2018/09/08

書評: 戦略インサイト - 新しい市場を切り拓く最強のマーケティング (桶谷功) 。インサイトはビジネスに活かしてこそ


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戦略インサイト - 新しい市場を切り拓く最強のマーケティング という本をご紹介します。



エントリー内容です。

  • 本書の内容。消費者インサイトとは
  • インサイトとプロポジションをセットで。ブランド戦略のための 「ブランドフルーツ」
  • 読んで思ったこと (2つ)


本書の内容


以下は、本書の内容紹介からの引用です。

思わず買ってしまう 「心のスイッチ」 を押せ!消費者心理をつかみ、新しい市場を切り拓くマーケティング戦略書!

ヒット商品の裏に 「インサイト」 あり。インド、中国 …… 後発でも新市場で勝ち抜く方法。


消費者インサイトとは


本書では消費者インサイトは、次のように説明されます。

  • 消費者に潜在しているニーズ
  • マーケティング活動にひらめき (アイデアへのインスピレーション) を与えるもの
  • その企業がマーケティング活動に活かすことができ、事業に成功をもたらすもの

消費者インサイトでポイントとして書かれているものは、以下の3つです。

  • 消費者の潜在的なニーズ
  • マーケティング活動にひらめきを与える
  • その企業に最も相応しい、絞り込まれたもの

3つめの補足です。

重要なのは、インサイトが自分たちが捉えるのに相応しく、消費者の潜在ニーズに応えるものに絞り込まれていることです。相応しいとは、自社のビジョンに合っていて、資産や強みを最大限に活かせるものです。


インサイトとプロポジションをセットで考える


消費者インサイトが、「へー、おもしろいね」 で終わっては、ビジネスの観点からは意味がありません。インサイトは、マーケティングに活かし、自分たちのビジネスに貢献するものだからです。

マーケティング活かすために大事なことは、消費者インサイトとプロポジションをセットで同時に開発することです。

プロポジションとは、企業やブランドから消費者への提案です。消費者の潜在キーニーズであるキーインサイトを捉えるために、企業から何を提案するかです。


ブランド戦略のための 「ブランドフルーツ」


本書で興味深いと思ったのは、ブランド戦略も消費者インサイトとプロポジションをセットで考えことです。

フレームワークはブランドフルーツという名前です。以下の6つの要素から、ブランドを形作ります。

  • キーインサイト
  • ブランド・プロポジション
  • ブランド資産・製品特徴
  • 機能的ベネフィット
  • 情緒的ペネフィット
  • ブランドパーソナリティ


以下、それぞれについての補足です。


1. キーインサイト


  • 消費者のそもそものニーズ。潜在ニーズの中でも、カギになるもの
  • ブランド設計・定義では、消費者インサイトの中でも、特に情緒的なニーズから抽出することが多い


2. ブランド・プロポジション


  • ブランドからの消費者への提案。キーインサイトをとらえていること
  • 市場で際立ったブランドになるためには、このブランド・プロポジションがユニークで強いものであることが欠かせない


3. ブランド資産・製品特徴


  • ブランド・プロポジションの根拠となる製品の特徴
  • ブランドを連想させる要素。ブランドを表現するための資産の根拠になる


4. 機能的ベネフィット


  • ブランド・プロポジションが、機能的にはどのようなベネフィットを提供するか
  • ベネフィットとは、消費者にとってのうれしさ


5. 情緒的ベネフィット


  • ブランド・プロポジションが、情緒的にはどのようなベネフィットを提供するか


6. ブランド・パーソナリティ


  • ブランドを擬人化した時に、ブランド・プロポジションがどのような性格を際立たせるか
  • 人の性格を表すときの形容詞を使ってブランドを定義する。場合によっては言葉だけでなく、ビジュアルでも表現する


思ったこと


読んで思ったことは、以下の2つです。

  • インサイトとプロポジションを重ねる
  • ブランド戦略をインサイトを起点につくる

それぞれについて、ご説明します。


インサイトとプロポジションを重ねる


私の消費者インサイトの定義は、消費者インサイトとは 「人を動かす隠れた気持ち」 です。あるいは、動かさない (行動へのブロックになっている) 隠れた感情です。

普段は消費者本人も意識していませんが、そうと気づかされれば買うなどの行動につながる奥にある気持ちです。

その気持ちがたとえ本質的で、気づかされれば行動を起こさせる感情であっても、動く先が自分たちの事業に関係がなければ、ビジネスの観点からはそのインサイトは活かすことができません。

そうしたことが起こらないために大事なのは、インサイトとプロポジションの両方をセットで考えることです。

インサイトは、消費者や顧客が潜在的に求めるものです。プロポジションは、ビジネスにつながる潜在ニーズに対して、自分たちはどう応えるか、何を提供するかです。

インサイトとプロポジションの重なりが強いほど、消費者と企業の両方を幸せにします。Win-win の関係をつくることができます。


ブランド戦略をインサイトを起点につくる


ブランドにおいてもインサイトがまずあり、それに対してブランドは何ができるかを考えるという順番です。

キーインサイトというブランド顧客が潜在的に求めていることを明らかにします。インサイトに対してブランドからの提案が、ブランドプロポジションです。

ブランドからの提案を実現するためには、ブランドの根拠になる資産は何か、何が源泉になっているかです。機能的、情緒的なベネフィットをブランド顧客に提供し、ブランドを使うことによって顧客にはブランドパーソナリティが形成されます。ブランドに対して、まるで人のような感情を抱きます。

ブランドとは、消費者からの好ましい感情を伴った商品・サービスです。これが私が考えるブランドの定義です。好ましい感情とは、好き・共感・憧れ・満足感などです。

消費者インサイトが起点になり、プロポジション (提案) を通して商品やサービス、企業へのポジティブな感情を生み出し、ブランドをつくっていくのです。


最後に


本書では、消費者インサイトとは何か、具体的にどのような方法でインサイトをビジネスに活かすかが書かれています。

エントリーでは取り上げていませんが、インサイトを見い出し、どのように社内での共通言語にするかのワークショップの方法も参考になります。



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書いている人 (多田 翼)

ベンチャーから一部上場企業の経営・事業戦略を支援。マーケティング、コンサルティング・アドバイザー・メンター、プロダクトマネジメント。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn または Facebook をご覧ください) 。


1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。