投稿日 2025/12/07

ネット断ち (齋藤孝) 。「心の漏電」 をなくし、「沈潜」 で自分を取り戻す方法

#マーケティング #沈潜 #本

スマホを手にしてネットを見ていたら、気づくと何時間も経っていたという経験はないでしょうか?

SNS の通知が来ると気になって集中できない、いいねの数で一喜一憂してしまう、そんな毎日を送っていませんか?

実はこうした状況は 「心の漏電」 という状態です。電力が絶えず流れ出すように、私たちの精神的エネルギーが知らず知らずのうちに消耗し続けているのです。では、どうすればこの現代病から抜け出せるのでしょうか?

この文脈でご紹介したい本が、ネット断ち - 毎日の 「つながらない1時間」 が知性を育む (齋藤孝) です。


こちらの本から、心の消耗を止め、自分自身を取り戻すための方法について、ぜひ一緒に考えていきませんか?

本書の概要



本書は第1章から第6章までの全6章で構成されています。

中心にあるキーワードが 「心の漏電」 「沈潜 (ちんせん) 」 そして 「1日1時間のネット断ち」 です。

1つ目の心の漏電とは、ネットや SNS に常につながっていることによって、無意識のうちに集中力や思考力が奪われる状態です。これを本書では 「心の漏電」 と表現します。心の漏電を防ぐため、1日1時間ネットを断ち、読書などを通じて深く物事と向き合う 「沈潜 (ちんせん)」 する時間の重要性を説きます。

この本は、表面的な情報に流されない深い教養と、人間的な豊かさを取り戻すことを目指す一冊です。

テーマや学べること


本書は、スマホ断ちのススメにとどまりません。SNS などのネットの情報からなぜ距離を置くことが重要なのか、その先にあるものは何かを深く掘り下げて教えてくれます。

心の漏電を防ぐ

スマホの通知や SNS のタイムラインを常に気にする生活は、意識しないうちに集中力や思考力といった精神的なエネルギーを消耗させます。

この状態が 「心の漏電」 で、現代人のメンタルヘルスの課題として位置づけられます。

電力が絶えず流れ漏れ出している状態のように、私たちの精神的エネルギーが知らず知らずのうちに消耗し続けている状態です。

承認欲求からの解放

SNS を使うことで、誰しもが他人の反応を常に気にしてしまう心理状態に陥ります。

私たちは、常に誰かとつながり、他者の評価を気にすることで承認欲求を満たそうとします。しかし、それは裏を返せば、他人や外部からの刺激に依存した状態です。

いいねの数やコメントの内容に一喜一憂し、自己肯定感が他人の評価に依存してしまう状況になります。

本書は、こうした依存から抜け出すことの重要性を説きます。精神的自立を達成するためには、他人の反応に左右されない内的な強さを育むことが大事です。

 「沈潜」 の重要性

本書のキーワードのひとつが 「沈潜 (ちんせん) 」 という概念です。

沈潜とは、特定の対象 (特に夏目漱石や西洋の古典などの本) にどっぷりと浸かり、深く考え、味わう体験を指します。

ネットサーフィンのような浅く広い情報収集とは対極にある行為です。沈潜は思考力や自己を確立する上で不可欠だと本書は主張します。

沈潜が重要な理由は、自分の内側から問いを生み出し、簡単には答えの出ない問題と向き合い、粘り強く思考を続ける訓練になることです。文学、哲学、科学、芸術などの分野において深く没頭する時間が、真の幸福と知的成長をもたらします。

真の教養は 「沈潜」 から生まれる

真の教養とは、知識の量ではなく、物事を深く理解し、自分なりの意見を構築できる力のことです。

この力は、古典や名著を読み解くような 「沈潜」 を通じてこそ養われます。

教養を 「多くの人格の森を心の中に持つこと」 として捉え、様々な文学作品や思想に触れることで、自分の中に多様な視点や価値観を育むことの重要性を強調します。

情報が溢れる現代において、ただ情報を受け取るだけでは、他人の意見の受け売りにしかなりません。古典や歴史的名著には、時代を超えて多くの人々が向き合ってきた普遍的な問いが詰まっています。

それらの本と対峙し、著者と対話し、自分ならどう考えるかを突き詰める。その営みこそが、付け焼き刃ではない、本物の教養を育みます。

身体性の回復

ネットや SNS の世界は、便利で刺激的ですが、そこで得られるのはあくまで疑似体験です。私たちは、五感を使ったリアルな体験 (身体性) を、もっと取り戻す必要があると本書は訴えます。

ネット上の疑似体験ばかりでなく、五感を使ったリアルな体験 (身体性) を取り戻すことの大切さも説かれています。

実際に自分の足で歩き、風を感じ、物の手触りを確かめる。そうした身体を通した経験が、私たちの感覚を研ぎ澄まし、人間的な豊かさを育みます。

印刷された本を手に取って読む、手書きでメモを取るなど身体的な感覚や体験が、デジタル機器だけでは得られない価値をもたらします。

実践へのポイント


本書が提唱する方法は、決して難しいものではありません。大切なのは、意識して時間を作り、それを習慣化することです。

ここでは、今日からでも始められる具体的な4つのポイントをご紹介します。

1日1時間の 「ネット断ち」 

毎日1時間、意識的にスマートフォンやパソコンから離れる時間を作ることです。

推奨される時間帯は、朝の起床後、夕方の終業後、就寝前のいずれか1時間です。

この時間は、単にネットを見ないだけでなく、自分と向き合うための貴重な時間です。最初はやることがなく手持ち無沙汰に感じるかもしれませんが、その静けさこそがネット断ちのスタートラインです。

いきなり長時間やろうとすると続かず挫折してしまう原因になります。段階的な導入から、最初は30分から始めて徐々に1時間に延長していく方法が効果的です。タイマーをセットするなど、時間を区切ることで習慣化しやすいでしょう。

スマホを物理的に遠ざける

ネット断ちの時間中は、スマホを別の部屋に置いたり、カバンの中にしまったりと、物理的に距離を置くといいでしょう。

スマホが手元にあるだけで、無意識にスマホへ意識が向かってしまいます。視界に入らない場所に置くことにより、心理的な依存を断ち切りやすくなります。

つい見てしまうという状況を、環境設定によって強制的に防ぎます。小さな工夫ですが、集中力を維持するためにも効果を発揮します。

呼吸を整え集中できる状態をつくる

呼吸により、心を落ち着けることが大切です。

深く、ゆっくりと息を吐き切ってみましょう。正しい姿勢で座り、ゆっくりとした深呼吸を繰り返すことで、高ぶっていた神経が静まり、目の前のことに集中できるようになるはずです。

呼吸により整える行為は、これから行う 「沈潜」 のための準備運動のようなものです。慌ただしい日常から意識や思考を切り離し、深く潜っていくための大事な儀式と捉えます。

沈潜できる本を読む

確保したネット断ちの1時間で、何をするか。本書が推奨しているのが、じっくり考える必要のある本を読むことです。

すぐに答えの出ない、古典や名著、少し難しいと感じる専門書などが最適です。例えば、芥川龍之介の短編、夏目漱石の 「坊っちゃん」 「こころ」 、ドストエフスキーの 「カラマーゾフの兄弟」 、他には、三島由紀夫の 「金閣寺」 や、エッカーマンの 「ゲーテとの対話」 などです。より深い思索ができる作品が推奨されています。

これらの作品は時には難解で簡単には理解できないかもしれません。しかしだからこそ、読者は本の中の言葉を深く味わい、行間を読み、思考を巡らせることができます。

こうした能動的な読書体験は、まさに 「沈潜」 という著者の思考や対話、自分の内側に深く潜り込む行為です。その間はネット断ちができます。

ぜひ少し背伸びした一冊に挑戦してみてください。

まとめ


今回は、書籍 「ネット断ち (齋藤孝) 」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • スマホや SNS への常時接続は、知らず知らずのうちに集中力や思考力を奪う。精神的なエネルギーを消耗させる 「心の漏電」 の原因となる

  • 1日に1時間など、決まった時間だけ意識的にネットから離れる 「ネット断ち (デジタルデトックス) 」 を設けることにより、心の平穏を取り戻せる

  • ネットを遮断したオフラインの時間では、読書や思索にふけるのが効果的です。特に、すぐに答えの出ないテーマと向き合うことが深い思考を促し、「沈潜」 という没入状態になれる

  • ネット断ちを実践する際は、スマホを物理的に別の部屋へ置くなど環境を整えたり、深呼吸が効果的。より深く自分と向き合える

  • 表面的な情報に流されず、自分の頭で考える習慣は、他人の評価に左右されない精神的な自立と、本質を見抜く力を養う


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。