評価を商品改良の参考にしたり、ターゲットの検討、販促・プロモーション等々に活かしていくのだと思います。

■それぞれの課題を考えてみる

次に考えおきたいのが、グルーポン系とモラタメ系の目的が本当に達成されるのかという点です。

まずモラタメの場合ですが、目的は消費者の声を集めることです。企業にとって価値があるのは実際に使ってくれた人の評価が得られる点にあります。しかし、そもそも評価を送ってくれた使用者が単に無料だからその商品をもらった・試したことも考えられ、時には商品のターゲットとはズレている人たちの評価を集めてしまうかもしれません。つまり、その商品を買ってほしい人の感想が集まらなければ、その評価を次の商品施策に活かしたとしても有効とは言えず、時には逆効果となってしまうことも考えられます。

そしてグルーポン。これはあくまで推測ですが、グルーポンの場合はクーポンを利用するお客が、単にお得だからという理由だけということが考えられます。共同購入クーポンを発券する目的は自社サービスの認知を広げること・リピート顧客を増やすことにあると思っていますが、このようなお客さんはその目的が達成できない可能性があります。であれば、クーポンを提供することは収益を下げる要因にもなり兼ねません。

もう一つ課題。グルーポンなどのクーポン共同購入については、プレイヤーの淘汰および独占による弊害も出てくる可能性があります。日経ビジネスには、市場参入企業は100社を超え競争が激化し、早くも、勝ち組・負け組の構図が鮮明になりつつあるという記事も見られます(図3)。

 出所:日経ビジネスオンライン

そして日経ビジネス(2010.12.20・27号)には、「グルーポンも独占禁止法違反?」という記事が掲載されています。記事によれば、同誌が以前に入手したというグルーポンが飲食店と結んだ契約書の「パートナー義務」規約内に、パートナーは契約期間の終了後24カ月間において、「理由の如何を問わず、国内企業におけるグルーポンと類似のウェブサービス(Piku、KAUPON、ポンパレ、Qponを含むが、これらに限られない)において出稿、掲載等をしない」とする旨の条項が含まれていたそうです。なお、日経ビジネスの取材後にグルーポン側では急きょ規約を変更し現在はないとのこと。これは、公正取引委員会の立ち入り検査があったDeNAと同じ構図です。

モバゲーやグリーなどのゲームやグルーポンなどの新興ネットビジネス市場は先行優位性が大きいと思います。つまり、先行し顧客を取り囲んでしまえば独占して利益を得られる構造なのではないでしょうか。ユーザーにとっては自分の知らないところでいつの間にか独占状態が起こっており、お得だと思っていてもそれによる負担が発生しているのかもしれません。

※参考情報

さらに拡大を見せる、クーポン共同購入サイトの動向|ビデオリサーチインタラクティブ
http://www.videoi.co.jp/release/20101115.html

グルーポン市場、大手寡占へ|日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20101126/217291/

グルーポンも独占禁止法違反?|日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20101216/217577/


2010/12/15

Twitter利用者率70%は本当か?

トレンダーズ株式会社が運営するPR TIMESは2つの調査結果を発表しました(ともに10年12月6日)。今回のエントリーではそれぞれの調査結果から、データを見る上での注意点を自戒も込めて書いておこうかと思います。

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に関する意識調査|PR TIMES
大学生のソーシャルメディア利用実態に関する調査|PR TIMES

各調査の概要を整理すると、以下のようになります(表1)。


■mixiなどの利用率

2つ調査結果では、mixi、Twitter、Facebookの利用率が発表されています(表2)。

表の左のSNS意識調査では、mixiの利用率は96.6%と非常に高い結果が出ています。ですが、調査結果を読んでみると、SNS利用者ベースの数字であることがわかります。つまり、SNSを利用している586人のうちの96.6%ということで、SNS非利用者(230人)は分母に含まれていません。Facebookの12.3%も同様にSNS利用者ベースです。そこで、利用率の分母をSNS非利用者も含めて計算をすると、次のような結果になります(表3)。

こうしてベースをそろえて見ると、mixi、ツイッター、フェイスブック全てにおいて、SNS意識調査のほうが利用率が低いことがわかります。

■利用率の差は実施期間の違い?

では、なぜ同じ利用率を聞いた調査なのに低くなるのでしょうか。2つの調査仕様を見てみると、実施期間が7月と11月で異なることに気づきます。ということは、7月から11月にかけて利用者が増えたことで利用率が増加したのでしょうか。やや乱暴ですがグラフにするとこんな感じです(図1)。


それにしてもこの増加状況は本当なのでしょうか。わずか4か月くらいの間で、例えばツイッターの利用率は3倍、フェイスブックは4倍になっています。mixiですら+10ポイントの伸びを示しています。大学生だけの数字とはいえ、いくらなんでもちょっと増加しすぎな気もします。個人的には、単なる実施期間の違いではないと考えます。

■調査手法による回答者の偏り

もう一度、それぞれの調査仕様を確認すると、調査手法に違いがあることがわかります。すなわち、アンケート自記入法とインターネット調査。前者はおそらく紙に直接回答するアンケート、後者はネット上で回答するアンケートです。

ここで注意すべき点は、調査方法が違えば回答する人たちもまた異なるということです。何か当たり前のように聞こえるかもしれませんが、この違い認識は結構重要だと思っています。あいにくこれを示すデータは用意していませんが、ネットでのアンケート調査は紙上でのアンケート方法に比べて、ネット利用度の高い人たちが回答をする傾向があります。もちろん、ネットの利用頻度が低い回答者も存在しますが、回答者全体で見るとネット利用度は相対的に高くなります。このイメージを図にすると以下のようになります(図2)。


記入式調査の回答者はネット利用度が低い人の割合が大きくなり、逆にネット調査の回答者は高い人の比率が高くなるのです。このような状況を専門的な表現では、「バイアス(偏り)が発生する」と言います。例えるならば、イタリアンレストランで食事している人と焼き鳥屋で食事している人それぞれに、「あなたはパスタが好きですか」と聞けば、前者のほうが「好き」と答える人が多い傾向にある、ということです。もちろん、数人レベルではわかりませんが、100人とか数百人単位で聞けば、おそらくそのような傾向が見られるはずです。

話を2つの調査における利用率の違いに戻します。ネット調査である「ソーシャルメディア利用実態意識調査」のほうが、総じて利用率は高いという結果でした(図3)。その理由として考えられることは、図2のような回答者に偏りの発生です。要するに、そもそもネット調査の回答者の中にはネット利用者が多くいた、故にツイッターやフェイスブックなどの利用率が相対的に高い結果になったのではないか、ということです。


当然これは単なる推測にすぎず、これを科学的に説明するデータは用意していません。ただ、ここで言いたいのは、どんな調査結果でも回答者の偏りは少なからず発生してしまうということです(例外は全数調査ですが実施は非現実的)。

■真実とのかい離は必ず発生する

では、どちらの結果が正しいのでしょうか。あえて言うならば、「どちらの調査結果も正しく、どちらの結果も間違っている」のだと思います。何か身も蓋もないように聞こえるかもしれませんが、どんな調査でも手法や回答する対象者の選び方で「真実」とのかい離は発生します。その前提条件(手法・回答者)を踏まえてデータを解釈するのであれば「正しい結果」であるし、一方で真実とかい離があるという意味では「間違った結果」になるのです。

今回の例で言えば、(ネット利用者は相対的に少ないであろう)首都圏の大学生に対しての記入式調査であればツイッター利用率は20%超、(ネット利用者は相対的に多いであろう)首都圏大学生へのネット調査であれば70%になる、ということです。だからこそ重要なのは、様々な調査手法や対象者の違いから発生するであろう偏りを認識した上で「何を知りたいか」を見極め、適切な調査手法・対象者を選択すること、あるいは結果のデータを見ることではないでしょうか。(そもそも、今回取り上げた2つの調査は目的である「知りたいこと」が同じではなさそうなので、それぞれの結果を並べて比較すること自体にあまり意味がないかもしれません)

■まとめ

最後に、ポイントをまとめておきます。
・パーセント(%)を見る時は何をベースにした数字なのかを要確認 (分母に注意)
・調査には手法や対象者により、少なからず「真実からのかい離」が発生する (調査バイアス)
・それを前提に、「何を知りたいか」を見極め、適切な調査手法・対象者を選択し、結果のデータを見ることが大事


2010/12/12

00年代ヒット商品グランドチャンピオンから考える「消費者のコレを変えた」

日経トレンディの2010年12月号に、「2000~2009年 ヒット商品グランドチャンピオン」という企画が掲載されていました。ゼロ年代のヒット商品を発表するという企画です。同誌では毎年12月号でその年のヒット商品ベスト30を発表しており、2000~09年の10年間に発表されたベスト30の計300アイテムから選ばれています(メーカー等の商品企画・開発に関わる208人へのアンケート調査)。その結果は以下の通りです。

「2000~2009年 ヒット商品グランドチャンピオン」 ベスト10
1位  ユニクロ
2位  Wii
3位  冬のソナタ
4位  ブログ
5位  プリウス
6位  動画共有
7位  旭山動物園
8位  mixi
9位  ニンテンドー DS
10位 キリン フリー

このランキング見ていてあらためて思ったのは、消費者や利用者の利用シーンであったり意識を変えたこと。今回は、上記のヒット商品それぞれが消費者の何を変えたかをテーマに書いてみたいと思います。

まず始めに、今回の内容を簡単にまとめておきます(表1)



1位 ユニクロ

ユニクロが何を変えたかを考えたときに、品質の高い衣服を低価格で買えると実感させたことだと思います。2000年代より以前の頃を思い出した時、服って品質においてはほぼ価格と比例してたような気がします。逆に言えば、「安かろう悪かろう」なもの。でもユニクロの服は、最高品質ではないけど価格に対しての品質が、他のアパレルの同じ価格の服よりも良い。つまり、同じ金額を払ってもユニクロの服には品質という価値での満足感が高く、かつフリースやヒートテックな次々にヒット商品を出し続け、その価格対品質の良さを消費者は継続的に実感することができた。個人的にこの点においてユニクロはすごいなと思っています。

ゼロ年代の1位がユニクロというのに少し驚きましたが、よく考えてみればこの10年で国民的なブランドとしての地位を確立したのではないでしょうか。SPAと呼ばれる製造小売業というビジネスモデルとそれを支える中国など人件費の安い新興国での生産によるコスト削減。デフレ自体の象徴と言えそうです。


2位 Wii

Wiiが変えたことは、利用者層の拡大と利用シーン(場所)の拡張です。利用者の拡大については、それまでゲームと言えばざっくりと言えば若い男性がターゲットだったけど、Wiiは直観的な簡単な操作やゲーム内容も懲りすぎていないなど、老若男女が誰でも遊べるようにしたのではないでしょうか。利用シーンの拡張は、利用者拡大の影響もあり、マリオパーティなど家族で楽しめ、かつ場所がリビングで遊べるゲーム機です。Wiiは家族一緒にリビングで遊ぶゲーム機、これがWiiの特徴だと思います。

TVゲームというのはWii登場までは、親から「もうそろそろやめなさい」と注意されるものでした。でもWiiの位置づけは「やめなさい」ではなく、「家族で一緒にやろう」というものなのではないと思います。つまり、母親をも取り込み家族の新しいコミュニケーションツールとなった。この発想の転換を実現したのがWiiです。


3位 冬のソナタ

当時は社会現象とまでなった冬のソナタ。中高年女性によるヨン様フィーバーによる韓流ブームとなりました。従来、日本人が注目する外国文化は欧州がほとんどだったと思います。でも冬のソナタの流行で、日本人の韓国文化を見る目を変えたのではないでしょうか。冬のソナタで韓国に旅行する人が増えたり、冬のソナタ以外でも東方神起だったり、最近では少女時代やKARAなどのK-POPという音楽の1つのジャンルを確立しました。日経トレンディでは冬のソナタを選んだある商品開発担当者の言葉が印象的でした。「100の日韓外交より1つのドラマと感じた」。


4位 ブログ

ブログがもたらしたものは、普通の人という個人の情報発信を可能にしたことです。日本ではブログと言えば日記を公開するイメージがありますが、ブログ登場前は日記は自分だけのための非公開が一般的だったように思います。他人に見せる場合でも、交換日記などごく少数で、かつ日記の内容を見る人もあらかじめ想定されている範囲で、書く内容も非公開が前提。しかし、ネット上に自分の文章を公開することで、情報発信をするのはマスメディアを通じた一部の著名人だけではなくなったのです。さらに、ブログ上やブログを通じてユーザー同士がコミュニケーションをとるようになった、今ではブログの内容が企業でも本格的に消費者行動を知るマーケティングツールになりました。


5位 プリウス

エコというのは無駄にしないなど節約するというイメージがありますが、プリウスはエコ商品を持つことが最先端でかっこいいと認識させるものだと思います。なんとなくですが、「ハイブリッド」という言葉の響きもいいように感じます。それはさておき、エコカー減税などの政策も手伝い、2010年の新車販売ランキングでは1位を獲得しただけではなく、これまでの日本の年間販売台数を更新する見通しであるとの報道もありました(日本経済新聞12/7)。1990年のカローラの30万8千代を抜くことが確実になったとのことです。


6位 動画共有

映像って、以前はほぼテレビが独占してような気がします。ネットで動画を見ることが当たり前すぎて、それ以前のことが思い出せないくらいです。それが例えばYouTubeが登場したことで、自分の見たい映像やテレビでは見られない映像はネットにいくらでもあるような状態になりました。動画は発信・検索・共有するものと消費者の認識を変えたのです。動画が企業のプロモーションにも使われるようになったりもしています。イギリス人歌手スーザンボイルなど、ネットで発信され世界中で共有されたなど、動画の影響は非常に大きいと感じます。


7位 旭山動物園

旭山動物園が提供してくれたものは、誰もが一度は見たことがある動物の新しいおもしろさなのではないでしょうか。動物の普段の生活を見せるという行動展示は、初めて旭山動物園に行った時は驚いたのを覚えています。普通の動物園では白くまはずっと寝ていたりペンギンは氷の上を立ったままというイメージがあったので、白くまの水中へのダイビングや水中トンネルから見るペンギンの泳ぎは今でも印象に残っています。既存のものでも、魅せ方の工夫次第で価値が全く違うということを実績で示した点、最近では日本人だけではなくアジアを中心とした観光客にも人気な場所だそうで、その功績は大きいと思います。


8位 mixi

ネット上の環境に、自分のいろんな友人知人がフラットに並んでいるという感覚はSNS登場前は考えられないことでした。小学校や中学校を卒業以来、久々にmixi上で再会したり、高校卒業後にお互いの近況はmixiから知るなど、なんて言うか、遠すぎず近すぎずというゆるい人間関係がmixiにはあるように感じます。前述のブログと同様、自分の日常を日記としてmixiに公開し、そこからコミュニケーションが発生します。リアル世界でも会う友達だけど、同じ友人なのに現実とはまた異なるやりとり。ネットで会うという新しいコミュニケーションスタイルを提供したのではないでしょうか。


9位 ニンテンドーDS

画面が2つあったり、ハード上のボタンではなくタッチペンでの操作など、既存の携帯ゲーム機にはないおもしろさ、遊び方を子供たちにもたらしました。子供だけではなく、大人の男性やさらには女性も、例えば電車内でゲームをしている姿を普通に見かけるようになりました。2位のWii同様に大人から子供まで遊べ、「脳トレ」などこれまでにはないソフトも多く提供しています。また、赤外線を通じて通信対戦やすれ違い通信など、新しい遊び方もあります。DSは従来にはないゲームソフトと遊び方・コミュニケーションにおいて消費者を変えたと思います。


10位 キリン フリー

アルコール0.00%のノンアルコール飲料。それまではノンアルコール飲料と言っても実はアルコールはゼロではなく人によっては酔ってしまうこともあったようですが、キリンフリーは飲酒後も運転ができることを訴求し、この後車を運転する人や運転中でも気軽に飲めるようになりました。会社の同僚の人で出勤前に飲んだり、残業中の気分転換に飲めると言っていたのですが、ビール好きの人の飲用シーンを増やしたことも見逃せません。キリンフリーが変えてくれたものは、これまではソフトドリンクで我慢していたようなアルコールを飲みたくても飲めない人への新しい選択肢だと思います。

再掲になりますが、最後に今回の内容を簡単にまとめておきます(表1)。



2010/12/05

「時は金なり」ではない

ドイツの作家ミヒャエル・エンデ(1929-1995年)の名作の1つに「モモ」があります。話を聞くことで人々を幸せな気持ちにすることができる不思議な少女モモと、モモたちに忍び寄る時間どろぼうの男たちが描かれた物語です。

実はこの本は確か小学生の時に一度読んだことがあるのですが、ふともう一度読みたくなりました。

本には対象は小学5・6年以上と書かれていますが、なかなか考えさせられる深い本です。あらためて読むと、この物語の主題は「時間とは何か」を問うものだと気づかされるからです。

■「モモ」の物語

おもしろかったことの1つに、物語に登場する時間どろぼうたちの存在があります。彼らは「時間貯蓄銀行」の行員であり、人々に自分たちの時間を節約するよう推奨します。その営業の仕方は例えば以下の通りです。

  • 人々にこれまでどれだけ自分が時間を無駄にしてきたかを数字で示す
  • その無駄な時間を節約し貯蓄銀行に預けることを提案
  • 貯蓄のメリットとして預けた時間に利子がつく(例.5年定期で2倍)

やがて町中の大人たちが自分たちの時間を倹約するようになります。

余暇の時間でさえ少しの無駄な時間も使わなくなる、あるいは時間内にできるだけたくさんの娯楽をつめこむためやたらせわしく遊ぶ。お祭りや厳粛な祭典でさえ時間倹約の対象となったり、仕事ではできるだけ短時間にできるだけたくさんの仕事をするようになります。

では時間を倹約した結果、どのようなことが起こったのか。皮肉なことに、自分たちが時間を節約すればするほど、自分たちの生活は殺伐としたものになっていきます。

節約した時間は手元に残らず、追いたてられるようにせかせかと生きているからです。「よい暮らし」のためと信じて必死で時間を倹約し、見せかけの能率の良さや繁栄とは裏腹に、人々の心の中は貧しくなり都会の光景は砂漠と化していくのです。

そしてこの状況を理解したモモは町の人たちの時間を時間貯蓄銀行から取り戻すために立ち向かう、「モモ」の物語はこんな感じのストーリーです。

■ 時間節約は目的ではない

「モモ」で登場する(時間貯蓄銀行出現後の)町の様子は、典型的な現代の大都会を表しています。人々は「忙しい」「時間がない」など思い、そのための時短をアピールする商品やノウハウに関する書籍もよく見かけます。

もちろん、効率化を進め時間を節約する、無駄な時間をかけないことは大切なことです。この点は「時間貯蓄銀行」の考え方に同意です。しかし、もっと重要なのは「何のために時間を節約するか」を明確にすることだと思います。

例えば、これまで1時間かかったことを30分で終わらすとします。これで残りの30分という時間を節約できたことになります。

この節約した時間を何に使うか、どう使うかの目的がまずあり、時間節約はそのための手段でしかありません。時間節約を決して目的にしてはいけなく、「モモ」で登場する町の人々は目的にしてしまったために、ますます追い立てられるという本末転倒な状況に陥ってしまいました。

■ 時間はストックできないフローなもの

「時は金なり」という格言があります。お金と時間の違いの1つに、お金はフローでもありストックでもある一方で、時間は完全なフローという性質もあります。お金がフローというのはお金は支払えばなくなっていく(流れる)ことを指していて、一方でお金を例えば銀行に預ければストック(貯める)こともできます。

貯蓄は何のために残しておくかが大事ですが、仮に貯金する時点で明確な貯蓄目標がなかったとしても、必要な時にお金を引き出すことが可能です。

ところが、時間はフローなので、当たり前ですが節約した時間を貯めておいて、後からその分をまとめて使うことはできません。例えば、手元にある100万円は今は不要だから貯金し必要な時に使えますが、1時間暇だから時間を貯蓄し楽しい時間になったらその1時間を使う、なんてことはできないのです。

だからこそ、時間節約にはあらかじめ目的を持っておくことが重要になると思っています。

■ 時間とは

そもそも時間とは何なのでしょうか。科学的には「1秒はセシウム133原子(133Cs)の基底状態にある二つの超微細準位間の遷移に対応する放射の 9,192,631,770(約100億)周期にかかる時間」(Wikipedia参照)と定義されています。

ここで言う時間はもっと主観的なものとしてです。例えば、その時間にどんなことがあったかにより、同じ一時間でもほんの一瞬と思えることもあれば、永遠の長さに感じられることもあります。

1日は24時間あり秒に換算すれば86,400秒です。これは私たち全員が平等に持っているものです。

生きている限り享受でき、自分の時間が止まるということは、それは死を迎えるということで、その意味では時間とは自分の人生と言えます。ちなみに、「モモ」の物語では、時間とは生きるということそのものだという記述も見られます。

お金と同様に、時間はどう使うかが大事です。ただしお金は使ったとしても稼ぐことで取り戻すことはできますが、時間は不可逆的なものであり使ってしまえば決して取り戻すことはできないのです。であれば使う時間をどう豊かにするか、これが大事です。

最後に、「モモ」の中で登場するある人物の言葉を引用しておきます。

人間はひとりひとりがそれぞれじぶんの時間をもっている。そしてこの時間は、ほんとうにじぶんのものであるあいだだけ、生きた時間でいられるのだよ。


モモ (岩波少年文庫(127))
ミヒャエル・エンデ
岩波書店
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2010/11/27

書籍 「ソーシャルメディア維新」

「ソーシャルメディア維新」(オガワカズヒロ マイコミ新書)という本を読みました。今回のエントリーでは、同書で取り上げられているグーグルとフェイスブックを中心に見ていきます。

■「ソーシャルメディア維新」の主題

この本の内容を一言で表現すれば、ウェブトラフィックがグーグルの「検索エンジン」からフェイスブックなどの「ソーシャルメディア」へのシフトです。具体的には、各種ウェブサイトへ行く時に従来はグーグルで検索をしていたのが、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディア経由となっている状況を指しています。ちなみに副題でも、フェイスブックが塗り替えるインターネット勢力図、とあります。

少し古いデータですが、アメリカの調査会社Hitwiseの発表(2010年3月15日)によれば、アメリカでのアクセス数でフェイスブックがグーグルを抜いたようです(図1)。フェイスブックは前年同週比で185%増、一方のグーグルは9同%増としています。


■検索エンジンからソーシャルメディアへのパラダイムシフト

グーグルの検索エンジンからフェイスブックなどのソーシャルメディアへのシフトを見るため、まずはグーグルについて考えてみます。

グーグルは次のようなミッションを掲げている企業です。Google's mission is to organize the world's information and make it universally accessible and useful.(Googleの使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることである) グーグルがこれまでやってきたことは、まさにこのミッションに従ってのものであり、社会にあるありとあらゆる情報をウェブ上に整理し、検索可能な状況をつくる努力をしてきたのだと思います。

グーグルのすごさは、ネットでの検索エンジンで世界一になり、かつそこから検索連動型などの広告モデルを自分たちの収益に結びつけたことです。グーグルは多くの人がネットを使えば検索も利用されると考えており、だから彼らは検索可能な領域を増やし続けてきたのではないでしょうか。

このようなグーグルとユーザーのWinWinの状況を脅かしつつあるのが、フェイスブックなどのソーシャルメディアの存在です。ツイッターを使っていて実感することに、何かのサイトやコンテンツを知るきっかけがフォローしている人のつぶやく情報だということがよくあります。例えば話題になっているニュースを知るきっかけはツイッターという状況が普通に起こるようになりました。

「ソーシャルメディア維新」ではツイッター上を流れるつぶやきなどの総称をソーシャルストリームと表現し、グーグルのこれまでの情報整理の仕方ではソーシャルストリームのスピードに追いつけていない状況が発生していると言います。というのも、グーグルの考え方はウェブの最小単位をウェブページとし、それらのリンク構造を把握することで正確な検索技術を実現してきましたが、ソーシャルメディアの台頭で、ウェブページよりもその上に流れている情報やコンテンツが重要になってきたからで(図2)、その流れのスピードがグーグルにとって速すぎるのです。「ソーシャルメディア維新」では、このような状況の結果として、グーグルの検索エンジンからソーシャルメディアへのパラダイムシフトを起こしていると指摘しています。



■Facebookが目指すもの

フェイスブックのグーグルに対する優位性に、フェイスブックの5億人を超えるユーザーの人間関係情報(ソーシャルグラフ)があります。さらには、各ユーザーが持つ様々な情報への興味・関心もそうで、例えばLikeボタンにより、これらの興味関心までもユーザー同士でつながります。「ソーシャルメディア維新」という本では、フェイスブックが行おうとしているのは人間関係というネットワークをウェブに移すこと、すなわち人間関係のクラウド化であり、かつウェブ上にある様々なコンテンツとフェイスブック内の人間関係を結びつける「オープングラフ」だと指摘しています。

上記のようにグーグルの捉え方はウェブページとウェブページのリンクでしたが、フェイスブックはユーザーの人間関係や興味・関心のリンクを目指します。グーグルはウェブ上の情報を整理してくれますが、フェイスブックはウェブ上の情報を各ユーザーの自分好みにパーソナライズ化してくれる存在なのです。

■Facebookの課題

一方で、「ソーシャルメディア維新」ではフェイスブックが抱える課題についても言及しています。その最も大きな課題がプライバシー問題と言います。先ほどフェイスブックの優位性にユーザー同士の人間関係や興味・関心と書きましたが、実は優位性となる前提としてこれらの情報がオープンに公開されている必要があります。しかし、ユーザーにとっては当然ながら公開したくない情報もあり、それがユーザーとフェイスブックの間に齟齬が起こりプライバシー問題につながってしまうのです。

グーグルが自社の検索技術から検索連動型広告という収益モデルを築いたように、フェイスブックは自分たちが保有する優位性を収益に結び付けるためにこの課題をどう解決するか、世界中にいる5億人のユーザー数とそこから発生するウェブのトラフィックからの換金方法を見出した時、ソーシャルメディアによる維新が起こるのかもしれません。


※参考情報

Facebook Reaches Top Ranking in US (March 15, 2010) | Hitwise
http://weblogs.hitwise.com/heather-dougherty/2010/03/facebook_reaches_top_ranking_i.html

Google's Mission
http://www.google.com/corporate/facts.html


ソーシャルメディア維新 ~フェイスブックが塗り替えるインターネット勢力図~ (マイコミ新書)
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2010/11/23

欧州最大のLCCライアンエアーに見る戦略ストーリー

今週の日経ビジネス2010.11.22の特集記事はアップルを取り上げています(「アップルの真実 ジョブズの天下はいつまで続くのか?」)。ですが個人的に興味深かったのは、このアップルの次に掲載されていた欧州最大の航空会社であるライアンエアーについての記事でした。タイトルは「『究極の目標は運賃ゼロ』 異端経営で圧倒的安さを実現」。今回のエントリーではライアンエアーの戦略ストーリーについて考えてみます。

■戦略ストーリーの5C

本題に入る前にストーリを見ていく上でのフレームについてです。下記は「ストーリーとしての競争戦略」(楠木建 東洋経済)という本からの引用で、著者が戦略ストーリーの5Cと呼んでいるものです(表1)。以下、5Cのうちの4つ(競争優位、コンセプト、構成要素、クリティカル・コア)で整理しています。



■ライアンエアー

まずはライアンエアーについて簡単に。アイルランドに本社を構える同社は、日経ビジネスの記事によると、航空会社の搭乗者数ランキングでは5位でヨーロッパではトップです(1位サウスウェスト航空、2位アメリカン航空、3位デルタ航空、4位中国南方航空 ※出所:IATA World Air Transport Statistics 54th Edition 2010)。日経ビジネスが各社の通期決算を基準に算出した平均運賃を見ると、ライアンエアーは30ユーロ程度(約3500円)で全日空の170ユーロ前後(約19000円)と比べると低運賃なのがわかります。

記事には、1997年に株式公開を果たし急成長を遂げていると書かれています。実際に売上高は対前年プラスを維持し続けており、最終損益はリーマンショック後の2009年には赤字を計上しているものの、2010年にはV字回復しているようです。

■競争優位とコンセプト

ここで言う競争優位とは、どういった戦略で利益を創出するかで、ライアンエアーの競争優位は徹底的な低コストの実現です。次に顧客にどういった価値を提供するかというコンセプトは低賃金です。これに関してCEOのマイケル・オリーリー氏は次のように言っています。「競合他社を排除するために、運賃とコストを下げ続ける。長期的な目標は運賃ゼロ」。というのも、記事内に出てくるある証券アナリストのコメントからオリーリー氏はこう考えているようだからです。航空ビジネスはもはや価格でしか訴求できないコモディティビジネスであり、故に最安で勝負する。

■差別化を実現する構成要素

まとめると、低コストという優位性を実現することで、最安値を追及し提供するのがライアンエアーのコンセプトです。ではそのためにはどういった取組みをしているのでしょうか。日経ビジネスの記事では複数の事例が紹介されています。

例えば搭乗手続きのチェックインは事前にウェブサイトで行なうことを顧客に義務付け、搭乗券も顧客が自宅などで印刷が必要です。手荷物の預かりを有料としたり、座席指定がなく、機内誌や機内食メニューも必要な客にだけしか配布しません。そして、席にリクライニング機能はなく席の前にあるポケットもない。また、記事では現在検討中のものとして、席自体がない立ち乗りや機内トイレの有料化、副操縦士までもが機内食販売を担当することまで挙げられています。

■顧客を巻き込み低コスト実現

記事にはCEOのオリーリー氏は、上記のオンラインチェックインや手荷物チェックインの有料化などの課金は「乗客の行動を変えるため」と主張しています。事実、手荷物を預ける乗客は過去3年で80%から25%にまで減少したとのこと。

このように、様々な施策をうちだしているライアンエアーですが、個人的に思うのは顧客を巻き込んでの低コストの実現だということです。顧客が事前にオンラインで搭乗手続きを行い搭乗券の発行を済ませてくれば、当日のコストを省けます。そもそも手続きカウンターすら不要になります。座席指定をなくすことで、乗客は座りたい席を確保するため自ら早く搭乗するようになります。また、手荷物預かりが減ったことで、荷物の機内の乗り入れも乗客が自分でします。こういった乗客の行動を促す、つまり顧客を巻き込みながら、平均30ユーロ、時には欧州各都市を片道5ユーロ(約565円)という圧倒的な低価格を実現しているように思います。

ただ、補足事項として、運賃を下げる一方で課金しているところでは課金をしている点があります。具体的にはウェブチェックインは有料で5ポンド(約655円)、搭乗券の印刷を忘れたら再発行に40ポンド(約5240円)、提示する運賃は税抜で別途支払いなど。

■部分非合理&全体最適なクリティカル・コア

書籍「ストーリーとしての競争戦略」ではクリティカル・コアという考え方を提唱しています(図1)。



これはある側面だけを見ると合理的には見えないが、戦略ストーリー全体で見れば合理的だというものです。例としてアマゾンの巨大な在庫・物流センターがあります。オンラインでの販売に特化しているアマゾンが在庫を抱えることはコストもかかりウェブの身軽さを享受できないように一見すると非合理ですが、それだけ豊富な在庫を保有することで商品の充実が図れます。よって全体で見ると合理的なのです。部分的には非合理であるため、競合他社はむしろ模倣を図ることなく、故にアマゾンの競争優位をもたらします。

話をライアンエアーに戻します。個人的に考える同社のクリティカル・コアは「コスト削減にタブーなし」だと考えます。まだ検討中のようですが、立ち乗りや副操縦士による機内食販売は安全性という航空会社の根幹に関わるものです(オリーリー氏は立ち乗りに関して手すりにベルトを用意するなど安全面では妥協はしないと言っていますが)。おそらく一般的な航空会社であれば、具体的な検討すら行われないのではないでしょうか。あるいは、前述のような顧客に手間をかけさせたり機内サービスの省略も、今でこそLCC(格安航空)では普及しているかもしれませんが、従来では考えにくい発想のように思います。

コスト削減においてタブー視しない姿勢について、CEOのオリーリー氏の言葉が印象的でした。以下、日経ビジネスの記事からそのまま引用しています。「誰もが『不可能だ』『安全じゃない』と言うが、大切なのは、すべての可能性を議論できるように問題提起することだ。」

■まとめ

最後に今回の内容をまとめておきます(表2)。こうして見ると、ライアンエアーのストーリーには一貫性があることがわかります。






2010/11/20

ネットテレビが変えるもの

2010年5月にグーグルはテレビとネットの機能を併せ持つグーグルTVの構想を発表しました。そして10月下旬、グーグルとソニーによる「ソニーインターネットTV」がアメリカで発売されました。

「Android」OSを使ったグーグルTVの特徴は、テレビ画面に表示される検索窓にキーワードを入力することでテレビ番組、ネット上の動画、Webサイトなどを横断的に検索し、その映像を再生することができる点にあります。

■視聴を180度変える

このようにネットテレビはテレビ+パソコンの両方の要素を兼ね備えていますが、単純に1+1=2となるかと言うと個人的にはそれ以上のインパクトがあると思っています。なぜならば、私たちの視聴を180度異なるものにする可能性があると考えているからです。

従来のテレビ視聴は、テレビ局が番組をどの曜日のどの時間に放送するかを決めていました。よって視聴者は見たい番組が放送される時間に合わせてテレビをつけます。もちろん、DVDなどでの録画で見るパターンもありますが、基本的な構図はテレビ局が番組放送をコントロールしています。

一方のネットテレビ。上記のような番組放送も依然として残ると思いますが、前述のグーグルTVの特徴のようにネット上の動画に加え、オンデマンドでの視聴も増えていくはずです(現時点でも一部オンデマンドはありますが)。このように視聴者自らがYouTubeなどの動画やオンデマンドの番組を見るようになるわけで、ネットテレビにおいては視聴者が映像コンテンツを見ることに対して主導権を握ることになります。先ほど視聴を180度変えると表現したのは、主従関係が変わるこの状況を指してのことです(図1)。




ネット上にはYouTubeなどの動画サイトがあり、あるいはおそらく今後はネット上での映画配信や番組のオンデマンドサービスの充実など、ユーザーはテレビ番組放送だけではなく、様々なコンテンツを楽しむことができるようになります。

ところが多くのコンテンツが選択肢になるほど、放送されるTV番組は相対的に今よりも見られなくなるということが起こってくるはずです。良質な番組は今後も視聴者からは支持されるでしょうが、そうでない番組は見てもらえなくなる。ネットテレビによって自分の見たい番組を簡単に探すことができ、オンデマンドで用意されているので、好きな時間に自分の見たいコンテンツを自由に見る楽しさ、つまりコントロールできることをユーザーは覚えてしまうのではないでしょうか。


2010/11/13

ソーシャルはユニバースかマルチバースか

11月4日にソフトバンクモバイルとミクシィは、「ソーシャルフォン」サービスの提供を開始すると発表しました。

■ソーシャルがモバイルのベースに

発表内容を見ると、「ソーシャルフォン」サービスは、mixiのさまざまな機能とスマートフォンの機能を連動させることで、友人・知人とのコミュニケーションを、より便利に楽しんでいただけるスマートフォン向けのアプリケーションサービスです、とあり、2011年2月より開始するようです。スマートフォンの電話帳とmixiの友人データが自動的に同期するなど、これまでの「スマートフォン+SNSアプリ」とは異なり、注目に値すると思っています。(とはいえ、買うことはないかと思いますが)

SNS世界最大手のFacebookは、世界でユーザーが5億人を突破し現在も増え続けているようです。CEOのZuckerberg氏はFacebookケータイについてあるインタビューで次のように語っています。(出所:TechCrunch) Our whole strategy is not to build any specific device or integration or anything like that. (中略) Our strategy is very horizontal. We’re trying to build a social layer for everything. (中略) So I guess, we view it primarily as a platform. Our role is to be a platform for making all of these apps more social,  英語部分をすごく簡単に言ってしまえば、Facebookケータイではなくプラットフォームをつくりたいとのこと。

また、別の記事(Scobleizer)によれば、Facebookがソーシャルフォンそのものを開発しないであろう理由として、以下を挙げています。 Facebook is so powerful that mobile companies are forced to build their own Facebook apps, after all, who would buy a phone that doesn’t have Facebook today?  すでにたくさんのケータイにはフェースブックのアプリが入っており、故に、フェースブック自身がケータイを開発する必要がないことを示唆しています(記事ではこれ以外にも開発しない理由が書かれています)。

ソーシャルケータイをリリースするmixi、自らは開発しないと説明するFacebook。どちらの戦略が正しいかは現時点ではわかりませんが、いずれにしてもSNSなどのソーシャルグラフ(人間関係)をモバイルであたかも身に着けるような方向性に進んでいるように思います。上記のmixiフォンではついに、SNSのデータが電話帳に同期します。これまでは、モバイル機能の1つでしかなかったソーシャルが、ソーシャルをベースとしたモバイルの登場です(図1)。



■ソーシャルは1つになるのか?

さて、私たちは複数の人間関係を持っています。家族、彼氏・彼女、友人、バイト仲間、仕事関係、などなどです。ここで、いくつかの人間関係を下図のようなマトリクスで整理してみます(図2)。



リアル世界では、これまでは自分の持つ人間関係は別々に存在していました。しかしSNSなどの登場により人間関係がSNS上でつながり、自分に関係ある人たちがフラットに並びつつあるような気がします。今後ますます多くの人がSNSを利用した場合、そこには仕事の同僚もいれば、幼馴染もいたりとか、1つの大きな人間関係がソーシャル上に存在することになっていくことも考えられます(図3)。いや、もしかしたら、ビジネスライクなSNS、友達用のカジュアルなSNS、などと、複数のソーシャルを持つのかもしれません(図4)。

ユニバース型SNS




マルチバース型SNS



人間は社会的な動物です。人とつながりたいという気持ちは普遍的な感情だと思います。これは何もSNSができたからでは決してなく、大昔からずっとそうだったはずです。人間の三大欲求には含まれませんが、人間の本能に近い欲求なのではないでしょうか。ソーシャルというキーワードはますますいろんなところに入り込んでいきそうです。


※参考情報

「ソーシャルフォン®」サービスを提供開始 (ソフトバンクモバイル株式会社)
http://www.softbankmobile.co.jp/ja/news/press/2010/20101104_03/index.html

Interview With Mark Zuckerberg On The “Facebook Phone” (TechCrunch)
http://techcrunch.com/2010/09/22/zuckerberg-interview-facebook-phone/

Why Mark Zuckerberg would be an idiot to announce a hardware device today (scobleizer)
http://scobleizer.com/2010/11/03/why-mark-zuckerberg-would-be-an-idiot-to-announce-a-hardware-device-today/


2010/11/07

キャリアと適性に見る「鶏と卵」

文部科学省によると、進路指導におけるキャリア教育は次のように説明されています。

「激しい社会の変化に対応し、主体的に自己の進路を選択・決定できる能力やしっかりとした勤労観、職業観を身に付け、 (中略) 社会人・職業人として自立していくことができるようにするキャリア教育の推進が強く求められています」。

まずは自分自身の仕事への適性や考え方を見極め、それに合った仕事を選ぶことを目指す教育です。

■自分の適性は後から開発される

神戸女学院大学文学部教授である内田樹氏はその著書「街場のメディア論」(光文社新書)において、キャリア教育について反対する趣旨の内容を書いています。簡単に書くと、仕事に取り組む中で仕事に対する自分の適性がわかるのであって、決してその逆(キャリア教育)ではない、というものです。

内田氏は、与えられた状況・仕事で最高のパフォーマンスを発揮する中で、自分自身の潜在能力を選択的に開花させることが大事であると説きます。次の図でいうと下のパターン(図1)。「環境が人を育てる」、「ポストが人をつくる」などと言われることにも通じる考え方だと思います。



■「種の起源」に見る環境への適応

ところで、ダーウィンの「種の起源」によると、生物は常に環境に適応するように変化し、種が分岐して多様な種が生じるとしています。この主張の前提になっているのは、種にとって環境は常に変わることであり、それに適応することで生存競争において有利な立場となる、この過程で多様な種が生まれるのです。

上記の内田氏の、その能力が必要になった時にはじめて潜在能力が発揮される(適正が見い出される)という主張は、環境に適応するよう種が変化するという「種の起源」の考え方にも通じるように思います。

■知識社会での環境への適応

ドラッカーはその著書「断絶の時代」において次のように述べています。「知識労働者の台頭や知識社会の出現が最も重要な断絶、すなわち社会の根源的な変化である」。ちなみに断絶の時代が初めて世に出されたのは1968年であることを考えると、あらためてドラッカーの慧眼には驚かされるばかりです。

知識社会に相当する情報社会についてのプロセスについては、「情報の文明学」(梅棹忠夫 中公文庫)で言及されています。それによると、人類産業の転換史は、1.農業の時代、2.工業の時代、3.精神産業の時代という3段階を経たとしています。このプロセスを著者は、食べることから筋肉の時代に、そして精神(情報)の時代へと産業が展開したと述べています。

現在は高度に発達した情報社会であり、かつ情報が国を超えて手に入るグローバル社会でもあると感じます。このような私たちがいる環境では非常に速いスピードで変化します。世の中の変化のスピードが速いことをドッグイヤー、あるいはマウスイヤーなどと表現されたりします(犬は人間の7倍で成長、マウスは18倍の速さで成長することから)。

だからこそ、この変化する環境に適応することが大事になると思います。ダーウィンの「種の起源」で見た、変化する環境に適応しない種は淘汰されるように、個人レベルでも同様なのではないでしょうか。これが内田氏の主張する、与えられた状況・仕事で最高のパフォーマンスを発揮する中で、自分自身の潜在能力を選択的に開花させること、につながります。考えようによっては、惰性ではなくとても刺激的な状況であり、おもしろくやりがいのある世の中だと感じています。


※参考情報
進路指導・キャリア教育について (文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/index.htm


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2010/11/03

宇宙の3つの常識がくつがえった

自分の中で今までは当たり前だと思っていた宇宙についての常識がありました。例えば、(1)宇宙にあって多くを占めるのは星や銀河、(2)宇宙の始まりを説明するのはビックバン理論、(3)銀河や地球など全てものがこの宇宙内に存在する、といった内容です。

しかし、宇宙についての本を読んでこれらの常識が自分の中で覆えりました。そこで今回のエントリーでは主に2冊の本、「宇宙は何でできているか」(村山斉 幻冬舎新書)、「インフレーション宇宙論」(佐藤勝彦 講談社)から、自分の常識がどう覆されたかを中心に書いてみます。



■この宇宙の96%を占めるもの

宇宙にある大部分の質量は地球や銀河などによるものだと思っていました。今回知ったこととしては、星と銀河の質量は宇宙のわずか0.5%にすぎないということです。では残りは何で占められるのか。宇宙の質量は以下のような構成となっているようです(図1)。

 宇宙の質量構成比

特に今回初めてその存在を知ったのは、23%を占める暗黒物質(ダークマター)と73%の暗黒エネルギー(ダークエネルギー)でした。

暗黒物質とは、我々地球を含む銀河を銀河たらしめるもの、すなわち、もし暗黒物質が存在しなければ銀河が今の形を構成できずバラバラになると考えられています。また、暗黒エネルギーとは、宇宙を加速膨張をさせているエネルギー。実は宇宙は現在も膨張し続けており、さらに言うとその膨張する加速度は大きくなり続けているようです。詳しい話は省略しますが、宇宙の加速膨張を理論的に説明するために考えられているのが暗黒エネルギーの存在なのです。



■宇宙のはじまりを説明するインフレーション理論

これまで信じていたことに、宇宙のはじまりはビックバンという現象の発生があります。ビックバン理論の概要は、宇宙の最初は「火の玉」であり、その後に膨張していく過程で次第に温度が下がりガスが固まって星が生まれます。そこから銀河が形成され現在に至るというものです。

しかし、実はビックバン理論では説明できないことがあります。「インフレーション宇宙論」の著者である佐藤勝彦氏によれば、例えば「なぜ火の玉からなのか?」や、「火の玉の前はどのような状態だったのか?」などであり、ビックバン理論では、特異点という「神の一撃」の存在を許すことにもなるようです。つまり特異点から始まった宇宙がなぜ火の玉になったかが説明できません。余談ですが、著者は物理学者として、神の存在を用いることなく物理法則だけで宇宙の創造を語りたいものだ、としています。

ここでインフレーション理論の登場です。まずインフレーション理論はビックバン理論を補完する理論です。インフレーション理論を簡単に説明すると以下のようになります。

インフレーション理論では、宇宙は真空のエネルギーが高い状態で誕生し、このエネルギーによって急激な膨張が起こりました。これは宇宙誕生直後の10のマイナス36乗秒後から10のマイナス34乗秒後までの極めて短い時間。宇宙が最初から火の玉として生まれてそのエネルギーで膨張したわけではなく、真空のエネルギーが宇宙を急激に膨張させることで相転移により熱エネルギーに変わる、この時点でようやく「火の玉」になったのです。

■宇宙はユニバースではなくマルチバース?

最も驚かされたのがこれです。宇宙は英語でユニバース、つまり、1つのという意味のユニ(uni)が使われていますが、宇宙は1つではなく多数存在するマルチバース(multiverse)という考え方です。

マルチバースの考え方では、今私たちが存在する宇宙は数ある宇宙の中のone of themでしかないということになります。マルチバースのイメージは下図のようになり、たくさんある1つ1つの球体のようなものがそれぞれ宇宙を表しています(図2)。


マルチバースのイメージ

マルチバースの考え方は、前述のインフレーション理論から説明されており、インフレーションの発生の順番で、親宇宙、子宇宙、孫宇宙、・・・、というように宇宙が次々できるとしています。無から生まれる宇宙は、私たちが存在する宇宙だけとは限らずいくらでも別の宇宙ができる可能性があるということです。

ただ、現在のところマルチバースというのは理論的に予言されているだけにすぎず、実際に科学的に証明されたわけではなく、あるいは観測されたものではありません。ましてや仮にその存在が証明されたとしても、この宇宙から抜け出し別の宇宙に行くことがどうやってできるのか、宇宙は膨張しているのでいずれ2つの宇宙が衝突するのか(あるいは重なるのか)、などと考え出すとなんともわけがわからなくなってしまいます。

■考えさせられたこと

「宇宙は何でできているのか」および「インフレーション宇宙論」を読んでいて感じたこととして、フロンティアというものはどれだけでも広がるということがあります。読み進めていく中で、1つ新しい理論ができれば新しい矛盾が生まれる状況が多くありました。何か新しいことを知れば次の疑問が生まれ、それにより自分には知らないことがまたでてくる、ということだと思います。

これは何も物理学者などの科学者だけによらないと思っています。例えば、何か新しいことを学んで知れば、それに関連する新しいことをさらに知りたくなる、という感じです。仕事も然りで、何か新しいことに挑戦すれば、次はもっと難しいことにチャレンジしたくなります。こういった知的好奇心やチャレンジ欲はいつまでも持ち続けたいものだなとあらためて思いました。


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2010/11/02

RSSとソーシャルフィルターはひとまず共存で

■様々なソーシャル

ソーシャルという言葉があります。個人的に感じるのは、特に今年は様々なものにソーシャルという言葉が付いたことです。これまではSNSのソーシャルくらいでしたが、ソーシャルゲーム、ソーシャルメディア、SNSなどでの人間関係を表すソーシャルグラフ、ソーシャルブックマーク、などです。

ソーシャルサーチと言う検索もあります。これは、世間の評判や意見、あるいはユーザーの趣味や嗜好を反映させた検索のことです。あるいは、ソーシャルフィルターと呼ばれるものもあります。ソーシャルフィルターとは、興味関心が似ている自分の選んだ人によって情報を選んでもらい、結果的に多種多様な情報から必要なものを手に入れることだと思っています。例えば、自分の趣味や考え方が近い人をツイッターでフォローすれば、その人からの情報は自分のアンテナにひっかかりやすい、という感じです。

■RSSの役割は終わった?

2か月くらい前だったかと思いますが、「RSSの役割は終わったのでは」という話がネットで話題になっていました。その理由として、ツイッターやSNSなどのソーシャルメディアの登場でRSSリーダを使わなくても情報を収集できる方法が出てきたためで、例えばツイッターをうまく活用すれば、自分が欲しい情報も入ってくるし、自分の興味範囲外の思わぬ情報が入ってくることもあるからです。普段ツイッターを使っているのでこの説明は理解できますし、故に、わざわざRSSリーダーを使わなくても情報が入ってくるという話だと思います。RSSがソーシャルフィルターに取ってかわる、または、ソーシャルサーチの台頭はイメージとしては、下図のようになりそうです(図1)。


本当に、ソーシャルサーチではない従来型の検索やRSSは不要なのでしょうか?個人的には、両方とも引き続き必要であると思っています。

まず、能動的な情報収集である検索ですが、確かにソーシャルサーチは場合によっては有効なツールです。自分の嗜好や趣味に合わせた検索結果が出てくる、例えば、自分の興味に合った書籍が検索結果の上位に出てくれば、その検索結果には満足できそうです。一方で、このような検索は悪く言えば、人間的なバイアスが発生します。つまり、自分の嗜好や意見に近いものばかりでは一様な検索結果となり、多様な情報に触れる機会を失ってしまうかもしれません。

■RSSとソーシャルフィルターは共存する

次に、RSSですが、確かにツイッターやFacebookをうまく活用できれば、それだけでも十分すぎるくらいの情報が手に入ることができるかもしれません。実際に先日、RSSをあえて一日使わないことを試してみましたが、大きな問題はありませんでした。しかしそれでも、RSSは現在のところ、自分にとっては不可欠なツールなのです。なにもこれはソーシャルフィルターを否定するという意味ではなく、むしろ、RSSとツイッターなどのソーシャルフィルターはお互いを補完しながら使えるツールだと考えてます。ここで、RSSとソーシャルフィルターをいくつかの項目で整理してみます(表1)。


この表を少し補足すると、RSSはブログやサイト単位で登録をする一方で、ツイッターやSNSは人というアカウントごとの登録です。Whoを登録するソーシャルフィルタ-のほうが多様な情報が入ってきます(ニュース記事以外にも、その人の行動などのつぶやき等)。またRSSはストック型の情報管理に対して、ソーシャルフィルターはフローのイメージです。

RSSを重宝している理由の1つに、RSSはサイトの文字や画像をRSS画面上で見ることができる点にあります。これがツイッターだと140文字という文字数制限とiPhoneという画面サイズの制約からどうしても、リンク先に飛ばざるをえない状況がよくあります。特に屋外ではリンク先に飛ぶという時間が意外に長く感じられ、スターをつけたりInstapaperに保管したりして、あとから読んでいます。でもRSSならその場でさくさく読めて便利です。

ソーシャルフィルターは、RSSに比べてフィルターの精度がどうしても劣るような気がしています。これは、自分のソーシャルフィルターの使い方が甘いだけなのかもしれませんが、どうしても相対的に「広く浅い」情報だというのが現在の印象です。ただ、ツイッターの「広い」情報は時として思いがけないものであり、これはこれでおもしろいと思っています。

今のところの結論としては、RSSとソーシャルフィルターは共存する、ということになります(図2)。マトリクスの4つの象限とも、自分にとっては必要な情報収集方法なのです。


今回あらためて思ったのは、ソーシャルフィルターとはまだまだ発展途上なものだということです。もちろん、もうすでに使いこなしている人も多くいると思いますが、個人的には、RSSの活用に比べ、ツイッターやSNSの利用は試行錯誤が続いているように思います。

ツイッターやFacebookは活用方法において工夫の余地が大きいと思います。また、APIにより、これまでになかったような便利なアプリやサービスが開発される可能性があります。その時は、もしかしたらRSSとソーシャルフィルターがハイブリッドされ、もっと便利な情報収集ツールになるのかもしれません。


2010/10/30

なぜネットサーフィンは死語になったのか?

今週の前半は中国に行っていました。今回の滞在は上海のみでしたが、印象に残っていることとして、話を聞いた複数の人が「趣味はネットサーフィン」と言っていたことがあります。なぜ強く印象に残っているかと言うと、ネットサーフィンという言葉自体がここ5年くらい耳にしていなかったから。今回のエントリーでは、ネットサーフィンがなぜ死語になったかを考えることで、あらためて自分の情報収集について整理してみます。

■ネットサーフィンとは

そもそもネットサーフィンとはどのような行為なのでしょうか。いくつかのサイトを調べてみましたが、一番しっくりくる表現はWikipediaに掲載されていた次のような説明です。「ウェブページの閲覧において、各ページを、興味のおもむくまま次々に表示して閲覧していく行動を、波から波へと渡るサーフィンに見立てた造語」。ちなみに、Wikipediaには次のようにも書かれています。インターネットが普及し始めた1990年代から2000年ごろまで頻繁に使われていた。

さて、なぜネットサーフィンをしなくなったのか。ここで、この疑問を少しずらし、「なぜ自分はネットサーフィンをしていたのか」を先に考えてみます。私の場合は、ネットサーフィンが趣味とまではいかなかったものの、ネットを使い始めた頃はあるサイトを見て、そこに貼ってあったリンク先を「興味のおもむくまま」に次々と閲覧していたこともあります。当時を思い出すと、ネット自体がめずらしかったこともあり、好奇心であったり、単純におもしろかったのがその理由のように思います。

■なぜネットサーフィンをしなくなったのか

では、なぜネットサーフィンをしなくなったのか。自分の場合を考えてみると、第一の理由として、ネット検索精度の向上があります。別の言い方をすれば、ネットサーフィンよりもGoogleなどの検索エンジンを使ったほうが効率がいいということ。ネット検索精度の向上は、検索エンジンのシステム技術の向上に加え、自分の検索スキルもネットを始めた頃よりかは多少は上がっていることもあると思います。

第二にの理由として、ネットに使う時間配分のうちツイッターやRSS、あるいはこれらほどの利用頻度ではないとはいえSNSなどの存在です。あるいは、動画やオンラインでのゲームもあるかもしれません。このようなネット上のコンテンツが充実したことで、ネットサーフィンよりもおもしろい時間の使い方ができ、ネットサーフィンが不要になったのだと思います。

■ネットは目的ではなく手段

ネットサーフィンをなぜしなくなったかを考えると、そもそもとして自分の場合は、ネットの利用が目的から手段になっていることだと思います。ネットを使い始めた当初は、ネット自体がものめずらしいこともあり、ただなんとなく使っていたようにも思います。一方で、今はどうかというと、「情報収集」と「ネットでの買いもの」という2つの目的のための手段でしかないのです。ネットでの買いものも、例えば本を買う場合は広い意味では情報収集とも言えそうです。

ここで、ネットサーフィンを含め、ネット検索、RSS、ツイッターなどを下図のように分類してみます(図1)。



横軸は、能動的に情報を探しにいくか、情報が向こうからやってくるかどうか(受動)。例えばRSSやツイッターは情報が時々刻々と入ってきます。それも向こうから勝手に。一方の縦軸は、自分の欲しい情報にたどり着く精度です。つまり、効率よく情報収集できるかどうか。例えばネットサーフィンはおもしろいサイトもあればそうでない時もあり、様々な情報に行きつきます。ツイッターも同様で、雑多情報の中に自分に必要な情報もあればそうでないものもある。それに比べ、検索やRSSのほうが効率よく情報が収集できます。

ネットが情報収集のための手段と位置づけた時、情報収集をいかに効率よくするかが重要になります。上図から考えるとネットサーフィンでは非効率であり、自ら検索をしたりRSSなどを利用することで効率化を図ってきたのだと思います。

■いかに効率よく情報を集めるか

そこで、これからも考えていきたいのがどう情報収集を効率化するかです。検索スキルも十分ではないと思いますし、RSSについても登録しているサイトやRSSの使い方自体ももっとよくできそうです。

そしてSNSとツイッターです。上の図では玉石混交のセグメントに位置づけました。でももしかしたらまだ自分の活用方法が甘いだけなのかもしれません。最近感じることとして、ツイッターがRSSに近い役割を担えるような気もしますが、一方で現時点ではRSSはとても重宝しています。このあたりは、引き続きいろいろと試しながら試行錯誤が続きそうです。


※参考情報
ネットサーフィン (Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3


2010/10/23

コンテンツの価値はタダになるのか?

日経新聞10月19日朝刊の経済教室に、「知的資源大国へ戦略を持て」という題で知的財産についての記事が掲載されていました。今回のエントリーでは、この経済教室の内容整理とコンテンツの価値について考えてみます。

■経済教室の内容整理

先端技術やアニメや漫画など、日本が生み出した「知的財産」は諸外国からの評価が高いものが少なくありません。今回の経済教室の筆者である金沢大学工業大学の杉光一成教授は、このような財産により、日本の経済・社会の活性化へどうつなげるかという視点も大切であると主張しています。知的財産を「資源」として海外に輸出して外貨を得ることで国富を増大させることを国家の目標とする「知的資源立国」を目指せ、という主張です。

著者は知的財産を石油などの天然資源と同様に資源とみなしていますが、一方で相違点もあると言います。第一に、知的資源は「無限」であること。例えば石油はいずれ埋蔵量を使い果たし枯渇する有限のものですが、特にアニメなどのコンテンツは人が思考をやめない限りは無限の産出が可能です。相違点の第二には、知的資源の「もろさ」。すなわち知的資源は究極的には情報にすぎず、石油などのモノが盗まれることに比べ、容易に流出する可能性があります。しかも、情報は一度流出してしまえば、その回収は非常に難しいのです。

こうした知的資源の特徴を踏まえ、著者の指す「知的資源立国」とは次のような考え方になります。「知的資源の国外への流出を最小化し、輸出を最大化することで国富を増大させることを目標とする国家戦略である」。なお、ここで言う輸出とは、外国で取得した権利を有効活用した海外事業収入および外国企業からのライセンス収入です。

経済教室では、特に知的資源の流出最小化という観点から具体的な政策例として、模倣品・海賊版拡散条約の交渉などを含む外交政策の強化、知的財産権侵害の取り締まりが緩い国に対しては毅然とした態度で臨む、などを挙げています。 

ここまでを整理します。すごくざっくりと書いてしまうと、以下のようになります。

  • 日本には知的財産があるが、外貨を稼ぐ資源として有効活用されていないのではないか
  • コンテンツなどの知的資源は「情報」であり容易に流出する特徴がある
  • よって、知的資源の流出最小化・輸出最大化を目標とする国家戦略を目指せ

■コンテンツの価値

マルクスとエンゲルスによる「資本論」では、商品には大きく2つの価値があるとしています。1つ目は「使用価値」。これは、個人の主観や状況によって異なり比べることのできない価値のことです。

例えば、極端な例ですが、遭難して何日も食糧を口に入れていない人には食パンとダイヤモンドはどちらが使用価値があるでしょうか。おそらく、空腹を満たすパンのはずです。一方で多くの人にとってはダイヤモンドのほうが魅力がある。このように人やその状況で変わるのが使用価値です。

2つ目は「交換価値」。商品の価値を数で認識し、客観的な価値のことです。例えば、つくられるのに要した労力や資源、時間の度合で価値を判断します。パンとダイヤモンドで言えば、その製造工程ではダイヤのほうが労力も時間もかかります。よって、交換価値が高いのはダイヤとなります。

ちなみに、お金になぜ価値があるかというと、上記のような商品の価値と交換できる存在だから。正確には、交換できると「信用」されているからです。お金があれば、それに応じて様々な物・サービスを買うことができます。でもお金に価値があるのは、(発行しているその国の)信用力が前提としてあることも忘れないようにしたいです。

さて、コンテンツには様々な種類があります。音楽データや映画・アニメ・ドラマなどの動画、漫画や書籍、ゲーム、など、あらためて考えてみると日本ではたくさんのコンテンツがあります。

これらのコンテンツはコンピューターやネットなどのデジタル技術が発達したことで、ほぼ全てを情報やデータとして扱えるようになりました。例えば、音楽データはダウンロードでき、アニメなどはYouTubeで、ゲームもPCや携帯からオンラインで楽しめます。最近では、ようやく日本でも電子書籍について議論されるようになりました。

ここが重要な点だと思いますが、コンテンツがデータだということは、(規制がなければ)簡単にコピーできるということです。理論的には無限に増殖させることが可能で、かつコストはほとんどかかりません。そして、無限に増やせるということは希少価値は限りなくゼロになり、すなわち、価格はゼロとなってしまうのです。別の言い方をすれば、コンテンツにお金を払う価値がないということ。

■コンテンツでどう稼ぐか

ここで上記の経済教室です。著者は天然資源とは異なる知的資源の特徴として、無限と流出のしやすさの2点を挙げました。これを考慮し「流出最小化・輸出最大化を目標とする国家戦略」を目指せとしています。しかし、一方でコンテンツはタダなのです。

そこでどうなるかと言うと、1つは知的財産権などの規制により、コンテンツの無限増殖を防ぐことです。これでコンテンツに希少価値が生まれます。もう1つは、コンテンツは結局は時間を使うためのコト、あるいは減らないコトなので、いかに有限の(減ってしまう)モノに転換して、お金を稼ぐかではないでしょうか。

具体的なイメージとしては、アニメ自体はコンテンツというコトなので、アニメ内の人気キャラをフィギュア化したモノを売る、といった感じです。フィギュアを作るには、石油などの有限資源が必要であり、つまりコンテンツのように無限に増やすことができず、それはすなわち希少価値があるということだからです。

コンテンツなどの知的資源に対して、「流出最小化・輸出最大化を目標とする国家戦略」を掲げたとしても、コンテンツの特徴を大きな流れで踏まえた上で実行しなければいけないなと思います。


2010/10/17

Amazonの競争戦略ストーリー

「この商品を買った人はこんな商品も買っています」 - アマゾンには協調フィルタリングと呼ばれるレコメンド技術が使われています。レコメンドにより、自分と嗜好性の近いユーザーが好む商品が提示されます。

■Amazonのコンセプト

一方、別の商品をクリックすると、こんなメッセージが出てくることもあります。「お客様は、2010/8/9にこの商品を注文しました。」 このメッセージを見て、初めて自分はすでに買ったことがあることに気づき買うのをやめるでしょう。

なぜアマゾンは、このようなメッセージを表示してくれるのでしょうか。アマゾンにとっては機会損失とも言えます。それは、アマゾンのコンセプトを見ると理解できます。「ストーリーとしての競争戦略」(楠木 建 東洋経済新報社)という本には、アマゾンのコンセプトは次のように書かれています。「モノを売るのではなく、人々の購買の意思決定を助けるサービスを提供する」。アマゾンのレビュー機能や、アマゾン・マーケットプレイスにより中古品と新品が比較しやすいようになっているのも、このコンセプトに基づいています。

■Amazonの戦略ストーリー

書籍「ストーリーとしての競争戦略」の趣旨は次のようなものです。「優れた戦略とは思わず人に話したくなるようなストーリーだ」。アマゾンの戦略ストーリーの概念は下図のようになります(図1)。



アマゾンでしかできない経験を顧客に提供することで、それがトラフィックが増加につながり、サイト訪問者を増えることで売り手もまた多くなります。そうなると、ユーザーからすれば、選べる商品が増えますます顧客の経験を充実させます。このような成長サイクルにより、低コストが実現し、ひいては低価格で顧客に提供できる。これも顧客の経験につながります。アマゾンの戦略はこのような好循環のストーリーでまわっています。

■戦略ストーリーの5C

同書では、ストーリーの構成として、以下のような5Cを提示しています(表1)。



■クリティカル・コア

この本で特におもしろかったのは、4つめのクリティカル・コアでした。ストーリーを起承転結で考えた場合、クリティカルコアは「転」に当たります。その特徴は「一見して非合理」としています。別の表現をすれば、部分最適ではないが全体で見ると理に適っているというもの(図2)。



「ストーリーとしての競争戦略」では、アマゾンのクリティカル・コアは「巨大な物流センターにある」と著者は指摘しています。ネットで店舗を持つということは、一見すると在庫管理やそのスペースから解放され身軽になることが期待できます。しかし、アマゾンは2000年当時から巨大な物流センターへの投資を続けていたようです。アマゾンのベゾスCEOは次のように公言しています。「倉庫こそアマゾンの最大の資産である」。

ではなぜアマゾンは物流センターと在庫を持つ道を選んだのでしょうか。アマゾンを利用していて感じるのは、商品の豊富さと確実な手配です。これにより、欲しい商品の検索・比較・購入・配送まで大きなストレスがなく、商品が手元に届きます。プレミアム会員であればエリアによって注文した商品がその日の当日に届けてもらうことも可能です。前述のアマゾンのコンセプトやストーリーという全体にとって、自前で物流センターを構築することは、彼らにとっては「合理的な」選択なのです。

しかし、外部の人間、特に競合他社にはアマゾンの全体像は見えず、物流センターは「一見して非合理」に見えます。ここだけを考えると、むしろやるべきことではない選択に映ります。一方のアマゾンにとっては、物流センターというクリティカルコアがあっての戦略ストーリー。このような競合他社によるクリティカルコアの模倣の忌避により、差異化も実現できます。

■最後に

「ストーリーとしての競争戦略」はなかなかおもしろい本でした。上記のようなコンセプトやクリティカルコアの説明だけではなく、多くの事例も掲載されています。アマゾン以外にも、スターバックスやサウスウエスト航空、マブチモーター、あるいは中古車販売のガリバーの戦略ストーリーなど、「思わず人に話したくなる」ものばかりでした。500ページ以上のボリュームのある本ですが、読んでよかったです。




2010/10/16

次世代ネットTVとこれからの視聴率

TV番組の人気を知る指標の1つに、視聴率があります。

■視聴率の意義

日本では2000年3月以降、「ビデオリサーチ」(以下、VR)の調査結果がそのまま世帯視聴率となっており、同社のHPには視聴率を調査する意義として、以下の点が挙げられています。
・スポーツ番組や大事件が起きた時の特別番組などの視聴率から「国民の関心の高さを探る」
・視聴率の移り変わりから「社会の動きを知る」
・テレビ局や広告会社等が広告取引をする際に、テレビの媒体力や広告効果を測るため
・視聴者がテレビをよく見る時間帯やよく見る番組を知ることで、番組制作・番組編成に役立てる

■VRの視聴率調査

視聴率には「世帯視聴率」と「個人視聴率」の2つがあり、VRが集計をしているのは世帯をベースにした世帯視聴率です。例えば、視聴率が10%の番組というのは、テレビ所有世帯のうち10%の世帯でそのテレビ番組がつけられていた、ということになります。

少し専門的な話になりますが、視聴率の調査方法は大きく3つあります。1.PM(ピープルメータ)システム、2.オンラインメーターシステム、3.日記式アンケート(詳細はビデオリサーチHP)。現在のVRの視聴率調査仕様は以下の通りです(図1、表1)。







なお、VRでは視聴率の対象となるのは、地上波放送、BS放送、CS放送、CATVなどのテレビ放送で、VTRやDVRの録画・再生、テレビゲーム、パソコンによるテレビ放送の視聴などは視聴率に含まれません。

■Apple TVとGoogle TV

今年になって、アップルとグーグルのネットTV発売が話題になっています。アップルTVの特徴は、保存機能をなくしストリーミング放送に特化している、本体価格は99ドル、コンテンツレンタル料金はHD映画を4.99ドル・テレビ番組を99セント、などにあります。

一方で、グーグルTVの特徴は、TVとWebの融合で、TV番組から提携コンテンツやネットまでキーワードで検索できるという点にあります。例えば、TV番組を見ていて、最近気になる商品のCMが流れたので、関連情報をYouTubeや商品のウェブサイトをチェック。あるいは、ブログ、アマゾンや楽天市場、比較サイトなどで口コミや価格を調べる。場合によっては、ツイッターやSNSで友達にシェアしたりなどが、グーグルTVで全部できてしまいます。

おそらく、アップルTVとグーグルTVはそれぞれiOSとアンドロイドOS(あるいはクロームOS)で動くので、モバイルなどの周辺端末とも相性がいいはずです。具体的には、リビングで見ていた番組の続きを、外出先でモバイルで見ることなどの連携ができそうです。

■次世代ネットTVのコンテンツ

このように、特にグーグルTVにおいては従来のTVで視聴できるよりもコンテンツの種類が大きく増えます。動画系のコンテンツとそれ以外のコンテンツに分けて整理してみました(図2、図3)。



 

それぞれ、ぱっと思いついたままに挙げていますので厳密な意味ではないかもしれませんが、ここで強調して言いたいのは、グーグルTVのような新しい価値を提供する次世代ネットTVでは、従来のテレビで見られる番組と比べ多様なコンテンツを楽しむことができるという点です。

■これからの「視聴率」

日本の広告費は約5億2000億円で、うちテレビが約1兆7000億円、一方のネット広告は7000億であり、まだまだテレビのほうが1兆円ほど大きい状況です(2009年の電通調べ)。上記のように、ネットTVが普及し、テレビとネットの広告費は2つの相乗効果が認められればこれらの数字を単純に足し合わせた水準にとどまらず、合計額以上の規模になるかもしれません。

そう考えた時に、上記のような幅広いコンテンツを楽しむことを前提にした場合、冒頭で触れた視聴率では正しく知る指標としては物足りないような気がします。あるいは、前述の視聴率の意義を十分に果たせなくなるように思います。視聴率もまた変わらなければならないのではないでしょうか。

例えば、視聴「率」ではなく、視聴人数や視聴回数などの絶対数のほうが広告効果を測りやすいかもしれません。あるいは、視聴者はどういうリンクをたどり情報を得たのかも気になるところです。多くのコンテンツがオンライン上にあり、また各端末がアンドロイドなどのOSがベースになれば、現在の視聴率調査とは全く異なる新しい手法によりこれらのデータが得られることが期待できそうです。


※参考情報

○視聴率関連

視聴率について (ビデオリサーチ)
http://www.videor.co.jp/rating/wh/index.htm

視聴率 (Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%96%E8%81%B4%E7%8E%87

消費動向調査 - 平成22年3月実施 (内閣府)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/2010/1003honbun.pdf

○Google TV / Apple TV

今度こそテレビとWebの統合なるか 「Google TV」は従来のWebテレビと何が違うのか? (@IT)
http://www.atmarkit.co.jp/news/201005/21/tv.html

グーグルTVでテレビはどう変わる? 広告主は歓迎、安いコストでテレビ広告が可能に (日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100528/214662/

Apple TVなんて目じゃない、ソニーが「Google TV」採用した理由 (Tech Wave)
http://techwave.jp/archives/51511941.html

早く日本にもやって来い! 新発売のApple TVに驚きの絶賛評価が続出中... (GIZMODE)
http://www.gizmodo.jp/2010/10/apple_tv_review.html

やはりアップルはインターネットテレビを出してきた (大西 宏のマーケティング・エッセンス)
http://ohnishi.livedoor.biz/archives/51124653.html

Apple TV対Google TV、勝つのはどちらか (ITmedia)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1009/10/news011.html

○広告

2009年の日本の広告費 (電通)
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2010/pdf/2010020-0222.pdf


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多田 翼 (書いた人)