投稿日 2020/07/28

マーケティングの本質を定量評価する数式


今回は、マーケティングについてです。


この記事でわかること


  • マーケティングの定義
  • 定量評価の数式 M
  • M を増やす方法
  • 選ばれることの掘り下げ (マーケティングの本質論)

記事では最初に、マーケティングとは何かをシンプルな一言でご説明します。

後半は、マーケティング活動の結果指標である M という考え方をご紹介します。そこから M を使って 「マーケティングとは何をやることか」 を掘り下げていきます。

ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。


マーケティングの定義


皆さんは、「もしマーケティングとは何か」 と聞かれれば、どのようにお答えになるでしょうか?

私の一言の定義は、マーケティングとは 「顧客から選ばれる理由を作る活動を全般」 です。選ばれるとは、買ってもらえる・使ってもらえる・来店/訪問される・指名されるです。

マーケティングとは選ばれるための活動です。ではその活動が適切にできたかは、どのように評価すればいいのでしょうか?


マーケティングの定量評価指標 M


ご紹介したいのは M という数式です。

元々この考え方を知ったのは、確率思考の戦略論 - USJ でも実証された数学マーケティングの力 という森岡毅さんと今西聖貴さんの本からです。


M とは、ターゲット顧客における 「1人あたりの選択回数」 です。

M を数式で表すと以下のようになります。


M = 全選択数 ÷ ターゲット顧客数
  • 全選択数 (分子) : 延べ選択回数
  • ターゲット顧客数 (分母): ターゲット全体の人数。自社ブランドを選ばなかった人も含む


M は、自社ブランドを顧客が選択した延べ回数を、ターゲット顧客の人数で割ったものです。例えば、延べ選択回数が100回で、ターゲット顧客が200人なら、M の値は 0.5 です。

マーケティングとは、「顧客から選ばれる理由を作る活動を全般」 とご説明しました。M とは、マーケティング活動の結果指標です。アクションという打席数に対して、M は結果である打率に当たります。

ではここからは M という観点から、どんなマーケティングのアプローチをしていけばいいかを掘り下げていきましょう。


M を増やすためには、どうすればいいか?


マーケティングとは、顧客から選ばれる理由をつくる活動全般でした。これを定量的に評価するために、1人あたり選択回数である M を使います。

では、M を増やすアプローチはどうすればいいでしょうか?


M を増やす方法
  • ターゲット顧客を絞る
  • ターゲット顧客の中での選択者を増やす
  • リピート数を増やす
  • ターゲット顧客を広げる


それぞれについて順番にご説明しますね。


[方法 1] ターゲット顧客を絞る


1つ目のターゲット顧客を絞るのは、M の分母に寄与します。

買ってくれなそうな人たちをターゲットから外し、分母の数を少なくすることによって、結果的に M の値を大きくするアプローチです。

自分たちの商品やサービスを買ってくれそうな人は誰なのか。この視点で、まずはターゲット顧客を絞っていきます。ただし、これだけでは不十分で、自分たちから見て 「買ってほしい人」 もしっかりと定めます。

顧客と自分たちとで相思相愛の関係を目指すのが理想です。


[方法 2] ターゲット顧客の中での選択者を増やす


2つ目のアプローチは、ターゲット顧客の中から選んでくれる人を増やします。ターゲットの中からシェアを増やすイメージです。

選ばれるというのは、買ってもらえる以外にも、来店されるなどがあります。購入経験率以外の指標としては、来店率・訪問率などを使います。


[方法 3] リピート数を増やす


延べ選択回数を増やすためには、リピート顧客を増やして何度も選択してもらいます。

LTV を高めロイヤルティの高い顧客になってもらうアプローチです。


[方法 4] ターゲット顧客を広げる


1つ目の方法 「ターゲット顧客を絞る」 とは逆のアプローチです。

意図的に顧客を広げます。今の提供ソリューションと同じでも訴求できる顧客セグメントが存在するなら、顧客は広げることも選択肢になります。

一人当たり選択回数である M は、「M = 全選択数 ÷ ターゲット顧客数」 です。分母のターゲット顧客を増やし、広げた新しい顧客からも既存顧客と同程度に選ばれれば M は維持できます。

新しい見込み客から選ばれ、リピートを増やしていけば M も向上します。

* * *

ここまで、1人当たり選択回数 M を増やすために、どうすればいいかを見てきました。

ではここからは、「そもそも選ばれるとはどういうことか」 について掘り下げて見ていきましょう。


選ばれるとはどういうことか?


自分たちが選ばれることを分解すると、次のようになります。


選ばれるとは
  • 知ってもらっている (認知)
  • 選ぶことができる (機会)
  • 顧客にとって意味がある (価値)


1つ目の認知には、二段階があります。言われれば思い出せるという助成想起、言われなくても自分で頭に浮かぶという純粋想起です。

より強いのは後者の純粋想起です。さらに純粋想起の中でも、一番始めに思い出すのが第一純粋想起 (Top of share mind) です。最初に思い浮かぶので、最も選ばれる可能性が高くなります。

次に、選ぶことができるという機会があることも大事です。マーケティングの観点で言えば、店頭に商品が置いてある配荷です。せっかくの選ばれる状況の機会損失をなくすという考え方です。

ここまでが選ばれるための最低限で、土俵に上がれている状態です。勝負はここからです。

選ばれることの本質は価値があることです。では、価値とは何でしょうか?


 「選ばれる」 と価値


マーケティングの観点で価値を別の言葉で表現すれば、競合優位性です。

優位性とは、顧客視点に立てば得られる価値です。顧客にとって他との違いが認識でき、かつその違いに意味があることです。

価値には機能的に便利もの、デザイン性が良いなど 「役に立つ」 という機能的ベネフィットと、ストーリーや感情移できるどの情緒的ベネフィットがあります。後者の情緒的なベネットは自分にとって 「意味がある」 です。

他にはない唯一無二な価値ほど、お金を払ってでも欲しいと思ってもらいやすくなります。つまりそれだけ選ばれる確率が高くなるのです。


まとめ


今回は、マーケティングの定義に立ち返り、選ばれるとは何かという観点で考えてきました。

最後にまとめです。


マーケティングと評価式
  • マーケティングとは 「顧客から選ばれる理由を作る活動を全般」 。マーケティング活動が適切にできたかは、ターゲット顧客1人あたりの選択回数 M を使う
  • M = 全選択回数 ÷ ターゲット顧客数


M を増やす方法
  • ターゲット顧客を絞る
  • ターゲット顧客の中での選択者を増やす
  • リピート数を増やす
  • ターゲット顧客を広げる


選ばれるとは
  • 知ってもらっている (認知)
  • 選ぶことができる (機会)
  • 顧客にとって価値がある





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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。