投稿日 2020/01/15

20年以上のロングセラー 「たまごっち」 に学ぶブランド戦略


今回は、「たまごっち」 を取り上げます。

✓ この記事でわかること
  • たまごっちのマーケティングとは?
  • 20年以上のロングセラーの秘密
  • たまごっちに学ぶブランド戦略

90年代後半の国民的ブームが去った後も終わらずに、20年以上のロングセラー商品となっています。その秘密をブランドの視点で紐解きます

ぜひ最後まで読んでいただき、お仕事での参考になればうれしいです。

たまごっちの歴史


Marketing Native でたまごっちのインタビュー記事を読みました。

 「たまごっち」 が20年以上も売れ続けるのはなぜ?バンダイさんに聞いてきました!|Marketing Native

初代のたまごっちは1996年の発売でした。

初代たまごっち (1996年発売)|出典: Marketing Native

初代たまごっちから、20年以上にわたってロングセラーになっている商品です。



変えたこと・変えなかったこと


インタビュー記事で興味深かったのは、たまごっちが 「変えたこと」 と 「変えなかったこと」 です。

✓ 変えたこと
  • ターゲットユーザーを女子高生から女子小学生に
  • 機能の追加
    • 画面のカラー化
    • 赤外線通信
    • 遺伝子引き継ぎ機能
    • アプリ連携

✓ 変えなかったこと
  • 見た目のデザイン (卵型, 四角い画面, ボタンは3つ)
  • オン・オフ機能
  • コンセプト
    • たまごっちは 「生き物を育てる」
    • 命として商品をつくっていく


変えなかった世界観


たまごっちはターゲットユーザーを大胆に変えました。

初代の頃は女子高生をユーザー像にしていましたが、その後に小学生女子に変えています。機能も技術進化やユーザーニーズに併せて追加しています。

その一方で、たまごっちの世界観はブレずに変えていません。「生き物を育てる」 というコンセプトは一貫しています

コンセプトが定まっているからこそ、やろうと思えば技術的にはできることも、コンセプトに合わなければ実装しないという判断ができます。たまごっちの場合は、オン・オフ機能です。

通常の携帯型ゲームには電源スイッチがついています。遊ぶ時だけスイッチからオンにし、終わればオフにします。たまごっちは生き物という位置づけなので、オンやオフの機能はコンセプトに合いません。

守り続けている 「たまごっちは命である」 という世界観が、他のおもちゃにはない独自性を出しているのです。

この話は、ブランド戦略の観点で示唆があります。

たまごっちからブランディングにどんな学びがあるでしょうか?


ブランドができるプロセス


たまごっちから少し離れて、ブランドの話をします。

商品やサービスの何を変え、何を変えないかは、ブランディングの観点からも大事な論点です。

ブランドは、生活者や顧客から見てその商品・サービスへの 「らしさ」 の積み重ねによってできていきます

らしさに一貫性があり、長い期間であるほど蓄積するブランドイメージは強くなります。

ブランドの認知や見聞きする、実際に利用するなどのあらゆるユーザー体験で、同じような 「らしさ」 があり、このブランドはこういう価値イメージがあるという認識が、ブランドができていくプロセスです。

ブランドのユーザー体験を通して、このブランドが好き・共感する・持っていて誇りに思う・憧れる、などのブランドにとって好ましい感情が伴っていくのです。

では、たまごっちの 「らしさ」 とは何でしょうか?


たまごっちの 「らしさ」


たまごっちに話を戻すと、たまごっちの 「らしさ」 は、コンセプトである 「生き物を育てる」 からです。

軸になる世界観や大切にする価値観が、初代から20年以上も経過した今でも変わらないからこそです。単なるゲームやおもちゃではなく、「生き物を育てるもの」 です。

コンセプトが変わらないので、ユーザーベネフィットも変わることなく続いています。

私が思うたまごっちのユーザーベネフィット (使っていて何がうれしいか) は、以下です。

✓ たまごっちのユーザーベネフィット
  • 自分だけのたまごっち (生き物) と一緒にいられる
  • 成長を見守れる
  • 友だちと見せ合いっこができる

たまごっちは、機能は進化してきましたが、変えないものは守っています。コアとなる世界観はブレていないので、本質的なベネフィットは変わっていません。

変えること・変えないことの線引きをし、「変えないこと」 以外は変えています。

変えないことを決めているからこそ、残りは全て変えることができます

たまごっちはこれができたので、90年代後半の国民的ブームが去った後の低迷期を乗り越え、今もユーザーにとって価値のあるものになっているのです。


まとめ


今回は、たまごっちをマーケティングやブランディングの観点からご紹介しました。

最後にまとめです。

たまごっちの 「変えたこと」 と 「変えなかったこと」
  • 変えたのは、ターゲットユーザー、赤外線通信やアプリ連携などの機能追加
  • 変えなかったのは、「生き物を育てる」 というコンセプト (世界観) 。オン・オフ機能もつけていない

ブランドへの着想
  • ブランドは、その商品・サービスへの 「らしさ」 の積み重ねによってできる
  • らしさに一貫性があり、長い期間であるほど蓄積するブランドイメージは強くなる
  • ブランドのユーザー体験を通して、このブランドが好き・共感する・持っていて誇りに思う・憧れる、などのブランドにとって好ましい感情が伴っていく

たまごっちの 「らしさ」
  • 「らしさ」 はコンセプトである 「生き物を育てる」 から
  • 機能は進化してきたが変えないものは守っている。コアとなる世界観はブレていないので、本質的なベネフィットは変わっていない
  • 変えないことを決めているからこそ、残りは全て変えられる
  • 90年代後半の国民的ブームが去った後の低迷期を乗り越え、今もユーザーにとって価値のあるものになっている

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。