投稿日 2020/03/19

書評: 市場を変えろ - 既存産業で奇跡を起こす経営戦略 (永井俊輔) 。既存事業を持っているメリットを最大限に活かし、新規事業をつくる方法




今回は、書評です。





市場を変えろ - 既存産業で奇跡を起こす経営戦略 (永井俊輔) という本をご紹介します。

  • 何が書かれている本?
  • レガシー事業を活かしながら、新規事業をつくる方法
  • イノベーティブなアイデアを生み出す方法

こんな疑問に答える内容を書きました。


この記事でわかること


  • 書籍 市場を変えろ の概要
  • レガシー事業からイノベーションにつなげる LMI
  • 普段のビジネス実務で使えるアイデア術


ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。


本書の概要


この本の内容を一言で言えば、「両利きの経営」 の実践方法です。

既存事業 (レガシー産業の事業) を持っているメリットを最大限に活かし、既存事業が収益を生んでいる間に新規事業をつくる方法が書かれています。

これがまさに両利きの経営です。

両利きの事業展開だけではなく、ビジネスパーソンが普段の仕事で使えるアイデアを思いつく方法も紹介されています。経営や事業、個人のレベルでも学びが得られます。

以下は、本書の内容紹介からの引用です。

看板屋にイノベーションを起こした若き経営者が放つレガシーを花形産業に変えるたった一つの方法。

レガシー企業がイノベーションを起こし、市場を刷新するためにはどうすればいいのか。危機感が欠如している、あるいは 「自分たちにはできない」 と諦めているすべてのビジネスパーソンに読んでもらいたい、実践的手法をまとめた一冊。


両利きの経営を成功させるポイント


別の本になりますが、両利きの経営 - 「二兎を追う」 戦略が未来を切り拓く には両利きの経営を成功させるポイントが書かれています。





両利きの経営の成功ポイント
  • 既存と新規事業の目的や位置づけが明確
  • 経営陣などトップが新規事業へ理解と支援、コミットしている
  • 新規事業に既存事業のリソースを活用
  • 既存と新規を分ける (例: 異なる評価方法)
  • 共通のアイデンティティを持つ (例: 既存と新規は企業ミッションにつながっている)


これらのポイントは、今回ご紹介している書籍 市場を変えろ でのレガシーマーケットイノベーション (LMI) に通じます。

では、LMI を実現するために、どうすればいいでしょうか?


LMI の実現


既存産業を救う LMI を起こすには、「L の世界」 と 「I の世界」 の2つのステップで事業を成長させます。




引用: PR TIMES


[Step 1] L の世界


L の世界は、レガシーの世界です。

現在の事業をの生産性を向上させます。先ほどの図で、横軸を右に移動するための効率化と改善です。

具体的には、デジタル化などで既存ビジネスの生産性を高めます。


[Step 2] I の世界


次に、L の世界で得た収益を使い、イノベーションを目指します。図で、縦軸を上に移動させます。I の世界とは、イノベーションの世界です。

L と I の世界の両方、つまり、既存事業の生産性を上げつつ、新規事業を生み出していくのが LMI です。


レガシーを持っているからこそのイノベーション実現


LMI の特徴は、レガシーという既存事業を持っていることをメリットと捉え、既存事業を最大限に活かします

これまでの経営資源や経験を元にイノベーションを起こします。ゼロから始めるベンチャー企業よりも成功率が高く、拡大しやすいという考え方です。

決して、既存事業が斜陽産業になった古くさい・お荷物、あるいはオワコンなどとは捉えません。既存事業に関わっている人、ビジネスモデル、これまでの実績へのリスペクトがまずあり、既存を軸足にして新規事業をつくっていくのです。

既存事業という土台があるからこそ、新規事業に挑戦できます。既存が生き残って収益を上げている間は、何度でも挑めるのです。


イノベーティブなアイデアのつくり方


本書で興味深く読めるのは、経営や事業のレイヤーだけではありません。個人のレベルでも仕事の実務で使えるアイデアを生む方法が紹介されています。

イノベーションアイデアにつなげる方法でご紹介したいのは、ビジネスアイデアを 「手段」 と 「提供価値」 に分けて考えるアプローチです。


手段と提供価値を分ける


手段とは、実現方法からの視点です。手段において、自分たちでしかできない独自性があるかがポイントです。

実現方法には、自社能力というケイパビリティ、収益モデルの2つにさらに分けると良いです。

提供価値は、顧客目線になり顧客にとって本質的な価値は何かという視点から考えていきます。価値においても、他では得られない価値があるかという独自性がポイントです。

より一般化すると、ビジネスアイデアを考える時に、顧客メリットと独自性の両方を満たしているかの考え方は、ビジネスの実務で汎用的に使えます。

なお、イノベーティブなアイデアをつくる方法は、他の記事でもご紹介しています。よければ、ぜひこちらも読んでみてください。




まとめ


今回は、市場を変えろ - 既存産業で奇跡を起こす経営戦略 という本をご紹介しました。





最後に今回の記事のまとめです。


1.
この本の内容を一言で言えば、「両利きの経営」 の実践方法。既存事業 (レガシー産業の事業) を持っているメリットを最大限に活かし、既存事業が収益を生んでいる間に新規事業をつくる方法が書かれている。


2.
既存産業を救う LMI を起こすには、「L の世界」 と 「I の世界」 の2つのステップで事業を成長させる。
まずはデジタル化などで既存ビジネスの生産性を高め (L の世界) 、得た収益でイノベーションを目指す (I の世界) 。




3.
LMI の特徴は、レガシーという既存事業を持っていることをメリットと捉え、既存事業を最大限に活かす。既存事業に関わっている人、ビジネスモデル、これまでの実績へのリスペクトがまずあり、既存を軸足にして新規事業をつくっていく。


4.
ビジネスアイデアを生むために 「手段」 と 「提供価値」 に分けて考える。手段という実現方法、顧客への提供価値それぞれに独自性があるかがポイント。





市場を変えろ - 既存産業で奇跡を起こす経営戦略 (永井俊輔)

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。