2018/09/23

書評: 破壊 - 新旧激突時代を生き抜く生存戦略 (葉村真樹) 。勝者と敗者を分ける三原則から考える変化への適応


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破壊 - 新旧激突時代を生き抜く生存戦略 という本をご紹介します。



エントリー内容です。

  • 本書の内容
  • 人類史の3つの技術進化
  • 勝者と敗者を分ける三原則、思ったこと


本書の内容


以下は、本書の内容紹介からの引用です。

勝者と敗者を分けるものは何か?

本書が提言する生存戦略は、主に以下の3原則である。
 「人間中心に考える」 「存在価値を見定める」 「時空を制する」

この原則は、生物の進化と淘汰の歴史と重ね合わせても同じことが言える。つまり、今起こっている再編は、過去に繰り返し起こってきた破壊の歴史の再来でもあるのだ。

では、歴史における勝者と敗者の分かれ目はどこか?カンブリア大爆発による 「眼の誕生」 から、ポストスマホ時代の UI までを俯瞰し、「インフォメーション」 「モビリティ」 「エネルギー」 の3つの技術進化に着目。

3つの原則と、3つの技術進化を主導するディスラプターの存在を読み解きながら、今後の破壊と駆逐の時代を生き抜くための、企業と個人の生存戦略を解説する。


人類史の3つの技術進化


本書では、人類の経済発展にはビジネスチャンスを生んだディスラプター (破壊者) の存在があったと言います。

ディスラプターとともにあったのは、技術進化です。人類の進化の歴史は、3つの技術進化の歴史です。

  • インフォメーション:情報認知伝達に関する技術進化。単純な視聴覚などの生物が認知伝達する情報に加え、人間ならではの概念情報も含まれる
  • モビリティ:ヒトやモノの物理的移動に関する技術進化。移動する能力のスピード・距離・そのための省力化技術の進化
  • エネルギー:インフォメーションとモビリティの技術進化を可能にする動力源に関する技術の進化


勝者と敗者を分ける三原則


本書の視点で興味深いのは、破壊的イノベーションが起こる環境において、勝者と敗者を分ける三原則です。

  • 人間中心に考える
  • 存在価値を見定める
  • 時空を制する

以下は、本書からの引用です。

一体、私たちはどうすれば 「価値創造者」 になれるのかということだ。

そして、その答えはやはり、これまで本書で見てきた 「① 人間中心に考える」 「② 存在価値を見定める」 「③ 時空を制する」 の三原則をどれだけ忠実に実行できるか、ということに尽きる。

私たちが人間である以上、創造すべき価値は 「人間中心に考える」 ことが前提となる。そして、その価値は、自分ならではの提供価値であり、かつ世の中から求められるものである必要がある。すなわち 「存在価値」 となるのである。

そして、その価値の創造は、時間と空間の両方、すなわち 「時空を制する」 ことで初めて達成することができるのである。

 (引用:破壊 - 新旧激突時代を生き抜く生存戦略)

三原則は必要条件で、十分条件ではないとします。勝者になるためには、運も含めた他の要素があります。3つの条件を満たし、自らがディスラプターになったり、ディスラプターから自分たちを守りながら、生き抜くことが可能になると言います。


三原則で思ったこと


ここからは、三原則について思ったことです。


1. 人間中心に考える


本書では人間を中心に考えるために、デザイン思考が紹介されています。

デザイン思考は、イノベーションを起こすような創造的なアイデアを生み出す思考法です。

デザイン思考は、5つのステップがあります。人間への共感から始まります。

  • 共感:プロダクトやサービスのユーザーを観察したり、インタビューをし、相手が感じている不便や潜在的な問題意識に共感する。観察と情報収集を行う
  • 問題定義:共感で得られた定性データと情報をもとに、人を動かす隠れた気持ちであるインサイトを見い出す。対象ユーザーの視点で解決すべき問題を定義する
  • 創造:ブレインストーミング・水平思考などの発散思考手法から、問題を解決するためのアイデアを創造する
  • プロトタイプ:解決アイデアがうまくいくかを検証するために、必要最低限の機能が装備されたレベルで目に見えるプロトタイプ (試作品) を製作する
  • テスト:プロトタイプを実際のユーザーが現実に使用する状況で使ってもらうテストをする。ユーザーの反応を観察し、問題点や改善策を明らかにする。プロトタイプを再度製作し、あらためてテストをし反応を確かめる

人間を中心にするアプローチを考えた時に、デザイン思考は相性がよいです。見い出した問題を解決するために、アイデアの発散と収束を繰り返しながら新しい発想を得ます。

デザイン思考で重要なのは、ユーザーや顧客への共感から始まることです。解決すべき問題を定義するためには、まずはユーザーの欲求や困っていることを理解し、ユーザー・顧客の気持ちに共感することです。

私はここに、AI やロボットにはできない、人間だからこそ人間中心という原点に戻る重要性を見ます。

共感とは心の理解です。相手の心、一人一人が集まった集団の心 (組織の雰囲気や空気) 、そして、相手や集団の理解を通しての自分の心の理解です。


2. 存在意義を見定める


存在意義とは、なぜ自分はこの世に存在するのか、自分はどんな価値を提供するためにいるのかです。

存在意義に立ち返ることは、自分にとっての why を考えることです。What (何をやるか) や how (どうやるか) ではなく、why からはじめます。

Why とは、自分がやりたいと思うこと、実現したい理想とする世界、目的です。


3. 時空を制する


勝者と敗者を分ける三原則の3つめは、時間や空間を制することができるかです。

時間は、本書では以下の3つが書かれています。

  • 他者の時間を自分のものにする (競合から時間をとる)
  • 時間を短縮し、時間を新たに作り出す (時短)
  • 無価値な時間を価値に変える (スキマ時間の有効活用)

興味深いと思ったのは、空間をどう制するかです。

人が集う空間は、コミュニティをどう形成するかです。本書で例に挙げられていたのは、ネットワークをつくりプラットフォームを構築している Facebook 、企業や働く人に場を提供する WeWork などです。

もう1つ、興味深く読んだのは、空間の観点から捉えるブロックチェーンです。

ブロックチェーンは中央集権から分散型を目指します。経済圏をつくる主役が個人になり、個人が価値創造者になり得ます。既存の経済圏が分散型になると、どのような世界になるのか、どういう空間になっていくかは興味深い問いです。


最後に


本書のサブタイトルは、「新旧激突時代を生き抜く生存戦略」 です。

生き抜くのは、適応した種です。外部環境の変化に対して、最も良く適応できた者です。変化すること自体は手段であり、変化そのものが目的ではありません。

本書で参考になるのは、適応するための3つの視点です。

  • 人間中心に考える
  • 存在価値を見定める
  • 時空を制する



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書いている人 (多田 翼)

ベンチャーから一部上場企業の経営・事業戦略を支援。マーケティング、コンサルティング・アドバイザー・メンター、プロダクトマネジメント。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn または Facebook をご覧ください) 。


1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。