投稿日 2025/12/23

マーケティング組織の最適解とは? 「組織活性の循環動態論」 からの示唆

#マーケティング #組織開発 #組織活性の循環動態論

マーケティング組織の最適な形とは何か――。

この永遠の問いに、みなさんの会社でも頭を悩ませているのではないでしょうか?

実は、組織に 「完璧な形」 なんて存在しないんです。むしろ、あえて不安定な状態をつくり出すことで、組織は驚くほど活性化します。

今回は、マーケティング組織の形について、ちょっと変わった理論 「組織活性の循環動態論」 を使って考えてみましょう。きっと、目からウロコの発見があるはずです。

マーケティング組織の3つの形態


企業のマーケティング組織を観察していると、面白いことに気づきます。どの会社も結局、3つのパターンのどれかに落ち着いているんです。

[形態 1] 各事業部内への配置 - 自由奔放な現場主義

各事業部が、それぞれ独自のマーケティング部門を持つ形態です。

まるで戦国時代の大名のように、各事業部が独立王国を築いているイメージですね。ブランドマネージャー制を敷くBtoC企業によく見られます。

この形態の醍醐味は、なんといってもスピード感!お客さんの声を聞いたその日に施策を打てる。現場の熱量がそのままマーケティングに反映されるので、きめ細かな対応が可能です。

でも、ちょっと待ってください。各事業部がバラバラに動くと、会社全体のメッセージがブレブレになりがち。しかも、似たような機能をあちこちで持つので、正直言ってお金の無駄遣いも発生しやすいんです。

[形態 2] ハイブリッド型 - いいとこ取り

事業戦略に関わる機能は各事業部に残し、ブランディングやデジタルマーケティングなどの専門機能は本社に集約する形態です。

私の経験上、多くの企業がこの形態か、先ほどの分散型を採用しています。なぜかって?それは 「失敗しにくい」 からです(笑)。

効率性と柔軟性のバランスが絶妙で、専門性の高い領域では規模の経済を活かせます。ただし、本社と事業部の間で 「それ、どっちの仕事?」 という押し付け合いが発生することも。コミュニケーションコストは意外とバカになりません。

[形態 3] 全社統合型 - 強力な司令塔

すべてのマーケティング機能を一つの組織に統合し、マトリクス的に各事業部と連携する形態です。

これはまさに 「マーケティング帝国」 の誕生!強力な統一ブランドの構築が可能で、リソースの最適配分も実現できます。でも、現場から 「本社の人たち、うちの商売わかってる?」 という不満の声が聞こえてくることも…。

結局のところ、どの形態も一長一短。自社にピッタリの形を見つけるのは、夢物語かもしれません。

でも、ここからが本題です。実は、「最適な形」 を探し続けること自体が間違いかもしれないんです。その答えが 「組織活性の循環動態論」 に隠されています。

組織活性の循環動態論


ここで登場するのが、ちょっと変わった組織論です。

「組織は、振り子のように2つの相反する状態を行ったり来たりすることで、生き生きとする」 という考え方です。

詳しくは 「ザ・会社改造 - 340人からグローバル1万人企業へ (三枝匡) 」 という本に書かれています。読むと、「なるほど!」 と膝を打つこと間違いなしです。

 「末端やたら元気」 と 「戦略的束ね」 という組織の二面性

組織には、まるでジキルとハイドのような2つの顔があります。

末端やたら元気――なんだか楽しそうな名前ですよね(笑)。これは、現場の一人ひとりが 「今日も何か面白いことやってやるぞ!」 と意気込んでいる状態。メンバーが主体的に動き回り、アイデアが泉のように湧き出てきます。

一方の戦略的束ねは、全社一丸となって 「よーし、みんなであの山を登るぞ!」 と号令がかかっている状態。軍隊のように統制が取れ、強力な実行力を発揮します。

行き過ぎると起きる 「あるある」 な弊害

でも、どちらも行き過ぎると大変なことになります(経験者は語る)。

「末端やたら元気」 が過ぎると、組織は無法地帯に。各部署が好き勝手に動き始め、「うちは独立国家だから!」 なんて言い出す始末。全社会議では 「で、結局何がしたいの?」 という空気が漂います。

逆に 「戦略的束ね」 が行き過ぎると、現場は完全に思考停止状態に。「上が何か言うまで待とう」 「指示書はまだですか?」 の大合唱。創造性なんて、どこかに飛んでいってしまいます。

面白いのは、この2つの状態が永遠に繰り返されること。まるで季節がめぐるように、

春(末端やたら元気)→ 夏(調子に乗りすぎ)→ 秋(戦略的束ね)→ 冬(ガチガチに固まる)→ また春…

このサイクルが延々と続くんです。

 「組織活性の循環動態論」 の真髄

さて、ここからが肝心です。

この理論の素晴らしいところは、「完璧な組織なんて幻想だ!」 と断言しているところ。むしろ、あえて不安定な振り子状態を保つことで、組織は活き活きするというんです。

考えてみれば、人間だって同じですよね。ずっと真面目に仕事ばかりしていたら息が詰まるし、遊んでばかりいても飽きてくる。適度に行ったり来たりするから、人生は面白いんです。

意図的な 「揺れ戻し」 でマーケティング組織を活性化させる


では、この振り子理論をマーケティング組織に当てはめてみましょう。これが実におもしろい!

3つの組織形態を振り子に乗せてみると…

「末端やたら元気」 状態は、まさに形態1の 「各事業部配置型」 。現場のマーケターたちが 「今日はこんな面白い施策を思いついた!」 と目を輝かせている状態です。

「戦略的束ね」 状態は、形態3の 「全社統合型」 。CMO(最高マーケティング責任者)が 「全軍、前へ!」 と号令をかけ、壮大なキャンペーンを展開します。

そして形態2の 「ハイブリッド型」 は、この振り子の中間地点。両極端をつなぐ、絶妙なバランサーの役割を果たすんです。

振り子運動の実践マニュアル

さあ、実際にやってみましょう!組織を振り子のように動かす、具体的なステップをご紹介します。

[ステップ 1] 現場解放フェーズ - 末端を元気にしよう!

「みんな、好きにやっていいよ!」 と現場に権限を大胆に委譲。小回りの利くチームをあちこちに配置し、「失敗OK、とにかくやってみて!」 の精神で新しいことにチャレンジさせます。きっと、思いもよらないアイデアが生まれるはず。

[ステップ 2] いいとこ取りフェーズ - 成功の種を集めよう

現場から上がってきた成功事例(と失敗事例も!)を本社でじっくり分析。「これは使える!」 というノウハウを形にして、他の部署にも横展開。まるで、美味しいレシピを共有するような感覚です。

[ステップ 3] 一斉攻撃フェーズ - 全社で勝負をかける

集まった知恵を結集して、ドーンと大きな施策を打つ時期。「今こそ全社一丸となって、このビッグキャンペーンを成功させるぞ!」 と気合を入れます。スケールメリットを最大限に活かす瞬間です。

[ステップ 4] 振り返りフェーズ - また現場に戻ろう

「ちょっと締め付けすぎたかな?」 と感じたら、また現場に自由を返していく。新しいチャレンジテーマを設定して、「さあ、また面白いことを考えてよ!」 とエールを送ります。

このサイクル、どのくらいの期間で回すかって?経験則では、小さな会社なら1~2年、大企業なら2~3年くらいがちょうどいい感じです。

大切なのは、この振り子運動を 「なんとなく」 ではなく 「狙い通りに」 動かすこと。市場の変化や競合の動き、自社の成長ステージを見ながら、絶妙なタイミングで振り子を振るんです。

「完璧な組織」 を追い求めるのはもうやめましょう。むしろ、永遠に 「未完成」 であり続けることで、組織は若々しく、エネルギッシュでいられるんです。

まとめ


今回は、マーケティング組織について、ちょっと変わった角度から考えてみました。

最後に、学びをおさらいしておきましょう。

  • マーケティング組織には 「自由奔放な現場主義型」 「いいとこ取りの優等生型」 「強力な司令塔型」 の3パターンがあり、それぞれに個性的な長所と短所がある

  • 「組織活性の循環動態論」 は、「末端やたら元気」 と 「戦略的束ね」 という真逆の状態を振り子のように行き来させることで、組織に活力を与える考え方

  • どちらかに偏りすぎると必ず弊害が出る。「やりたい放題の無法地帯」 か 「思考停止の指示待ち集団」 になってしまう(どちらも経験したくないですよね…)

  • 完璧を求めるより、意図的に振り子運動を起こすことが大事。組織は未完成だからこそ生き生きする

  • 実践のコツは 「現場解放 → いいとこ取り → 一斉攻撃 → 振り返り」 のサイクルを、市場や自社の状況を見ながら絶妙なタイミングで回すこと


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。