投稿日 2020/11/04

Google 自主調査の YouTube とテレビの広告リーチ逆転 (2020年9月) への驚き



今回は広告についてです。

Google が自主調査をした YouTube とテレビの広告リーチ検証結果からです。


この記事でわかること


  • Google の自主調査
  • 思ったこと (4つ)
  • 1. YouTube 広告のリーチがテレビを超えた
  • 2. リーチ計測の対象者とエリア
  • 3. この結果は一般的か?
  • 4. テレビ広告の存在意義


Google の広告リーチに関する調査が興味深かったので、結果のご紹介と思ったことを書いています。

ぜひ最後まで記事を読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。


Google の自主調査 (YouTube とテレビの広告リーチ)


Google のオウンドメディアである Think with Google の記事を読みました。

YouTube 広告をやりきるとどうなるか? 「リーチ力の可能性」 を検証する (2020年9月)


Google が自社プロダクトの広告キャンペーンで、インテージのシングルソースパネル i-SSP を使って YouTube 広告とテレビ広告のリーチを計測しました。

調査設計の詳細は以下です。

引用: Think with Google



YouTube とテレビの広告リーチ結果は、次のようになりました。

引用: Think with Google


思ったこと


ここからは今回の調査結果を見て思ったこと、考えさせられたことです。


調査結果から思ったこと
  • YouTube 広告のリーチがテレビを超えた驚き
  • リーチ計測の対象者とエリア
  • この結果は一般的か?
  • テレビ広告の存在意義


では順番にご説明します。


[考察 1] YouTube 広告のリーチがテレビを超えた驚き


先ほどのグラフで見たように、YouTube の広告リーチがテレビを超えたことに驚きました。

引用: Think with Google


超えたというのは二つの意味があります。


YouTube の広告リーチがテレビを超えた
  • 7日間のトータルでテレビよりも多かった
  • 初速から YouTube のリーチがテレビを凌駕していた


これまでの私の印象は、この二つのいずれもで逆でした。テレビの方がトータルのリーチが大きくなり、初速でも YouTube はテレビに敵いませんでした。

テレビのリーチは圧倒的だったので、YouTube はあくまでテレビのリーチを補うものでした。テレビでは届かない層への補完という意味合いを持っていました。

今回の結果だけを見れば、今後は広告メディアプランでは YouTube をメインにし、テレビは補助的だと捉える考え方も出てくるかもしれません。


[考察 2] リーチ計測の対象者とエリア


今回の Google の自主調査結果を見るときに注意が必要です。

リーチ計測の対象条件です。具体的には二つあり、年齢が18歳から49歳まで、対象エリアは関東・関西・中京 (いわゆる東名阪) です。

対象年齢がもし50歳以上の中高年、シニア層まで含まれればテレビのリーチはもっと大きいでしょう。

YouTube に比べてテレビの広告リーチが増えるので、YouTube とテレビの広告リーチの関係は今回の結果と逆転していた可能性もあります。


[考察 3] この結果は一般的か?


今回の調査結果をどのように捉えればいいのでしょうか?

私は、あくまで一つのケースで捉えるべきだと考えます。

今回の Google キャンペーンの結果自体を否定するわけではもちろんありませんが、一般的な傾向として YouTube 広告リーチがテレビよりも多くなるとまでは言えないです。

Think with Google 記事に補足説明として書かれていたように、メディア配信プランは以下のような条件でした。


調査対象キャンペーンのメディア配信プラン
  • テレビ広告と同規模のターゲット視聴率 (TRP) で YouTube 広告をプランニング
  • YouTube の事前予約可能な広告を最大限に活用
  • リアルタイムに広告枠を確保しなければならない 「運用型広告」 の比率を極力低くし、事前予約可能な広告を最大限に活用した
  • YouTube のフリークエンシーキャップ機能を1人あたり広告接触回数を制限


今回の結果を私は 「一般的」 とまでは言えない理由が、上記にあるようなテレビと YouTube 広告の出向規模を同じにし、YouTube の予約型広告を最大限活用した場合という前提があるからです。

このようなプランがどの広告主にも普及すれば、今回の結果はより一般的な YouTube 広告とテレビ広告の位置の関係性と捉えられます。


[考察 4] テレビ広告の存在意義


今回の調査結果を見て改めて考えさせられたのは、これからのテレビ広告の存在意義です。

従来テレビはメディアの中でもリーチは圧倒的にナンバー1でした。広告市場全体では2019年にネット広告がテレビ広告を越えたものの、それでもマスメディアとしてテレビの存在感は大きかったです。

今回の Google の調査結果のような、初速だけではなくトータルでもテレビよりも YouTube 広告のリーチが高いとなった時に、果たして広告メディアとしてテレビはどのように位置づけられるのでしょうか?


今後のテレビ広告の役割 (例)
  • シニア層向けの広告メディアなのか
  • テレビも今後はより精緻に出向枠を決めてプランニングをするメディアになるのか
  • テレビ広告では15秒でインパクトを出し認知を撮るのを重視するのか (映画の予告編のような使い方)


まとめ


今回は Google の自主調査結果をご紹介し、考えさせられたことを書きました。

最後に今回の記事のまとめです。


Google の自主調査
  • Google が自社プロダクトの広告キャンペーン
  • インテージのシングルソースパネル i-SSP を使って YouTube 広告とテレビ広告のリーチを計測


YouTube の広告リーチがテレビを超えた
  • 7日間のトータルでテレビよりも多かった
  • 初速から YouTube のリーチがテレビを凌駕していた


Google 調査結果から思ったこと
  • YouTube 広告のリーチがテレビを超えた驚き
  • リーチ計測の対象者とエリア (18−49才, 関東・関西・中京)
  • この結果は一般的か? (YouTube とテレビは同規模の出稿, YouTube は予約型を最大限活用)
  • テレビ広告の存在意義とは


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。