2018/09/22

スタートアップにとっての良いアイデア、大企業にとっての良いアイデア


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ビジネスにおけるアイデアについてです。

大企業で良しとされるアイデア、スタートアップにとって良いアイデアとは何かです。特にスタートアップが取り組むべきアイデアとは何かを考えます。

エントリー内容です。

  • 大企業のアイデア、スタートアップのアイデア
  • スタートアップが避けるべきアイデア (7つ)
  • 思ったこと (4つ)


大企業のアイデア、スタートアップのアイデア


起業の科学 - スタートアップサイエンス という本に、大企業にとって良いアイデアと、スタートアップにとって良いアイデアは異なると説明されています。



大企業とスタートアップで異なる 「良いアイデア」


  • 大企業にとって良いアイデア:誰から見ても優れていると思えるアイデア
  • スタートアップにとって良いアイデア:他の人はみんな反対・悪いと思うが、自分たちは良いと思うアイデア

例えば、スマホのバッテリーの持ちが悪い (毎日充電しなければならない) という問題があります。大企業にとって良いアイデアは、バッテリーのもちを2倍にすることです。倍にできれば、毎日の充電が2日に1回にできます。

一方、同じ問題解決のためにスタートアップにとって良いアイデアとは、そもそもバッテリーが不要なスマホを開発することです。バッテリーを使わないスマホと聞いて、多くの人は現実的なアイデアとは思わないでしょう。


大企業の意思決定の構図


大企業で採用されるアイデアが、誰から見ても良いと思われるものになるのは、大企業での意思決定の構図にあります。

大企業が新規事業を始めるにあたって、取締役会で経営陣の賛同が得られないと稟議の承認がされません。判断で役員が見るのは、その事業からの売上や利益の見通し、リスクの低さ、既存ビジネスとカニバリをしないか (今までやってきたことを否定しないか) です。

これらの論点で絞り込まれるのは、誰が聞いても良いアイデアになっていきます。


スタートアップは 「誰もが良いと思うアイデア」 を選んではならない


スタートアップも、100人に聞けば100人が 「いいね」 と言ってくれるアイデアに取り組むほうが、事業の成功確率は上がるように思えます。しかし、誰から見ても良いと思えるアイデアは、スタートアップは選んではいけないものです。

皆が優れていると思うアイデアは、多くの人が採用します。先ほど見たように、大企業が採用します。

スタートアップが、大企業と同じような 「誰から見ても優れたアイデア」 に取り組めば、有利なのは大企業です。ヒト・モノ・カネのリソースが豊富にある大企業と、リソースが少ないスタートアップでは、スタートアップが不利です。

スタートアップにとっての良いアイデアとは、「自分たちだけの真実」 です。他の誰もがバカげていると思うが、自分たちだけは良いと思え正しいと信じるアイデアです。


スタートアップが避けるべきアイデア


本書で興味深いと思ったのは、スタートアップが避けるべきアイデアです。7つ提示されています。

  • 誰が見ても、最初からいいアイデアに見えるもの
  • ニッチすぎる
  • 自分が欲しいものではなく、作れるものを作る
  • 根拠のない想像上の課題
  • 分析から生まれたアイデア
  • 激しい競争に切り込むアイデア
  • 一言では表せないアイデア

以下、それぞれの補足です。


1. 誰が見ても、最初からいいアイデアに見えるもの


  • 誰もが良いと思うアイデアは、既に誰かが取り組んでいる
  • 最初から良いアイデアに見えるにもかかわらず、まだビジネスになっていないならば、市場性がなかったりより良い代替案が既にあると考えたほうがいい


2. ニッチすぎる


  • いくらクレイジーなアイデアに見えても、ニッチすぎる市場は避けたほうがよい
  • 少なくとも、現状はニッチでも将来的に成長が見込める市場であるべき


3. 自分が欲しいものではなく、作れるものを作る


  • 技術的に作れるからという発想ではなく、問題がまずあり、それをアイデアでどう解決するかを考える
  • 技術ドリブンやソリューションドリブンではなく、課題ドリブンであるべき


4. 根拠のない想像上の課題


  • 「これならニーズがあるだろう」 という思いつきで、課題の検証をやっていないものは失敗する
  • 市場性検証では、単にコンセプト動画に賛同が集まるようは表面的なアイデアになっていないかに注意する


5. 分析から生まれたアイデア


  • 市場を俯瞰し、空いているホワイトスペースを狙うというロジカルなアプローチだけでは成功しない
  • 創業者自身の情熱や思い入れ、共感を呼ぶストーリーがあるアイデアが必要


6. 激しい競争に切り込むアイデア


  • スタートアップが大企業と正面から競争しても、勝ち目は低い
  • 競争を避けるという戦略をスタートアップは目指すべき (戦略は 「戦いを略す」 と書く)


7. 一言では表せないアイデア


  • 誰の何 (問題) をどのように解決するかを一言で表せないアイデアは、磨き込みが足りない
  • 世の中にインパクトを与えるプロダクトを作るには、核心を突く必要がある
  • 一言でアイデアを的確に言えられれば、スタートアップに参加する仲間を集める時に、課題に共感したメンバーを集めることができる。お互いの認識をそろえられる


思ったこと


ここからは、スタートアップにとっての良いアイデアで思ったことです。以下の4つです。

  • 競争を避け、唯一無二になれるか
  • 明確な why があるか
  • Will と Want を重ねる (Product market fit)
  • Product market fit のための5つの問い

以下、それぞれについてご説明します。


1. 競争を避け、唯一無二になれるか


スタートアップが取り組むことは、他の人が考えていないこと、知っていても誰もが良いと思えないアイデアの実現です。

目指すべきは、いかに唯一無二の存在になれるかです。競争をしないという競争戦略を立てられるかです。

  • 「一見すると不合理だが、自分には合理なこと」
  • 「部分的には不合理だが、全体で見れば合理なこと」


逆張りをし、他人から何を言われても自分たちが信じることをやりきれるかです。

まだ誰も気づいていないこと、賛成しないが、自分には大切な真実を追求することは、他の人とは違うことに取り組むということです。競争をせずに、新しい市場を切り拓いていけます。


2. 明確な why があるか


アイデアに対して、自分たちの why があるかです。

Why とは、信念や志、自分の体験に基づく使命感、目的です。Why があるからこそ、アイデアに当事者意識が生まれます。

スタートアップのアイデアである 「自分たちだけの真実」 を実現するためには、仲間が必要です。人が集まるのは、スタートアップのファウンダー (創業者) の why と、why に基づく当事者意識です。

本気で世界を変え、より良い場所にするために、明確な why があるかです。


3. Will と Want を重ねる (Product market fit)


自分たちだけの真実というアイデアを本当に実現できるかは、市場性があるかによります。

今回ご紹介した 起業の科学 という本で強調されているのは、アイデアを実現するプロダクトやサービスが、顧客やユーザーが求めることを満たすかどうかです。Product market fit (PMF) です。

PMF とは、自分たちのアイデアから実現したいことという will と、市場からの want が、どれくらい強く重なるかです。

大企業が採用する 「誰が見ても賛成されるアイデア」 は、すでに顕在化しているニーズに対してです。一方、スタートアップは 「他の人はバカげていると言うが、自分たちは正しいと思うアイデア」 です。

PMF を実現するためには、まだ潜在的なニーズ、言われたり提示されて始めて欲しいと思えることに、自分たちしかできないやり方で価値を提供できるかです。


4. Product market fit のための5つの問い


PMF を実現するために、私がプロダクトマネジメントで使う問いは、以下の5つです。

  • ターゲットユーザーは誰か
  • そのユーザーが抱えている問題は何か (自分たちが解決する問題の定義)
  • その問題をどのように解決するか
  • 問題が解決したかをどう判断するか (成功の定義)
  • 解決を判断するためのプロトタイプをどう作り、テストをどのように実施するか

ユーザーへの理解と共感から始まり、プロトタイプによるテストから実際のユーザーからフィードバックを得て、PMF が実現できるかを検証します。


最後に


今回は、スタートアップにとってのアイデアとは何かを考えました。

ご紹介した 起業の科学 は、起業した後にどう成長させるかを体系立てて説明しています。成長過程のおいて、各段階は適切なタイミングがあります。遅すぎても、早すぎても、失敗の確率を高めてしまいます。

この本の大きなフレームは以下です。ベースになっているのは、デザイン思考とリーンスタートアップです。

  1. プロダクトやサービスの初期アイデア仮説を創出する
  2. そのアイデアは顧客が本当に抱えている問題を解決するか (顧客視点でのアイデア検証。問題設定し、問題の質を上げる)
  3. その問題を自分たちはどのように解決するかのソリューションの質を上げる (今度は自社視点に切り替え、解の質を上げる)
  4. ソリューション仮説を MVP (実用最小限のプロダクト) で検証する。仮説が正しければ Product Market Fit (PMF) があるということ。なければピボット
  5. スケールや収益の観点から、ビジネスとしていかに成長させるか



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書いている人 (多田 翼)

ベンチャーから一部上場企業の経営・事業戦略を支援。マーケティング、コンサルティング・アドバイザー・メンター、プロダクトマネジメント。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn または Facebook をご覧ください) 。


1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。