2018/09/01

書評: 実践版 孫子の兵法 - 勝者を支える最高峰の戦略書 (鈴木博毅) 。現代の 「戦い」 に当てはめる勝つための原則


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実践版 孫子の兵法 - 勝者を支える最高峰の戦略書 という本をご紹介します。



エントリー内容です。

  • 本書の内容、孫子の兵法 (勝つための原則)
  • 敵を 「自分が新しく始めること」 と捉える
  • 機会と時間の価値


本書の内容


以下は、本書の内容紹介からの引用です。

人生に勝利したいすべての方へ。

2500年前古代中国の孫武によって書かれた 「孫子」 は最高の兵法書として名高く、古典としてはすでに数多く販売されています。

本書はその 「孫子」 を現代の視点で分析し、読み解きます。


孫子の兵法 (勝つための原則)


この本からは、あらためて戦略への考え方の理解が深まりました。

具体的には、以下の勝つための原則です。

  • 戦うことではなく、勝つことが最終目標
  • どこで戦うかが大事
  • もし戦うなら、相手に勝つ条件を少しでも多くする
  • 戦いの始め方
  • 大切なのは負けないこと (生き残ること)

それぞれについて補足します。


1. 戦うことではなく、勝つことが最終目標


目的はあくまで勝利であり、戦うこと自体ではありません。戦うことは、目的達成の手段にすぎず、選択肢の一つです。

戦略は勝つという目的のためにあります。戦略の上位にあるのが目的です。目的を達成するために何をやるかが戦略です。

戦略の二文字は、戦いを略すると書きます。目的を達成するのに必ずしも戦う必要はなく、むしろ戦わずに勝てるほうがよいのです。


2. どこで戦うかが大事


ただし、目的を達成するためには戦う必要に迫られることもあります。

大事なのが、戦う場所です。自分にとって有利な場所、相手には不利な場所を選べるかです。

現代のビジネスに置き換えれば、参入する市場です。個人に当てはめれば、どの業界の会社で働くかです。

市場が伸びているような環境でさらに自分を成長させるのか、停滞または縮小にある業界で勝負するかでは、自社や自分の市場価値に影響します。上りのエスカレーターに乗って駆け上がるのか、下りのエスカレーターを逆走して上がるかの違いです。


3. もし戦うなら、相手に勝つ条件を少しでも多くする


孫子の兵法が大切にするのは、戦いの準備です。己を知り、敵を知ることです。自分と敵を見比べて、相対的なお互いの強みや弱みを見極めます。

同じ特徴でも比べる相手によっては、強みにも弱みにもなります。だからこそ、己と敵の両方を知ることが重要です。

孫子が説くのは、あらかじめ勝利の態勢を整えたほうが勝つことです。戦いが始まりあわてて勝機を掴もうとしても遅いのです。


4. 戦いの始め方


戦いの始め方も大事です。戦いの序盤で主導権をいかに握るかです。

戦うにあたって、万が一のプラン B (代替案) を持っておきます。シナリオを複数持ち、前提とともに整理しておきます。

また、戦いに勝てる見込みが始めからないのであれば、勝負をしないという判断が求められます。


5. 大切なのは負けないこと (生き残ること)


全てを失う大失敗だけは絶対にやってはいけません。勝つことは大事ですが、負けないことが大切です。

戦う前に勝算がないなら勝負をすべきではなく、勝てないのなら逃げるべきです。一時的に退散してでも、勝利の機会を伺うのです。

孫子からの教えは、局面によっては、やめる勇気を持てるか、逃げる決断ができるかどうかです。


敵を 「自分が新しく始めること」 と捉える


本書でユニークな着眼点だと思ったのは、戦う敵を 「自分が新しく始めること (行為そのもの) 」 と見なす考え方です。

敵に勝つこととは、新しく始めることに成功することになります。敵を新しく始めると捉えると、示唆があります。


新しく始める前の準備


「己を知り、敵を知る」 について、本書では次のように書かれています。

敵を知り、己を知るならば、絶対に敗れる気づかいはない。
己を知って敵を知らなければ、勝敗の確率は五分五分である。
敵も知らず己も知らなければ、必ず敗れる。

(引用:実践版 孫子の兵法 - 勝者を支える最高峰の戦略書)

新しく始めるにあたって、己を知ることとは、これまでの自分の経験や持っているスキルの何が活かせるのかを見極めることです。

敵を知るとは、新しく始めることについて、事前に調べることです。

例えば、自分にとっては新しい挑戦でも、すでに他人がやっているかもしれません。その人たちの失敗談や成功のコツを事前に知ることができれば、自分が新しく始めることの成功確率を上げられます。


新しいことの始め方


孫子の戦いの始め方からも、新しく始めることへの示唆があります。

リスクテイクは、いきなり大博打に打って出るのではなく、適切なリスク範囲にすべきです。リスクを取りすぎると、大成功の確率がある一方で、大失敗から全てを失う可能性があります。

孫子の教えからは、生き残ることが大事で、生き残っていれば次の機会でまた挑戦できます。

新しいことを始めるにあたっても、常に代替案を用意しておくことも大事です。代替案というプラン B があるからこそ、本命のプラン A に集中できます。


機会と時間の価値


機会と時間の考え方も、考えさせられました。


価値の高い時間とは


時間は、一方向に流れ (使ってしまうと取り戻せない) 、誰にでも1日に24時間あります。一見すると、時間の価値は誰にでも平等で、今の時間も、この先の (または昔の) 時間の価値は同じに見えます。

しかし、本書で興味深い考え方だと思ったのは、時間の価値はいつでも同じではないことです。

時間の価値は機会によって変わります。目の前にチャンスがあるという機会が大きければ、その時間は価値は高くなります。

もし機会が見い出せない時間でも、その時間を将来に機会のために有効に使えば、価値のある時間にできます。


戦場の3つの時間帯


戦いでは、3つの時間帯があります。

  • 主導権が定まっていない時
  • 勝敗のターニングポイントになる時
  • 勝負の大勢が決した時

一般的な考え方は、勝負のターニングポイントが決まる時を、価値の高い時間であると重視するでしょう。

しかし、機会の大きさという観点からは、必ずしもターニングポイントの時が時間の価値が最大ではありません。重要なのは、その前にある主導権が定まっていない時間です。勝利の確率を高めることができる状況で、自分にとっての機会が大きいからです。

時間の価値は機会の大きさによると考えれば、戦う前の準備の時間も価値の高い時になります。勝利という目的達成の機会だからです。


最後に


本書からは、あらためて戦略とは何かを考えさせられました。

目的はあくまで勝利であって、戦いではありません。あらゆる行動には目的があるものの、時に人は手段と目的を混同します。

兵法書は、戦争に勝つための道具です。孫子が大切にするのは 「不敗」 、つまり負けないことです。いかに生き残るかということは、現代においても示唆に富みます。



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書いている人 (多田 翼)

ベンチャーから一部上場企業の経営・事業戦略を支援。マーケティング、コンサルティング・アドバイザー・メンター、プロダクトマネジメント。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn または Facebook をご覧ください) 。


1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。