投稿日 2020/12/04

With コロナの 「アナログ回帰」 のユーザー体験価値。役に立つ vs 意味がある



今回は、消費動向や価値観についてです。

ある調査結果からの 「デジタル移行とアナログ回帰」 を掘り下げています。


この記事でわかること


  • 電通デジタルの調査 (デジタルに移行 vs アナログに回帰)
  • 興味深いアナログ回帰
  • アナログ回帰の意味 1: ユーザー体験価値
  • アナログ回帰の意味 2: 役に立つ vs 意味がある


今回は電通デジタルが実施した消費者・価値観調査を取り上げます。

その中でも特に興味深かったデジタルとアナログの対比について掘り下げています。

ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。


電通デジタルの調査


電通デジタルの 「消費・価値観調査」 を見ました。

デジタルネイティブ世代は "好きを極める消費" へシフト - 「コロナ禍におけるデジタルネイティブ世代の消費・価値観調査」 実施|電通デジタル


特に興味深いと思ったのは、 デジタルへの移行とアナログ回帰の比較でした。



引用: 電通デジタル


面白いと思ったのは図の右側にあるアナログ回帰です。具体例はライブや飲食です。


アナログへの回帰


コロナ禍の緊急事態宣言による外出自粛では、一時期 Zoom 飲み会という言葉が流行りました。

しかしアナログ回帰ということは一度オンラインでの再現を試みられたものの、またアナログに戻ったわけです。この現象は興味深いです。

なぜこのような事象が起きたのでしょうか?


アナログ回帰の理由


一度離れたアナログに再び戻ってきた理由は、リモート環境でのオンラインでは、リアルでのライブや飲食の楽しさを再現できなかったからでしょう

先ほどの電通デジタルの調査結果に戻ると、デジタルに移行している例は決済や動画があります。

デジタルの浸透は、少なくともリアルでの利便性や面白さで同等かそれ以上のユーザー体験を提供しているからです。だから人々はデジタルに移行するのです。

しかしアナログ回帰のライブや飲食には、デジタルでは少なくとも現時点での技術や仕組みではリアルでの臨場感に勝る何か、つまり体験価値がないからです。

もちろんリモートでは、例えば家や部屋に居ながらにして参加できる気軽さはあります。しかし、対面やその場にいる共同体験価値はリアルには勝てません。これが如実に表れるのがライブイベント、飲み会などの飲食シーンです。

ではアナログ回帰について、別の観点から掘り下げてみましょう。


役に立つ vs 意味がある


ものごとの価値として 「役に立つ」 と 「意味がある」 があります。

身近な例でネット通販に当てはめると役に立つのは Amazon 、意味があるのは楽天市場です。

Amazon のユーザー体験で感じるのは利便性の追求です。最短で最小の手間で欲しいものが見つかり買いものができます。

一方の楽天市場はどうでしょうか?

楽天市場では、商品詳細ページが決して見やすいとは言えないつくりになっています。一見すると必ずしも必要ではないと思うような店舗の詳細情報がまず表示され、その下に商品情報が掲載されます。Amazon の効率性とは明らかに一線を画しています。

楽天市場の思想は、買いものプロセスも含めて楽しさの追求です。買い物自体にストーリーを持たせています。楽天市場にある買いもの SNS の楽天 ROOM も特徴的です。

以上のように Amazon のユーザー体験は 「役に立つ」 、楽天市場は 「意味がある」 です。

ではこの話をデジタル移行とアナログ回帰に当てはめてみましょう。


アナログ回帰の 「意味がある」


アナログ回帰の例にあったライブや飲食は、「役に立つ」 よりも 「意味がある」 です。

アナログによる意味性にユーザー体験と価値を人々が見出したからこそ、一旦デジタルに移行したかに見えたものが再びアナログに回帰したわけです

もし今後、ライブや飲食でもデジタルのリモート環境で 「役に立つ」 だけではなく 「意味がある」 でアナログと同等かそれ以上、あるいはアナログにはない意味合いが加われば今度こそアナログからデジタルにシフトしていくでしょう。

大きな流れでのアナログからデジタルへのシフト、別の表現をすればアナログがデジタルに統合されていくという OMO (Online Merged with Offline) は不可逆の流れです。ただしミクロで見れば一旦アナログに回帰するような現象も見られます。

マクロの潮流とミクロの動向の抽象と具体の両方で、消費者動向や価値観をキャッチアップしていきたいです。


まとめ


今回は、消費・価値観調査からデジタル移行とアナログ回帰について見てきました。

いかがだったでしょうか?

最後に今回の記事のまとめです。


アナログへの回帰
  • コロナ禍の緊急事態宣言による外出自粛では、一時期 Zoom 飲み会という言葉が流行った
  • しかし一度オンラインでの再現を試みられたものの、アナログに回帰している


アナログに回帰した理由
  • リモート環境でのオンラインでは、リアルでのライブや飲食の楽しさを再現できなかったから
  • デジタル移行のものは少なくともリアルでの利便性や面白さで、同等かそれ以上のユーザー体験を提供している


アナログ回帰の 「意味がある」
  • アナログ回帰の例にあったライブや飲食は、「役に立つ」 よりも 「意味がある」
  • ライブや飲食でもデジタルのリモート環境で 「役に立つ」 だけではなく 「意味がある」 でアナログと同等以上、あるいはアナログにはない意味合いが加わればアナログからデジタルにシフトしていく


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。