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マーケティングのペルソナについてです。良いペルソナの条件、使う際の注意点を書いています。
エントリー内容です。
- 良いペルソナ、悪いペルソナ
- ペルソナの注意点
- 哲学の元来のペルソナの意味は 「お面」
良いペルソナ、悪いペルソナ
機会発見 - 生活者起点で市場をつくる という本に、良いペルソナ設定と、適切ではないペルソナ設定の比較が書かれています。
良いペルソナ
- 性別や年齢、職業の属性情報だけではなく、趣味やライフスタイルがわかる (休日の具体的な過ごし方など)
- 行動や嗜好の理由まで掘り下げられている。単に 「xx が好き」 ではなく、なぜ好きなのかが書かれている
- 実在すると思えるリアリティがある。多くの人に、こういう人がいると思ってもらえる
悪いペルソナ
- 属性情報だけで、ライフスタイルがわからない
- 行動や嗜好のみで、背景の記述がされていない
- 人物像の理想が高く、リアリティが感じられない (実在するとは思えない) 。特殊な表現や記述が多く、一部の人にしか理解されない
ペルソナの注意点
ペルソナの設定や活用する際の注意点が、戦略インサイト - 新しい市場を切り拓く最強のマーケティング という本に書かれています。
注意点は、以下の3つです。
- 都合の良い人物像設定
- 既存ユーザーを基につくられる
- 一度決まると、盲目的な前提条件になる
以下、それぞれについてご説明します。
1. 都合の良い人物像設定
ペルソナは、自社の事業や製品に都合の良い人物像になりがちです。自社製品を使う人は、こういうライフスタイルで、このような価値観を持っている人だというように、製品から逆算して設定してしまうためです。
自分たちに都合の良い人物設定でペルソナをつくる弊害は、本当の消費者像とかい離することです。実際の消費者を起点にして、ペルソナ設定をする必要があります。
2. 既存ユーザーを基につくられる
多くの場合、ペルソナは既存ユーザーの特性をベースにして描写されます。
既存ユーザーのロイヤリティを高める場合には有効ですが、新規ユーザーを取り込んだり、ライトユーザーの利用頻度を高める場合に使うには注意が必要です。既存ユーザーと新規やライトユーザーでは、違う人たちだからです。
3. 一度決まると、盲目的な前提条件になる
ペルソナは一旦決まると、それが絶対的な前提条件のようになります。ペルソナへの疑いがなく、ペルソナに合った製品を開発し続ければいいという思考停止状態になります。
ペルソナが実際の消費者を表していればよいですが、時代や消費者の変化が起こると、ペルソナが合わなくなります。
一度設定したペルソナであっても、盲目的に正しいとするのではなく、常に健全に疑い、ギャップがあれば見直すことが必要です。
ペルソナの元来の意味は 「お面」
武器になる哲学 - 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50 という本に書かれていて興味深いと思ったのは、ペルソナの元来の意味です。
以下は、本書の該当箇所からの引用です。
パーソナリティとはそれ自体の定義からして本来的には短期に大きく変化しないものです。
心理学者のユングはパーソナリティのうち、外界と接触している部分をペルソナという概念で説明しています。ペルソナとは、元来は古典劇において役者が用いた 「お面」 のことです。
ユングは 「ペルソナとは、一人の人間がどのような姿を外に向かって示すかということに関する、個人と社会的集合体とのあいだの一種の妥協である」 と説明しています。つまり、実際の自分のあり様を保護するために外向きに形成された 「お面」 ということですが、実際の妥協の範囲はそれほど明確に意識されているわけではなく、常に 「どこまでが面でどこまでが顔なのか」 という問いがついて回ることになります。
(引用:武器になる哲学 - 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50)
ペルソナの元々の意味は、人間が持っているパーソナリティとは別にある、外向けのキャラクターです。ペルソナ (お面) と、内面では必ずしも一致しません。
マーケティングにおけるペルソナは、想定する顧客像を自分たちで具体的に描きます。ペルソナはお面であることを当てはめると、大事なのは、ペルソナ設定はあくまで自分たちがつくった人物像であり、顧客そのものとは必ずしも同じではないという認識です。
最後に
マーケティングで使われるペルソナは、具体的な顧客像を描写し、表面的な情報だけではなく内面を具体的に説明するものです。関係者の顧客イメージの共通認識に役に立ちます。
一方で、今回見てきたように、ペルソナ設定と活用には注意が必要です。
一言で言えば、盲目的にペルソナを信じては危ういことです。絶対的な前提として持つのではなく、健全な疑いの目でペルソナと市場とのかい離、つまりペルソナ設定と実際の消費者にギャップがないかを見る必要があります。
外部環境や、消費者は常に変わります。自分たちも変化に適応するために、変わり続けなければいけません。