今回は、書評です。
座右の書『貞観政要』- 中国古典に学ぶ 「世界最高のリーダー論」 (出口治明) という本をご紹介します。
この記事でわかること
- リーダーからの権限委譲、リーダーへの戒め
- 舟と水のリーダー論
- 足るを知る謙虚さ
- 三つの鏡で学ぶ
今回は、貞観政要です。
本書のサブタイトルが、「中国古典に学ぶ世界最高のリーダー論」 とあるように、リーダーシップを掘り下げます。
ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事やキャリアへの参考になれば嬉しいです。
この本に書かれていること
貞観政要を座右の書とする著者の出口さんが、リーダーシップやマネジメントの原理原則をわかりやすく解説してくれます。
興味深く読めたのは、出口さんがライフネット生命保険を創業し、経営者として難局を乗り越えてきた時に、貞観政要のどこを参考にしたかの具台的な話でした。
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
「僕は毎日、この古典に叱られています」 (著者) ――
中国は唐の2代皇帝・太宗による統治 (貞観時代の政治) の要諦が凝縮された『貞観政要』。クビライ、徳川家康、北条政子、明治天皇…… と時代を超えて、世界最高のリーダー論として読み継がれている古典である。
本書では、稀代の読書家であり、『貞観政要』を座右の書にする著者が、その内容とポイントを、具体的に解説。全組織人、必読の中国古典。
リーダーからの権限移譲、臣下からの諌め
太宗が傑出したリーダーであったのは、次の二つを備えていたからです。
太宗のリーダーシップ
- 皇帝は臣下にいったん権限を与えたら、口出しせずに仕事を任せる [リーダーからの権限移譲]
- 皇帝の欠点や過失を遠慮なく批判する部下を、積極的に登用。諫言を聞き入れる [臣下からの諌め]
太宗は正しく権限を移譲し、組織としてうまく回る仕組みをつくっていました。
もう一つの 「臣下からの諌め」 も大切なポイントです。太宗は時には耳の痛い指摘にもしっかりと傾聴し、自分の至らぬところは直しました。
君主を諌めたり苦言を呈することは、臣下からすれば命がけです。太宗への信頼がベースにあり、太宗はしっかりと向き合ってくれる耳を傾けてくれる、そして何よりも太宗に正しくあってほしいという想いから、臣下たちは太宗に伝えることはしっかりと言葉で伝えたのです。
臣下からの諫言を重視する太宗の姿勢の根底には、リーダー観があります。舟と水に例えられたリーダー論です。
舟と水のリーダー論
この本で印象的だったのは、君主と人民を舟と水に例えたリーダー論です。
君主は水面に浮かぶ舟、人民は水です。水が荒れれば舟は簡単に転覆してしまいます。舟は水があってこそ進めます。つまり、君主は人民に活かされている存在です。
舟と水の関係は、私たち個人のレベルでも示唆があります。自分はまわりの環境や人に活かされています。全体の中に自分がいるわけです。
全体と個という関係性は、アドラー心理学の 「共同体感覚」 、ティール組織の 「ホールネス (Wholeness: 全体性) 」 にも通じます。
足るを知る謙虚さ
貞観政要から考えさせられるのは、足る知るという謙虚さです。
謙虚に学ぶ姿勢、わからないことを受け入れる。こうしたネガティブケイパビリティの大切さです。
驕りや慢心とは 「もう学ぶものは自分にはない」 「それくらい自分は知っている」 という状態です。
常に自分は 「どこか足りないものがある」 という謙虚さは持ち合わせおきたいです。現代のビジネスで言えば、同僚や顧客からの厳しいフィードバックに向き合い、学ぶ教訓を得て、自分の行動に反映していく姿勢です。
「三つの鏡」 で学ぶ
貞観政要には 「三つの鏡」 で学ぶという考え方が出てきます。
三つの鏡
- 銅の鏡: 内省や自分自身を振り返って学ぶ
- 歴史の鏡: 過去から学ぶ
- 人の鏡: 他者からの指摘・苦言・諌めから学ぶ
三つの鏡を大切にするとは、それだけ謙虚さを持ちながら学び続けることです。
どこまで行っても自分には足りないものがある。こうした姿勢を貫き通せるかは持っておきたいことです。
まとめ
今回は、座右の書『貞観政要』- 中国古典に学ぶ 「世界最高のリーダー論」 という本をご紹介しました。
最後にまとめです。
太宗のリーダーシップ
- 皇帝は臣下にいったん権限を与えたら、口出しせずに仕事を任せる [リーダーからの権限移譲]
- 皇帝の欠点や過失を遠慮なく批判する部下を、積極的に登用。諫言を聞き入れる [臣下からの戒め]
舟と水のリーダー論
- 君主は水面に浮かぶ舟、人民は水。水が荒れれば舟は簡単に転覆してしまい、船は水があってこそ進める。君主は人民に活かされている存在
- 個人のレベルへの示唆は、自分はまわりの環境や人に活かされている
足るを知る謙虚さ
- 謙虚に学ぶ姿勢、わからないことを受け入れる
- 常に自分は 「どこか足りないものがある」 という謙虚さは持ち合わせたい。謙虚さを持ちながら学び続ける。
三つの鏡
- 銅の鏡: 内省や自分自身を振り返って学ぶ
- 歴史の鏡: 過去から学ぶ
- 人の鏡: 他者からの指摘・苦言・諌めから学ぶ