投稿日 2020/03/26

書評: 革命のファンファーレ - 現代のお金と広告 (西野亮廣) 。思考と実践に基づくマーケティングの本




今回は、書評です。





ご紹介する本は、革命のファンファーレ - 現代のお金と広告 (西野亮廣) です。

  • 何が書かれている本?
  • マーケティングの 4P から読み解くと?
  • 読んで思ったこと

こんな疑問に答える内容を書きました。


この記事でわかること




この本はマーケティングの観点から興味深く読めました。ぜひ記事を読んでいただき、ぜひ本書も読んでみてください。


この本に書かれていること


この本を一言で表現すれば、キングコング西野さんの思考と実践に基づいたマーケティングの本です。

サブタイトルは 「現代のお金と広告」 です。お金と広告がテーマで、私の解釈を入れれば大きく2つです。

お金と信用、マーケティングです。

以下は、本書の内容紹介からの引用です。

クラウドファンディングで国内歴代最高となる総額1億円を個人で調達し、絵本『えんとつ町のプペル』を作り、30万部突破のメガヒットへと導いた天才クリエイターが語る、"現代のお金の作り方と使い方" と最強の広告戦略、そして、これからの時代の働き方。


マーケティングの 4P で読み解く


この本にマーケティングで書かれていることは、マーケティングのフレーム 4P の観点で見ると理解が深まります。

ここからは、本書を 4P の Product, Promotion, Price, Place で見ていきましょう。


Product


この本は、西野さんがつくった絵本 「えんとつ町のプペル」 の作成や販売のプロセスをもとに書かれています。

絵本のつくり方で印象的だったのは、それまでの常識を疑ったことです。

絵本は絵本作家が一人でつくるものでしたが、西野さんは分業制にしました。キャラクターや背景ごとに役割を変え、皆でつくっていったのです。

単に分業制をしようではなく、そもそもできていない構造的な要因を掘り下げました。当たり前を疑い、違う方法をまずは自分で試してみるという姿勢は、この本で一貫して書かれています。


Promotion


絵本 「えんとつ町のプペル」 は、その当時はほとんど誰もやっていなかった無料公開をしました。

無料公開により売上が増えるという考え方はありませんでしたが、西野さんは無料公開の勝ち筋が見えていました。人が何かを買う時の心理を読み、買う理由と買うプロセスを設計した結果が無料公開だったわけです。

なぜ人はモノを買うのか、という問いと西野さんの答えが興味深かったです。


人が何かを買う理由
  • 体験をした後の 「お土産」 として買う
  • すでに知っていることを自分も体験する 「確認作業」 にお金を払う
  • 無料公開ではできない体験にお金を払ってモノを買う


プロモーションで他に印象的だったのは、口コミのデザインです。何をすれば他者も巻き込み話題をつくれるかの設計です。

ニュースを出すのではなく、「ニュースになれ」 という考え方も興味深く読みました。1万数千冊の自分の絵本購入の領収書をプロモーションに使うなど、1つ1つの実践が設計されつながっていきました。


Price


西野さんの収益化の考え方を一言で言えば、中長期でのマネタイズです。

本に書かれていた表現は 「マネタイズのタイミングを後ろにズラす」 で、必ずしも最初にお金を取る必要はないという考え方です。

これができるのは、西野さんの収益源が複数で持てているからと、戦略があるからです。

無料公開にしたのもこうした理由からです。


Place


西野さんは本の流通の常識を疑い、自分たちで直接販売サイトをつくりました。

買いたい人がどこで買いたいのかを理解した上での直接販売です。当時はまだこの言葉はありませんでしたが、D2C (Direct to Consumer) です。

本を売るのは、EC サイトや本屋だけという考え方にとらわれず、例えばトークライブや個展会場でも販売しました。

トークライブと個展会場は、本を体験のお土産と位置づけ、絵本に体験の続きという意味合いを持たせました。


思ったこと


本書 革命のファンファーレ を読んで思ったことです。


読んで思ったこと
  • 「常識を疑う → 行動 → 検証」 をまわし続ける
  • 信用を貯める


[思ったこと 1] 「常識を疑う → 行動 → 検証」 をまわし続ける


西野さんの行動や発言は、一見すると最初は目を疑うものに見えます。しかし、この本を読むと、どれも論理的に考え、小さな実践を重ねた上での結論だということがわかります。

スタートポイントは 「常識を疑う」 です。背景にある考え方は、世の中の当たり前は常に変わるです。

常識を疑い別の方法があると思えば、すぐに行動に移します。行動をすれば新しい常識になれるかどうかの検証ができます。

サイクルの 「常識を疑う → 行動 → 検証」 は、仮説検証です。PDCA ならぬ、HDCA です (H は Hypothesis の仮説) 。

なお、HDCA については別の記事でご紹介しています。よければこちらもご覧ください。



[思ったこと 2] 信用を貯める


この本の2大テーマの1つが 「お金と信用」 です。

お金とは信用を数値化したものであるとし、大事なのは信用をどれだけ積み重ねるかです。

では、信用はどのようにつくっていけばよいでしょうか?


信用を貯めるために
  • ウソをつかない
  • 環境を選ぶ (ウソをつかないことがメリットになる環境に身を置く)
  • 「自分が言ったこと」 と 「やっていること」 を一致させる


信用は自分の言動からつくられます。

自ら与える姿勢から入り、まわりに価値を提供します。他者への貢献を続け、有限実行と言行一致である人に信用は後から付いてきます。


まとめ


今回は、革命のファンファーレ - 現代のお金と広告 という本をご紹介しました。





最後に今回の記事のまとめです。


1.
キングコング西野さんの思考と実践に基づいたマーケティングの本。テーマは大きく2つで、お金と信用、マーケティング。


2.
マーケティングで書かれていることは、マーケティングのフレーム 4P の観点で見ると理解が深まる。
  • 「えんとつ町のプペル」 の分業制での作成プロセス [Product]
  • 人がモノを買う理由の洞察からのプロモーション設計 (例: 無料公開, 絵本を 「体験のお土産」 という意味づけ) [Promotion]
  • 長期で考えてマネタイズのタイミングを後ろにズラす [Price]
  • 流通の常識を疑った D2C 構築 (例: 独自販売サイト, 絵本個展やトークショーでの販売) [Place]


3.
読んで思ったこと
  • 「常識を疑う → 行動 → 検証」 のサイクルをまわし続ける
  • 信用を貯める。ウソをつかない、ウソをつかないことがメリットになる環境を選ぶ、他者への貢献と言行一致が信用をつくる





革命のファンファーレ - 現代のお金と広告 (西野亮廣)

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。