投稿日 2018/06/25

キッズラインとティール組織。使ってみてわかった自律的な組織構造


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ベビーシッターのキッズラインを初めて使いました。今回は、キッズラインの仕組みを、組織の観点で考えています。

エントリー内容です。

  • 興味深いキッズラインの仕組み (3つ)
  • キッズラインには 「ティール組織」 の特徴が見られる

なお、キッズラインを使って、ユーザーとして思ったことは別のエントリーで書いています。




興味深いキッズラインの仕組み


キッズラインで興味深いと思ったのは、次の3つです。

  • キッズラインが描くビジョンと、自分たちが掲げるミッション
  • サポーター (子どもを見てくれるシッター) は、自分で提供サービス、時給やオプション料金を決められる
  • 評価は、サポーターとユーザーがお互いにレビューをする (5点満点の評価と自由記入のコメント)


1. キッズラインのビジョンとミッション


ビジョンについては、キッズラインのウェブページに明確に書かれているわけではありませんが、キッズラインは次のようなビジョンを描いていることです。私が調べたりサービスを使ってみて思った、キッズラインが描いている理想とする世界観です。

  • ビジョン:信頼できるサポーターが子どもを見て、育ててくれ、親も子どもも家族皆が幸せになり、サポーターも自己実現ができる。子育てが社会全体で助け合い共有されている社会。

ビジョンを実現するために、自分たちは何をするかがミッションです。キッズラインのミッションは、次の通りです。

  • ミッション:日本にベビーシッターの文化を根付かせる


2. サポーターは、自分で提供サービス・時給・オプション料金を決められる


子どもを見てくれるサポーターが、自分で決められる自由度の高さも興味深いです。

  • 提供サービス:見る子どもの年齢、遊びや英語を教えるなどのできることを自分で決める
  • 時給とオプション料金:時給は自分で決められる。早朝や夜間、子どもを2人以上見る場合などのオプション料金も自分で設定する

時給やオプション料金は、サポーターには自分の収入に直結し、キッズラインにとっても手数料が売上になるので直接影響します。

会社員やアルバイトなど、働く人の給与額や時給は、通常は雇い主が決めます。厳密にはキッズラインとサポーターの関係は、雇用ではなく登録ですが、キッズラインの価格設定は、キッズライン側が決めません。サポーター自身が設定できるのはおもしろい仕組みです。


3. サポーターとユーザーがお互いにレビューをして評価する


サービスを提供するサポーターの評価は、ユーザーが直接行ないます。

サポート完了後に 「やりとりの丁寧さ」 や 「全体の満足度」 などの項目を5点満点で評価し、自由記入のコメントをつけます。ユーザーもサポーターから評価され、サポーターとユーザーが双方向でお互いを評価します。

サポーターは、ユーザーから自分が直接評価されるので、自分が行った何が具体的によかったのかを知ることができます。直接のフィードバックが、早ければその日中に返ってきます。

フィードバック情報から、自分のやったことが客観的に理解できます。提供サービスや、時給やオプション料金の見直しもできます。


キッズラインには 「ティール組織」 の特徴が見られる


キッズラインを、サポーターも含めた大きな組織として捉えると、「ティール組織」 の要素が含まれ、興味深い組織です。


ティール組織とは


ティール組織は、「上司や経営者などの管理者のマネジメントを少なくし、共有・共感する組織のビジョンや目的を達成するために、メンバー各自が自律的に動く組織」 です。

目的を実現するために、メンバー全員がお互いの信頼に基づき、独自のルールや仕組みで工夫しながら、組織運営を行います。明確な組織階層がなく、個人が主体的に判断し、自律的に動きます。結果的に組織全体がうまく機能するよう設計された組織です。

ティール組織は、「生命体」 や 「生態系」 と見ることができます。自然の世界では、生態系の全体を管理する存在はいません。お互いの生物が、それぞれの働きをします。結果的に、全体としてエコシステムが構築され、維持されています。

なお、ティール組織については別のエントリーで書いています。興味のある方はぜひご覧ください。




キッズラインに見るティール組織の要素


先ほど、キッズラインを使って興味深いと思ったことを3つご紹介しました。

  • キッズラインのビジョンとミッション
  • サポーターは自分で提供サービス・時給・オプション料金を決められる
  • 評価は、サポーターとユーザーがお互いに行なう

3つは、いずれもティール組織に見られる特徴です。

例えば1つめのビジョンとミッションについて、サポーターはキッズラインが描くビジョンと掲げるミッションに共感して集まってきた人たちです。明確にサポーター本人が意識をしていなくても、「日本にベビーシッターの文化を根付かせる」 というミッションの体現者です。

ティール組織の特徴は、明確な組織階層がなく、個人が主体的に判断し、自律的に動くことです。

サポーター間には組織階層はなく、フラットで分散しています。サポーター各自が自分の提供サービスや時給を設定し、働きたいタイミングでサポートの日にちや時間帯を決められます。個人で主体的に判断し、自律的な働き方です。

ポイントは、運営者であるキッズラインという会社とサポーターの役割において、キッズラインの管理が必要最低限に留められていることです。

結果、確かに中央にキッズラインというプラットフォームの運営者はいますが、必要最小限の役割で、あとはサポーターが自律的に動く組織です。俯瞰すれば生命体のような組織構造になっているのが興味深いです。


最後に


今回は、初めてキッズラインを使ってみて、サポーターも含めた大きな捉え方でのキッズラインを組織という視点で書きました。

一人のユーザーとして見ても、キッズラインが描いてるビジョンと、実現するためのミッションには共感し、応援したい会社です。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。