投稿日 2020/03/02

書評: たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング (西口一希) 。すぐにマーケティングの実践をしたくなる本





今回は、書評です。





ご紹介する本は、たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング (西口一希) です。

  • どんな本?
  • 「たった一人の分析」 でどう事業成長につながる?
  • 読んで思ったことは?

こんな疑問に答える内容を書きました。


この記事でわかること


この記事でわかるのは、
  • この本の概要
  • 3つのキーワードから掘り下げ
  • 読んで考えさせられたこと
です。

この本はマーケティングの本でおすすめの1冊です。

ぜひこの記事を、すでに読んだ方は復習に、まだ読んでいない方は読むかどうかの参考にしてみてください。


この本に書かれていること


この本の特徴を一言で言うと、著者のマーケティング手法が惜しみなく公開され、実践したくなる本です。

著者の西口さんがこれまで関わった事例から、特にスマートニュースのマーケティング戦略と施策が詳しく書かれています。いくつかのマーケティングフレームが紹介され、図や表 (データ) から理解しやすい内容になっています。

私は、この本でのマーケティング手法は汎用性が高く、読者が実務で使いやすいと思いました。


本書のキーワード


この本から特に重要だと思ったキーワードを絞ると、次の3つです。


本書のキーワード
  • N1 分析
  • 9セグマップ
  • プロダクトアイデア


以下、それぞれについてご説明します。


[キーワード 1] N1 分析 (たった一人の分析)


N1 分析は、本のタイトルにもなっている 「たった一人の分析」 です。

具体的な一人を掘り下げ、プロダクトや競合、具体的な使い方、顕在/潜在的なニーズ、インサイトを理解します。一人のユーザーの行動と心理の両方から、プロダクトアイデアにつなげます。

ちなみに、スマートニュースで英語でニュース記事が読める 「World News チャンネル」 は、著者の妻の N1 分析から着想を得て生まれました。たった一人でも、むしろ一人に深く向き合うからこそ事業成長につながるのです。

N1 分析の考え方は、5人に一度に聞くのではなく、1人へのヒアリングを5回やるというものです。

そして N1 分析のポイントは、その1人を誰にするかです。重要なのは、適切な人を選ぶことです。

これが次のキーワードである 「9セグマップ」 につながります。


[キーワード 2] 9セグマップ


9セグマップとは、ユーザーのセグメンテーションです。


汎用性の高い方法


下図のように、9つのグループをつくります。




引用: 1人の顧客からアイデアを得て広げる N1 分析とは?『実践 顧客起点マーケティング』セミナーレポート|MarkeZine


この本のマーケティングが汎用性が高いと思った理由の1つが、9セグマップです。

9セグマップは、次の3つからつくります。BtoC も BtoB でも活用できます。


9セグマップの要素
  • 認知
  • 購入または使用頻度 (購入/使用経験なしも含む)
  • ブランド選考 (次も買いたい/使いたい)


9セグマップの位置づけ


先ほど、N1 分析の対象者を誰にするかが大事と説明しました。

9セグマップは、その一人が9つのうちどのグループに入るかを把握するのに役に立ちます。事前に、またはヒアリングの最初に認知や頻度を聞いて、どのセグメントかを判断してから深掘りをしていきます。

N1 分析も含め、9セグマップは次のために使います。


9セグマップの位置づけ
  • ユーザー分布の可視化
  • N1 の把握 (どのグループに入っているか)
  • マーケティング施策の企画から検証/評価に活用


販促とブランディング


9セグマップが興味深いと思ったのは、販促活動とブランディングの両方の要素が入っていることです。

図で説明すると、セグメントの横方向が販促活動です。販促によって左から右にユーザーを移動させることを狙います。縦方向がブランディングです。下から上への移動を目指します。




引用: 1人の顧客からアイデアを得て広げる N1 分析とは?『実践 顧客起点マーケティング』セミナーレポート|MarkeZine


マーケティング施策を行ない、施策前後でセグメントごとのユーザー分布を比較すれば、販促とブランディングのそれぞれの効果を可視化できるわけです。ここに9セグマップの価値があります。


[キーワード 3] プロダクトアイデア


この本のタイトルは 「顧客起点マーケティング」 です。では、顧客起点マーケティングとは何でしょうか?

一言で表現すれば、「マーケティングは N1 からのプロダクトアイデアからつくる」 です。

プロダクトアイデアの筋の良さは、「便益」 と 「独自性」 の2つの視点から見極めます。


プロダクトアイデアの筋の良さ
  • 便益: ユーザーにとってのメリット。うれしさや不満解消 (ゲインを得る, ペインが除かれる)
  • 独自性: 自分たちにしかできないこと


つまり、マーケティングに活かせるプロダクトアイデアとは、ユーザーにとって魅力的で、かつ他のプレイヤーにはできないことです。余談ですが、私が思ったのは、便益と独自性に加え、アイデアに収益性が見込めるかも入れたいです。

筋の良いプロダクトアイデアを生み出すために N1 分析をし、9セグマップも活用します。


読んで思ったこと


この本を読んで特に考えさせられたことは、次の3つです。


思ったこと
  • すぐに実践してみたくなる
  • プロダクトアイデアは自分でつくる
  • 9セグマップの全体像把握から N1 分析につなげる


それぞれ、順番にご説明します。


[思ったこと 1] すぐに実践してみたくなる


スマートニュースなどのマーケティング事例がとにかくわかりやすいので、自分でも使ってみるイメージがわきます。

読みながら、自分が関わっているプロダクトでどう活かせるかを常に考えていました。すぐにでも実践したい思う、ワクワクしながら読める本です。


[思ったこと 2] プロダクトアイデアは自分でつくる


N1 分析の目的は、プロダクトアイデアを得ることです。

一人のユーザーの向き合いで大事だと思うのは、能動的な姿勢です。アイデアを直接教えてもらうのではなく、あくまでアイデアのヒントやきっかけを得ることです。

プロダクトアイデアをつくるのは自分です。この主体的な当事者意識があるかないかで、N1 分析の成果が変わります。


[思ったこと 3] 9セグマップの全体像把握から N1 分析につなげる


N1 分析からプロダクトアイデアにつなげるためには、適切な人を選ぶことです。聞く人を間違うと、マーケティングでの問題解決につながりません。

N1 分析とセットになるのが9セグマップです。

9セグマップでユーザーの全体像を把握します。N1 分析では、自分が今向き合っている一人はセグメントのどこにいる人なのかを意識しながら掘り下げることが重要です。


まとめ


今回は、書籍 たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング をご紹介しました。





最後に今回の記事のまとめです。


1.
この本の特徴は、「著者のマーケティング手法が惜しみなく公開され、実践したくなる本」 。特にスマートニュースのマーケティング戦略と施策を図や表 (データ) から理解できる。マーケティング手法は汎用性が高く、読者が実務で実践しやすい。


2.
本書のキーワード
  • N1 分析 (一人からの分析)
  • 9セグマップ
  • プロダクトアイデア (便益 & 独自性)


3.
読んで思ったこと
  • すぐに実践してみたくなる
  • プロダクトアイデアは自分でつくる
  • 9セグマップの全体像把握から N1 分析につなげる





たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング (西口一希)

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。