投稿日 2019/02/26

書評: 天才を殺す凡人 - 職場の人間関係に悩む、すべての人へ (北野唯我) 。天才・秀才・凡人が共存し、イノベーションを起こすために


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1169回目のブログ更新です。

天才を殺す凡人 - 職場の人間関係に悩む、すべての人へ という本をご紹介します。





このエントリーで読んでいただきたい内容は、以下です。

  • 本書の内容。なぜ天才は殺されるのか
  • イノベーションが起こる時の 「天才・秀才・凡人の役割」
  • まとめ


本書の内容


以下は、本書の内容紹介からの引用です。

世の中には 「天才」 と 「秀才」 と 「凡人」 がいる。

三者の間にはコミュニケーションの断絶がある。凡人は天才を理解できず、排斥する。秀才は天才に憧憬と嫉妬心を持つが、天才は秀才にそもそも関心がない。秀才は凡人を見下し、凡人は秀才を天才と勘違いしている。

あなたは凡人?秀才?それとも天才?

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なぜ天才は殺されるのか


本書では、天才、秀才、凡人は、次のような特徴を持つとします。

  • 天才:独創的な考えや着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人 [創造性]
  • 秀才:論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大切にし、堅実に物事を進められる人 [再現性 (論理性) ]
  • 凡人:感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人 [共感性]

三者は、物事を評価する軸が明確に異なります。

天才は創造性、秀才は再現性 (論理性) 、凡人は共感性です。天才は世界をより良くするかの創造性、秀才は正しいかどうかの論理があるか、凡人はその人や考えに共感できるかです。


互いに理解し合えない構図


価値観や評価軸が異なるので、すれ違いが起こります。


天才と秀才のすれ違い

  • 天才 → 秀才:秀才に興味がない
  • 秀才 → 天才:妬みと憧れの相反する感情 (天才に対して、この人がいなければ自分が一番になれると思う一方、心の何処かでは尊敬・憧れている)


天才と凡人のすれ違い

  • 天才 → 凡人:本当は理解してほしい
  • 凡人 → 天才:理解できないから天才を排除する


秀才と凡人のすれ違い

  • 秀才 → 凡人:心の中で凡人を見下している
  • 凡人 → 秀才:秀才のことを天才だと勘違いしている


天才は、秀才からも凡人からも受け入れられない、理解され得ない存在です。

世の中の大多数は凡人です。凡人からすると天才の考えていることは理解できません。凡人の評価軸は共感性で、天才のことを共感できず多数決という武器により天才は排除されます。

秀才は、天才の右腕にもサイレントキラーにもなり得ます。天才への感情が憧れが強くなれば良いですが、妬みが強くなると天才は殺されます。


相互理解のために


この本には、どうすればお互いが理解し合い共存できるかが書かれています。三者それぞれの橋渡しになれる人の特徴が示されます。

例えば、凡人の中でも特に共感性に優れた人は 「共感の神」 と表現されます。天才のことを共感し理解し、サポートをする存在です。他の天才を理解せず排除しようとする凡人にも、共感の力で天才のことを説明できる人です。

本書は、三者が理解し合えないという問題提起だけではなく、どうすれば共存できるかの解決アプローチも入っています。私はここに、三者の断絶をなんとかしたいという著者の強い思いを感じました。


イノベーションが起こる時の 「天才・秀才・凡人の役割」


この本を、「イノベーションの起こし方」 という視点でも興味深く読みました。

3つの軸である、創造性・再現性・共感性のうち、創造性だけが直接測ることができないと本書では説明されます。創造性は間接的に測ることができ、具体的には反発の量です。

イノベーションにつながるような真に創造的なアイデアは、多くの人には理解できません。今の常識や価値観からすると、真逆であったりぶっ飛んでいるように見えるからです。

凡人には共感されず、反発すら起こります。ただし多くを占める凡人の反発理由は 「なんとなく」 です。本書ではこれを 「広くて浅い反発」 と表現します。

天才には見えているがその他大勢には見えないアイデアで思い出したのは、投資家のピーター・ティールという人物の考え方です。

ピーター・ティールは、「あなただけの真実は何か」 という問いかけで有名です。

 「多くの人はそうだと思わないが、自分には正しい真実は何か」 を問います。99% の人には反対されても 1% である自分には正しいと強く信じていることです。

革新的なイノベーションは、天才が世の中の誰よりも先に現状の何かに飽きを感じ、新しい視点やアイデアを見い出すところから起こります。天才とは、世の中よりも新しい価値観や常識に、その高い創造性で最も早く気づきアクションを起こす人です。

早すぎると世間からつぶされます。イノベーションが起こるためには、天才に秀才が続き、さらに凡人がフォローしていくことです。天才の創造性に秀才が再現性を加え、凡人が共感をして実現されていくという流れです。

仕事には、フェーズがあります。創り、型にし、拡大する (拡販するなど) です。

天才が創造し、秀才が組織で再現できる型やビジネスモデルに落とし込み、共感する凡人がビジネスを拡大させていきます。

イノベーションという 「未来の当たり前」 が実現するためには、天才だけでは成し遂げられず、秀才と凡人のそれぞれが持っている武器を活かすことが大事です。


まとめ


今回は、天才を殺す凡人 - 職場の人間関係に悩む、すべての人へ という本をご紹介しました。

最後に、今回の内容のまとめです。

  • この本は、人の特徴を 「天才」 「秀才」 「凡人」 に分け、それぞれの特徴、お互いにどう思っているかをわかりやすく提示。なぜ 「天才は凡人に殺されるのか」 が見えてくる

  • 問題提起だけではなく、三者が分かり合え共存するためにはどうすればよいかの解決策への示唆がある。ここに著者の強い思いを感じた

  • イノベーションは、その時には多くの人が気づかない、あるいは浅い反発を受けるところから始まる。天才の創造性、秀才の再現性、凡人の共感性とうまくつながり流れていくと、イノベーションという 「未来の当たり前」 が起こる。ビジネスも同じで、創る → 型をつくる → 拡大させるというフェーズがあり、それぞれ、天才、秀才、凡人が活躍する




天才を殺す凡人 - 職場の人間関係に悩む、すべての人へ (北野唯我)

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。