今回は、「たまごっち」 を取り上げます。
✓ この記事でわかること
- たまごっちのマーケティングとは?
- 20年以上のロングセラーの秘密
- たまごっちに学ぶブランド戦略
90年代後半の国民的ブームが去った後も終わらずに、20年以上のロングセラー商品となっています。その秘密をブランドの視点で紐解きます。
ぜひ最後まで読んでいただき、お仕事での参考になればうれしいです。
たまごっちの歴史
Marketing Native でたまごっちのインタビュー記事を読みました。
「たまごっち」 が20年以上も売れ続けるのはなぜ?バンダイさんに聞いてきました!|Marketing Native
初代のたまごっちは1996年の発売でした。
初代たまごっち (1996年発売)|出典: Marketing Native
初代たまごっちから、20年以上にわたってロングセラーになっている商品です。
出典: Marketing Native
変えたこと・変えなかったこと
インタビュー記事で興味深かったのは、たまごっちが 「変えたこと」 と 「変えなかったこと」 です。
✓ 変えたこと
- ターゲットユーザーを女子高生から女子小学生に
- 機能の追加
- 画面のカラー化
- 赤外線通信
- 遺伝子引き継ぎ機能
- アプリ連携
✓ 変えなかったこと
- 見た目のデザイン (卵型, 四角い画面, ボタンは3つ)
- オン・オフ機能
- コンセプト
- たまごっちは 「生き物を育てる」
- 命として商品をつくっていく
変えなかった世界観
たまごっちはターゲットユーザーを大胆に変えました。
初代の頃は女子高生をユーザー像にしていましたが、その後に小学生女子に変えています。機能も技術進化やユーザーニーズに併せて追加しています。
その一方で、たまごっちの世界観はブレずに変えていません。「生き物を育てる」 というコンセプトは一貫しています。
コンセプトが定まっているからこそ、やろうと思えば技術的にはできることも、コンセプトに合わなければ実装しないという判断ができます。たまごっちの場合は、オン・オフ機能です。
通常の携帯型ゲームには電源スイッチがついています。遊ぶ時だけスイッチからオンにし、終わればオフにします。たまごっちは生き物という位置づけなので、オンやオフの機能はコンセプトに合いません。
守り続けている 「たまごっちは命である」 という世界観が、他のおもちゃにはない独自性を出しているのです。
この話は、ブランド戦略の観点で示唆があります。
たまごっちからブランディングにどんな学びがあるでしょうか?
ブランドができるプロセス
たまごっちから少し離れて、ブランドの話をします。
商品やサービスの何を変え、何を変えないかは、ブランディングの観点からも大事な論点です。
ブランドは、生活者や顧客から見てその商品・サービスへの 「らしさ」 の積み重ねによってできていきます。
らしさに一貫性があり、長い期間であるほど蓄積するブランドイメージは強くなります。
ブランドの認知や見聞きする、実際に利用するなどのあらゆるユーザー体験で、同じような 「らしさ」 があり、このブランドはこういう価値イメージがあるという認識が、ブランドができていくプロセスです。
ブランドのユーザー体験を通して、このブランドが好き・共感する・持っていて誇りに思う・憧れる、などのブランドにとって好ましい感情が伴っていくのです。
では、たまごっちの 「らしさ」 とは何でしょうか?
たまごっちの 「らしさ」
たまごっちに話を戻すと、たまごっちの 「らしさ」 は、コンセプトである 「生き物を育てる」 からです。
軸になる世界観や大切にする価値観が、初代から20年以上も経過した今でも変わらないからこそです。単なるゲームやおもちゃではなく、「生き物を育てるもの」 です。
コンセプトが変わらないので、ユーザーベネフィットも変わることなく続いています。
私が思うたまごっちのユーザーベネフィット (使っていて何がうれしいか) は、以下です。
✓ たまごっちのユーザーベネフィット
- 自分だけのたまごっち (生き物) と一緒にいられる
- 成長を見守れる
- 友だちと見せ合いっこができる
たまごっちは、機能は進化してきましたが、変えないものは守っています。コアとなる世界観はブレていないので、本質的なベネフィットは変わっていません。
変えること・変えないことの線引きをし、「変えないこと」 以外は変えています。
変えないことを決めているからこそ、残りは全て変えることができます。
たまごっちはこれができたので、90年代後半の国民的ブームが去った後の低迷期を乗り越え、今もユーザーにとって価値のあるものになっているのです。
まとめ
今回は、たまごっちをマーケティングやブランディングの観点からご紹介しました。
最後にまとめです。
たまごっちの 「変えたこと」 と 「変えなかったこと」
- 変えたのは、ターゲットユーザー、赤外線通信やアプリ連携などの機能追加
- 変えなかったのは、「生き物を育てる」 というコンセプト (世界観) 。オン・オフ機能もつけていない
ブランドへの着想
- ブランドは、その商品・サービスへの 「らしさ」 の積み重ねによってできる
- らしさに一貫性があり、長い期間であるほど蓄積するブランドイメージは強くなる
- ブランドのユーザー体験を通して、このブランドが好き・共感する・持っていて誇りに思う・憧れる、などのブランドにとって好ましい感情が伴っていく
たまごっちの 「らしさ」
- 「らしさ」 はコンセプトである 「生き物を育てる」 から
- 機能は進化してきたが変えないものは守っている。コアとなる世界観はブレていないので、本質的なベネフィットは変わっていない
- 変えないことを決めているからこそ、残りは全て変えられる
- 90年代後半の国民的ブームが去った後の低迷期を乗り越え、今もユーザーにとって価値のあるものになっている